青葉 2012-01-06 22:03:27 |
通報 |
優子さんの話をここまで聞いたがまだ三面鏡を嫌う理由は分からなかった。
「なんで三面鏡……嫌いなの?」
少年青葉は訊いた。それについて優子さんは、
「気づいたの。三面鏡を開く時は辛い時ばかりだって。」
と答える。
「ふーん、それで嫌いなんだね。」
少年青葉は直ぐに納得する。しかし優子さんの話はまだあった。
「何ヵ月か前から両親の喧嘩の言い合いの中に離婚という言葉が増えてきたの。
その頃からもうお父さんとお母さんの結婚は終わるんだなって思った。でも、それは本当に嫌なことだった。ただの喧嘩なら終わるのを待つだけなんだけど、なんか耐えられなくなって二人が喧嘩している時に三面鏡を開いていたんだ。久しぶりにね。」
少年青葉は離婚の意味が完全にわかっていなかったが頷く。それを見て優子さんは続けた。
「三面鏡の左右の鏡を動かすと、あたしにはやっぱり二人は仲良く見えるの。で、思ったの。このまま二人が仲良く見える様に巧く鏡を動かせば、お父さんとお母さんは仲良くなるんじゃないかって。思ったと言うより使命感だった。」
おはようございます(^-^)
青葉さんの感性
青葉さんの人格
青葉さんの人生
だぁーれも否定しませんよ!(^_-)
それは青葉さんだけのもの!
匿名は覚えるのが苦手だから、記憶力がいい青葉さんがホントに羨ましい!!
高校時代のことなんて、ホントーーッに!一時期がすっぽり抜けちゃってて、お友達のお母さんを「人間、あそこまで忘れちゃうものかしら?」と言わせたと聞き、その時はさすがにショックでした((T_T))
誰か他の人格がその時期を過ごしたんじゃないのぉ?!って思うくらい!((T_T))
まだウサギさんだけど、ここのトピでこーやって書いてると、少ぉ〜し元気になれる気がします
(*^-^*)
青葉さんが読んでくれてると思うから!(*^-^*)
色んな時がありますよね!
そーいえば小さい頃そろばんを習ってたんだけど、昨日まで出来てたのに、ある日突然全くそろばんのやり方をすっかり忘れてしまった時があって…(--;)
何日経っても戻ることなく、仕方なく覚え直し。そろばんの先生に「そんな全部忘れちゃうことなんてあるのかねぇ」って驚かれたんで、よく覚えてるの。
小学生の時、突然自宅の電話番号が全く思い出せなくなり(毎日かけてたのに!)、何本か間違い電話をかけた後、仕方なく歩いて帰ったことも…(--;)電話番号が思い出せなかったとは誰にも言えなくて…(-o-;)
こーして書いてると、すごく危ない人みたい…(-o-;)
そーゆー経験て皆あるの?全て忘れちゃうことって。
おはよう(ρ_‐)ノ
よく聞く話ではないし。よくある話でもあるよね。
ならば経験者の多くが言いたがらないだけかもね。
青葉が知り合いから聞いた話で、中学生の時自分が何組か分からなくなり、どの教室に入るか迷い、何とか教室に入っても自分の席が分からない。といったのあったよ。優子さんの話が終わったら短く書こうかな。
あぁっ!
それそれ!そんな感じです!
でもその人のケースは、匿名とは比較にならないくらい大変そう(^^;)
うん!
ぜひ書いて下さい♪(^-^)
…して、優子さんと三面鏡のお話の続きは??
