青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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木山:ナイトメアが意識してそうしたんじゃないんだ。それもナイトメアの能力だよ。
青葉:どんな能力?
木山:狩りを確実にするための能力さ。
ナイトメアは、人の夢の中に入り込み、夢の主に命を渡すよう説得する。ほとんどの人は直ぐに諦めてしまい、ナイトメアに自らの命を差し出す約束をしてしまう。が、たまに精神力が強く諦めの悪い者もいるんだ。夢の主は眠っているから、食べることも飲むこともできない。だから、諦めの悪い者はそのうち衰弱して眠りながらあの世へ逝ってしまう。そうなるとナイトメアは、エネルギーを自身に吸収できず無駄骨を折るだけになってしまうだろう。そんなことを防ぐ為に、ナイトメアには入り込んだ人間に自分のエネルギーを与え続ける。そんな能力があるんだ。
青葉:うーん。
木山:ナイトメアは人間を狩ると、その人間のエネルギーを吸収する。だから狩りをしていれば永遠に生きられるんだ。老いはなく、エネルギーが切れるまで生きられる。俺たち人間とは栄養の取り方も体の造りも根本的に違うんだよな。
それで、ナイトメアは自分が前に狩りで得たエネルギーをおばあさんに与え続けていた訳だ。でも、人間が必要なビタミンとかカルシウムといった栄養素を与えることはできない。ナイトメアには不必要なものだから持ってないし、与えることは出来ないんだ。でも、ナイトメアが持っているエネルギーは人間が必要な栄養素なんかより効果覿面。ナイトメアの送るエネルギーは人間には不老という形で現れるんだ。だから、おばあさんは年を取らなかった。とにかく、それは貘との戦いにおいてナイトメアを苦しめた。エネルギー補給ができない状態で、自分の生命維持だけでなく、おばあさんの不老の為にもエネルギーも消費しなければならなかったからな。戦いに入る前に蓄えていたエネルギーを自分の為だけには使えなかった。エネルギーをおばあさんに送らなければいいと思うだろうけど、それは狩りを確実にするために勝手に発動してしまう能力で、ナイトメアの意思ではどうしようもないんだ。
青葉:それが、おばあさんがナイトメアの足手まといになった、ということの理由なんだね。そして、差しの勝負ではなかったという理由だね。ナイトメアはおばあさんにエネルギーを費やし疲弊が早かったわけか。
しかし、エネルギーを奪おうとする相手にエネルギーを与える能力なんてね。
木山:普通なら、いくら精神力が強い相手でも二週間もすれば諦めて狩られてくれる。その間、エネルギーを分け与えたところで微々たるもの。狩ってしまえば何年分ものエネルギーを吸収できるわけだからな。本来なら有効な能力だよ。ただ、このケースは特別で、ナイトメアにとって能力が足枷になってしまった稀有な例になったんだ。
青葉:まあ、稀なケースだろうね。貘との戦いなんて想定外だろうから。しかし、ナイトメアにとって、この戦いは自らの能力が裏目に出ることばかりだ。
木山:伯母と母は、貘からそんな内容の説明を受けたんだ。そして、母親を救ってくれた恩人の言葉なので安心して信じた。いや。人ではないけど……。それまでも、母親が地下の部屋で何十年も眠りに就いていたり、その地下室に結界が張られて近付けなかったりと、不思議なことには慣れていたから、納得も早くできたようだな。
青葉:ああ、なるほどね。
木山:おばあさんへの挨拶を終えた後のことだけど、伯母は貘を含めてその場にいた全員を家の中に招き入れたんだ。貘は去ろうとしていたが、伯母は強く引き留めた。
青葉:貘は、おばあさんだけでなく家族の恩人だもんね。簡単に帰すわけにはいかないと考えたのかな。
木山:当然その気持ちはあっただろうな。だけど伯母は貘に訊きたいこともあったんだ。
青葉:それは?
木山:ナイトメアのことだよ。
青葉:どんなこと?
