ゼロ 2012-08-12 16:50:55 |
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第五話 黒き翼と白き狼
こんなふうに友好的に名を交わした事など何時ぶりだろうか。
思えばこの町の者達には名乗ってもいなかったな…
お互いに深い関係を築く訳にはいかないのだから、そんな必要もなかったが。
「セラ、コイツらの事は何か分かるか?」
「たしか、人数は私が見ただけでも十人以上…蒼い髪の女がリーダーみたいだったわ」
「随分と要領を得た返事をするな…」
「ええ、こんな町だからね…危ない目に合うのも慣れてるっていうか…
それと、手柄を独占したいみたいだから、あなたの事は他にはバレてないはずよ」
「そうか」
先程の死体から剣を回収し、その死体に魔法陣と文字を刻みつけた。
『Jagibaobaride yosogiobaride wagatibaraobare』
「それは…何…?」
「魔法の下ごしらえといったところだ…
これをやっておくと魔力を節約できる」
剣を仕舞って、死体を持ち上げて運び、家の玄関の扉から少し右の壁に押し付けた。
「ところで…家が少し壊れるが…」
「今さらかまわないわ」
「う…すまない」
魔力を込めた右腕で死体を壁ごとぶち破る。
壁の向こうにもう一人分の手応え。
「うおぉっ!?」
吹っ飛んでいく男一人と扉の左側にもう一人男。
「玄関外の両脇で待ち伏せ二人、悪いが想定内だ」
「チッ、バケモノがァ!」
男が振り下ろすバルディッシュ(斧)の柄を左手で掴んで受け止め、右腕を死体から引き抜く。
「魔装化(イークイップ)…ヴァンパイアクロウ」
血が魔力の紅い光を帯びて形を成し、右手の指に長く鋭い爪として装着される。
「牙ほどじゃあないが、血と魔力を吸わせてもらう」
鎧の隙間から首に深々と爪を突き立てる。
「カハァッ…!」
相手から奪った力が爪を通して身体に流れ込んでくる。
力尽きた男から爪を抜き、先程吹っ飛ばした方の男に告げる。
「俺は広場に行って日の出を待つ…朝日よりも先に俺を殺してみろ」
太陽の光で俺が**ばコイツらは目的を達成できない。夜明けまでに必死に殺しに来る。
一人一人探しだして皆殺しにするより、向こうから来てもらった方が効率的だ。
誰一人として生きて帰す訳にはいかない。
人の意志を恐怖で縛ることは出来なかった…
俺のミスでセラのような人間を危機に晒す事などこれ以上は…
ガスト第二倉庫
吸血鬼のエサ役と町を不自然に見せないための最小限の役者以外の住民は倉庫に集められている。
騎士団が目的を達するまで邪魔にならないように管理されている訳だ。
出口はひとつ、そのそばに銃を持った監視が男二人と女一人。
「あの…すみません」
僕は男に話しかけた。
「なんだ?」
「僕、どうしても外に出なきゃいけない用事があるんですけど…」
「それはダメだが…事情によっては俺が代わってやるよ、どんな用事だ?」
「吸血鬼を殺そうと思って…」
もう一人の男が口を挟む。
「プッ、武器も持たずにかよ?」
ここに連れて来られた時に、武器になるような物は当然没収されていた。
「そりゃ私達の仕事さ、アンタは余計な事考えなくていいんだよ」
「そうですか…」
僕は弱々しく返事をし、肩を落として振り返り…
「へ?」
更に反転して勢いをつけ、さっきバカにしてくれた男の顔面に拳を叩き込む。
鼻を押さえてよろめく男。
「コイツッ、大人しそうなフリしやがって!」
女が銃を向けるも、僕は素早く右足でその手を蹴り、銃を落とさせる。
そこで後頭部に衝撃…視界がぐらつき、膝をつく…
後ろから腕を捕まれ、頭に冷たく硬い感触が押し付けられる。
町のみんなの悲鳴とざわめきが聞こえる。
「オイ、ふざけた事するなよ…
反抗的なヤツは殺していいってリーダーに言われてるんだぜ?
