十六夜 2012-05-03 23:04:29 |
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-此処は嫌いだ-
-自分の不甲斐無さと嫌な思い出ばかり残る場所だから-
-何か…変わるのだろうか…。このつまらない世界の中で-
「「はぁ…はぁ…」」
息を荒げる2人の男子が茂みの中で大の字に倒れていた。服はボロボロで顔は傷だらけ。
「はぁ…はぁ…オマエ…何してるわけ…?」
「それ…はぁ…はぁ…僕の方が聞きたいんですけど…?」
痣や口元に血が残る姿で会話を交わす。
暫くして落ち着いた2人はスッと上半身だけ起き上がった。
「ぷっ…。何オマエ、ボロボロじゃん」
と茶金髪の男子が笑い出す。
「ははっ…オマエもだろ」
赤い髪の男子も笑う。
「「あははは!」」
2人そろってお互いを見て笑い合う。
そう…コイツとはいつもこうだ。偶々知り合って偶然的になった親友。
2人で馬鹿やっていつも最後には笑って終わる。
「イテテテ…僕帰るけど…オマエはどうすんの?月崎?」
茶金髪の男子が赤い髪の男子に首を傾げて問いかける。
緋々矢「あぁ…俺は学校行くよ…帰りにオマエんとこ寄るわ…じゃ、後でな織名」
少し笑いながら手を軽く上げそう切り返す。
陽平「馬鹿だねぇ…喧嘩しましたって堂々と宣言してる様なカッコしてさ」
呆れた笑みを浮かべ、肩を竦めやれやれと首を横に振る。
陽平「ま、良いけどね」
そう言い。別々の方向…陽平は坂を下り、緋々矢は坂道を登って上の建物を目指す。
俺達の学校は古い。元は山だった所に態々道を作り、学校を建てたらしい。
道沿いに桜の木が植えられて桜並木になっている。
今も4月で満開に咲き誇る桜、舞い散る花びらの下を俺は歩いている。
緋々矢(全く…こんなとこに作った奴の気がしれねぇよな…)
坂を上がるしか道が無いこの通学路を上り始めて2年目。慣れる慣れない関係なく面倒だと思っている。
ただ…俺はその通学路を好きになる事になる。たった一人との出会いから、沢山の繋がりから。
長い長い人生の内の短い間。そのホンの一瞬の出来事が忘れられない…大切な思い出になる為に…。
それを知らない俺は歩き出す。
この一瞬の物語りに繋がる-長い坂道を-
坂道も中盤に入った頃…俺は目を惹かれた。
それは恐らくほんの一瞬の出来事。
茶髪の少女が桜を眺めていた。
何故目を惹かれたかは自分でもよく分からない。
俺達の学校はネクタイによって学年分けがされている。
正確には青が主体のネクタイにラインが入っている。
1年が緑
2年が水色
3年が白
という具合だ。これがローテーションで繰り返される。
今の3年が白だから卒業したら新しい1年が白になる。
風に舞うネクタイは白、色が示すのは3年だという事。
俺は何事もなかった様に、また坂を上り始めた。
?「待って…」
暫く歩いた所で呼び止められた。
あの少女に…。
緋々矢「俺か…?」
振り向きながら見てみると、やはりさっきの少女だった。
?「そう…。貴方怪我してる…」
見て分かる事を言ってのける少女を、
緋々矢「んなこたぁ、言われなくても知ってるわ!」
と一蹴し行こうとしたが、クイクイと服を引っ張られる。
緋々矢「あのなぁ…今度は…ッぅ!?」
小さく悲鳴を上げた。
考えてみてくれ、さっき怪我したばかりの傷をハンカチで押されてみろ…。
悲鳴も上げる。
緋々矢「なにすんだっ!?」
?「私…2-C…日並凪…」
緋々矢「俺の疑問は全力スルーかよッ!?」
いきなり自己紹介を始める…って
ん…?
緋々矢「ん…アンタ今2-Cって言ったか?」
凪「ん…」
肯定するように頷く。
緋々矢「じゃ…じゃあ何でネクタイが…」
凪「留年…」
俺の言葉と上から被せ、発言した。
何か冷たく、そしてハッキリと放たれた言葉に俺は小さな疑問があった。
緋々矢(留年するよな奴か…?)
