とりとめない思考

とりとめない思考

青葉  2012-01-06 22:03:27 
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考えがとりとめなく浮かんでしまう。

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  • No.2483 by izm  2012-07-19 00:09:24 

でも、優くんは主人公だから大丈夫ですよね
そこは納得しつつも、ハラハラ感と「一体なぜ!?」がハンパないです(^^;

  • No.2484 by 青葉   2012-07-19 20:30:02 

izmさん、
ありがとう。そう感じててくれて。

最近思ったんだけど、どうやら青葉はいつも盛り上がりが書いていたいみたい。
なが~いのを書こうと思ったけど、短編が性に合ってるのかも(^_^;)

  • No.2485 by 雨月  2012-07-21 12:02:33 

お久しぶりですー
ちょっとこの問題どう思いますか
あるところに携帯を持っている5人の人がいました。

Aさん、Bさん、Cさん、Dさん、Eさん の5人です。

AさんはBさんに電話をかけ、BさんはCさんに電話をかけ、CさんはDさんに電話をかけ、DさんはEさんに電話をかけました。ですが、5人のうち1人だけ携帯が故障していて電話ができない者がいます。しかし全員誰にもつながりませんでした。



 さてここで問題です。5人のうち故障している携帯を持っているのは誰でしょう。その人の携帯が壊れているという決定的な理由を述べよ!


僕は説きました(´・ω・`)

  • No.2486 by ゼロ  2012-07-21 23:39:08 

雨月さん、
結構考えたけど全く解らなかった( ̄▽ ̄;)
雨月さんは解ったんだ。凄いね。

  • No.2487 by 青葉  2012-07-21 23:40:50 

しまった!
名前をまた間違えてしまった!

  • No.2488 by izm  2012-07-22 00:29:59 

私もわからないです^^;
雨月さん、すごいですね!

青葉さんのお話、いつも目が離せない理由の一つがわかりました。
盛り上がってるからなんですね!
いつも、ジャンプ発売日を待つ少年のような気分だったんです^^
自分のペース・長さで続けていってくださいね!

  • No.2489 by 匿名さん  2012-07-22 00:47:41 

答えは Eさん ですか?

理由は
 Eさんは誰にも電話を掛けていない。
 CさんはEさんに電話を掛けたが、繋がったとはいわれていない。

どうでしょうか?

  • No.2490 by 青葉  2012-07-22 01:05:55 

izmさん、
前の話までは読者離れしないように、盛り上る良いところで終わらせる様にしてたよ(^ー^)
でも長い話だと、そうもいかないね。しかしizmさんは女性ながらジャンプの読者だったんたね。

匿名さん、
まだ青葉には解らない。青葉はアホだね。雨月さんが次に来るのを待とう。楽しみだ(^^)

