名無し 2012-10-29 16:00:09 |
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今日は七夕祭りだ。
やっと…やっと大樹に会える。
その気持ちでいっぱいでどうしようもなかった。
午後5時半。
菜奈と加奈は同じ電車に乗った。
「大ちゃんと玲雄は…?」
菜奈は加奈に聞いた。
「ローソンにいたけど…。」
(同じ電車に乗ってないのかな…。)
会場に着くと菜奈は玲雄に電話した。
「今どこにいるの?」
「今電車乗ったー。」
「大ちゃんも一緒?」
「うーん。」
「早く来てよね。」
そういって菜奈は電話を切った。
しばらくして合流した菜奈たちは、花火を一緒に見る約束をして別れた。
「ねぇ。」
加奈が話しかけてきた。
「菜奈は大樹に告ん無いの?」
「なんで?」
「だって今日はチャンスじゃん?」
「無理だよ。しない。」
菜奈は自信がなかったし、何より今日会えるだけで嬉しかったのにそれ以上は無理だった。
レモネードをのみながら、
「もうすぐ花火始まるねー…。」
と言って空を見上げた。
花火が始まった。
裏の路地で菜奈は玲雄に電話をした。
「玲雄?今どこにいる?」
「めっちゃ近くにいるー。」
「じゃぁ一緒に河原のほうまでいこっか。」
「りょうかーい。」
「大ちゃんも一緒?」
「うん。」
そう言って電話を切って玲雄と大樹と合流した。
河原は花火がよく見える。
しかし河原には人がいっぱいでよく見えなかった。
すると
「俺よく見えるとこ知ってるよ。」
と微笑みながら大樹が言った。
「こっちー。」
大樹の後について、菜奈たちは河原のもっと奥に入って行った。
たどり着いたその場所は夜だと気味が悪いくらい真っ暗な場所だった。
暗い場所が苦手な菜奈は正直怖かった。
「菜奈?大丈夫?」
大樹が菜奈に声をかけた。
「うん。だいじょ…。」
菜奈の声がかき消されるように花火が上がった。
照明のない真っ暗な場所から見る花火はとてもきれいだった。
加奈はその間玲雄を連れてどこかに行っていた。
だからここで花火を見てるのは大樹と菜奈だけである。
菜奈にとってこれは加奈が作ってくれた最大のチャンスだった。
でも、菜奈は告白なんてできなかった。
自分に自信が持てなくて、何度もこんなチャンスを逃してきたのに…。
結局何も出来ぬまま加奈と玲雄は帰ってきてしまった。
でも菜奈はそれでも嬉しかった。
何よりもずっと大樹がそばにいてくれたことが嬉しくて嬉しくて仕方がなかった。
七夕祭りからはしばらく会えない日が続き菜奈はさみしかった。
近所の祭りに行ったとき、菜奈は浴衣を着ていた。
大樹とすれ違った時、心臓が跳ね上がりのどから出そうになった。
でも今日一緒に来た友達にも1人大樹の事が好きな女の子がいる。
だから話しかけるとか絶対に無理だった。
だから…せめて…遠くから見つめていたかった…。
夏休みももうすぐ終わりだ。
菜奈は早く学校に行きたかった。
早く大樹に会いたくて仕方がなかったのだ。
夏休みが明けて学校が始まった。
明けてすぐは大樹と話すことができなくてさみしかった。
理奈が
「ねぇねぇ、菜奈って大ちゃんと付き合ってんの?」
と聞いてきた。
菜奈は驚いた。なんで理奈はそんなことを言っているのだろう…?
「違うよ?なんで?」
「だって…結構噂になってるよ?」
なんでこんなことが噂になってるのだろう…?
菜奈は困った。このことが大樹の耳に入ってしまったら…?
そう考えたら気が気ではなかった。
「とにかく…違うから!!」
そういって菜奈はその場を去った。
体育祭が終わってすぐ菜奈は家族でディズニーランドに行った。
菜奈はお土産に大樹には地位がうものを買ってきた。
夏休み中のあの噂のお詫びのために…。
すると大樹はすぐにそれを筆箱につけてくれた。
菜奈は嬉しくて涙が出そうになった。
体育祭が終われば、次は芸術祭だ。
菜奈はピアノを弾くのが得意だ。しかし今年はピアノを弾かなかった。
今年は歌いたい気分だったのだ。
菜奈自体は歌は嫌いではないので芸術祭が楽しみだった。
芸術祭まではまだ2か月ほどある。
頑張って練習して優勝したかった。
芸術祭は10月27日…
「よしっ!!」
菜奈は気合を入れて練習に取り組んだ。
10月17日…。
芸術祭まであと10日だ。
朝練習にはほとんどクラス全員が集まって練習をしていた。
すると大樹が菜奈のほうへ歩み寄ってきた。
「菜奈!!誕生日おめでとう!!」
菜奈は驚いた。そうだった。今日は私の誕生日じゃないか…。
そして嬉しかった。
大樹が自分の誕生日を覚えてくれていたこと。
そして何より祝ってくれたことに…。
「ありがとう」
菜奈はそう一言言って微笑みかけた。
いよいよ今日は芸術祭当日だ。
菜奈はとても緊張していた。
今日はクラスで一致団結して参加できる最後の行事だ。
歌は完璧。
調子は…良い!!
劇…まぁまぁ出来上がってきている。
あとは失敗なく本番で歌うだけだ!!