木山:ナイトメアはどこに行ったのか、もう戻ってくることはないか、そんなことだよ。
つまり、家族がまたナイトメアの脅威に晒されることはないか心配で、貘に確認したかったということだな。
青葉:当たり前の思考だとは思うけど。それで、貘は?
木山:安心していい、と答えた。
が、伯母も母も不安があったようで、ほとぼりが冷めたらまた戻ってくるかもしれない、なんて言って貘に訴えるように心配事を繰り返した。おばあさんは黙っていたが、やはり不安はあったと思う。そこで、貘はこう言った。
心配しなくても、二度とこの国には戻ってきやせん。あのナイトメア、今後は長く存在しないでやしょう。近いうちに消されやす。きっとまだ産まれて百年くらいしか経ってない若い悪魔でやしょうが、調子に乗って少し暴れすぎでやす。故国では悪魔祓いと対立して鈴をつけられ、この国ではあたしら貘と対立的しやした。あまり利口とは言えやせん。他の土地に行くらしいですが、またそこでも、人間か、あたしらのような者と悶着を起こしすでやしょう。運が尽きるのも遠くはないと思いやす。本来、あたしらみたいな者は目立たずにいるべきなのでやす。目立つ者は破滅が早いのが常でやすから。 それに、ほとぼりは簡単には冷めやせんよ。いや、貘は寛大でやすから、あのナイトメアが消滅しなければ近い将来に赦しはしやすが、近い将来とはいえ、それは人間が赤ん坊から棺桶に入る時間を軽く超える期間はありやす。あたしらの寿命は人間のそれとは比べものになりやせん。時間の感覚は全く違いやす。でやすから、あのナイトメアを恐れる必要はありやせんよ。それから、お礼をあたしにいう必要は、もうありやせん。 あたしらにとっては、20年や30年は大した年月ではありゃしやせんから。まあ、長かったと言えば長かったでやすが、皆さんに比べれば、もうあたしは長いこと生き抜いてきやした。ナイトメアと何十年と戦ったとはいえ、あたしにとっては微々たる時間でやす。そして、あたしは創造主である人間と対立することはありやせんから、悪魔祓いに消される心配もありやせん。これからも長く生き抜いていくことでやしょう。だから気にすることはありやせんよ。
と。
青葉:寛大だね。
木山:本心でのセリフだろうから、その通りだな。
青葉:しかし、ナイトメアが人間の負の感情から産まれたというこので説明がつくとして、貘は何で生まれたの?
木山:人間は負の思考ばかりじゃない ということさ。悪魔を利用しようとする思考とはかけ離れた考えもできる者がいる。誰かが想像した悪夢を食べてくれる貘という霊獣に魅力を感じた人間が、きっと多くいたんだと思う。
青葉:そうかもね。
木山:貘は、伯母と母を安心させると、おばあさんに引き留められるのを振り切って去っていった。長い期間を戦いで拘束されていたから、早く自由になりたかったんだろうな。何処に行ったのかは判らないけど、自分の居心地の良い所に帰ったんだと思う。
貘がいなくなった後は、おばあさんが戻ってきたことを祝ったが、それは内輪のこと。割愛するよ。
青葉:わかった。
木山:おばあさんは地下の部屋からやっと出たものの、20年以上もかかり本人として世間に出ることはできず、伯母と母の従姉として、山村で伯母と一緒に二人で住むことにした。山村の人達はおばあさんを見て伯母に、
行方不明になったお母さんに良く似ている。生き写しだ。
と皆、口々に言った。
青葉:本人だからね。
木山:伯母は、
母方の従姉だから、母に似てるところがあって当然。
という返答をその都度したらしい。山村の人達も、それ以上は何も言わなかった。年齢が合わないから、まさか本人が戻ってきたとは思わなかっただろうしな。
青葉:だろうね。
木山:その後も、俺は夏休みになると毎年おばあさんと伯母が住む山村を、母と訪れた。 それは今も続いていて、今年の夏にも行ってきた。同じ年くらいになった、おばあさんと伯母がいつも迎えてくれる。もちろん、来年も行くつもりだ……。
これで俺の話は終わりだよ。
青葉:ありがとう。話してくれて。
木山:この話、青葉は信じるか?
