日菜子 2012-01-23 12:38:10 |
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僕らは 乗り換えをどこかで間違って
未来は リセットされて書き換えられてく
手のひら 零れ出す感情をやり過ごし
平気な振り すぐ忘れるさ
吸気口に消えていく
今でも 昨日の事のように思い出す
色褪せ 煤けた箱の中のジオラマ
正解 なんてどうしたって叶わなくて
急ブレーキ 距離は離れて
光が 隔てるんだ
星も海も見えない街で
アスファルトに踊る影が 通り過ぎてく
それは スロウモーションで過ぎて行く
いつか 見た風景が 誰かの色に変わる
掠れた 横断歩道歩いていた
途切れる 前を僕も誰も知らない
ゆっくり 歪に形を変えていて
平気なんだね すぐ忘れるよ
カレンダーに溶けていく
風が無くなって時が止まる
一時停止を解いてまた 動き始める
それは スロウモーションで過ぎて行く
いつか 見た風景が 誰かの色に変わる
声が 騒がしい街に紛れて
今は 透明な色 流されるように染まる
娯楽の音に揺れる二等車を照らす
窓の光は色褪せたフィルムのようで
映り込んだ影は杯を交わし
狂い出した車両の調に体を預ける
「悪い値段じゃあないだろ」と鼻で笑い
手垢まみれの小銭稼ぎに走り回る
それでも愛すべき累犯者共はとうの昔に
擦り切れたレコードを手放しはしないだろう
Бедность не порок. 見知らぬ群衆を掻き分けて
Правда глаза колет. 資本主義の時差を追い越して行け
Бедность не порок. リールを失くした映写機は
Правда глаза колет. お前を捉えて放しはしない
初版のトルストイが空に星屑を吊り下げた
白樺の鼓動は氷雪に血と水脈を張り巡らせて行く
一瞬の奇蹟など信じて落とし子に大枚はたいて
もう行っちまった成金共はあの白夜の向こう側だ
荒れた呼吸で肺に砂を積もらせる前に
「我々は娯楽を賛美する!」と名誉の咆哮よ響け
芸術の音に揺れる一等車に香る
今は遠きリラの花が眼に焼き付く
魚の臭いも繋駕の熱狂も呑んだくれの口喧嘩も
ここまではもう届かないのだろう
Москва слезам не верит. 遠ざかるオーロラも背にしては
Все под богом ходим. 遥かに霞むか水の都よ
Москва слезам не верит. 途切れ途切れの舟歌も
Все под богом ходим. 凍てつくヴォルガは見放しはしない
初犯のスチリャーギが空にその首を吊り下げた
白樺の鼓動はがたつく車輪の喚声で掻き消されたまま
怨念と埃は立ち篭めて生温く頭を掻き乱す
野暮な懐古主義者は幻日に囚われているんだ
荒れた寝床で肺に口付けを飲み込む前に
「我々は芸術を賛美する!」と手向けの咆哮よ響け
車掌さんはこっそり Люли, люли, ライライライ
お部屋にお邪魔して Люли, люли, ライライライ
窓辺に斧が光るよ Люли, люли, ライライライ
車掌さんはお腹いっぱい Люли, люли, ライライライ
無口な音が根を張り蒸気は朝に煙る
「同志、刮目せよ!」と夜を渡る
明日の幸福の成れの果て
白樺の鼓動は氷雪に血と水脈を張り巡らせて行く
深雪の底に春を信じて灯す燐寸が荷を照らしては
喉を焼くウォッカの熱は今 雪解けを挑発する
お伽の終着駅ウラジオストクの海原
「我々の声は届いたか!」と弔いの咆哮よ響け
灯台の光 波打ち際は囲いの庭
特急列車は相も変わらず閑古鳥
星座の光 線路の隙間に茂る雑草
寝台列車も星と日付と共倒れ
通過駅に佇む影法師
座席の向かいは鈍色シート
「お切らせ願います。」
空に水飛沫 いたずら描きの道が交わる
看守が微笑む偶然を寝そべり待ちぼうけ
すす払い 指でなぞる曖昧な時刻表
裂けて 避けた 鈍行列車
点いて 消える きまぐれ信号
直せ 叩け 切り換えスイッチ
歪み 並ぶ 使い捨てのレール
本当は思ってなんかいやしない
その腕で抱き締めてもくれやしない
積もりに積もった 置き去りの祝詞も空へ帰し
がらんどうの客室の窓 紺の空に流れるひつじ雲
どうせすぐに見えなくなる それは誰が望んだ成れの果て
有限の砂浜 近付く満潮 消えた連絡船
深夜二十四時 閉じ込め締め出せ シャッター街
ざわざわ燈る真鍮のランプから
山吹色の雫が影濡らす
「降車終了、車庫に入ります。」
さあ響け汽笛よ 遠く遠く大熊座まで
相席の山高帽 それでも幸せかと問い質せ
うわ言の名簿に竜胆色の星が降る
呑めや 唄え 春の影向
鳴らせ 踊れ 夏の神楽
大判 小判 秋の奉納
拾え 零せ 冬の豊穣
本当は噛み締めてなんかいやしない
明日の日付も今日も飲み込んじまえ
咀嚼の時間も 緊急停車にも気付きはしない
車掌はでたらめの口上 終の駅の足音蹴り飛ばし
車両の床を転がる胡桃 それは誰の望んだ成れの果て
燃ゆる石炭 昇る黒煙
醒めた現世 見えないしなびた林檎
本当は思ってなんかいやしない
その腕で抱き締めてもくれやしない
積もるだけ積もった その願いが背中を押す
がらんどうの客室の窓 紺の空に流れるひつじ雲
どうせすぐに見えなくなる それは誰が望んだ成れの果て
主人のいない吊り革はゆらゆらと
誰がために列車は常世を走る
踏まれて散らばる 切符のお値打ちは行方知れず
紡がれない墨染めホーム 瑠璃の空に消え行くひつじ雲
僅かに照らす灯台の光 それはお前が望んだ成れの果て
くだりの でんしゃ
えきの ホーム
かいさつの すぐひだり
かんコーヒーを
ひとつ かって
せなか まるめ
わはやに かえる
りょうてを さすりながら
ふっと よぞらを みあげてたら
きらきら ころころ わらってて
つられて ぼくも
わらった
ひとつ ひかる
あかりを めじるしに
ながい じゃりみちを のぼってゆく
あしあと てこてこ くっつけて
せなかを まるめ
わがやに かえる
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