  • No.2491 by 青葉   2012-07-22 01:19:45 

一時限目が終ると僕は校長に呼ばれ、担任の原先生と校長室に向かった。原先生は25歳と若い未婚の女性英語教師だ。
原先生が校長室のドアをノックすると、
「どうぞ。」
と校長の貫禄のある声が返ってきた。
「失礼します。」
と原先生は上ずった声を張り上げる。緊張しているのだ。
(別に怒られるわけじゃないのに。)
原先生は頼りないし失敗が多い。そして優柔不断で判断力に欠ける。それを生徒に見抜かれている先生らしくない先生だ。不思議なもので、その欠点はプラスに作用し生徒から嫌われない。先生は生徒を下に見ないし、むしろ生徒でも自分より優れていると思うことがあると心から誉め称える。嫌われない理由は原先生が生徒と自分を対等だと思っているところにあるだろう。しかしプラスな部分もあるが、嫌われない代わりに生徒に憐れみを感じさせてしまうことがある。つまり少々バカにされている。そんな先生だけでは学校は成り立ちはしないだろう。
中に入ると広くはない部屋の奥に校長が大きな机を前に座っている。そして机を挟んで校長の前に立ち、原先生と僕に背を向けた形で立っている男子生徒が一人いた。あらかじめ原先生から、四階から缶を投げた一年生が校長室で僕に謝罪すると聞いていたので、先客がいるのは予想通りのスチュエーションだった。
一年生は後ろに立っている僕の方を向く様子はない。後ろ姿から察するに、どんな態度をとればよいのか解らずオドオドしている感じだ。
「一色君か。呼び出して済まなかったね。」
校長は僕の顔を見て、立ち上がると、続けてこう言った。
「一色君。今日だけで君に二度危険に遭わせてしまった。それは、この学校の責任者の私の責任だ。君にケガがなくて本当に良かった。が、一歩間違えれば大変なことになっていた。本当に申し訳なかった。」
そして深々と頭を下げてきた。
僕は校長の突然の謝罪に驚いていた。謝罪は一年生だけがすると思っていたので、僕も突然の事態に何と言えば良いのか解らなくなり固まってしまった。横目で僕の右隣にいる原先生を見ると、緊張感がみなぎり何か言い出す感じではない。結局、校長が話を進めるしかない。
「学校内で起きたことは私の責任だ。私は責任者でありながら管理能力に欠けていた。しかしだ、林君。」
校長はそう言うと椅子に座り、一年生の方に首を向けた。彼は林というようだ。
「はい!」
ビックと林は肩を震わせて反射的に返事をする。
「直接危害を加えそうになった君も当然ながら一色君に謝らなければならない。」
「はい!済みません!」
「一色君の方を向いてしっかり君の気持ちを伝えなさい。」
校長にそう言われ、林は僕の方に気の弱そうな顔と身体を向けた。そして、僕の目を見ることなく下を向きながら、
「危ない目に遭わせてしまって、本当にスミマセンでした。」
と小さな声で言った。
しかし、謝罪の言葉はどうでもよかった。僕は知りたいことを林に質問する。
「どうして僕に缶を投げたの?」
林は、はっ!とした顔をして僕の顔を一度見ると頭を下げて言った。
「いえ、そうじゃないんです。友達に向けて投げたんです。だけど、コントロールが狂っちゃって。本当にスミマセン!」
故意ではないと林は言っているようだ。それは僕にとってありがたいことかどうか。僕は複雑な心境だ。
林がそれ以上何も言わないのを見切ると校長が口を開いた。
「一色君。林君は、教室内でクラスメートに缶のジュースを渡すのにちょと楽な方法をとったんだ。クラスメートの前まで行かず、投げるという危険で安易なことをした。だから、君を狙ったわけじゃない。それは本当だ。様子を見ていた林くんのクラスメート数名から話を林君の担任の先生が聞いたが、林君が窓際にいるクラスメートに缶を投げたのは教室のほぼ中央あたりからだと皆言っているそうだ。だから下を歩いていた君を狙うことはできない。」
校長室がそう言うと、林は、
「あの時、友達にジュース買ってくるよう頼まれてたんですけど、教室に入ると皆が窓際に集まって下を見ていて……何だろうと思って。 気になって自分も下を早く見ようと思って、ジュースを窓際にいた友達にサッサと渡そうとして投げたんです。そしたら自分でもビックリするくらい逸れてしまって、開いていた窓から缶が下に落ちていったんです。」
そう話した。
僕は教頭と同様に林を責める気になれなかった。新里の顔が僕の脳裏をよぎる。
「一色君。林君には私からよく話をした。今後あんな危険をなことはしないと言っている。今回はこれで林君を許してやってはくれないか。」
校長は早くも纏めに入ったようだ。
「はい。勿論です。」
僕は簡潔に本心を答える。あまりにも簡単に僕が林を許したせいだろうか、校長は表情は変えないものの少し沈黙した。僕が本当に許しているのか計りかねたのかもしれない。しかし、すぐに口を開いた。
「そうか、ありがとう。では林くんは教室にもどりなさい。」
その言葉を聞くと、林は素早く校長と僕に頭を下げて校長室から逃げるように出ていった。よほど居心地が悪かったのだろう。
林がいなくなると、すぐに校長は原先生に声を掛けた。
「原先生、一色君の家には連絡しましたか?」
急に声を掛けられて原先生は、またも上ずった声で答える。
「はい、お母様に今日のことをご報告できました。」
校長は頷き、
「それでお母様は何と?」
と訊く。
「はい、ケガがなくて良かったと。でも二度も危ない目に遭ってるので、心の動揺の方が心配だと仰られてます。それで、もし一色君が帰りたいと言うならば早退させてほしいとのことでした。」
それを聞き校長は僕にこう言った。
「一色君。お母様の言う通り今日は帰って、家で心を落ち着けてはどうだろう。」
この校長の言葉は僕には魅力的だった。只でさえ学校の授業は面白くないのに、さらに今日は新里からの得体の知れないプレッシャーを感じている。
(帰ろうかな。)
そう思ったが、瞬間的に違う思考も生まれる。
(ここで帰ったら新里に感じる得体の知れない恐れが増長する。)
「いいえ、帰るほどのことはありません。」
そう僕は答えていた。
「一色君、本当に大丈夫なの?」
原先生が心配そうに訊いてくる。
(新里が何をした?僕が大ケガをすると言っただけじゃないか。そして僕は危険な目には遭ったけどケガをしていない。新里は予言めいたことをしただけだ。その中で当たっているのは落下物が落ちてきたことだけだ。だけど、それも僕にはぶつからなかった。偶然の域をこえていない。)
「はい、大丈夫です。」
そう原先生に答え、校長にも、
「校長先生、心配ありません。僕は本当に大丈夫です。」
と言った。すると校長は短く
「わかった。一色君が自分で言うのだから大丈夫だろう。」
と言い、そのあと意外な言葉を発した。
「原先生は次の授業の準備があるだろう。私は一色君にもう少し話がある。」
そんなふうに原先生にこの部屋から出て行くよう指示した。僕と二人で何か話すつもりのようだ。
「え?……あ、はい。……では失礼します。……」
原先生も意外なことだったようで、戸惑いながら校長室を出ていった。
広くはない校長室で二人だけになると校長は再び立ち上がり、僕に背を向け、すぐ後ろにあった窓を開けて外を眺め出した。僕は校長が何を僕に話すのか見当がつかず、ただ突っ立ている。
校長は視線を室内の時計に向けたあと、変わらず背を向けたまま話し掛けてきた。
「そろそろチャイムが鳴る。すぐに済まそう。一色君は、上條雪見さんとは幼馴染みだったそうだね。」
どうやら雪見について僕に話したいことがあるようだ。
「はい。」
「幼馴染みとは特別な友達だ。さぞショックだっただろうね。」
「はい。」
「しかも、あんな亡くなりかただ。」
「……はい。」
(何が言いたいんだろう?)
「私はね、一色君。どうにも腑に落ちないんだよ。この学校で殺人事件がおき、爆死する生徒がでるなんて。普通は爆死なんてしない。しかも学校内でだ。戦場じゃあるまいし。私はね、本当に爆死なのか?と疑っているんだ。」
「僕もです。ずっと何かが引っ掛かっています。」
僕は校長の考えを支持した。
校長は頷き、
「しかし、上條さんの五体が飛び散ったのは確かだ。だから上條さんは何か特殊な事情があったんだと思う。」
と言う。
「特殊な事情ですか?どんな?」
「それは解らない。私の固い頭では想像もできない。だけど何かあると思っている。そうでなければ、あんなことにはならないだろう。」
「……。」
「その特殊な事情だが、君なら解るんじゃないか、一色君。」
「え?」
「幼馴染みとは特別な関係だ。君なら、何かしら知ってるんじゃないか。知らなくても何か手掛かりを持っているんじゃなのか?幼馴染みの君にしか解らない何かを。」
僕は困ってしまった。何と返事をすればいいか解らない。校長が僕にした期待には応えられそうにない。
「雪見が爆死したというのは僕も納得いきません。でも、ただそう思っているだけで、知っている事はないし、手掛かりになるようなことにも心当たりありません。なんであんな最期になったのか……。」
校長は振り返り、椅子に座った。
「今は心当たりがなくても、後で何か思うことが出てくるかもしれない。その時は一色君、どんなことでもいいから私に話してほしい。」
「……はい。」
「さあ、君も教室に戻りなさい。時間を取らせて済まなかった。」