青葉:昔のことになるほど、記憶は不確かなもの。現実とは違うところが何処かにあるとしても、君が言ってることは、君にとって嘘はないと思うよ。
木山:遠回しな言い方だな。どっちだよ?
青葉:君は嘘をついていない、そう思っている。
木山:じゃあ、信じるんだな。
青葉:そうだよ。
木山:実は俺はな、本当にあったことか確信が持てないでいるんだ。青葉のことを疑っておきながら、こんなこと言うのは自分のことを棚に上げていると自覚している。いや、体験したことだし現実だとか非現実だとか考えることもなく、現実だと思ってたんだ。でも、それは中学生くらいまでだった。そのうち自信は揺らぎ、今は自信は何処にもない。それどころか、現実にはなかったことだと思う気持ちの方が強くなってるんだ。
青葉:何故?
木山:うん……。
おばあさんは、地下の部屋を出られたが、20年間以上のギャップがあり、本人にとって未来の世界に来たみたいだったらしい。慣れるまでには時間が必要だった。それに山村の人達も20年経つと世代が交代しているところもある。馴染みの人達が鬼籍に入ってしまていたり色々と戸惑ったと本人がいっていたよ。でも、あの件から翌年の夏に、母と俺が山村に行った時は、少しずつ慣れてきたようで明るくなり、俺のことも凄く可愛がってくれた。そして、よく話をしてくれたんだ。話とは、ナイトメアや貘のことだ。
青葉:ナイトメアの話をしてくれたんだ。嫌な記憶だと思うけど。
木山:俺も小学生だったから配慮ができなかったんだな。だから、伯母や母にはよくたしなめられた。ナイトメアと貘の話をおばあさんに訊くと、伯母と母に止めるよう注意されたな。でも、おばあさんはそこまで嫌がってはいなかった。伯母や母が気を回しすぎていたと俺は思っている。だって、おばあさんは俺の訊くことを嫌がらずに答えてくれたんだ。それどころか、おばあさんの方からナイトメアのことを俺に話してくれることも多々あった。だから、俺はナイトメアや貘のことを、自分で体験してないこともたくさん知っているんだ。
青葉:おばあさんは気持ちの整理ができていたのかな。達観というか。
木山:どうだろう。おばあさんも誰かに話したい気持ちがあったのかもしれないな。
青葉:おばあさんと、ナイトメアや貘の話をしていたのならば、現実にあったことか違うのかを何で疑うの?むしろ現実にあったんだと確信するのでは?
木山:それが、段々と状況が変わった。
俺が中学に上がった頃から、おばあさんはナイトメアや貘のことを話さなくなったんだ。それまで毎年ナイトメアや貘の話をおばあさんは話していたし、同じことを話すことも多くなっていたから、俺の方も訊かなくなってきてはいたんだけど、おばあさんからは本当にパッタリと話さなくなった。
青葉:へえ、それで。
木山:それで、中学も最上年になると、もう全く変わってしまった。
青葉:何が?
