木内 右 2013-03-09 19:30:06 |
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逢いたい、 ( いとも簡単に口から出てしまった言葉に「..なんてね、」と呟き苦笑をする。あれから何度、此の言葉を呟いただろう。綺麗な星達を見て目を細める。吐き出そうとした言葉を、飲み込む。..早く帰ってこい、馬鹿。 /
(嗚呼、こんなにも星は綺麗なのに、僕の心は泥沼のようだ。今になって彼女に会いたい、なんて、ふと曲がった何時もの道、一軒家が建ち並ぶ通り、スニ-カ-を滑らせて、坂道を歩いていく。/)
..、 ( 見慣れた住宅街。両親達が引っ越しても、私だけは行かなかった。帰って来るって、何処かで期待してたから。そんな思い出にぼんやりと浸る。大分暗くなった道には、ヒールの音だけが響く。 /
(ふと見えた人影、その影はゆっくりとした足で歩いていた。ふと落ちてしまったハンカチ、ふと眼鏡を綺麗に直すと、「ハンカチ、落としたんだけど、?」と続けて彼女の肩をぽんと、/)
..嗚呼、どうも、 ( 何処か聴き慣れた懐かしい声に足を止める。小さく頭を下げ乍、振り向く。顔は暗くて良くは見えないが、落ち着くような、そんな感じ。一人訝しんでは、眉を緩く顰め、 /
.. ちゃんと見た方がいいよ、俺がいなかったら無くなってたし、 (彼女を見つめては、ふ、と頬を緩ませた。何か見覚えも無い、眉をひそめる相手に、「..何?」と続けて、)
..有難う御座いました。 それじゃあ、 ( 一人首を捻るも、取り敢えず頭を下げて踵を返す。誰だったんだろ、知らない人かな。なんて思い乍、直ぐ近くの自宅へと足を踏み入れる。 /
はいはい、どーも。( 相変わらずの無機質な声は昔から変わらない、ふ、と踵を返せば、相手をふと思い出す、何か、見たことがあると感じるのは何故なのだろうか、)
...只今、 ( 音を立てて鍵を開け、玄関に踏み込む。挨拶をするも誰も居ない訳で。空しく、響いて消えた。「つっかれたぁ..、」と溜息とともに吐き出しては、玄関との段差にぺたりと座る。今日は何時もより疲れた、..さっさと寝よう。とかぼんやりと考えて、 /
...なあ、(いつになったら、彼女に謝れるんだろうか、数年前、天体が元々好きだった己は、天文学者になりたいと思っていた、し、何よりも空に近い存在になりたかった、でも、それが今になってこんなにも締め付けるなんて。/)
...声が似てたような、 ( 気がした。と続けては後ろに倒れ、目許を腕で覆い隠す。何処まで依存してるの、私、と消え入りそうな声で呟く。嗚呼今日は何だか憂鬱な気分だ。何時もより、胸が苦しい。 /
(なんであの時、彼女から遠ざかったのだろうか、そうだ、彼女には己の存在が必要ないと感じたから、ふと、昔からの幼なじみの家で立ち止まった。本当に馬鹿らしい。又会える訳ではないのに。/)
( ゆっくりと身体を起こすと、小さく左右に首を振る。何も思い出したくない。少し高いヒールの靴を脱ぐと、リビングに鞄を投げ捨てて、ソファに身体を沈めた。どうしてもあの時の自分の無力さを思い出してしまい、唇を強く噛み締めた。 /
(...本当に馬鹿だ。ふ、と踵を返して、自分の家へと足を進める。「......馬鹿じゃん、俺。」とか続けては、携帯を取り出した。ふと開いて見えたのは、携帯の画面に見えたのは、妹から。昔から体が弱かった妹は、もう、危ない状態まで陥っていた。「....本当に馬鹿、...」とか続けて。/)
...お酒飲みたい。 ( 気だるげに呟くと立ち上がり財布を持って再び玄関へ。自分からお酒を買うなんて珍しい。着替えてないけどいっか、とか思い乍サンダルを履けば、外に出てきっちりと鍵を閉める。ふと、胸がざわつく。何故か嫌な予感がしたのは、気のせいだと信じたい。 /
...死ぬんじゃねーぞ、馬鹿。(遠いのは、本当に残酷だ。携帯の連絡を見て、病院の連絡を切った。残酷で、冷酷な兄で御免なさい。でも、何よりも会えない自分が苛立つんだ。妹にも彼女にも、結局は、思いを伝えれないのか。)
( 家から一番近いコンビニへ、歩を進める。昼間は暖かくなってきたが、夜はまだ肌寒い。上着を着てこなかった自分を恨み乍、コンビニの自動ドアを潜って酒売り場へと 。 /
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