可惜夜 2024-09-16 17:35:11 |
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(/細かい設定等を練りやすいように、改めて世界観とPFを置いておきます)
ーーー忙殺の日々や不遇な身に疲れ果て、身体と魂の結びつきが大きく揺らいでいる者が迷い込む暁闇街"。現世とも常世とも異なるその街は、空腹に苛まれることも、終わりのない労働に勤しむこともない。宛ら桃源郷のような場所だが、一つ気をつけなければならないことがある。暁闇街には、人ならざる者たちが集っている。彼らは迷い人をあの手この手で誘惑し、その身と魂を喰らい尽くさんとするだろう。喰べられた者は、常世に行くことは勿論のこと現世にも帰れなくなる。許されるのは静かな無のみ。不可思議な街で夢心地に無へ溶けるか、耐え難い苦痛の残る現世へ舞い戻るか。全ては迷い込んだ貴方次第ーーー
名前:可惜夜(アタラヨ)
性別:男性
年齢:不明(外見は30代前半くらい)
容姿:優に2mは超えているであろう上背でありながら、やや筋肉質な身体つきをしているため、ヒョロ長さはなくアスリートのようながっしりした印象を受ける。本来右眼が収まっている場所から様々な花が顔を覗かせており、右頬から右首筋、右鎖骨を覆うように咲き乱れている。花のラインナップは、紅白の彼岸花と色付いた洋種山牛蒡。左太腿の付け根から足先にかけて、太い螺旋状に一部結晶化が見られる。結晶化部分は向こう側が見えるほどに透き通っており、鮮やかに赤く発色する様はレッドスピネルを連想させる。陶器のように滑らかな肌は白く、花々や硝化部分が大いに映える。蛇の如き縦長の瞳孔に深緋の瞳は、眦が品よく吊り上がっており、猫のようにも思える。雪のように白い短髪は柔らかでありながら、癖が強くぴょこぴょこと跳ねている。人間でいうところの犬歯はなく、代わりに蛇のような鋭く細長い牙が収まっている。
服装:真白の長襦袢に真紅の半襟と羽織紐。黒地の着物に濃紅の帯。黒地の羽織には紅白で彼岸花の装飾が施されており、所々金糸が散りばめられている。黒い足袋にシンプルな草履。
性格:非常に享楽的で己が愉しみのためなら、如何様な面倒事も引き受けるほど。精神虚弱に陥っている者や破滅にズブズブと浸かっていく者など、所謂"可哀想な人"が大好物で、ついドロドロに甘やかしてしまう。散々甘やかした結果、対象が廃人化しようが、強く依存されようがお構いなし。対象そのものには興味がなく、グズグズにするという過程を愉しんでいるだけ。お人好しに見せかけた真性クズだが、向けられた分の愛を返す一応の律儀さはある。
(/こちらこそ、お越しいただけて嬉しい限りです!PFに不備等ございませんので、現設定でやりとりできればと思います。反対に、こちらのPFや世界観の不明点、絡み中の萎え等がありましたら、教えていただけると幸いです…!)
(/ご確認ありがとうございます。萎えについては過度な表現や最強無敵設定などでなければ、基本何でも楽しめます!ストーリーを円滑に進めるためのご都合設定やロルなども特に気にしません。可惜夜様の設定も不気味さと綺麗さの絶妙加減とても好きです!
世界観については今のところ記載して頂いたまま解釈できていると思います。暁闇街に迷い込み、不可思議な出来事に脅かされ現世へ戻ろうともするが、出会った可惜夜様の甘い飴に引き寄せられ…。始まる前からとても楽しみです…!)
