鐐乱 2012-01-25 23:01:14 |
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僕は一瞬、何だ?と、不愉快な表情で父を見上げたが、父の表情から察するにこの後父が何を言うのか僕は答えが出ていた。
まるで相手の心が分かるように―。
頭の中で父の表情に呆れつつ、僕は父が僕目がけて言葉を発するのを期待もせずに待っていた。
『さぁ、行こうか!』
にこっ!
『母さんもお前に待ちくたびれていたところだ!』
にこにこっ!
『さぁ、行く準備して…ねっ!』
にこにこにこにこにこにこにこにこっ...!
僕はその言葉を軽く聞き流しながら、心の中で父に向かって哀れんだ口調で言い募った。
「嗚呼、またあんたは自分を止められなかったか。」
父は狂っている。
その事実が判明したのはずっとずっと前のこと―。
当時から父には可笑しな可笑しな癖のようなものがあった。
それは一般家庭の父親が取る行動としては余りにも可笑しな―。
いや、その行動を『癖』という単語で一まとめしてもいいものだろうかと躊躇うような―。
狂気すら感じる―。
その頃はまだ良かったんだ。そりゃあ物凄く変わっている趣味だと思ったが、それはまぁ...個人の自由だし...。
僕に止める権利はないと思って見過ごしていた―。
喩えそれが...
裸の人形を小型のナイフで切り刻んでいても―。
止める権利は
なかったんだ。
嗚呼...本当にいつから父の線は切れていたんだろう...。
そう―
音も無くあれは―。
「はぁ...。」
僕は段々腕が痺れる痛みを感じ、怪訝そうな顔で腕を見ようとする。
だが、どう藻掻いても腕を上に縛られて吊された状態では見ることは不可能だ。
それこそ首を180度回さないと
そんな超人がいたらお目に掛かりたいぐらいだ。
僕は一人で冗談混じりにそんなことを思ってみると同時に、腕の痛みで、そんなことを思えるのもあとほんの数分だなと脳の何処かで感じていた。
はぁ...、
怠いけどあと少し、
本当に痛みに気を紛らわせときたいから、
本当は嫌だけど、
本当に嫌だけど、
『さぁ〜て、回想を再開するとしましょうか。』
怠くて、
憎らしいけど、
皮肉だけど、今この状態で遊べるゲームがこれしか思い浮かばない。
思い浮かばなかった。
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