けーすけ 2012-05-18 20:15:17 |
通報 |
プロローグ
空に灰色の分厚い雲が立ち込めている。春がもうすぐ来るというのに、風がとても冷たい。雪でも降りそうだ。
川口茜は、双子の翼と、被害者の娘、市川さくらの三人で、現場であるさくらの家の前に立っていた。しかし、この家は、火事で原形をとどめていない。
さくらは中学の時の同級生で、三人とも、秘密を教えあったりするような仲ではなかったが、まあまあ仲は良かった。しかし、卒業して以来、会うこともなかったし、連絡も全くとっていなかった。七年たって、こんな形で再会するなんて、思いにもよらなかった。
茜が覚えている限り、さくらはいつも笑っていた。そのうえ、活発で、おしゃべりが大好きで……。でも、この事件があってからは、解決した今でも、さくらは一度も笑顔を見せていない。変わらないのは、色白の肌に整った顔立ち、肩まで伸びたきれいな髪がよく似合う、かわいい姿だけだった。しかし、その姿にさえも、暗い影を漂わせている。
でも、そうなるのは仕方がないことだ。同居していた両親をいっぺんに殺されたら、笑顔だってなくなる。今、こうやって探偵として、明るく過ごしている茜だって、大学三年生の事件でたった一人の親が殺されたあと、一年ほど笑うことはなかった。しかし翼は、事件がきっかけで、もともとの冷めた性格に加え、ひねくれた性格にもなってしまった。
さくらの両親は、強盗犯の男が入ったところに鉢合わせしてしまい、ナイフで刺された後、男が放火して殺されてしまった。男はすぐに逃走。その一カ月後、事件解決によって、男は逮捕された。
しかし、茜たちにとっては、その犯人が問題だった。
その犯人は…。
「ねえ、茜、話したいことって……?」
さくらの一言で、茜の思考は遮られた。
「あ、ゴメン…」
茜はあわてて謝った。
ふと、翼に眼を向けると、翼はジーンズのポケットに手を突っ込んで、家の焼け跡を見つめていた。
翼は、人を殺す人間を絶対に許さない。たとえ、それが自分の親であっても……。
茜は、翼が人を殺されたのを見るたびに、翼の中を、犯人に対するとてつもない怒りが渦巻くのを何度も見てきた。
そんな翼の眼には、あるものが映ってしまう。きっと、焼け跡を見つめるその眼にも、それが映っているのだろう。
茜は、曇った空を見上げた。
「さくらって、これからどうするつもり?」
「どうするって…大学辞めて、住むところと仕事探すけど…」
そう言って、さくらは肩を落とした。
「あのね、それで私、考えがあるの。」
茜は、さくらの眼をみつめる。
「私たちの事務所に来ない?」
「………は?」
数秒の沈黙があった後、さくらが気の抜けた声を出した。
「私たちの家っていうか…まあ事務所だけど、二人で住むには広すぎるの。それに、事務所で探偵やれば、収入にもなるし、生活費とかもだいじょうぶだし……どう?」
さくらは眉間にしわを寄せて考え込んでいる。
少し経ってからさくらが口を開いた。
「私はいいけど、翼はいいの?」
「勝手にしろ。」
翼は興味なさそうに言う。
「で、どうするの?」
茜はもう一度聞く。
さくらが笑顔でうなずく。
久しぶりに見た、さくらの笑顔。
分厚い雲に覆われていた空に、一筋の光が見えた。
これが最初に書こうとしたやつ(笑)ひまだからどんどん載せちゃうけど、ごめんね♪
トピック検索 |