ゼロ 2012-08-12 16:50:55 |
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さて、何と言って入ろうかww
そして、過去ログ漁ってみたら、今。本当に今気づいた。
大晦日の日、怪物君。本体が拘束されてたんだ・・・
ブラッドクロス第二章
第八話 結び付く過去
もやが晴れるようにスーッと脳が覚醒していく。
目の前では、先端に鎌を備えた何本もの触手が空を切り刻んでいた。
カレンが耳元でささやく。
「危なかったね、レビちゃん」
「むぐっ、ぐぐぐ、うぐぐ!」
俺は目まぐるしい状況の変化に追い付けないでいた。
「大きい声を出しちゃダメ、静かにしゃべる、おーけー?」
コクコクと頷くと、口を押さえつけるカレンの手がどかされた。
「何が起こってるかよく分からないが実は今…!」
「なんか懐かしいものとか見たんでしょ」
「え、なんで…!?」
「それ、幻覚
口にこれ当てときなよ、また胞子吸っちゃうから」
そう言いながらハンカチを差し出すカレン。
だが当の本人は全く無防備のままで振る舞っている。
「コイツが魔物の正体さ」
カレンの指先を追って視線を上に向ける。
天井部から下向きに咲く巨大な花。
花弁のくぼんだ中央には牙のような突起が蠢いている。
「これは肉食植物か?」
「コイツのバラまく胞子がトンネル内に漂ってるんだ、君はそれを吸い込んで幻覚を見せられてた
視覚が無いから音で獲物の場所を捉えて、触手でみじん切りにして補食するんだろうね
ま、頼りの聴覚もあんまり良くないみたいだけど」
「く、詳しいな…」
「十八年間、あちこち駆けずり回ってたからね
似たようなパターンも経験済みなの
んで、大抵花を始末すればカタがつく」
「そう、か…
それでトンネルを通るには、胞子を散らさないように、この植物を駆除すればいいんだよな」
懐からマッチ箱を取り出す。
「けっこう数が多いし、いちいち燃やしてると一酸化炭素中毒になるんじゃない?」
「じゃあどうする?」
「戦闘。触手ぐらい任せていいよね」
カレンの左手の掌に魔法陣が浮かび上がり、そこから一丁の銃が姿を現した。
「え、ちょっ!待…」
「さあ、罰の時間だ、スクリーマー」
引き金が引かれ、触手が一斉に反応した。
「トランス、クリムゾンチェーン!」
刃を携えた鎖を放ち、触手を数本切り裂く。
「お~、まあまあじゃん
でも鎖の音も位置バレするよね」
反応した触手が鎖を攻撃しようとして、絡み付いた。
「くっ、あんたがいきなり始めるからッ、他に準備出来なかったんだ!」
絡め取られた鎖を破棄する。
「敵は待ってくれないんだ
不意打ちにも対応できないと、この先やってけないよ」
カレンは迎撃しつつ攻撃をかわし、引き金を引き続ける。
「昔からこういう時に強引なんだ!」
そう、昔から…でも何をやるにしても、よく見ればヒントになる行動も多かった。
なら今の動きはどうだろう?
ほとんど狙いをつけないで撃っているようだが…
「………!
向こうから反応してくるなら、それを逆手に取れって事か
トランス、クリムゾンチェーン・ブレイド!」
またしても鎖に群がる触手。
「かかったな!」
鎖を振るえば、備えた鋭利な刃が触手を切り裂く。
「全体を刃で形成したのか
即興にしちゃ良いアイデアだ!
