青葉 2012-01-06 22:03:27 |
通報 |
死者である雪見を登校させる。そして、雪見が登校してきた異常な事態を収集し、雪見が来ている事への疑問を皆から消し去った。そんなことが起こっている。それを出来るのはゼロしかいない。やったのは新里か?本当の本当に新里の能力は何なのか全く解らない。全て新里がやっているなら、かなり多様なのは確かだ。しかし、新里は何を考えているのだろう。雪見の命を奪ったり、復活させたり。行動が矛盾している。この矛盾は新里の能力を突き止めたところで納得できるのか?とにかく前に進むしかない。そうでなければ何も解らない。今は、まず雪見に遭うことだ。
障害物達は興味の対象が今やないからか、簡単に僕の進路を空けてくれる。もう大した障害にはならない。スルスルと野次馬の間を抜けて教室の中に入った。教室内の全容が明らかになる。
雪見だ。雪見がいる。雪見が確かにいる。心が揺れる。しかし思った程の感動ではない。きっと本物の雪見とは限らないと思っているからだろう。新里のゼロの能力によって造り出された雪見。そう思える。本当の雪見だと確信があれば、僕は人目をはばからず直ぐに雪見に駆け寄っていただろう。
雪見は教室のほぼ中央に立っていて、そのとなりに新里がいる。雪見のクラスメート達はみんな教室の隅の方に立っていたが、同じ隅でも窓際には誰もいない。死者を前にして、様子をみながらもいつでも逃げることが出来るようにだろうか、完全に出入口の方に寄っている。皆の警戒心の跡が残ってはいるが、今は違う。警戒の表情など一人もいない。誰もが何が今まで起きて、何に驚いたのか解っていない。鈍った知覚に戸惑っているように僕には見えた。
「どうした!何があった!?」
僕の背後の出入口の向こうから声が聞こえた。先生の到着だ。来たのは学年主任の矢嶋先生で、野次馬達は先生の到来で道を開けた。矢嶋先生は教室内に入ると、中を見渡した。教室の真ん中にいる雪見と新里、教室の隅にいる雪見のクラスメート、さらに前後の出入口にいるたくさんの野次馬。それらを首だけを動かしながら確認している。あの悲鳴も当然聞いているだろう。この状況を見て矢嶋先生は何を思っただろう。興味があった。
「どうした、何があった?」
そう先生は大声を出した。
みんな無言でいる。答えたくても、誰も何があったか言えないでいる。
「誰か答えろ!なにがあった?さっきの悲鳴何だ?」
誰も何も言わないことに矢嶋先生は少しイライラしながら、誰かが何かを言うのを待っている。
矢嶋先生は明らかに雪見を見た。だが、何も異常を感じていない。それが解ってしまうと矢嶋先生への興味はもうない。新里が、雪見が来たのは当然だと言った瞬間から、雪見がこの場にいる異常な事態をここにいる皆が忘れてしまった。が、後から来た矢嶋先生も、異常に気づいていない。新里の声を直接聞かなくても、雪見がいることに疑問を抱かないらしい。この事実も新里の能力を解明するヒントになるかもしれない。
活字大好きさん、
ありがとう、青葉は最後までいくよ。例えば支持者がいなくても終わらせるつもりだよ。
今は遅いペースだけど、また変わってくると思う。
そんななかで読んでくれて、ありがとう。
必ず終わらせよう。
「先生、何でもないよ。何にも起きてない。」
新里が矢嶋先生に向けて言葉を放った。
「しかし新里、あの悲鳴は何だ?」
矢嶋先生はがそう訊くが、新里はとり合わず、
「何でもないんだ。何も起きてない。先生!そうだろう?」
と言う。すると
「そうか、解った。何でもないんだな。」
矢嶋先生は直ぐに納得してしまった。
「それより先生、もういい時間だ。こいつら教室にいかせないといけないんじゃないか。」
そう新里が野次馬を指して言うと、
「あ……ああ、そうだな。皆!ホームルームが始まるぞ!自分の教室に行くんだ!」
矢嶋先生は新里の言葉に従うかのように皆に声を掛けると、その声で野次馬たちが散る。それぞれの教室に向かう。雪見という興味の対象を忘れた上に、先生に自分の教室に行くように言われれば当然の行動だろう。しかし僕はこの教室を出るわけにはいかない。雪見に接触しなければならない。雪見のいる方へ進んでいく。所詮は教室内のことで直ぐに雪見に近づく。雪見は自分へ真っ直ぐ近づいてくる存在に気づいたようで、僕のことを見た。目が合う。
「雪見……」
僕は言葉を発したが止まってしまう。いったい何を言おうとしたのだろう、自分でも覚えていない。そんなことより、雪見はまさに雪見だった。外見だけのことになるが僕の知っている雪見そのものにしか見えない。新里が能力で造り出した雪見だと頭で考えていた。でも視覚はそれを否定している。どうせ偽物の雪見と思ったから動揺はそれほどでもなかったが、目の前にして偽物か本物か判らなくなり、心が乱れ始めた。
