青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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地震によってまた目覚めたが、青葉は寝起き。寝惚けている。当たり前の思考ができない。
ああ、本当に地震がきた。
でも震度4。起きて避難する必要はないんだよな。
そう思って震動を感じながらも安心して寝た。
朝になり、本格的に目覚めた青葉。冷静な思考を取り戻すと、
予知夢を見たのかも!
少し心が踊る。
早速、昨晩の地震についてネットでしらべてみる。
しかし、震源は千葉県沖。埼玉県北部の震度は3。
予知夢ではない……。いやいや、完璧ではないにしても予知夢かも。
考えようによって、どちらにも取れる。判断をハッキリつけられない。
不完全ながら予知夢だろうと、ただの夢で偶然にその後に地震が起きたのであろうと、寝惚けた青葉はそれを信じて寝てしまった。
あの地震が大きなものだったら、初動動作の遅れで避難経路確保や、身の安全の確保ができなかったかもしれない。
危険だった。
そう思うと、予知夢ではない方がいい。
ただの夢の後に地震が起きただけならば、こんな偶然はそうそうあることではない。
でも不完全な予知夢なら、誤報の混ざった情報に翻弄されるかもしれない。下手すると恐ろしいことになる。
予知夢か、ただの夢か、判断材料が少なく判らない。せめてもう一度同じ様な夢をみないと。みたい。
と思っていたら、その日はすぐにやってきた。
全てのテレビ画面はニュースを映している。
アナウンサーは、黒子が特徴的で角刈りのあのアナウンサーだ。
連続性があるのは、そのアナウンサーがまた夢に出てきたこと。
アナウンサーは喋る。
「2028年に地球に衝突する小惑星の影響で、人類が滅びることが確定したとNASAが正式に発表しました。」
「へえ、そうなのか。」
夢の中の青葉は特に感慨なく、そう呟く。
そして目覚めた。
目覚めて思う。
さて、青葉が予知夢をみてるのかどうか10数年しないと判らない。
そして予知夢をみているならば、そこで人生が終わる。
予知夢でないことを祈る青葉。
ただ予知夢にしても、完璧なものではないので、人類は滅びないのだろうとも思う。
終わり
木山:いいよ。青葉が好きそうな話はある。話してみよう。
青葉:有難い。
木山:作り話でもいいならば。
青葉:つまり創作なんだね。
木山:いや、誰も信じられる話ではない。青葉もきっと作り話と思うだろうな。
青葉:うん?じゃあ、真実なんだね。
木山:まあ、その判断はお前に委ねるよ。
木山君は少し間をおいてから話し始める。
木山:俺の母の実家は山深い所にあるんだ。俺は毎年夏休みになると母に連れられて、その母の実家に行っていた。
母の父母はもう既に亡くなっていて、そこには母の姉が一人で家を守っていたんだ。俺にとっては伯母だな。
青葉:一人か。結婚していなかったんだね。
木山:ああ。してなかった。
その伯母は俺が行くととても歓迎してくれた。ずいぶんと可愛がってくれた。だから俺も伯母が大好きで、母は伯母に懐く俺の姿を見て呆れながらも微笑ましそうに、
「あなたは本当に姉さんのことが好きなのねぇ。」
とよく言った。
青葉:へえ。
木山:夏休み中はずっと伯母の家にいたから、ひと月以上の田舎暮らしだったんだ。とにかく、すごい田舎で家はまばらで人はあまり住んでなかった。東京から来ていた俺には、人なんかいなくても楽しかったけどな。大自然のに触れる機会は普段なかったし、伯母が飼っていた犬と仲良くなって、山の中や川の上流やいろんな所を一緒に探検して、本当に毎日楽しかったよ。
青葉:いいね。迷子になったら命の危険もありそうだけど……
木山:まあな。とにかく時間はいっぱいあったから、ある日外だけでなく家の中も探検した。田舎の広い家だったから、なかなか探検のしがいがあったよ。
青葉:うん。
木山:そしたらさ、普段使われていない家の奥の方に板の間の小部屋があったんだ。中に入ってみたけど窓なんかなくて薄暗く何だか怖さを感じたよ。そこは何も置いていない殺風景な部屋だった。ただ、その部屋の奥には地下に続く階段があったんだ。
青葉:察するに古い日本家屋でしょう?地下室なんてあるものなの?
木山:普通は無いものなのか?でも、伯母の家にはあったんだ。
青葉:そう。
木山:階下を見ると扉があった。暗くて怖いかったけど降りてみた。そんなに長い階段ではなかったけど一段一段が高く子供の足ではきつかったな。階段を降りきり、扉の前に立った。木製だったけど頑丈そうだったよ。とにかく俺は扉を開けるために扉を押した。何だか怖かったけど好奇心が勝ったんだ。
青葉:なるほど。面白そうな話だね。それで、扉の向こうはどうなってたの?
