Kの小説置き場

<恋の理>
放課後の図書室で、私は何時もの様に貸し出しした本の集計、返却された本の整理を行っていた。
作業が終わってから、私は何時も必ず読む本がある。
「星の王子さま」だ。
小さい頃から本が大好きだった。
物心ついた時から星の王子さまが一番のお気に入りだった。
何度よんでも面白い。
ここまで面白い本なんて私は他に知らない。
今日の分を読み終えた私は、本を元の場所へ戻し帰ろうと図書室を出ようとした。
しかし、「ごめん、まだ借りれる？」と慌てて図書室に駆け込んできた男子生徒がいた。ネクタイの色が赤だから３年生か…と思いつつ「良いですよ」と言ってはｶｳﾝﾀ-まで戻り暫く待っていた。
程なくして一冊の本を持った彼が申し訳無さそうに「ごめんね、これ一冊借ります。」と言って一冊の本を手渡された。
それは、私が大好きな本だった。
「あ、いえいえ。んーっと、一週間以内に返しに来て下さい。」自然と笑みが溢れた。星の王子さま借りて行く人に初めて出会えた…何て密かに喜んでいた。

<恋の理2>
あの先輩に本を貸し出してから今日でちょうど一週間になる。
私は毎週火曜日の担当で他にも２人委員の子はいるがいつも先に帰って貰っている。
２人とも色々と事情があるから。
だから、最後まで残っているのは私１人だけ。終了時間が差し迫っているというのに、あの先輩は一向に来る気配が無い。
もしかしてもう違う曜日に返してしまったのかなー、なんて思いながら星の王子さまが置いてあった本棚に足を進め確認する。
返却されてる…少し残念に思いながらも手にとり先週の続きから読もうとページをﾊﾟﾗﾊﾟﾗと捲った。
ﾊﾟｻｯ………
誰もいない静かな図書室に静かに一枚の紙が落ちた。
ゆっくりとかがんで落ちた２つ折りのメモを拾いあげる。
そこには、星の王子さまであろう絵が描かれていた。
その絵は多分あの先輩が書いたものでは無いのだろう。
私たち高校生が書いたものではなく、もっと幼い子が書いた物。
クレヨンでカラフルに大きく描かれた王子さま。ちぐはぐでおかしな絵だけど凄く懐かしいと思った。
私も幼い頃は王子さまの絵を良く書いてたなー、と。
昔を思い出していると最終下校を知らせるﾁｬｲﾑが聞こえた。
慌てて本を元の位置にもどし、絵は綺麗に折ってブレザーのポケットにしまった。
鍵を閉め、職員室に返してから帰路についた。

ルームウェアに着替えて制服をハンガーにかけた。
あ、そう言えばあの絵…
絵をポケットから取り出して、そのままベッドに仰向けになる。
絵を広げればさっき見た同じ王子さまが描かれていた。
誰が書いたのかな…
先輩の妹か弟さんかなー??
ジッと絵を見つめては考えてみる。
悶々としていると携帯の着信が鳴った。
着信は友達の梨子からのメールだった。
明日の図書委員代わって、というメールだった。
特に予定もなかったから、分かった、と手早く返信をした。
とりあえず絵を引き出しにしまって、眠りについた。

放課後。
今日はやたらと利用人数が多いなー、とか思ってたら今日からテスト週間だという事に気付かされる。
テスト週間になると部活も放課後は無しになるので皆参考書やら辞書やらを求めて図書室にやってくる。
本を借りる人は少なく、ぼーっとしてると声をかけられた。
ねぇっ、君さあの本に挟まってた絵知らない？、と。
慌てて声をかけて来た人物を見るとあの時の先輩だった。
その絵なら今持って！……無いです、しまったーと内心思いながらも事情を説明すれば先輩は安心した様子で良かったー、と笑っていた。
先輩とその後話していて分かった事がある。
名前は日向　唯。バスケ部所属で小学2年生の妹さんがいること。
あの絵は妹さんが書いてくれたもので、うっかり挟んだまま本を返却してしまった事。
結局、絵は明日返す事になった。
そして家に帰り、ベッドの上で私、滝川　鈴は携帯と睨めっこ状態です。
あれから何故か赤外線でメアドを交換する事になり…早速先輩からメールが来てしまった。
男子とメールなんて余りした事無い私はどう返信すれば良いのか分からずかれこれ5分はこの状態。
今さらながら、日向先輩はイケメンだと思う。しかも女子から結構人気な感じだとも思う。
図書室で先輩と話していると随分と沢山の視線を背中で感じていた気がする。
こんなことばかり考えずに早く返信打たなきゃ…
先輩とのメールに苦戦しつつも何とか楽しく話せた、とか思いながら「おやすみなさい」と打っては返信を待つ。
すると、「おやすみ」とすぐに返って来た先輩のメールに、ドキドキしつつも眠りにつくのだった。