リハーサルでは、劇の練習が行われた。
スポットライトの位置、バックの位置、言葉…。
すべてが最終チェックとなった。
そして始まった本番。
開会式では校歌を歌う。
菜奈の中学校の校歌の歌い方には特徴がある。
みんなで肩を組んで歌うのだ。
その時菜奈の隣にいたのは…大樹だった。
「え…肩…組むの…?」
菜奈はオドオドしながら大樹に聞いた。
「いや…わかんないけど…」
大樹もさすがにオドオドしていた。
すると理奈が隣から、
「組むんじゃない?ほら!!」
と強引に組ませてきた。
菜奈は恥ずかしかったし、こんなに大樹に近づいたのは初めてでうまく歌えなかった。
いよいよ菜奈たちの番になった。
これでみんなで歌えるのも最後…。
自分の力を出し切って精一杯歌おうと大きく息を吸った…。
結果的に菜奈たちのクラスは2位で終わった。
7クラスあるうちの2位だからまぁいいだろう。
それでも優勝できなかった悔しさが胸に残る。
でもこれも思い出だ。
楽しんで歌えてよかったじゃないか。
菜奈はそう思い空に向かって微笑んだ。
「菜奈ー!!」
芸術祭の帰り道雪が声をかけてきた。
「あ、雪!!お疲れー。」
「菜奈こそ!!」
そんな会話をして2人で笑った。
すると雪が「ねぇ、大ちゃんに告んないの?」
「え…?」
菜奈は驚いて雪を見た。
「だって今日ぐらいしかチャンス無いよ?」
そういって菜奈の顔を見た。
その目は真剣な目つきだった。
「本気…?」
「うん。今日言わなきゃ絶対後悔するよ。」
雪の真剣な目つきに菜奈は決心した。
「わかった。今日告る…。」
それから菜奈は急いで家に帰った。
そして大樹のうちに電話をした。
「もしもし?大樹君いますか?」
「俺だけど…?どうしたの?」
「今からそっち行ってもいいかな?話したいことあるの。」
「いいよー。」
「じゃぁ今から行く!!」
そういって電話を切った菜奈は急いで家を飛び出した。
伝えなきゃ…。絶対後悔する…。その言葉が頭の中でこだましてただただ大樹のうちへ急いだ。
そうして大樹の家に着いた頃は息も切れていた。
家から出てきた大樹に真っ先に
「ゴメンネ…。」と一言言った。
そして…。
「好き…。あたし大ちゃんのこと好きだよ。」
と言った。
「芸術祭終わったら…班変わっちゃうでしょ…?そしたら今までみたく話せなくなると思って…どうしても伝えたくって…。」
菜奈は必死に大樹に伝えた。
言葉ではとてもいい表せないような気持ちを…。
大樹は驚いていた。そして一言つぶやいた。
「うん。俺も。」
そう言って微笑んだ。
「だから俺と付き合って?」
菜奈は泣きそうになった。
でも必死でこらえて微笑んだ。そして元気よく
「はい!!」と返事した。
次の日、緊張しながら学校に行った。
付き合ったからと言って気まずくなったら終わりだ。
(普通に今までみたいに話せるかな…?)
菜奈は不安だった。
朝大樹と目が合ったとき、大樹の顔は真っ赤になっていた。
それでも大樹は菜奈にに向かって微笑んでくれた。
それが菜奈にとっては嬉しくて、そして少し安心した。
「それじゃぁ席替えしましょう!!」
先生がそう言ったとき心臓がズキッとした。
あぁ…もう今日でこの班ともお別れなんだ…。
そんな気持ちが菜奈の中にあった。
女子、男子に別れてペアを決めた。
菜奈は後期も加奈と同じ班だ。
残念ながら理奈は違った。
あとは男子が誰になるか決まるだけだ。
残ってるのは…3班…?
大樹の班は…?
まだ余っている!!
結局くじ引きで決まることになった。
引いたくじは…大樹の班と同じだった!!
菜奈は嬉しさで胸がいっぱいになって、また半年間一緒にいられることが嬉しかった。
菜奈の隣の席になった大樹はその日の帰りに、
「あ!!そうだ、菜奈ー!!はいこれ!!」
と言って袋を一つ菜奈に渡した。
「これ…何…?」
菜奈は驚いて大樹を見た。
「遅くなってゴメン。誕生日プレゼントだよ。」
そういって笑いかけた。
菜奈はにっこり笑って、
「ありがとう!!大事にする!!」
と言った。
付き合って一か月が過ぎた。
「もうすぐ受験だよー。」
そういってきたのは理奈だ。
理奈には最近彼氏ができた。
一つ下の同じ部活の後輩だ。
今はその彼氏にメロメロらしい。
「そっか…。あたしら受験生だね…。」
菜奈はため息をついた。
そして気が付いた。
受験…つまり大樹とは違う高校になる…?
当たり前だ。
大樹は学年一の秀才だし、それに比べ、菜奈は真ん中位だ。
同じ高校になど進めるわけがない。
そんなことわかっていたはずだ。
分かっていたはずだけどそう考えてしまうとなんだか切ない気持ちになってしまった。
「ねぇ大ちゃん、大ちゃん高校どこ受ける…?」
菜奈は大樹に思い切って聞いてみた。
「う~ん…K高校かな…。菜奈は?」
やっぱり…。
頭いいところ行くんだ…。
しかも男子校…。
「私は…まだ決まってないかなっ。」
菜奈はそういって微笑んだ。
そして言い聞かせた。
離れるのは寂しい。でも信じてる。大ちゃんの事信じてるから、頑張ろう。…と。
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