優子さんにとって三面鏡は、その場をうつすだけのものじゃなかったんだね。優子さんの希望や願いまでもうつし出すものだったんだね。
大変だったみたいだね。その人は日記をつけていたので、後で日記を読んで自分の行動に驚いた、なんて話だったよ。よく憶えてないから今度会ったら詳しく聞いてみよう。
優子さんの話は進まないね~( ̄~ ̄)
「使命感?違うか。願いをかけたのかな。とにかく喧嘩が始まると三面鏡を開いて二人を操ったの。仲良くなるようにね。でもね、いくら鏡の中で二人が楽しそうでも耳に入ってくるのは、離婚のことから離婚後のことに変わってきたの。良くならず悪くなっちゃったんだね。もうダメなんだと思うけど、喧嘩が始まるとやっぱり三面鏡を開いてしまう。どうしようもないのに……どうせ離婚するのは解っているけど、止められない。何でだったろう?願いをかけてしまったからかな。
結局お母さんが引っ越して三面鏡がなくなるまでつづけたの。
三面鏡の前に座るのは辛かった。でもお父さんとお母さんに仲良くなって欲しくて、二人がいない時でも三面鏡を開いて練習みたいなこともしていたの。意味ないの解ってたのに。おかしいでしょう。」
少年青葉は首を左右に振る。優子さんの話を全て理解できなかっただうろうが、鋭い鈍さをもつ少年青葉もここにきてやっと、優子さんの家族が何で離ればなれになったか理解した。
「あたしは三面鏡が嫌いなの。二度も弟達のことで助けてもらったけど、あたしはもう一生、三面鏡を使わないと思う。辛いことを思い出すだけだから。」
優子さんの話に少年青葉は何と言えば良いのか分からなかった。深刻な話には慣れていなかった。
「青ちゃんには嘘をついちゃったね。ゴメンね。」
「ウソ?」
少年青葉には嘘が思い当たらない。
「あの三面鏡は、ただの三面鏡で何の力もないの。本当の姿を映しているって言ったけど、鏡は鏡。そこにあるものをそのまま映しているだけ。」
三面鏡はただの鏡だったということについての謝罪のようだ。
「だから青ちゃんが興味を持つような物ではなかったんだよ。あたしの空想に付き合わせちゃったね。本当にゴメンね。」
優子さんは再度謝った。そして、壁にかかっている時計をみる。
「青ちゃん、5時をすぎたよ。そろそろ帰らないといけないんじゃない?」
少年青葉も時計を見て時刻を確認して慌てた。5時には帰るよう母にいつも言われていたからだ。氷水のお礼も言わずに慌ただしく優子さんの家を後にした。
それから暫く優子さんの姿を見ることがなかった。昼間に家の前を通っても優子さんが縁側に座っていることはなく、中にも人の気配はなかった。
数日はどうしたのだろうと思ったが、そのうち特に気にすることなく少年青葉は毎日遊んで夏休みを堪能した。
8月も下旬に差し掛かった頃、優子さんの家の前を通ると、縁側に優子さんは座っていた。優子さんがこちらに手を振る。少年青葉は、家の敷地に入り優子さんに声を掛ける。
「何処か夏休みの旅行に行ってたの?」
「違うよ、あたしはね、おばさんの家に行っていたの。」
「ふーん、何処の?」
「都内だよ。青ちゃんヒマならあがって。」
「うん。」
中に入ると、様子はまたも変わっていた。前にお邪魔したよりさらに家具はなくなり、寂しさを増していた。
「青ちゃん、あたしもお父さんと引っ越すの。最初からお父さんはそのつもりだったんだって。」
部屋の隅にはには段ボールがいつくか積まれている。
「お父さんが引っ越しの準備をするのにね、あたしがいると邪魔で捗らないらしくて、あたしはおばさんの家に行ってたの。」
優子さんは少年青葉に缶ジュースとスナック菓子を渡すと、空の段ボールの前に座って、荷物を入れ始めた。
「おばさんの家から戻る時、おばさんから貰ったの。青ちゃん食べててね。あたしは自分の荷物を片付けちゃうから。直ぐに済むからね。」
少年青葉はお菓子が嬉しくて喜んで食べた。
いま思うと、優子さんは既にこの時おもてなしを知っていた。さらに小学生にとってお菓子は大事な物だったはず。それを意図も簡単にあげてしまうのは凄いことだと思う。
優子さんは幾つかの段ボールを満杯にすると、それらを閉じてテープでとめた。
「お父さん言う通りだったね。優子の荷物は直ぐにまとまると言ったけど、本当にそう。」
優子さんは自分の荷物をまとめ終えたようだ。
「いつ引っ越しするの?」
少年青葉が訊くと、
「明日。」
と短く返事が返ってきた。
少年青葉は驚いた。
「明日?」
優子さんは頷き、
「そう、明日なの。もう、この家ともサヨナラなんだ。」
と言い、話を続けた。
「青ちゃん、本当はね、あたしはお母さんに着いていきたかったの。でもお母さんは子供3人は無理だって……。お母さんがね、泣きながらね、いつか迎えに行くから少し我慢してってあたしに言ったの。だから待つことにしたの。」
少年青葉は頷くことしかできない。
「でもね、きっとお母さんは、あたしが引っ越すことを知らない。迎えにきてもらっても、あたしはここにいない。もう、お母さんには会えないのかも。どうしよう……」
優子さんは簡単に感情を出さない人だったが、この時は少年青葉に顔を見せないように背をむけた。
トピック検索 |