咲楽 2012-10-06 21:25:22 |
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「げ…最悪…」
中3の4月。私は恵美。今日から私は中学3年生だ。クラス名簿を見た私は落ち込んだ。
仲のいい人がいない…。
てかほぼ初対面ばっかり…
どうしよう…
「先生ひどくないですか~…」
私はすぐに先生に文句を言った。
「しょうがないじゃない…。ピアノ弾ける人がいなかったんだもの~…」
京子先生。私が2年の時の担任だ。優しくていい先生だ。
教室に入るとまた最悪な事態だ。
私の席は教卓の前。しかも隣はチョー頭いい男の子。しかも真面目…
たしか…樹くんって言ったかな…?
こんなこと仲良くなれなさそう…
「明日から憂鬱だな…」
始業式のため午前中だけで今日は終わった。
そしてその日はそのまま眠ってしまった…
次の日目が覚めるとなんだか体が重たい。
あれ…風邪かな…
その日は学校を休んだ。午後には熱も上がり頭も痛くなった。
結局インフルエンザに感染してしまった。しょっぱなから休んで最悪…
でもまぁ…つまんない学校行くよりかはいいかな…
一週間休むとさすがに元気が出てきた。
よし!月曜日からは学校行けそう!!
まぁこれも人生だから仕方ないか…
ぐっと背伸びをして空を見上げた。
私が休んでいる間に席替えをしたらしい。
教卓の前ではなくなり後ろのほうの席になった。
隣は…?そっと隣を見ると…
そこには樹くんがいた。
私は呆然とした。最悪、最悪すぎる。
ここまで一緒?
私は隣にいた幼馴染の男子…山口テツことてっちゃんに声をかけた。
「なんで一緒なの?」
「なんでって…俺とコイツ1年の時から仲いいから」
「てっちゃんはいいんだけど嶋田くんが…。
てかなんで真面目な嶋田くんとてっちゃんが仲いいのよ。
あんた学年一の問題児でしょ?勉強しないのに頭いいけどさ~…」
「…?なんでだろうね…」
「馬鹿じゃないの?」
私は呆れててっちゃんを叩いた。
まったく…
これだからてっちゃんは…
嶋田くんとてっちゃん、山口真美ちゃんと池田紗奈ちゃん。
男2人、女3人の5人が私の前期の班となった。
席の配置は紗奈が一番前で違う班の子と隣に、私と嶋田くん、真美とてっちゃんが隣になった。
私はすぐに真美と仲良くなった。真美は嶋田くんとてっちゃんと2年間同じクラスだったらしい。
そこで初めて嶋田くんはいっちゃんと呼ばれていることを知った。
何て呼べばいいかわからなかった私にとってありがたい情報だった。
その日初めていっちゃんと話した。正式には向こうが話しかけてこっちが返事をしただけであるが…
「インフルエンザ大丈夫だった?」
「へ…?」
いきなりの質問に変な声が出た。こんなこと言ってくれる男子初めて見た。
「だ…大丈夫だよ…?なんか…ありがと…」
あまりの驚きにあいまいな返事になってしまった。
朝付き合っている彼氏に言われたけど…こんなに嬉しかったっけ…?
不思議な感情に悩まされつつも顔が緩んでしまった。
その日だけで班のメンバーとはぐっと近づけた。
紗那はあまり好きではなかった。でも友達のために一生懸命になれる優しい子だ。ちょっと不良っぽいけど…。てっちゃんは相変わらず遅刻、授業中の睡眠が絶えない。真美はよく後ろから突っついてくる。意外といい班かも…?
