未来 2012-08-09 23:03:04 |
通報 |
私はもともと病気を持っていた
重い重い病気。
治る確率なんてほぼない。
小さい頃からしょっちゅう入院していた。
でもその時はまだ死がわかっていなかった。
中1の夏。
私はいつものように
学校へ向かっていた。
何も変わらない日常。
いつものように友達に会って
いつものように授業を受けて
いつものように大好きな人と
一緒に居る…。
そんな幸せな毎日。
そんな普通な生活が私は大好きでずっと続いて欲しかった。
だけど、そう簡単には私の願いは叶わなかった。
1時限目。
体育。
私は運動をしてはいけない。
だから、みんなが走ったり
跳んだり、汗をかいているとこを眺めるしかない。
私もみんなみたいに運動をしたかった。
だからね…ちょっとだけなら。
そう思ってね、私は走ったんだ
友達が焦ってた。
「未来!走ったらダメだよ!」
って。
私は笑顔で言ったよ。
「大丈夫!少しぐらいなら!」
って。
本当に少し走っただけだった。
なのにね‥いきなり心臓が締め付けられたような痛みが襲いかかってきた。
立っていられなくなって
私は意識を離した。
今思えばばかだった。
あんな事しなかったら
私はもっと生きてられたかも
しれないのに。
目をさましたら見慣れた風景。
白い白い部屋。
色のない…私の嫌いな場所。
隣には看護士さんがいた。
小さい頃から私の事を診てくれていた人…。
気づけばお父さんもいた。
医者のお父さんが…。
私はお父さんが怖かった。
私を見る目が冷たかったから。
お父さんは言った。
「あんだけ運動は禁止していたのに何故走った?」
感情のない医者の目線で話すお父さん。
「別に…少しぐらい大丈夫だと思ったから。」
私はお父さんの目を見ないで
そう答えた。
しばらく無言。
相変わらずお父さんの冷たい視線は感じる。
お父さんはゆっくり口を開いた
「未来…お前は自分の置かれた現状がわかってないようだな」
置かれた現状…?
意味分かんない。
いや…分かりたくない…
胸騒ぎがする…。
「お前は後
わずかな命なんだぞ」
最悪だね‥。
お父さんは医者という立場で
私に言った。
ためらいなんかなくて感情のないいつもと同じ冷たい目で…
わずかな命?
わかってたよ。
そんなの。
だけど、嘘であって欲しかった
お父さんに言われたくなかった
何で現実を見ろみたいな
言い方するの?
私はただの患者?
家族じゃないの?
私は疑問の渦に飲み込まれ
堕落の底へと落ちた。
トピック検索 |