木山:俺がナイトメアと貘のことを訊くと、おばあさんは俺の顔を不思議そうに見つめて、
ナイトメアとか貘とか、何のこと?若い人の流行の話はよく分からないのよ。
と言った。それは、とぼけている感じではなかった。とはいえ、記憶してないのは有り得ないことだろう。自分の人生を変えてしまった一大事を忘れるはずがない。
俺は暫く食い下がったけど、その結果おばあさんに、
ごめんね、その、ナイトメアとかいう悪魔の話はついていけないわ。
と謝られてしまった。
ナイトメアや貘の話をしたくないというわけではなく、本当に記憶がないんだと俺は直感した。これはおばあさんの体に異変が起きたのだと思った。ハッキリいえば、当時の浅はかだった俺は認知症だと思った。
俺は伯母に直ぐに報告した。おばあさんがおかしいことを。
すると、伯母は、どうおかしいのか訊いてきたので、おばあさんにはナイトメアや貘の記憶がないことを伝えた。
だが、なんと伯母にもナイトメアや貘の記憶がなかった。俺が何の話をしているのか分からず、おばあさんと同じように不思議そうな顔をして俺を見つめていた。俺は必死にナイトメアと貘のことを伯母に思い出させようとしたが無駄だった。まあ、忘れるはずないことを忘れている時点で、思い出させようとすることが無理なことにも気づいていたけどな。俺は最後の砦である母をの所に行って、二人の異変を告げたが、母にもナイトメアと貘のことの記憶は抜け落ちていた。
もう来年には高校生になるんだから、夢みたいなことを言ってないで、しっかりしなさい。
なんてことを言われてしまった。
青葉:どうしてそんなことに?
木山:解らない。全く解らない。
そして、異変はそれだけで終わらなかった。
青葉:他に何があったの?
木山:おばあさんは、外では伯母や母の従姉ということにしていたから、家では普通に「お母さん」と伯母や母から呼ばれていたけれど、山村の人達の前では、伯母も母も、「姉さん」と呼んでいた。俺も、家の中では「おばあさん」だったけど、外では「おばさん」と呼んでいたんだ。だけど、おばあさん達の記憶がおかしくなった翌日、家の中でおばあさんに、「おばあさん」といつも通り呼び掛けると、
あら、やめてよ、まだおばあさんなんて呼ばれたくないわ。
と、不快そうに言われてしまった。
それ迄は何年も何も言われなかったのにだ。確かに外見はおばあさんではなかったけど、立場としては俺のおばあさんであることに変わりはないだろう。だから不満に思って俺はその後直ぐ、母にその事を話した。すると、
それは失礼なこと言っちゃったわね。姉さんに謝っておきなさいよ。
と怒られた。怒られたのは兎も角、母は家の中なのに、自然におばあさんのことを「姉さん」と呼んだんだ。そして、伯母もおばあさんのことを「姉さん」と呼び始めていることにその後すぐに気付くことになった。
どうなっているんだろう?何だか変なことになっている。そう思ったよ。
そして、おばあさんは伯母や母を娘だと思っているのだろうか。逆に、伯母や母は、おばあさんを自分たちの母親だと思っているのか?そんな疑問が一番に浮かんだ。俺はそれを確かめることにした。
母と二人になった時に、
おばあさんは、今は何処にいるの?
と訊いてみた。
母は、
何度も話したじゃない。行方不明になって分からないのよ。
と答えた。俺は目を瞑る。思った通りの答えだが、期待した通りではない。
俺は、
おばあさんに会ってみたい。
と、希望を込めて言った。
希望とは、母の「いつも会ってるじゃない。ふざけてるの?」という言葉だったが、
「お母さんも、あなたに会わせたいと思っているの。いつか会えるわ。きっと帰って来てくれるわよ。」
と、少し悲しそうな顔をして言った。希望は砕かれたんだ。
その事に、伯母にも似たようなことを言ってみたが、やはり同じようなやり取りになってしまった。
俺は、とても怖くなった。おばあさん、伯母、母、三人ともおかしくなっていると思った。ナイトメアと貘に関しての記憶が丸でない。それどころか、三人は親子関係だったはずが、従姉妹関係になってしまっている。恐ろしいことが起きていると思ったよ。
でも、よく状況をみてみると、逆に三人は俺のことをおかしいと感じているようで、俺の言動が普通ではないと心配していた。
俺はそこに気づき、思ったんだ。
三人同時におかしくなるより、俺が一人おかしくなっている方が現実的だと。
おかしいのは俺だけだと。
そう考え、今度は自分がどうかしてしまったことに言い様のない恐怖を覚えた。
青葉:おかしくなってる人が、自分がおかしくなっていると気づくものなのかな?