僕は校長室を出た。ほぼ同時にチャイムが鳴る。だけど僕は急いで教室に行くことはしなかった。二限目は事情を知る原先生の授業だからだ。
(少しくらい遅れても原先生には何もいわれないだろう。)
そう思った。

  • No.2492 by 雨月  2012-07-22 01:36:51 

答えはA⇒B⇒C⇒D⇒Eこのような順番で同時にかけました
ですがAはBにかけても通話中になって誰も出ない唯一Eさんは誰にもかけないので
Dの電話は繋がるはずですが繋がらなかっただから電話がつながるはずのEの電話が壊れている
という答えです

  • No.2493 by 青葉  2012-07-22 09:03:18 

なるほど。解らなかったf(^^;

  • No.2494 by 青葉   2012-07-22 20:40:48 

三限目は体育だった。
僕は既に着替え、体育着になっていた。そして
(やはり帰れば良かった。)
と思う。
今日の体育の授業は体育館ではなく校庭だった。昇降口を出て外に出なければならない。新里の予言は外れているが、やはり気になる。そして教頭の車に跳ねられそうになったことや四階から缶が落ちてきたことの恐怖を思い出してしまう。
僕は早めに昇降口で外履きの靴に履き替えたものの、なかなか外に出れられず出入口付近をウロウロしていた。僕を尻目にクラスメート達が校庭に出ていく。
(小心者だな。)
僕は自嘲する。
(新里の言葉に怯えるのを嫌がりながら、しっかり怯えているということか。)
僕は意を決して出入口から足を外に出そうとした。が、できない。
足がすくんだのではない。物理的に止められたのだ。後ろから誰かに強い力で両肩を掴まれ動けない。そして明るいトーンで声を掛けられる。幸島だ。
「先に行くとは冷たいじゃな……」
しかし、声は途中で止まる。

ガシャン!

大きな音が響く。
上から何かが出入口のすぐ外側に落ちてきた。つまり落下物だ。
落下物は、落ちただけではなく細かい欠片を僕達とは反対方向の外側に向かって飛び散らした。今度は液体ではない。
(なんだ?)
四角形の物体だ。
僕は肩に痛みを感じる。元々力強く僕の肩を掴んでいた幸島の手が、さらに力を込めたようだ。
「コウ。痛いよ。」
幸島は、「コウ」と皆から呼ばれている。名前が「コウ」なのではなく、名字の幸島を略しての「コウ」だ。
コウは何も言わず、今度は僕の肩を組む格好で外二三歩出て、落下してきた四角形の物体の所まで進む。僕もよろけながら前に進む。コウは僕より一回り以上体が大きい。されるがままだ。
「窓が落ちたんだ。」
コウは独り言のように言った。
その言葉を聞き、僕は確かめるように四角形の物体を見ると、確かに窓だ。そして飛び散った欠片は窓ガラスだと判る。
「一色、大丈夫か?」
コウは僕の肩を放して上を見上げながら言った。
「大丈夫、当たっていない。」
僕はそう答えながら、
(コウが肩を掴まなければどうだったろう?ぶつかっていたな。)
そう思った。
「どっから降ってきたんだ?」
コウは上を睨み付けている。そして重ねてこんなことを言った。
「一色、お前今日は危ないことに遇いすぎだぞ。まさか、誰かに狙われているんじゃないのか?」
どうやら本人でなくても、そう思うくらいになってきたようだ。
(三度目だもんな。)