いっちゃんは思ってたのとはまったく別人だった。
真面目で頭はいいのに、おもしろい子だ。てっちゃんと仲良くなるのがわかる気がする。
しかもかなりのバスケ好きだ。休み時間も友達と雑誌を見ている。
このバッシュが欲しいだとか何とか…。
そんな彼を私はいつから見つめていたんだろう…
今思うと不思議だ。彼氏もいたのに…
「あっ!!そういえばもうすぐ修学旅行じゃん?」
真美が急に言い出した。
「そうだね…。となると班行動はこの班じゃん!!」
私もつられて答えた。
「彼氏とおソロのストラップかおっかな」
真美の耳元でそっとつぶやいた。でも正直彼氏の事を本気で好きかと聞かれると答えられない。
もともと彼氏が欲しくて誰でもよくて付き合っただけだ。でも形だけでも彼女でいたかった。
もうすぐ夏が来る
その日の帰りいつも通り自転車に乗るとカゴに手紙が入っていた。
「誰からだろ…」
ゆっくり開いた。彼氏からだった。
驚きはしなかった。手紙交換は普段していたからだ。でも…
「別れよう。ごめんね。」
少しドキリとした。
あぁ…また1人に戻るんだ…
またやり直しだ。不思議と悲しみはなかった。
6月下旬。
いよいよ修学旅行だ。以前よりいっちゃんとも仲が良くなった。
私はきっと気づいてた。いっちゃんがずっと心の奥にいたことを。
新幹線で真美に
「ねぇ、恵美の好きな人っていっちゃんでしょ?」
と聞かれた。
「え…?」
相当驚いた顔をしていたらしい。真美に
「図星だー」
と言われた。
「そうだね…。そう…。好き…。」
私は下を向いて答えた。
「やっぱりね…」
真美がため息をついた。
「実は私もなんだ」
「え…」
見上げた顔の先には少し微笑んだ真美の顔があった。
念願の修学旅行。楽しみにしていた。なのに…奈良につく前に壊された。
真美のせいじゃないのはわかってる。しょうがないことだ。
真美も好きなんだから私も少しは我慢しなきゃ。
奈良の自由行動は班で回った。
紗那は
「真美といっちゃんいい感じじゃない?いっそのことくっつけちゃお!!」
と言ってくる。
「そうだね…!!それいいかも!!」
そう答えるしかなかった。
紗那は、学年一おじゃべりですぐに噂が広まるから好きな人は教えたくなかった。
だから私はてっちゃんと紗那とお土産を見て、真美といっちゃんを2人きりで回らせた。
自分で自分の首絞めて馬鹿みたい。
でも…泣いちゃだめだよね…
心配かけちゃうもん…。
必死にこらえて元気に1日を過ごした。
その日の夕飯はのどを通らなかった。
ずっと遠くから彼を見つめていた。
「ねぇ樹の事好き?」
急に男子に声をかけられた。
上田だ。それより…あたしそんなに顔に出てた?急に顔が熱くなった。
「え…?なんで…?ん…?」
あいまいな返事をしてやり過ごした。
危なかった。余計に落ち込んだ私は明日が憂鬱になってきた。
お風呂に入ってから外に出るといっちゃんと上田、その他の男子が集まっていた。
気まずいのでそそくと通り過ぎると
「ねぇ」
後ろから声をかけられた。上田だった。
「さっきとおんなじようなこと聞くけど樹の事どう思う?」
またか…
今度はさっきのようにはいかないだろう。
なんせここにいるのは上田と私だけだ。私は
「普通に…いい人だと思うよ」
と答えた。
恥ずかしくて走って逃げた。逃げる途中、上田がいっちゃんに
「大丈夫だって!いけるよ!」と声をかけているのが聞こえた。
「昨日の…なんだったのかな…」
翌朝目が覚めると真っ先にそう思った。昨日はいつの間にか眠りに落ちてしまったらしい。
「今日は班行動だねっ!!」
嬉しそうに話しかけてくる真美に私は
「そうだね」
と微笑んで答えた。今日も昨日同様で真美にいっちゃんを取られるかと思うと気が気ではなかった。
でも私は奪うわけにはいかない。そんなことできない…。
タクシーでの移動は楽しかった。
「樹と真美、昨日一日で近づいたよね」
紗那が話しかけてきたことに私は気づかなかった。
「うん…」
そんな曖昧な返事をしては彼を見つめた。
清水寺…
「京都といえばここだよね」
てっちゃんが一言。
確かに清水寺は京都らしい。
班員全員でまっっくらな場所にはいった。
なんか数珠伝っていくやつ…
紗那、私、てっちゃん、いっちゃん、真美の順番で入った。
私は暗いところが苦手だ。数珠があって後ろや前に友達がいることもわかってる。
でも怖かった。
やっと少し明るくなってきた。とわ言ってもそこは薄暗い明りしかついてなく、みんなの顔は見えない。
「さ…紗那?どこ…?」
居場所が分からなくなってオロオロしていた私の手にそっと触れたのがいっちゃんの手だった。
「大丈夫?いるよ?大丈夫だからね…」
その優しさにすがるように彼の手を握り返した。
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