青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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少年青葉は、そんな鏡をまだ見たことがなかったので是非とも見たかった。
しかし、
「今は無理。お父さんとお母さんが鏡に映らないと見えないよ。それに、あたしだけにしか見えないの。前は弟にも見えたんだけどね。青ちゃんには見ることはできないの。見る必要がないからね。」
と言われてしまう。残念に思いながらも何か面白いものが映っていないか、いちるの望みを持って、立ち上がり鏡を覗く。だが鏡は何の珍しさもない。普通に部屋の中と優子さんを映しているだけだった。
「ね、青ちゃん。何もないでしょう。」
少年青葉が鏡を覗いたのに気づいた優子さんは、初めて振り向き少年青葉の方を向きながら今度は少し可笑しそうに微笑んで言った。そして、
「青ちゃんにはただの鏡だよ。でもね、あたしには絶対必要な大事な鏡なの。」
と続けた。
「ふーん。」
残念な気持ちで、肩を落としながら畳に再び座る少年青葉。
「ガッカリすることないよ青ちゃん。見えない方がいいんだから。見えない方がいいんだよ。」
優子さんは鏡の方に向き直り、そう言った。
この時、二人の年の差は二つだった。
しかし、少年青葉は親や先生が心配する頭。一方優子さんは、小学5年生とは思えない程に大人だったように思う。この年代の二つの年の差は普通でも大きいが、この二人の場合どれほど大きな開きがあっただろうか。末っ子の少年青葉と弟二人がいる優子さん。この辺も二人の差を大きくしたかもしれない。
玄関のドアが開く音の後に声が響く。
「ただいまー!」
友達の声ではない。友達の弟だ。
この弟が帰ったのを機に少年青葉は家に帰ることになった。
友達は後で聞いた話によると、程なく家に戻ってきたとのことだった。
帰り道、少年青葉は自宅に三面鏡がないことを残念に思いながら家に向かって歩いた。自分の家の三面鏡ならば何か面白いものが見えるんじゃないかと考えたからだ。また、優子さんが三面鏡を大事にしているのを見て、三面鏡がとても魅力的な物に思えるようになった。
夏休みに入った翌日、友達は母や弟と引っ越していった。
少年青葉は仲の良い友達を一人失った。寂しさを夏休みになった喜びで吹っ切った。
毎日遊びに出かけた。クラスの友達と遊び、約束がない日は自転車をかっ飛ばし遠くまでいってみた。
近所だった為、引っ越した友達の家の前を徒歩や自転車で通るとが何回もあり、小さな縁側に座っている優子さんの姿をよく見かけた。
優子さんは少年青葉に気づくと、いつも手を振っていた。
おはようございます♪
(^O^)
青葉さん、お疲れ様です!
今のお話、どっちに転ぶのかわかんないので目が離せないです(^o^ゞ
でも「希望」なんですね!「希望」!(^_-)
楽しみにしてます♪(*^O^*)
雨月さん久し振りだね。
雨月さんは終幕に美学を感じる人なんだろうな、と思うよ。実際に感じることを書いたのなら、とても面白い感覚だね。
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