(/私も最強などの所謂なろう系設定が苦手なので、萎え要素が一致しているあたり、とても円滑に物語が進められそうで楽しみです…!可惜夜もお気に召されたなら何よりです。花や宝石みたいに綺麗なカテゴリーのものが組み合わさった時の異質な華やかさみたいなのが大好物でして…!!綺麗だけど怖いみたいな…
それよりも、秦野様の自棄と依存が隠れている完璧主義者という性格が最高すぎて、今から妄想が止まりませぬ!指一本で崩れそうなアンバランスさでありながら、絶対に倒れないもしくは倒れられない対極性も大の好物ゆえ…!
世界観の付け足しやそれぞれのPFの追加等は、物語を進めながら必要時にしていこうかなと思いまして、早速始めても大丈夫でしょうか?
個人的にはどちらからの開始でも構いませんが、ご要望があればこちらからスタートさせていただきます!)
(/好物もばっちり一致していそうでとても嬉しいです…!!
世界観やPFも随時更新で問題ありません!お言葉に甘えて可惜夜様からスタートして頂けますでしょうか…?
拙い文章もあるかと思いますが、これからよろしくお願いいたします!)
(/こちらからのスタート、承りました!絡み文を練り練りしてくるので、少々お待ちいただけると嬉しいです…!こちらこそ、よろしくお願い致します!)
茹だる様な暑さが漸く身を潜め、涼やかな風が頬を撫でる頃。今宵は、玉桂が真珠の様に美しく見えるらしいと風の噂に聞き、わざわざ逍遥している次第である。常世と現世との狭間に在る泡沫の街にも、こうして季節柄を愉しむ慣習があるのだから不思議なもので。別々に見える三つの世も、実は一繋ぎに強く結ばれあっているのかもしれない。ふと湧いてきた詩的な琴線に、柄にもないと一笑に伏す。鈴を思わせる可愛らしい虫の音が耳に心地よく、たまには夜が深まる折りに外へ出るのも悪くないと気分が上向くのを感じて。上機嫌に歩みを進めると、ざり、ざりと乾いた土道に草履が擦れる音すら心地よく思える。ふ、と地面の翳りがなくなったことに顔をあげれば、どうやらかなり街外れまで来てしまったらしいことを悟る。たっぷりと栄養を貯め込んだ穂が頭を垂れており、風に揺られるたびにサラサラと耳心地の良い音を奏でる。高身長であると自負している己よりも、空高く鎮座する月は見事な満月で。一人で愉しむには勿体ないとぼんやり眺めていれば、何やら遠くが騒めいている。街外れには変わり者が多いと聞くし、何かの諍いかしらんも耳を澄ませるも、どうやら違うらしい。ただ月見をするにも面白みがない、と騒めきの中心へ近づき。
「やぁやぁ、酔狂で奇傑な愛しい諸君。今宵は玉桂がうんと綺麗だというのに、稲穂の真似事をして…やはり、街から離れているとあって独創的な感覚をお持ちの様で。街に住んでいる私には馴染みのないものでね。どうか、この"田舎知らず"に新しい遊びを教えておくれ?」
特に面倒事を収めてやろうという気はなく、街外れの者たちを揶揄うためだけに首を突っ込む。勿論、彼らに気遣いの言葉をかけるわけでも、高説垂れるわけでもない。によによと卑下た笑みを引っ提げて、敢えて癪に触るであろう言葉のブーケを送ってみせる。その中心に珍客がいるとも知らずに。
(/絡み文が完成しましたので、投下致します。秦野様と出会うまでを書かせていただきました!まだ可惜夜は秦野様の存在に気づいていないため、煮るなり焼くなり好きに反応していただいて構いません…!)