  • No.2495 by izm  2012-07-26 01:05:54 

雨月さんの問題、難しかったですね~
でもわかるとすっきりしました、ありがとうです

コウくん、ある意味すごい!
校長もなんだか意味深に核心突きますね
…と、またジャンプ待ち少年になりました(^^)
兄がいて、一緒にジャンプ読んでたんです

  • No.2496 by 青葉   2012-07-27 02:28:12 

青葉は少年サンデーが好きで、少数派だった。
ジャンプも読んでたけど。

  • No.2497 by 青葉   2012-07-27 02:57:50 

自分の心臓の音が聞こえる。僕は深呼吸をする。
動揺はあるが三度目になると慣れがあるのか、落ち着くのが今までより早い。深呼吸をしようと頭に浮かぶのがその証拠だ。
「僕は窓ガラスが落ちた後に外に出たんだ。上から誰かが僕を狙って落としたわけじゃないよ。」
もう冷静にそんなことをいえる。
(そう、上から落とした奴がいたとしても狙ったんじゃない。強いて言えば新里が、僕の理解をこえた方法で狙った……のかもしれない。)
三度目になると、そんな考えが強くなってくる。
「確かに。姿を見せてないお前を狙えないな。」
コウはがそう言っているのが聞こえたが、僕は返事をするより思考を優先する。
(新里は最初、僕が大ケガをするとだけ言った。そして教頭の車に跳ねられそうになった。その後、落下物に当たって大ケガをすると条件を新里はつけた。それから二回も僕は落下物に襲われている。偶然と片付けられるのか?)
僕の表情は厳しかったのだろう。
「まあ、二度あることは三度あるというか。変なこと言っちゃったな。だいたい、一色は人から狙われるような奴じゃないし。」
コウは明るい声で僕を安心させようとする。
その言葉を聞いて僕は気づく。僕の落ち着きが今回早かった理由はコウが傍にいるからだと。
コウは新里と同じ野球部で、クリーンアップを任されるショートストップだ。クラスには他にも野球部が三人いる。同じ部に所属していると教室の中でも行動を共にしがちだが、コウは野球部の三人より僕と一緒にいることの方が多い。僕と一緒にいることで、他の三人と関係が悪くならないかと心配したが、それは杞憂だった。コウは三人との関係もおそらく無意識のうちに上手くやっている。コウはそんな奴だ。何故か僕に興味を持ったようで最初はコウが僕に接近してきたが、今では僕にとってコウが大きな存在になっている。傍にいるとこんな時でも安心感があるのだから。
窓が落ちてきた音を聞いて先生がやってきた。年配の男性教師で、二学年の学年主任の矢嶋先生だった。
「一色、またお前か!今度は何があった!どうして窓が落ちている!」
矢嶋先生は大きな声で僕に向かって聞いてきた。何だか僕は怒られている気分になり、ムッとする。すると透かさずコウが怒気を含んだ顔つきで口を開く。
「先生、なんで一色を責めるんですか?一色は被害者ですよ!先生が被害者の生徒にそんな言い方するなんて酷くないですか?」
コウは例え自分のことでなくても、また相手が先生であっても怯まず、自分の意見をいつも言うことができる。
(でもこの場合どうだろう。落ちてきた窓に当たってないけど被害者といえるかな。)
僕の為に怒ってくれているコウには悪いが、そんなことを考えた。
しかし矢嶋先生は、
「いや、別に責めてるんじゃないんだ。ただ、どうしてこんな状況になったかを訊いたんだ……。」
と狼狽えながら言う。
「怒鳴ってるようにしか聞こえなかったです。一色に謝って下さい!」
コウは畳み掛ける。
「いや、だから……本当に責めてないし、怒鳴ったつもりもないんだ。」
矢嶋先生は生徒に威圧的に接してことを優位に進めようとするタイプだ。だが、こうなってしまうと脆い。
そうしている内に、先に校庭に出ていたクラスメートが数名戻ってきて、落ちてきた窓ガラスを見たり、上を見上げたりしている。そのうちの一人が、
「一色、コウ、大丈夫か?」
と、僕たちが揉め始めていることには気づかないのか寄ってきた。中学校も同じ学校だった中野だ。
「当たらなくて良かったな。これが落ちてきたのは三階の視聴覚室からだもんな。ただじゃ済まない。」
中野は校舎の上の方を指差しながら言った。昇降口の二つ上の階はちょうど視聴覚室だ。
「見ていたのか?落ちるところ。」
矢嶋先生は中野の方に体を向けて訊く。先生は中野の登場でコウからの批難を断ち切った。
「いいえ、落ちた音を聞いただけです。」
中野が答えると、矢嶋先生は視聴覚室を見上げる。そして、
「中野、何で視聴覚室の窓だと判る?」
と、また訊く。
「すぐに判りますよ。ここからだと見えづらいけど、少し離れれば一目瞭然です。」
そう中野は言って、視聴覚室を見上げながら校庭の方に向かって後ろ歩きで校舎から離れて行く。大股で五歩か六歩下がると、
「ほら、この辺までくれば良く見えますよ。」
そう呼びかけてくる。僕が中野の傍に行き上を見上げると、先生とコウも同じ行動をとった。
そこまで来ると校舎の上の階も見やすくなり、中野の言う通り落下した窓が視聴覚室の窓であることは一目瞭然だった。昇降口の上の階は普通の教室ではなく、二階は理科室、三階は視聴覚室、最上階の四階は図書室と、普通の教室ではなく特別室になっている。そのためどの階も休み時間は無人のことが多くたいてい窓が閉まっている。今もどこも窓は開いていない。しかし、三階だけは別だ。中央あたりの窓がない。
「なるほど、視聴覚室の窓は開いているように見えるな。でも実際は開いているんじゃなくて落ちたんだな。しかし視聴覚室は鍵が閉まっているはずだ。誰もいないのに何で落ちたんだ。」
矢嶋先生は誰に言うわけでもなく呟いた。
(つまり人為的に落とされたんじゃないということか。)
先生の言葉を聞き僕はそう思う。
「じゃあ何で落ちたんですか?」
コウが先生に訊く。
「解らんが老朽化して落ちたのかもしれない。」
矢嶋先生はそう答えたが、自分の言葉に納得いってなさそうだ。この校舎のは築20年くらいだ。まだ老朽化するには早い。まして窓が落ちる程の老朽化なんてなかなかないことだ。
「とにかく怪我人がいないなら良かった。後片付けと原因究明は先生達でする。お前達はもう行きなさい。」
現状を矢嶋先生は確認したようで、そう言って僕たちを校庭に追いやった。