「一色君、どうしたの?何か怖い顔してるよ。」
雪見は僕にそう言った。
普段、雪見は僕のことを「優ちゃん」と呼ぶが、新里の前では「一色君」と言う。新里への遠慮からだろう。そう呼ぶけど気を悪くしないで欲しい、と新里と付き合い始めた時に雪見は僕に言った。もちろん僕は承諾したが、実際に雪見と新里とが一緒にいる時に遭遇しそうになっても僕は二人を避けた。出会い頭にそんな場面になっても雪見は僕に話し掛けなかったし、僕も雪見に声を掛けることをしなかった。だから雪見に「一色君」と呼ばれたことは今までに一度か二度くらいのものだった。
とにかく久しぶりに雪見の声を聞いた。そして、その声も雪見そのものだった。次の言葉が出ないでいると、雪見は小首をかしげながら言う。
「本当にどうしたの?何だか変だよ。」
そして新里の怒声が続く。
「一色!雪見に何の用だ!?さっさと教室に行けよ!」
新里の反応は想定内なので僕は何とも思わなかったが、雪見は困った表情になる。新里が造り出した雪見ならば、少なからず新里に都合がいい雪見になってるのではないかと思う。そうなら僕が話し掛けた時に無視をするなり不快感をあらわにしてもおかしくない。だが、この雪見は僕と新里との間で板挟みになり困惑している。やはり僕の知っている雪見だと感じる。
僕は何を言えば良いのだろうか。聞きたいことは色々あるはずなのに何から訊けばいいか判らない。だが時間もない。始業の時間が間近だ。そんなことより雪見と話したいと思うが、それは新里がいて矢嶋先生がいて学校という秩序の中で赦されない状況なのは明確だ。
「雪見、本当に雪見なのか?生きていたのか?」
タイムリミットを感じながら僕はそう言っていた。
「お前は何を言ってんだよ!訳のわけの解らないこと言うな!早く自分の教室に行け!」
直ぐに新里はさっき以上の大きな声で怒声をあげる。雪見はさらに困惑した表情になり、新里の方を一度見て僕を見る。僕を見つめる。
「あっ……」
僕の口から小さな声が漏れる。間違いなく雪見だ、と思う。何故なら僕は雪見のその表情と目から解ってしまった。
優ちゃんお願い、困らせないで。
そう訴えているのが痛切に解る。僕だからこそ解る。本物の雪見の心情だからこそ感じることができる。
僕はもう引き下がるしかない。亡くなったはずだが、この雪見は本物だ。そうなると雪見に辛い思いをさせることはしたくない。もう今からは何も言う気はなかった。雪見と話すのは新里がいない時にしないと雪見に迷惑が掛かってしまう。僕は百八十度向きを変えて歩き出す。雪見から遠ざかる。そのまま自分の教室に行くことにした。
退室間際に新里の声が聞こえる。
「雪見、また休み時間になったら来る。おかしな奴から、おかしなことを訊かれるのは嫌だろうからな!」
大きな声だった。きっと雪見にではなく僕に言ったのだろう。自分のいない間に雪見に近づこうとしても無駄だというメッセージを新里は発してきたのだと思う。
僕は隣の自分の教室に入る。席に着くと、すぐに原先生が来てホームルームが始まった。原先生は何かを喋っていたが僕の耳にはなにも入ってこなかった。
雪見が生きている。
それだけが心の中が一杯になった。大きな喜びが大半を占め、その他に驚きと当然だが疑問もある。が、僕は喜びに浸った。何であれ雪見が生きている。それだけでいいと思った。新里が雪見を亡き者にしたのだとしても、今は甦らせて生きている。それでいいじゃないか。そう思った。だが、ほどなくして気付く。コウのことは雪見が生きていたからといって済むことではないと。コウのことは全く決着がついていない。それに、新里は人の生死さえも操ることができるようだ。そんな力は人間には過ぎた力だと思う。しかも生死を操るだけではなく他のことも色々とやってのけている。全てをやっているのかは判らないが、どれもかなりの確率で新里のような気がする。新里の能力は何か謎だと思っていたが、今日の雪見の登校で新里の力は何でも有りのように思えてしまう。そんな万能な能力を持つのがよりによって新里とは冗談にもなりはしない。そういった能力は、人格者が主であってほしい。新里の様に人の痛みを感じるのが苦手な奴が主なのは非常に危険であり怖いことだ。何をしでかすか解ったものではない。これからもコウの様な犠牲者が増えるだろう。考えてみれば呑気に構えてはいられない。何せ次の犠牲者として狙われているのは他ならぬ僕だ。
