青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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小桃に、何か特別なことを感じてしまうのも仕方ないと自分で思う。
しかし、小桃は必要以上に存在を主張してくることはない。
本当に自然に、夢の中にいるだけだ。
僕とヤス君が庭でキャチボールをしていると、その横を円と走り抜けて行ったのをチラリと見ただけで、その日の夢にはそれ以上は出てこない様なことも珍しくなかった。
川に着くと、小桃のことは頭の中から何処かへ行ってしまい、僕達ははしゃぎながら川で水遊びをした。そして夢と同じ様に、何度もボートで川下りをした。
十二時近くになるとユズちゃんが、
「そろそろ帰ろう。お母さん達がお昼ご飯作って待ってるから。」
と言った。
だが、僕達はまだ遊び足りない。
「ユズちゃん、もう一回だけ川下りをしよう。」
僕がそう言うと、円とヤス君かうなずく。
「また、午後に来ればいいんだよ。早く食べて、戻ってこよう。」
ユズちゃんは、僕達を説き伏せた。
戻ると、既に昼ご飯はできていて、僕達は大人達を待たせていた。
出掛ける前、12時には戻ってくるように、きつく言われていたので、僕達は叱られることになってしまった。
それぞれの母親が中心になってガミガミと説教をする。僕達は大人達の怒りがおさまるまで待つことにした。
程なくすると、
「皆そろそろ反省したでしょう。ご飯も冷めてしまいますし、これくらいで勘弁してあげて下さい。」
と、温厚なヤス君のお父さんが説教を止めに入ってくれた。
三名の母親達はそれで矛を収めるが、僕のお母さんは怒り足りないようで、
「今日はもう外に出ないで、家にいて反省していなさい。」
と鼻息を荒くしながら、とんでもないことを言った。こんなに楽しみにしているのに大人は横暴だ。
「お母さん、ボートを置いて来ちゃったんだ。取りに行かないと無くなっちゃうよ。」
僕は、何とか午後も川に行けるよう、突破口を開こうとするが、壁は厚かった。
「一晩くらい置いておいても誰も盗ったりしないわ。だいたい、あの山には誰も来ないわよ。どうせ明日も行くんでしょう。」
僕達は失意の中で昼食を摂ることになった。
食後、外を見ると太陽が燦々と照りつけ、川で泳ぐには最良の午後だった。
しかし、外には出られず暇をもて余した。
ユズちゃんは、夕方からやるつもりだった夏休みの宿題をもう初めていた。
円とヤス君は、陽当たりのない部屋で扇風機をかけながら昼寝をしていた。午前中に川で泳いだ疲れが出たのだろうと最初は思ったが、ふて寝だということに直ぐに気づいた。僕も二人に倣い、ふて寝をすることにした。タオルケットを持ってきて、二人に並んで横になった。
暑い日だったが、風通しの良い部屋で不快感はあまり感じなかった。
眠れそうだ。そう思った。
考えてみると、現実で嫌なことがあったら、ここでの僕は寝てしまえばいいのだ。寝てしまえば、非常に現実味のある夢が待っている。きっと、現状より夢の中の方がマシだろう。いや、マシどころか川に行って遊べるかもしれない。
少しの間、横になっていると眠気がやって来た。
眠れば、小桃がいるだろうな。
そんなことを考えた。
小桃は、いたい何者なのだろう。
僕の夢の中に出てくるだけの、僕の無意識が作り出した人物、というのが正解だとは思う。だけど、それだけてはない様な気もするし、それだけではないことを期待する気持ちもあった。
最初に小桃の夢を見たのはいつだろうか。ちゃんとは覚えていない。きっと、物心がつく前、この家に僕が初めて来た時から、僕は小桃に夢の中で会っているのだろう。そう思う。
僕にとって小桃は、ある意味、とても当たり前の存在だ。物心がついた時からの同じ年の従兄弟。
僕は幼いころ、小桃が現実にいるのか夢の中だけにいるのか区別をつけていなかった。いや、区別出来ていなかった。
僕は覚えていない事だったが、お父さんが、こんな話を何度かしてくれたことがある。
それは、円がまだ小さく手が掛り、祖父の家に来ても、お母さんは常に円の世話をしていて、僕とお母さんとの距離が開き、逆にお父さんとの距離が近くなった頃のこと。
祖父の家に来ると、僕はお父さんにこう訊く、
「モモちゃんと遊びたい。どこにいるの?」
と。
お父さんは当然、小桃のことを知らない。だから逆に質問する。
「モモちゃん?誰のこと?」
「イトコのモモちゃんだよ。いないの?」
「塁の従兄弟は、柚希ちゃんと泰直君だけだろう?」
「あと、モモちゃんがいるよ。どこにいるの、モモちゃん。」
そう言って僕は祖父の家の中を歩き回り小桃を探す。
そんなことが何度かあったらしい。
お父さんは、まだ幼い僕が、円にお母さんを取られてしまい、寂しさからそんな言動が出たのだろうと分析した様だった。お父さんがこの話をする時は、僕への、からかいが少なからず感じられた。お父さんの分析が当たっていたとしても、子供を冷やかすのが父親のすることだろうか。それはいいとしても、お父さんの考えは間違っていると思う。お父さんの考えた通りの感情が僕にあったとしても、それと小桃とは関係ない。親の気を引こうとして小桃という存在を産み出したとしたら、もう小桃は役割を終えて、とっくに消えているはずだ。それに、小桃が祖父の家のだけ現れるのはおかしなことだ。
新作♪
懲りるも何も..ww
自分もまた、
追わせて下さいね♪
目的ない~の方は
最後迄、拝読できて
大変に嬉しかったですw
支援も兼ねてあげ(^o^)
全国二名の「目的ない潜考」の読者から感想を貰えて良かった。
やしろさん、
ありがとう。
そして、こっちも追ってくれてありがとー
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