おひさしぶりですー！
やっぱりKさんの書くものってピュアな感じがしますね
続きが気になります！

タケノコさん>>お久しぶりです(♪
亀さん並みな更新ですが何とぞよろしくお願い致します(ﾍﾟｺﾘ

今日はいつもより早めに登校している。
なぜなら、テストが今日から始まるから。
魔の一週間の幕開けである。
学校に到着して校舎に入り南側の階段を昇って行けば誰かの話し声が聞こえた。
男の子の声…?とか思いつつも聞き覚えのある声に首傾げつつ足を進めれば、先輩がいた。
階段の踊り場の壁に少しもたれては携帯を耳に当てていた。
私と目が合えば微笑みかけて、口パクで
「ちょっと待って」と言われ、了解の意味で一度頷いてみせ。
そして誰と話してるんだろ、とか考えていれば「あぁ、じゃぁな美歩。」と愛しそうに美歩という女の子の名前を呼んでは電話を切る先輩。
美歩、って先輩の彼女?…なんて少し肩を落としてしまっている自分がいた。
「おはよ、鈴ちゃん。」と私に笑いかけては、絵って…と言いかけた先輩に慌てて鞄から絵を取り出して「お返ししますっ」と言っては相手に手渡した。
私の勢いに少し驚きながらも「ありがとう、これで美歩に怒られずに済むよ。」と絵を鞄にしまいながら、そう続けた先輩。
「妹さんだったんだ。」と思わず安堵しては口にしてしまった言葉にハッとなる。
当の本人は「ん、なに?」と聞き取れて居ない様子で。
「本人ありがとね、助かりました。」と笑顔でもう一度お礼を言われれば、「いぇ。」と控え目に答えては「それじゃぁ」教室行きますね、と付け足してはそのまま立ち去ろうとすれば先輩に手を握られそれは阻まれた。
えっ?、と思わず間抜けな声を出せば先輩も「ご、ごめん」と気まずそうに手離しては次の言葉を探しているようで暫く黙っていると「テスト終わったら、お礼させて。」と少し赤くなった先輩に「ダメかな?」と首を傾げられて断れる女子なんてこの世にいるのだろうか、と内心思いつつ「そんな悪いですよ…」と一応断りをいれる。
だけど先輩は「俺がお礼したいから」の一点張り。
「分かりました。」と此方が折れれば相手は笑顔になって、またメールする。と言い残しては急いだように立ち去っていった。
そして、この一週間のテストがボロボロだったのは言うまでもない。
その理由はもちろん先輩との約束に浮かれていたからである。

嵐の様に過ぎ去って行ったテスト週間。
土曜日の朝。
朝というか明朝ですね。
Pm5:00にメールって、新手の嫌がらせか何かですか!?と１人考えながらもメールの発信者を見て驚いた。
そこには確かに<日向先輩>と表示されていたから。
完璧に目が覚めた私は慌ててメールを開いた。
内容は至ってシンプルで部活の練習試合を見に来ないか、とのこと。
先輩のバスケ姿が見れるのかー、とか思って浮かれていたが…大事な事を忘れていた。
バスケのルールはさっぱりなんです、私。
どうしたものか、と考えてはみるもののやはり見に行きたい、と言う思いが強く…
「見に行きます」と返信してしまっていたのだった。