そう、見かけからは留年する奴には見えなかった。
恐らく少女にも何かあったのだろう。
どう見ても俺ら側の人間じゃない…。
凪「君は…?」
緋々矢「あ…あぁ、俺は月崎緋々矢…。宜しく」
軽く手を上げ自己紹介を終えた。
凪「早く行かないと…遅刻…」
緋々矢「誰のせいだっ!?」
全力でツッコミを入れてしまった。
さっきから全て俺の会話はスルーされている気がする。
変な奴と思いながらも話しながら坂を上る2人。
我ながら変な奴と会ってしまったものだと…そう思った。
でも…不思議と悪い気はしなかった。
俺はコイツと出会った。
そして歩き出した。この先も上るこの坂道を--
歯車が静かに動き出した-
結局、学校に着いた俺は今やお馴染みの指導室&相談室として使われる教室にゴリラ(ゴリラに酷似した教師の愛称だ)に連行され説教を食らった。
緋々矢「はぁ…ダル…」
説教が終わる頃には元々遅刻だったのも相まって、昼休みだ。
俺は基本学食に行っている。
教室に鞄を置くため(中身は空)自分の教室に向かう。
ドアに手をかけた所で中の声が聞こえる。
生徒「おい、月崎と織名まだ来てねぇぜ?」
生徒「ほっとけよ。俺達に、あんな不良のご心配してやる義理はないだろ」
俺達を嘲笑う言葉。
何度も聞いてきた。周りの人間からも…教師達からも…。
何を言われても気になんてしない。
事実だから?正論を言ってるから?
くだらねぇ…。
緋々矢(感情論じゃ解決しねぇ事もあるんだ…)
心で悪態をついて教室内に入る。
さっきまで俺達を嘲笑っていた奴も、それを気にもしない奴らも視線は取り合えずこちらに注がれる。
嘲笑っていた奴らは入って来たのが俺だと解ると、目を逸らし散らばった。
俺は出来る限り周りには干渉しない。
そうすれば俺に話しかけてくる奴は殆んど居ない。
数人を除いて。
?「ちょっと緋々矢!]
急に名前を呼ばれてこっちに歩いてくる(?)
おぉ…ズンズン足音が聞こえそうなオーラに、よく見れば目が光ってる様にも見える。
禍禍しくもあった。
緋々矢「なんて恐ろしい☆」(MYマイクで語る)
?「はぁ…?何言ってんのよ?ってか禍禍しいって何よ!」
緋々矢「何だよ…せっかく温まって来たんだから邪魔するなよな。綾」
たった今、話しかけてきたコイツは、白木綾。
運動部に入っていないにも関わらず、体力馬鹿&馬鹿力の称号を持っている。
本当に女かたまに疑いたくなる様な奴で、このクラスの委員長。黙っていればクールビューティーの仲間入りしそうな奴だが、俺は無理だと確信を持って言える。(何故かは後々分かると思うぞ)
男子より女子に持てる女子タイプだ。
そして…除く数人のうちの1人でもある。
緋々矢「我ながら恐ろしい奴と知り合った物だぜ…」
とワザとらしく溜息を付く。
綾「どうでも良いけど…アンタそのマイクいつもどこから出してんのよ?」
緋々矢「何言ってんだオマエ?ドラ○もんの便利なポケットがだな…」
綾「あーはいはい…。てかアンタ、私遅刻すんなって言わなかったかしら?」
確かに言われたような言われてないような…
緋々矢「忘れた」
こうゆう時はシラを切るのが一番さ
何て心の中で言ってみる。
綾が初めて俺に話しかけてきた時もこんな流れだった。
不思議な奴だと思った。
色々と…
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綾との出会い…荒々しい様な気がする。
丁度一年前くらい…俺は入学して直ぐに暴行事件まがいの…
簡単に言えば他校の生徒と喧嘩したんだ…。
1対3どちらが負けるかは見て取れる…。
そう…俺は負けた。
次の日、傷だらけの格好で学校に行った俺は慣れつつもあった教師面々からのお説教。
同じ様な言葉の羅列に嫌気が指して俺は指導室から抜け出した。
どこに行くあてもなく、学校の屋上に辿り着いた…。
寝転がっていたら、睡魔がさしたのか、喧嘩の疲れか、屋上で寝てしまった…。
「ちょ…ア…タ…」
何か騒がしい。
だけど寝ぼけて目が開かなかった。
段々聞こえる声がハッキリして、意識がしっかりしてきた。
綾「ねぇ、ちょっとアンタ!起きなさいよ!」
目を開けると見覚えのある様な女子が俺を揺すっていた。
緋々矢(誰だっけ…?どっかで見た気がすっけど…)
眠気の取れない微妙な頭で思考を巡らせるが、一向に出てこない…。
あまりに起きないので女子が…いや、女子の面を付けた鬼が俺の頭にチョップを入れてきた。
緋々矢「グフッ」
俺は変な声を上げてブラックアウト…。
また意識が戻るのは暫く後の事になった…。
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