  • No.2498 by 青葉   2012-07-29 04:31:51 

四限目の現代文が終わると昼休みになった。僕は自分の席である廊下側の一番後ろの席に座っている。いつもの様にコウが弁当を持って僕の前の席に座った。そこは美術部の畠山の席だが、畠山は畠山で昼休みになると他の席に行く。コウは昼休み畠山の席を借りる交渉をして了承を得ていた。
コウが来たので僕も鞄から弁当を取り出す。
「さて、食うか。」
コウはイスに真っ直ぐではなく横向きに座り壁に寄り掛かると、弁当箱を手に持ってさっさと僕より先に食べ始めた。
僕は遅れて弁当箱を開いた。中は随分崩れていた。教頭の車に跳ねられそうになった時に、僕は背中を押されて弁当が入った鞄を投げ出している。
「大変な日になったな今日は。」
コウは僕の弁当箱の中身を見て言った。
(そう。大変な日だ。もし今までのことに新里が何か関与しているなら、まだ終わっていない。)
三限目の体育が終わって昇降口に入る時は、かなり警戒したが何も落下物はなかった。お陰で新里の言葉が本当なのか偶然なのか判断が今一つかない。どうあれ僕は無事だ。無事なのは喜ぶべきことだが、この事実は判断がつかなくなる理由にもなる。新里は僕が今日中に学校で大ケガをすると言っている。どうやら本当に判断がつくのは放課後になって学校を出た時か、そうでなければ大ケガをした時になるようだ。

「そういや、コウ。」
僕は突然思い出したことがある。
「なんだよ。」
「昨日、試合だったんだろう。また新里がまた抑えたみたいだけど。」
「ああ、そのことか。それがスゴイぜ新里は。」
「また抑えたんだ。完封?」
僕は崩れた弁当を食べ始めた。
「ああ。それどころか、ノーヒットノーランだ。」
「へえ、それは凄い。」
「それだけじゃないんだ。」
「と言うと?」
「ほら、前に甲子園に何回か出たことのある学校の二軍と試合して新里が完封勝ちしただろう。その学校がさ、再戦を申し込んできてて、それで昨日この学校のグラウンドで試合したんだ。」
「へえ。それで今度はノーヒットノーランか。」
「まあ、聞けよ一色。それが向こうは今度は一軍を出してきたんだ。新里は甲子園に行ってもおかしくない打線相手にノーヒットノーランをやったんだ。」
「一軍?」
「そう一軍。驚いたな~。まさか対戦できるとは思わなかった。向こうの監督は、いくら二軍だったといえ、前の敗けがそうとう悔しかったんだろうな。だから一軍を出してきた。まあ向こうのピッチャーは二番手か三番手で、エースは出さなかったけど。」
「新里は返り討ちにしたわけか。」
「ああ、見事にな。考えてみれば、相手が一軍を出してきたのは新里がこの周辺で好投手という評判が高まってきたのもあるんだろうな。」
「新里って本当に凄いんだね。」
「凄い。本当に甲子園に行けるかもしれない。そうなったら応援に来いよ。」
コウは冗談とも本気ともとつかないような感じで言った。
「しかし、この新里の快進撃はいつまで続くんだろう?点を取られた話を聞いたことがない。ていうかまだ一点も取られたことないのか。」
僕がそう言うと、コウは箸の動きを止めた。そして少し考える時間があり、間を空けてから言う。
「いや、新里は失点して負け投手になったことがある。言わなかったけ?」
「聞いてないよ。いつ?」
「そういや言ってないな。昨日の試合の前の試合だよ。上條の事件があってすぐだったよ。相手はよく試合やってる学校でさ、こっちのグラウンド使ったり向こうのグラウンドに出向いたりして。その時は出向いて向こうのグラウンドを使ったんだ。」
「新里から点を取るなんて強い学校なんだね。」
「それが、そうでもないんだ。新里がピッチャーに転向する前から負けたことはほとんどなかった。だから新里が投げるとなると負ける気がしなかった。」
「でも点を取られたのか。何か新里にあったの?」
「簡単に言えば絶不調だったんだ。ストレートは棒玉でいつもの球威がない。変化球もコントロールが悪い。ストレートを投げりゃあ打たれ、変化球を投げりゃあストライクが入らない。一回三分の一を七失点と酷かった。」
「二回途中でノックアウトか。ずいぶんと早い。」
「あの日の新里は試合前から投げたくないと監督に言ってた。自分が不調なのは判ってたんだろうな。まあ、上條のことがあってすぐだったし、普通の状態じゃなかったんだろう。特に心がかな。その影響が体に出たというか投球に出たというか………。しかしなんで忘れてたんだろう。なんかあの日のことは印象に薄いな。インパクトあることなのに。あまり野球部の皆も口に出さないし。」
「新里が雪見のことで不調に?」
「上條のことがあってすぐのことだからそう考えるのが自然だろう。そういや昨日も試合前、投げたくないと言って監督を困らせてたな。でも新里を出さなかったら相手も納得しないだろうから、監督も投げさせたんだろうけど。そんでノーヒットノーランだ。自信無さそうにマウンドに上がったのに、一回を三者凡退に抑えると人が変わったかのように自信に溢れていた。上條の事件からずっと塞ぎこんでいたのに、あの時からいつもの新里に戻った感じだったな。」
「ふーん、でも雪見の事件から昨日までは塞いでいたんだ。」
「かなり塞いでいた。 もう夢も希望もないというような顔してた。」
新里は雪見があんなことになっても何とも思ってない、という僕の考えは間違っていたのかもしれないと一瞬考える。しかし、今朝の新里の言葉を聞けば本当に雪見のことで塞いでいたとは思えない。すぐに考えは覆る。
(だいたい試合前まで雪見のことを引きずって塞いでいたのに、一回を投げて三者凡退に抑えたら急に吹っ切れるなんてことがあるのか?)
そんな風に思う。