この調子でどんどん行こう」
「片付いた、これで胞子も散らないし煙も出ないよ」
氷漬けの花を見ながら呟く。
「凍結させる弾丸か…」
「どうかした?」
「最近氷使いと戦ったから、ちょっとさ
それより訊きたい事がある、 カレンはなんで胞子平気だったんだ?」
「ヌッフッフッ、君とは身体の造りが違うんだよ」
「そんな事ってあるのか…?」
ときどき、誇張で言ってるのか本当なのか判らないから困る。
「なんたって私は、エリート中のエリートだからねー♪」
カレンの首には深紅のチョーカーが付けられていた。
「さ、人間達を呼んでやんなよ
君の事…いや、なんでもない…」
カレンは先の様子を見ると言って残り、俺はトンネルを引き返していた。
外の光が見えてきた。入口付近に人が集まっているようだ。
人だかりの中からセラが歩み出てきた。
「あ!レビ、無事だった!?
みんな貴方の事を心配してたのよ」
「心配…そうだったのか、悪いな」
カレンが言いかけたのはこの事か。
カレンの立場や経験を考えれば、複雑な心境だったんだろうな…
「ザランがね、狼だから鼻が利くのよ、それでトンネル内の異常に気づいたみたいで
そしたらいきなりカレンさんが現れてザランを問い詰めたと思ったら、大急ぎで入ってって…
何事かと思ったわ」
「なるほど、後でザランに礼を言っておこう、俺は無事だ
問題も解決した、先を急ごう」
人間達に出発を促していると、不機嫌な表情のザランが近付いてきた。
「なぁレビ、あのカレンて吸血鬼はなんなんだ?
なんか僕が変化したら、いきなり出てきて凄い形相で怒鳴りつけられてさ
人間が憎いっていうのはわかるけど、なんで僕があんなに言われなきゃいけないんだ?
獣憑きだからかよ」
「それは…すまない、許してやってくれ」
「どういう事なんだよ?」
「カレンの両親や友達は…白狼のせいで皆殺しにされた」
「そりゃ気の毒だけど…僕だって好きで白狼とやらに呪われてる訳じゃないし」
「とにかくカレンと関わらないようにしてくれ
本当に悪かった」
頭を下げるしかなかった。
「ぁ~、そんなにお前に謝られるとこっちも何だか…えっと、とりあえず行こうぜ
他にも訊きたい事があるし」
「で、レビはなんで僕等に味方してくれるんだ?」
「お前らが俺を悪として扱わないなら、俺も相応の振る舞いをするさ
貴重だからな、敵だと思わなくていい人間なんて」
「なるほど
同じ吸血鬼でも考え方がずいぶんちがうもんだな」
「…カレンの事を言っているなら、根本はそんなに変わらないはずだ
その上を構築する、辿ってきた過去が違い過ぎるんだろうな
俺が見てこなかった歪みの中を歩んできたのかも知れない」
第八話 結び付く過去
次回 ゲイル、猛き風の牙達
ブラッドクロス設定解説
・フリージングスクリーマー
銀のフレーム内に悪霊を閉じ込めた大型拳銃。
悪霊の生前は、鮮血の暖かさに快感を覚える冷酷無慈悲な大量殺人鬼。
死後は、どんなに激しい烈火の中でも熱を感じる事の無い、
酷寒に囚われた魂だけで現世をさ迷う罰を受けていた。
その魂は罰を終える時が過ぎても銃に封じられ、
引き金が引かれる度に苦しみに襲われ、誰にも届かない悲鳴をあげる。
・クリムゾンチェーン・ブレイド
通常のクリムゾンチェーンが先端のみ刃を持つのに対して、
輪のひとつひとつに鋭利な刃を備えた鎖。
攻撃的になったがその分、下手に振り回せば自分をも傷つけかねない。
・スベニラー
ガストとゲイルを繋ぐトンネル内に蔓延る肉食植物。
幻覚作用を持つ胞子で獲物を誘き寄せ、触手で切り刻んでから捕食する。
胞子は吸い込んだ者の記憶に基づいて、少量なら穏やかな想い出を模した幻覚を見せる。
獲物が花に近づき、胞子を吸い込む量が増えると幻覚はショッキングなものに変貌する。
この時に獲物があげる悲鳴に反応して位置を捉え、触手で攻撃する。
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