他のヤツらも静かにしてな!」
「クソッ…そんなヤツさっさと殺しちまいな、妙に力があるみたいだし」
「ほっほまへ、ほのまへにほいつへらへろ!」
「クルド、お前何言ってるのかわからんぞ…」
「ほうふるんらよ!」
さっきの男が僕の顔面を蹴り上げた。それはさらに数回続く。
唇が切れたらしい、それも結構ひどい傷だ。
口の中に鉄の味が広がる。そして血の臭い。
それらと怒りの感情が僕の中の『ヤツ』を目覚めさせる。
「それぐらいにしとけ、クルド」
「ドルチ、その男殺さないつもり?」
「見せしめなら殺さなくてもこれで充分だろ」
「甘いんだよ、なんで私達がここに来れたか、わかってんの?
殺す必要が無いなんて判断をする間抜けな吸血鬼のおかげよ」
「うぎゃああああああ!」
「どうしたクルドッ!?」
「ほひつおへのあひをあああぁぁ!」
僕は口から肉の塊を吐き捨てた。それは人の足の肉だ。
この時既に、『ヤツ』は僕の身体に白い体毛を生やし、筋肉を増大させ、骨格も変え始めていた。
「なんだコイツはッ、獣人かッ!?」
腕の拘束を力づくで解き、背後の男の腹に後ろ蹴りを食らわせる。
「ガハァッ!」
軽装だったから内臓も潰れただろう。
「ドルチッ!だから言ったのに!」
女が剣を抜き、攻撃してきた。左腕を斬りつけられ、僕は飛び退く。
女は銃を拾い、皆に向ける。
「こいつらを撃たれたくなかったら…!?」
僕は既に床で悶え苦しむ男の剣を足で蹴っていた。
「こんなもので…!」
「隙を作るには充分だ」
女に飛び掛かり、口を大きく開けた。
そばに転がる剣の磨き上げられた刀身には、
狼と人間の中間のような白い獣の姿が映っていた…
「ザラン、その腕の怪我は大丈夫か?」
この町のみんなだけだ、僕がこの忌まわしき獣に憑りつかれてなお、
人間の仲間として認めてくれたのは…
だから僕はこの町のために吸血鬼を殺す。
「大丈夫…あいつ等は僕が追い払ってくるよ」
第五話 黒き翼と白き狼 終
次回 凍てつく刃
ブラッドクロス 設定解説
・魔法文字について
本来、魔法陣や魔法刻印は魔法文字で記述しなければならなかった。
しかし現在では特別な魔法文字を用いず、通常の文字で記述する方法が編み出されている。
この場合、文字自体は通常のものだが言語法則は別のもので構成されている。
魔法文字の記述は高度な知識を要求されるため、
専門の魔法使い以外はこの方法を用いるのが主流となっている。
・氷爪の騎士団の武器
刻印武器や重量級の武器を所持し、これらを主力とするが、銃も数丁ある。
今回は吸血鬼討伐のために特注の銀の武器をいくつか用意している。
しかしゼピュロの一般の流通では銀は非常に貴重であり、
消耗品の弾丸を銀製にするのは現実的ではなく、
剣や槍などの近接武器のみ銀製のものとなっている。
このため、吸血鬼討伐メンバーでは接近戦を行い、銃は牽制程度に扱う。
・魔装化(イークイップ)
活性化・形状化した魔力を体表に一体化させる事で身体能力を補ったり、
特殊な能力を身につける魔法系統。
トランスまたは具象化魔法(クリエイト)の技術が必要となる。
レビが使用するイークイップは血液を媒体としたトランスとの複合によるものが多い。
・ヴァンパイアクロウ(イークイップ)
長く鋭い爪の形状を成し、敵を切り裂くと同時に魔力と血液を奪い取る事ができる。
攻撃と回復を同時に行え、長期戦にも向く。
ただし、破壊力に優れた武器を受け止めたりするほどの強度はない。
記念日の初コメは俺じゃあああぁ!
ありがとう!モン雑ファミリー!!ありがとうセイチャット!!!
モン雑ファミリーよ永遠に!!!!!
じゃあ二番目いただこうかな(*´∀`)
その雑からのファミリー、
キャスフィからのファミリー、
セイチャからのファミリー、
これからもよろしく!
そして…モン雑ファミリーよ、永遠に!
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