  • No.2499 by 活字大好き  2012-08-01 13:48:17 

そうですね
それくらいでは吹っ切れないですよね


もうすぐ2500ですね

  • No.2500 by 青葉   2012-08-01 22:09:54 

活字大好きさん、
2500まできたよ。

  • No.2501 by 青葉   2012-08-01 22:11:37 

「なんだ一色!まだ元気なのか?」
嫌な声がした。一瞬で僕の心が荒む。新里だ。僕のすぐ後ろの教室のドアから、不遜な表情を張りつけた顔だけを出している。僕は前を向いていたし、コウは壁に寄り掛かっていたので二人して気づかなかった。
(いつからいたんだろう。)
いつもなら新里への嫌悪感をおくびにも出さずにいられるが、今日はどうしても顔に出てしまう。自分が不快感から顔をしかめているのが判る。
「おう、新里。どうした?俺に用か?」
コウは新里に朗らかに話し掛けた。当然コウも僕と新里がどんな仲かは知っている。だから新里が現れたことで生じた険悪な雰囲気を自分が入ることで和らげようとしている。
「わざわざ様子を見に来てやったのに空気が読めない奴だな。早く病院に行けよ。」
しかし新里には人の配慮の心を汲むような才能はない。コウを無視して僕に向けて勝手なことを言った。
(空気が読めないのはどっちだよ。)
僕は新里の言葉よりも、新里がコウの心遣いを無下にしたことが腹立たしくなり珍しく言い返してしまう。
「わざわざ見に来るなんて暇なんだな、新里。だいたい空気は読むんじゃなくて吸うもんだよ。」
僕は初めて徴発するような言葉を新里に向けた。いつもなら新里との接触を短くするよう考えて、そんなことは言わない。僕は自分の発した言葉に驚き、そして後悔した。
「わざわざ見に来るさ。俺が病院に送りたいのはお前なのに、病院に送られたのは教頭だ。気にもなるぜ。」
だが意外にも新里が冷静に答えたので、僕は拍子抜けした。
「新里。何の話をしてんのか解らないかけど、あまり一色を虐めるなよ。一色はクールで何を考えてんのか解んないところがあるけど優しくていい奴だぜ。確かに成績がいいのは腹立つけど。」
コウは新里が相手でも僕の見方をした。だがそのことは新里にとって、さっきの僕の言葉とは比べものにならない程に、頭に血がのぼることのようで、怒りをあらわにした。
「コウ!俺は一色が誰よりも嫌いだ。だから一色と仲良くしてる奴がいると頭に来る。でもお前は入学して野球部に入った頃から俺にいつも声を掛けてくれた。だから今まで一色といても容赦してきた。だけどな、もう目を瞑る気はない。今の今から一色に近づくな!そうでなければお前でも赦さないぜ。」
(なるほど新里は不器用ながらコウに好感を持ってるんだ。だから怒る。)
新里の言葉を聞いて僕はそう思う。
コウは新里の言葉に対して、
「誰と友達でいるかは自分で決めるさ。それにそんなこと言ってるようじゃあ、お前の度量の大きさを疑わざるえなくなる。」
そう答えた。コウは新里の言葉に少し怒ったのかもしれない。新里は本当に不器用だ。だが新里も立腹している。
「そうか。そんなに一色と仲良くしたいならば仕方ないな。どうするかな。そうだな、いっそのこと……。」
新里はコウから僕の方へ顔の向きを変えて続ける。
「一色。お前を大ケガさせる犯人はコウだ!」
新里は真顔で言う。自分の言葉に微塵の馬鹿馬鹿しさも感じていない。僕は言葉もない。
「……。」
「どうだ一色。いい案だろう?お前は大ケガする。しかも楽しみはそれだけで終わらない。その後お前達の友情が続くのかも見物だしな。さて、コウがお前に何をするのか午後が楽しみだ。じゃあな。」
新里は内心怒っていたようだが、笑顔を残して立ち去っていた。
新里がいなくなるとコウは僕に質問してきた。
「お前ら何の話をしてんだよ?俺は何かの犯人になるのか?」
コウの表情を伺うと、特にいつもと変わらない。コウは僕のせいで同じ野球部で学校の人気者の新里と不和が生じてしまった。申し訳ない気持ちとコウに動揺がないか気になったが、全く動じてる様子がない。
(強い奴だな、コウは。)
「ならないよ。真に受けるような話じゃない。気にすることはない。」
僕は新里が来たことで不快になったが、今は安心感があった。それまで僕は新里の予言めいた言葉を憂慮していたが、それが解消された。新里は、僕をケガさせる犯人はコウだと言った。
(それはあり絶対にあり得ない。)
そう思える。そして今までのことも確実に偶然と思えるようになった。
「真に受けるとかじゃなくて、何の話なんだかが解んない。新里が喋った意味の一つ一つは日本語だし解る。まあ、全体でも解るといや解るんだけど、でも真面目な顔して話す内容かは疑問だな。」
コウは少し笑う。
「確かに。」
今までの新里の言葉を新里自身が本気で言っているかと思うと自然と僕も笑みが出てきた。