木山:それが、押しても引いても開かなかったんだ。暗くて最初は分からなかったんだけど、扉は南京錠で施錠されていたんだ。
青葉:………。
木山:扉が開かないことでガッカリしたけど、実はそれ以上に安心感があった。扉の向こうはお化けでも出そうな雰囲気で恐かったからな。でも、扉の向こうはどんな部屋なのか、中に何が置いてあるのか気にはなった。だから後でその事を伯母に訊いてみたんだ。
青葉:伯母さんは何て答えたの?
木山:物置として使っている部屋だ、と。それから、あそこは暗く階段も高くて子供には危険だから近づかないように言われたよ。
青葉:怒られたんだ。何か怪しいね。
木山:怒られたというか、注意されたという感じだったな。でも真剣な表情だった。
青葉:やはり怪しいよ。何か隠していそうな……変だと思わなかったの?
木山:その時は何も。俺は素直な子供だったからな。
青葉:そう。
木山:結局、地下の部屋は物置ではなかったけど。
青葉:やっぱり。部屋の中には何があったの?
木山:まあ、待てよ。それが分かるのはもう少し後のことだ。それより、伯母の話は地下階段の扉に近づかないよう注意しただけでは終わらなかったんだ。
青葉:へえ。他に何を言われたの?
木山:これからはあまり遠出しないで家のそばで遊ぶように、と。
青葉:何で?
木山:それを俺も訊いた。伯母は真面目な顔で話したけど、信じがたい話を始めたんだ。
青葉:信じがたい、とは?
木山:遠くにいると、魔物が出た時に守れないと言ったんだ。
青葉:マモノ?魔のモノの、魔物が?熊とかじゃなくて?
木山:そう。当時俺は小学生だったけど、そんな理由では納得できなかった。
青葉:素直な子供でも納得は無理だったんだ。
木山:だいたい俺はただ地下の扉のことを訊いただけなのに、何で遠出を禁止されるのか合点がいかなかった。犬と一緒に遠くに探検に行くのが楽しかったからな。
青葉:何か隠す為に嘘で誤魔化したんんだね。ただ、いくら小学生だからといって魔物を理由にするのはないよね。
木山:俺もそう思って抗議したんだ。ちゃんとした理由じゃないと聞けやしない、とさ。そうしたら、伯母はちゃんと理由を話してくれたんだ。信じられない話だったけど、それが結局は事実だったから、伯母は俺に何かを隠そうとしたのでも、小学生だから軽く扱ったのでもなく、最初から真剣に真実を俺に伝ようとしていたんだ。
青葉:どんな理由だったの?
木山:伯母は、伯母や母が子供の頃に起きた事件の話をした。
青葉:事件?その事件が理由に関係があったの?
木山:あった。関係というか理由そのものさ。
青葉:その事件とは?
木山:その事件とは……事件が起きたのは数十年前。俺がこの話を聞いた時は伯母は広い家で独りで住んでいたけど、事件が起きた当時の伯母は両親と幼い妹と一緒に暮らしていたんだ。
青葉:君のお爺さんとお婆さん、そしてお母さんだね。
木山:そういうこと。
事件は家族四人の住む山村の中で起きたんだ。
青葉:山村の中での事件。何だか怖いね。
木山:ことの始まりは山中に鐘の音が前触れもなく鳴り響いたことだった、と伯母は言い、もう二度とあの鐘の音を聞きたくないと話した。
青葉:前触れのない鐘の音?
木山:すぐさま俺は口を挟んだ。
鐘のなんて毎日、朝と夕には鳴る。今日の朝も聞こえたし、夕方になればまた聞こえる、とね。
その山には寺があって朝と夕方には必ず鐘をついていたから、前触れも何もないと思った。
だけど、伯母は首を横に振って山寺の鐘ではなく西洋の鐘の音だ、と言ったんだ。
青葉:西洋の……
木山:寺の鐘はゴーンと低く鳴り一回一回の間隔が長いだろう。だけど、伯母の言う、ことの始まりになった音とは西洋の鐘の音だったらしい。分かるだろう?連続してカランカランと甲高く鳴る。つまり俗に言う教会の鐘の音だよ。
青葉:どんな音かは想像できるよ。それより珍しいね。山中に鳴り響くほどの大きな鐘がある教会があるなんて。
木山:ないさ。無いのに教会の鐘の音が山村に鳴り響いたんだ。
青葉:どういうこと?
木山:だからあり得ない事が起きたんだよ。有りもしない教会の鐘の音が山中に聞こえたんだ。前触れもなく。
青葉:誰かが鐘を山に持ち込んで鳴らしたの?
木山:いや、そういうことではなかったらしい。と言うか、そうではないと山村の人達は結論づけた。音は山村の人達みんなが聞いていた。聞き慣れない鐘の音を聞き、いったい誰が何のためにやったのか騒ぎになったけど誰にも分からなかった。山の人ではないなら外部の何者かの仕業かということになり、駐在や若い衆が調べてみたけど何の手掛かりもなかったんだ。
みんな不思議がり、そして恐怖を感じたらしい。
青葉:そうだろうね。山中に響くような大音量の鐘の音が聞こえたのに、鐘も鐘を鳴らした人もいないなんて。
木山:だけど本当の恐怖は鐘が鳴った後からのことだったんだ。
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