木山:さあ、どうだろう。
兎に角、俺は自分の考えを捨てて、三人が感じている現実を受け入れることにした。受け入れれば、俺も普通に戻れるとその時は考えたんだ。受け入れられなくても納得できなくても、三人に合わせることにした。合わせると、三人は俺を心配しなくなった。
青葉:簡単には納得できないよね。おばあさんの写真と、おばさんを見比べてみるとかしたの?
木山:それは、見比べてみたさ。おばあさんとおばさんは、とても似ていたよ。でもな、おばあさんとおばさんは、生き写しと山村で評判になるほど似ていることに最初からなっていただろう。あまりにも似ているとは思ったけど、血の繋がりは有るわけだから、あり得ることなんだよな。
青葉:おばあさんが、おばさんだという証拠にはならない訳か。
木山:俺は今でもおばさんを、伯母や母の従姉妹ではなく、俺のおばあさんをだと思っているけど、三人の前ではその気持ちを隠しているんだ。それは釈然としないことだけど、日常生活に特に支障がないことでもあるんだ。俺は自分がおかしくなっていると心配もしたけど、自分の家に帰り、学校に行っても誰も俺をおかしいとは思わず、いつも通りに接してくれるしな。俺はおかしくなっている訳ではなかったんだ。だから迷う。俺は本当にナイトメアや貘と遭遇したのだろうか、とな。
青葉:何でそんなことになっているんだろう。
木山:さあ。俺にも解らない。ただ、こう貘は言っていたんだ。
青葉:何?
木山:ナイトメアと別れ、貘に手を引かれて歩き出したあと、俺は直ぐに振り向いたけど、ナイトメアはいなかったと言っただろう。そして、そんな俺に貘が振り向いても無駄だと言った。
青葉:うん。
木山:その後に貘は言ったんだ。
ナイトメアは何処かに旅立ちやした。ですが、それもどうでやしょうかね。本当にナイトメアはいたんでやしょうか。
あたしらは不確かな存在なんでやす。塵あくたの方が存在は確実なほどでやす。あたしらは霞みみたいなもんでやすから。本当にあたしは存在しているのか?あたし自身がそう思っているのでやす。
人間には、想像を創造する能力がある。それは本当でやしょうか?もしかしたら、人間には、想像をどうしようもない程に実際にあると思い込む能力がある、というだけなのでは?あたしらは人間の思い込みの産物ではないでやしょうか?坊っちゃんは、今あたしと一緒に歩いていると思っているでしょうが、本当は、あたしはいなくて、後ろを着いてきている犬だけが坊っちゃんの傍らにいるだけなのかもしれやせんよ。
と。
青葉:ナイトメアと貘は本当は存在しない、ということだね。でも、だからと言って、三人の記憶が変化する理由になるの?
木山:貘の話は続くんだよ。
あたしらは、人間にとって願望を叶える理由になるだけの存在なのかもしれやせん。
とな。
青葉:?
木山:これは俺の解釈だけど、
山村で突然に五人もの死者が出た。伯母と母は、その犠牲者の中に父親がいた。そして、直ぐに母親が失踪した。幼い二人には耐え難い衝撃的なことだよな。両親が突然いなくなってしまうんだから。だから、受け入れられない現実を変更するために、自分の都合のいい現実を作る為に、ナイトメアと貘を産み出した。
父親は遺体を見ているから自分達を騙せなかったけど、母親はどこかで生きている可能性がある。そして母親が自分達を見捨てる筈がないと思う。
父親が亡くなったのはナイトメアのせい。母の失踪は、ナイトメアと貘の戦いで地下の部屋に閉じ込められたせい。そんなことにしたんじゃないかな。きっと考えたのは伯母だと思う。考えて、そして自分で信じ込み、さらに母にも信じさせたんだ。母も幼かったから姉の言葉を抵抗なく信じた。いや、信じたかった。そして時が経ち、幼い俺も素直に大人の二人の話を信じた。
ナイトメアと貘は伯母の、母親に捨てらてはいないという哀しい思い込みの産物なのかもしれない。
青葉:でも、山村で突然五人亡くなったのは本当でしょう?