  • No.2502 by 青葉   2012-08-01 22:43:43 

放課後になった。僕が帰り支度をしているとコウが僕の席までやってきた。
「一色。気をつけて帰れよ。お前は今日、厄日だからな。車だけ気を付けてりゃいいわけじゃないからな。たまに上も見ないと、また何が降ってくるか解らないぞ。」
コウは鞄や荷物を持っていなかった。
「そうする。それよりコウ、部室に行くんじゃないのか?」
僕が訊くと、
「これから図書委員会があるんだ。部活はそれが終わってからだな。」
と、コウは答えた。コウは図書委員だった。
「ああ、そうか。大変だ。」
「いつも大したことしないけど召集されたからには、行かないと怒られるからな。めんどくさいけど。」
別に煩わしそうにしてるようには見えなかったがコウはそう言った。
「そりゃ、そうだ。委員なんだから行くしかない。」
コウと話をしていると、
「一色君!」
教壇にいた原先生に呼ばれた。
僕とコウは同時に原先生の方を向く。
「一色君、ちょっとこっちへいい?」
原先生は教壇から一番後ろの席の僕へ話掛けるのに甲高い声を出している。
「はい。いま行きます。」
僕も高めの声で返事する。
「じゃあ、また明日な。」
コウはそう言って手を上げると教室を出ていった。図書委員が行われる図書室に行くのだろう。
教壇の前までに行くと、原先生は僕に合掌するように手を合わせた。
「ごめんね一色君、呼び立てて。」
「いいえ。で、何ですか?」
僕は意図的に、すぐに本題に入らざる得ないような返しをした。
「さっき校長先生がね、午前中に病院に運ばれた教頭先生の様子を病院まで見に行ったのよ。」
「教頭先生、どうなんですか?」
「様子見で一日入院するけど、明日には退院できるそうよ。大事なかったみたいね。」
わざわざ僕を呼んだということは教頭に何かあったのかと思ったが、そういうことではないらしい。
「そうですか。教頭先生のケガが大きなものでなくて良かったです。」
そうなると僕は何で呼ばれたのか釈然としない。原先生はそんな僕の心境を察したようだ。
「一色君が教頭先生のことを気にしているかもしれないから、教頭先生は大事なかったことを一色君に伝えて欲しいと、校長先生から頼まれたのよ。」
「そういうことですか。分かりました。ありがとうございます。安心しました。」
僕は軽く原先生に頭を下げた。教頭のことは正直にいうとあまり関心はなかったが、全く気にならなかったわけでもない。だから教えてもらえて良かったと思う。さすがは校長先生。見事な心配りだ。
「一色君、今日は本当に何度も危険に遭わせてしまって、ごめんなさいね。全て学校側の責任ね。」
最後に謝罪もしておくように校長に言われたのか、原先生は神妙な顔つきでいる。
「いえ、全て偶然だし僕は気にしていません。」
僕はそう言いながら、これまでのことが新里とは関係ないとなると少し学校に対して腹立たしい気もした。
「そう言ってくれると、学校側も救われるわ。一色君は大人ね。」
原先生が僕をもちあげる。
「いえ、僕はケガをしてませんから。」
話が終わったのなら帰りたいと僕は思っていると、
「そう。とにかく今日起きたことの、それぞれの再発防止は先生達で早急に考えて実行するから。その緊急職員会議をこれからするの。だから、もう職員室に行くわね。」
と、原先生は僕の言って欲しいことを言ってくれた。帰れる。
「はい。じゃあ、僕は帰ります。」
「そう。車だけじゃなくて、上から降って来る物にも気を付けて帰ってね。今日はさすがに、もう災難に遭わないとは思うけど。」
原先生はコウと似たようなことを言う。
「はい。気を付けます。先生、さようなら。」
「さようなら、一色君。本当に気を付けて帰ってね。」
僕は鞄を持つと廊下に出て、階段を降りた。降りながら、今日は一歩間違えれば大変な目に遭うところだったんだなと思う。
(こんな日もあるんもんなんだな。でも午後は平和だった。しかし、新里の妄言に、心を振り回されてた自分が腹立たしい。)
昇降口で靴を外履きに履き替えて外に出ようとすると視線を感じた。
新里だ。
新里が校庭から、校舎を出ようとしている僕を見ている。
少し離れているが表情は見える。忌々しそうな顔つきだ。
「何でケガしないんだよ。」
そんな声が聞こえてきそうだ。
僕の安否が気になり、すぐに野球部の部室に行かず僕が出てくるのを待っていたのだろうか。そう考えると、新里の異常さにうんざりして僕の足は止まっていた。ちょうど出入り口の所だ。
その直後のことだった。