僕は新里と戦わなければならない。さて、万能な能力を持つであろう新里とどう戦えばいいのか。戦いかたは正直に言って解らないが、今は前ほど怖くないし心配していない。日和は、雪見もゼロで能力はゼロの力を増幅させるものだと予想している。そうなると雪見の復活で僕は不利になる。が、雪見の復活はどんなことにも代えられないことだ。マイナスなんて思うことがおかしい。それはいい。例え雪見が新里の為に能力を使おうとも、僕は戦えるような気がしている。その根拠は僕もゼロだということにある。
もう否定はしない。日和が言う通り僕は間違いなくゼロだ。
お二方、ありがとう(^^)
青原ファン!ジーンとくる名前だね。
まだまだ気持ちは萎えてないよ。
時間が無かっただけ。
では、思い当たるフシから。
自分自身をゼロだと結論付けた理由はいくつかある。まずは、雪見が登校して皆がパニックになったけど、新里の言葉で皆は雪見が学校に来た異常さを忘れた。でも僕は、僕だけは雪見が登校したことを異常だと一人感じ続けている。何故僕だけそれを忘れず異常を感じ続けているのか。それは僕のゼロとしての能力によるものだろうと思う。それとコウが転落した日、僕は何度も大ケガをしそうになった。あの日降りかかった危険は新里によるものだ。こうなってはそれ以外の可能性を感じない。 一歩間違えれば命を落としてもおかしくなかった。だけど僕は何度も紙一重で危険をかわし傷一つ負わなかった。新里は僕を傷つけることに何の躊躇いもなかったはずだ。万能な力を持っている新里の躊躇ない攻撃をかわすことは本来なら無理だと思う。それが出来たのはやはり僕がゼロで、そういった能力があるからだろう。さらには前から不思議だと思っていたが、僕の学校内での人間関係に変化がないことだ。新里は学校では人気者だから、その新里から敵視されている僕のことを敬遠するか嫌うかを皆がしてもおかしくない。僕と接しているところを新里に見られると新里に嫌われるリスクがあると誰もが考えるのが必然だと思う。だけど僕への対応を変えたのはコウを始め誰もいない。これも僕の能力だろう。つまり僕の能力はゼロの能力の影響を受けないこと。そうだと思う。新里が能力を使って人気を集めているならば僕だって新里にへつらっているだろう。だけど僕は新里におもねる様なことをしたことはないと断言できる。僕はゼロだ。ゼロの能力に影響されないという能力を持ったゼロだ。僕をゼロだと確信し、何の能力かも検討をつけていた日和は僕の能力を攻撃力はなく受動的なものだと言っていた。新里が能力を発動させた時、僕の能力も発動した。だから僕は新里の攻撃が効かない。それが現状だろう。日和は僕が学校の中で一人浮いた存在だとも言っていた。僕からしてみれば、新里の能力の影響を受けて新里をやたら持ち上げている皆が変に思えた。しかし、新里の能力の影響下で異質なのは確かに僕だろう。日和が僕に感じた不自然さも僕がゼロでありゼロの影響を受けない能力だと裏付けている。
僕がこれからすることは雪見と二人で会うことだ。さっきの雪見の感じなら、新里が近くにいなければ僕と二人で話すことを拒むことはないだろう。
新里が万能なら雪見が僕を嫌うようににしても良かったが、そうはしていないようだ。いや、そうしているが僕の能力に阻まれているのかもしれない。
僕は雪見と会えば新里の情報を引き出すことが出来る気がしている。僕が雪見に会うのは新里と戦う為の情報を得るのが目的だ。本来ならば再会を喜ぶために雪見に会いたい。でも、雪見は自分が死者であったことを知らないようだ。そんな素振りだった。きっと雪見にとっては命を落としていた失われた期間は存在せず、生きていることが連続しているのだろう。というより雪見が亡くなった記憶があるのはもう僕だけなのかもしれない。そんな中で僕が雪見との再開を喜んだところで、雪見を困らせるか傷つけるだけだ。再会は僕の心の中だけで喜べばいい。雪見が復活した今、僕はコウのことを一番に考え、そしてそれは僕かもしれないが新たな犠牲者が出ないようにすることに撤する。
気がつくと一限目が始まっていた。原先生はいつの間に教室を出たのだろう。数学の授業がはじまっていた。僕は授業が終わり休み時間になるのを待つことにした。休み時間になったところで雪見との接触を新里に阻止されることを必然と思いながら。
よかった(>_<)
いつもすごく練られた構成に、これから
どうなっちゃうのかわくわくしちゃいます
続きがとても気になります!
でもお忙しいようなので
無理せず体に気をつけて下さいね
トピック検索 |