木山:ああ。でもな、当時のことを調べてみたら、確実ではないとしながらも山中で人体に有害なガスが発生し、五人はその犠牲になったのだろう、と警察の発表が出ていたんだ。それから鐘の音のことだけど、山村の人が皆聞いたという話は、俺は伯母と母からしか聞いたことがないんだよな。鐘の音が本当にあったのかどうか。
青葉:でもでも、おばあさんは地下の部屋から出てきたわけだし……。と言うか、君のおばあさんだか、君の伯母さんやお母さんの従姉妹だか判らないけど、兎に角、地下の部屋から出てきた人は今でも存在してるんでしょう?
木山:おばあさんだか、おばさんだか俺にも判らないけど、その人は存在はしている。でも確かではないかもしれないじゃないか。
青葉:?
木山:存在していると、伯母、母、俺が信じ込んでいるだけかもしれないだろう。つまり、あの人はナイトメアや貘と同じような存在かもしれない。
青葉:だけど、何で最初おばあさんだったのに、君の伯母さんとお母さんの従姉妹である、おばさんにならくちゃならないの?
木山:それは、伯母と母の母親である役割が終わったんじゃないかな。母親に捨てられたという思いが、もう昇華されたんだよ。そうなると、自分達と同じ年くらいの母親では矛盾が生じるだろう。だから、役割を変えて母親から従姉妹になった。のかもしれない。ともすると、その内あの人はいなくなるのかもしれない。
青葉:………。
木山:でもな、この考えは一つの可能性に過ぎないんだ。俺が独断で考えた不確かな考えでしかないんだ。そんなことを自分で考えながら否定を自分でもするくらいにな。だって、やっぱり夏に俺が山村を訪れれば、おばあさんは、おばさんとして存在してるんだからな。
青葉:わけが解らなくなってきたよ。
木山:さあ、今度こそ俺の話はおわりだ。
青葉、俺はナイトメアと貘に本当に遭遇したと思うか?してないと思うか?
…凄く良かったです…!!!
伏線から回収迄、
とても良かった!面白かった!
文庫で読みたいw
大作の執筆、お疲れ様です。
有難うございました!!
すごく面白かったです!
素材から構成、余韻まで素敵ですね( ´ ▽ ` )ノ
楽しく読ませて頂きました!
素敵な話にもっと会ってみたいです
次回作も楽しみにしてますね♪
寒くなってきたので
お体には充分気をつけて下さい☆
匿名さん、
この話の最初のコメントを匿名さんがくれたので、書き上がったよ。目的ない潜考も、書き上げられそう。
izmさん、
お気遣い、ありがとうございます。
余韻か……。この話は、最後に青葉が、ナイトメアと貘か本当にいたのか、またはいないのか、考えを話して終わりにするパターンもあったのだけど、それを書かないことで余韻が生まれたのかも。
コメントありがとう!
いろんなパターンを考えついて、さらにそれを選ぶセンスも才能なんでしょうね
表に出たがってるお話がたくさんありそう♪
青葉さんが楽しめるペースで続けていって下さいね☆
才能や創作活動って
一種の脳の過活動なのかもしれないですね
青葉さんにはきっと
お話の種が眠ってると思います
インスピレーションが閃くのを
気長に待ってますね
余計な事かもですが、
沈んでたら時々アゲてみます^^;
izmさん、
ごめんね。もう1つのトピて小説を書いていたので、こっちは見てなかった。
今は脳ミソが平常運転。
まあ、枯渇したのならばそれで良いんだよ。
あまり人が来なくて、暇で書いてみた。
そんな感じ始めたことだから。
よく続いたと思う。
でも、ここまで来たら3,000迄はいきたいな。
呟きで持っていこうと思ってる。
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