「うわああああー」

悲鳴の様な叫び声が響く。
僕は新里を見ていたが、その新里が叫びがした瞬間に校舎の上の方を見る。声に反応したのだ。
そして次の瞬間、僕の目の前に黒い物体が映る。それは上から下に瞬時に移動した。落下物だ。僕は校舎から外に出ようとしていたが、まだ辛うじて中にいた。落下物は外に落ちたが、校舎のすぐ近く、僕のすぐ傍に落ちた。

ドサッ!

地面に落下物は激突する。
新里に気を取られて立ち止まらなければ僕に激突していただろう。
落下物はうつ伏せになって、時おりビクビクと身体を震わせている。不随意運動を起こしているようだ。
落下物の正体をすぐに見極めた僕はヨロヨロと校舎を出て倒れているコウに近づく。
「コウ……コウ……。」
膝をついて顔をのぞき込むと目は開いているが意識がないのは判る。
女子生徒の悲鳴があがる。近くにいた男子生徒数名が駆け寄ってくる。
コウの身体の周りに血だまりができ始める。
「先生を呼べ!救急車もだ!」
誰かがそう叫ぶ。
(コウ、何で?)
「まさか、こんなことになるとはな。」
新里も駆けつけて来たようで、僕の後ろに立っていた。
「俺は、お前が落下物に当たって大ケガすると言った。その後、お前をケガさせる犯人はコウだとした。だからコウが落ちてきたのか。しかし、何でだ?お前には当たらなかったな。」
僕は地面に膝をついたまま振り向いて新里を見る。すると新里は驚きの表情になる。
「一色。お前、泣いているのか?」
気づくと涙が止めどなく流れていた。
新里の口調が変わる。
「コウは、俺をいつも気にかけてくれていた。独りでいると声をかけてくれた。一色、お前は最初だけだったが、コウは違った。お前とは違って、俺を嫌わなかった。」
僕は新里の顔を見ながら話を聞いてる余裕はなく、再びコウの方に視線を戻した。だが、新里は続ける。
「こんなことは俺だって望んでいない。こうしてやりたかったのは一色、お前だ。……コウは、俺の友達だ……。だから大丈夫だ。見た目よりずっと軽傷だ。きっとそうだ。軽傷だ。」
そう言うと、新里は続々と集まってくる生徒たちに向かっていくように歩き出し去っていった。
血だまりは徐々に大きくなっていく。
「やばいんじゃないのか?あんなに出血して。」
「図書室から落ちたんだろう。四階からアスファルトに落ちて助かるのか?」
そんな声が僕の耳に入ってくる。
(ああ、誰かコウを助けてくれ!)
僕は周りを見渡す。気づかないうちに周りは、大勢の人だかりができていた。
「道を空けなさい!」
先生が三人、人垣を築いている生徒達を押し退けてコウの傍までやってきた。一人は白衣を着た保健の日野先生だ。
「どいて!」
僕は日野先生に押され、今までいた場所を譲った。
それでも僕は立ち上がることが出来ず、傍らに座っていた。
「ここでは手の施しようがないわね。救急車が来るまで動かさないで。」
日野先生は厳しい顔をしている。
(コウ。新里なのか?新里のせいでこんなことになったのか?でも、新里は校庭にいた。新里は何か得体の知れない力でもあるのか?お前を触れずに四階の窓から落とせるような力が。しかし、そんな不思議なことあるのか?)
混乱しながら考えていると、雪見の顔がとつぜん頭に浮かぶ。
(ああ、そうだ。雪見。雪見はいったい誰にあんな目に遭わされたんだ?まさか……。)
僕は新里が歩き去った方を見るが、人垣で新里の姿は確認できなかった。ただ、人垣の中に日和の姿を見たような気がした。
(何かが起こってる。僕の理解できない何かが。)
ぼくの心は不安の渦に呑まれていった。

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