ゼロ 2012-08-12 16:50:55 |
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一話で一週間後とハッキリ書いたばかりなのに…スマン、ありゃ二週間後だった
でもまぁ、俺は嘘つきではないのです、ただ間違いをするだけなのです、って事で勘弁してくれ
ブラッドクロス第二章
第二話 生命を嘲笑う者
雲が次第に赤黒く染まっていく。
「違う、雨ではないのか…なんだ?」
突如、レビ達の周囲の空間に五つの渦が起こる。
その渦の中から人型の何者かが現れる。
鬱血したような青黒い肌、植物が根を張るように体中を覆う黒い模様、そして瞳に灯る赤黒い光。
それらは口から黒い涎を撒き散らしながら、一斉に笑い声をあげた。
「うわあぁぁ、何だ、このバケモノはぁ!?」
皆が悲鳴をあげる。
「見た目で判断するものじゃあないと言うが、そんなレベルではないな…」
右手の魔法陣を展開し、槍を取り出す。
何者かの一体が工事作業員に襲いかかる。
「させるかっ!」
間に割って入り、横薙ぎの斬撃。
何者かは吹っ飛んでいき、大地に叩きつけられ、体が弾む。
「両断出来ないか、手加減はしていないんだがな…」
汗が頬を流れる。
何者が上体を起こす。
腹部に大きく開いた傷口から溢れ出る血液と共に赤黒い光が漏れ出している。
他の四体も作業員達を襲おうと走り出す。
「皆、逃げろッ!」
最初の一体に槍を投げ、腹部を更に貫く。今度こそ絶命したようだ。
「クリムゾンチェーン!」
両の掌から鎖を放つ。鎖が二体の片腕に巻き付き、先端の刃が肉に突き刺さって固定される。
しかし、相手はレビの想像を超えるものだった。
一体は縛られた腕を強引に引き千切り、怯える獲物に悠々と向かっていく。
もう一体はレビの体を引きずりながら歩き続ける。
「ぐぅぅ…身体強化(レイズ)!」
レビの肉体が力を増し、ようやく立場が逆転した。
「うおおおおおっ!」
円を描くように相手の体を引きずり回し、遠心力でもう一体にぶつける。
二体は重なりあう形で倒れた。
一度トランスを解除して新たに鎖を放ち、投げた槍を絡め取って引き寄せ、跳躍。
重力を乗せた突きで二体まとめて貫き通す。
「残りは、二体…!」
謎の敵の方に振り向き、走りだそうとしたその時。
「があああっ!?」
右の足首に強烈な圧力がかかる。
片方がまだ息があるのか、足を掴んでいたのだ。
左手の魔法陣から剣を抜き、その手首を斬り落とす。
更に剣を掲げ、首に振り落とした。
地を転がっていくそれは最期までニタニタと笑っているように見えた…
未知の恐怖と苦痛の色を浮かべるレビの表情を喜んでいるかのように…
「ハァ…ハァ…貴様らは…一体何なんだ…!?」
手は皮と肉を引き裂き、骨に食い込む程に握り絞められ、死してなお放さなかった。
既に二体の敵がそれぞれ作業員を捕らえていた。
両足の骨を砕いて逃げられないようにしてから、あえて抵抗させながらいたぶっている…
必死に生にしがみつこうとする獲物に、じわじわと絶望を与える事を楽しむように…
それを助けようとする者にも手加減して攻撃する。
そして、仲間を救えない無力感と罪悪感に苛まれる表情を見て、笑い声をあげるのだった。
「貴様等…ふざけるな!」
右足に力が入らない分、翼の力で跳躍し、近くの一体を飛び蹴りで吹っ飛ばす。
「ブラックサーヴァント…」
レビの左腕がコウモリの群れに変化し、もう一体に向かって飛んでいく。
「…ヤツを捕らえていろッ、チェーンプリズン!」
全てのコウモリが一斉に魔法陣を展開し、放たれる鎖が敵を何重にも縛り、作業員から引き離す。
「二人を助けて早く行けッ!」
一方で、やはり敵はすぐに立ち上がり、反撃する。
一撃目を躱すものの、足の怪我もあり、二撃目を食らってしまう。
腹部に剛腕がめり込み、今度はレビが吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「かはっ…」
内臓を損傷したのだろう、激しく吐血する。
敵が近づいてくる、恐怖を与えるようゆっくりと。
レビはよろけつつも壁に手をついてなんとか立ち上がり、爪で自らの胸を切りつける。
「トランス…ブラッディ…ミスト…」
傷口から血液が霧となって噴き出す。
小規模ながら高濃度の霧は敵の周囲に集まって纏わり付き、視界を閉ざす。
敵は獲物を見失い、デタラメに暴れ狂う。その隙に落とした剣を拾う。
霧の中に向けて剣を構え、突撃。敵を貫き、押し倒し、地面に串刺しにした。
「貴様の命…枯れ尽きて死ぬがいい…!」
右手で頭を押さえつけ、首筋に噛みついた。
血を吸うに従って、身体の末端から首筋に向かって黒い模様が消えていく。
模様が全て消えかかった頃には、邪悪な笑みを浮かべていたはずの敵は、
穏やかな表情で息絶えていた。
第二話 生命を嘲笑う者
次回 呪われし黒き血
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