連日の残業も終わり、帰宅後に着替えも済ませないまま、コンビニの安酒と弁当をローテーブルに並べて1人寂しく晩酌。惰性で深夜番組を付け、ぼーっと流し見ていたが、いつの間にか寝落ちしていた。体感では数時間程経った頃、心地良い風に靡かれた柔らかな感覚に擽られ、微かに目覚める。癖になった溜息のような大きな欠伸をしながら、時間を確かめる為に目を瞑ったままスマホを手探りで探す。いつもならテーブルの上に置いていたはずが、中々テーブルに手が届かない。というよりもテーブルに手が当たる気配すらない。覚醒し切らない頭と重たい上半身を起こして辺りを見回してみると、寝ていた床は埃の絡まった毛足の長いカーペットではなく、硬く小さな砂利の混じった土。自身を擽るのはクーラーの喉を枯らす冷気ではなく、心地良い自然の風と道端に生える雑草。
「外…??呑み過ぎた…のか……?いやいや、まさか…」
ここ最近の出来事の影響で深酒をする事も増えたが、夢遊する程の酒癖の悪さは無く、精々その場で寝込む程度。夢かと考えたが、夢にしてはあまりにも感覚全てがリアル過ぎる。自宅で呑んでいたはずで…と確かな記憶を辿りつつ、現代人らしく無意識にスマホを探しているが見つからない。この異常事態に焦りと怒りが込み上げ、一心不乱に無い物を探していれば、迫る人ならざる者達の陰にも気付かなかった。
背後にザッと土を踏む音がしたところで気配を確認しやっと振り返る。その時には複数影に取り囲まれていた。満月と蝋燭の灯りで薄ら照らされた物達は人型であって人間では無く、奇妙な雰囲気を纏った異形の者達。第二の異常事態に思考回路は遂に停止してしまった。近付きはせずボソボソと何かを此方へ伝えているが、今聞こえるのは激しく脈打つ鼓動。情けない事に次のアクションを起こそうにも腰が抜けて、地面に腰を付いたままジリと後ろに後退る事しかできない。完全なパニック状態に陥ろうとしたその時に、目の前の異形達より更に高い位置から野次が降ってきた。自身を囲っている異形達も一斉に声の主に注目する。
夢というのは現実で起きた出来事や記憶の整理とよく言われる。明らかに他の異形達とは姿も纏う空気も違ったその大きな異形は、化物の親玉で、迫る仕事を具現化した物だと自身に言い聞かせる。ただの現実逃避でしかないが、立て続けに起こる出来事は夢の中の1シーンが次々と切り替わる様と似ていたし、そうとしか説明しょうがない。そして、これは夢の世界で目の前に積まれた業務の山だと思えば恐怖は薄れ、怒りの火力が増していく。強張っていた体も緩んだところで、あくまで夢の中登場人物に対してだがやっと返事ができた。
「…はあ…夢の中で仕事が化けて出てくるなんて、休みなのに勘弁しろよ。…よく見たら各店の店長の顔に見えてきた…。そのデカい図体と嫌味ったらしい声も上司に似てる気がする。きっとそうだ…。なあ、俺は少し休みたいだけなんだよ、どっか行ってくれ。」
(/初回ありがとうございます!久しぶりのロルなので分かりにくい部分あれば遠慮なく仰ってください…。!!)
わざと小憎たらしい言葉を選んだとはいえ、余りにもわかりやすく目の前の怒りが増幅するので、大袈裟に肩を竦めてみせる。そこまで怒れるなら言葉にせよと視線を投げかけるも、返ってくるのは恨みがましい視線ばかりで。図体ばかりが大きく闘いの術を知らないのだから、組み敷くなり、急所を狙うなりして直接に怒りをぶつければ良いものを何故しないのか。その及び腰が外れ者と街住みの者たちに揶揄われる所以だろうに。せめて何か言い返してきたらどうだ、と口を開きかけたところに何やら言葉が聞こえる。やっと仕返す心積りができたのかと満足感を胸に視線を向ければ、足元に見慣れない客人を捉えて。声の主は静かに心火を燃やしているらしく、仕事やら上司やらと発する度に熱量が上がっているように思える。
「おや、これはこれは…随分と愛らしいお客人じゃあないか。可哀想に…こんなに混乱してしまって。いいかい、可愛いヒトよ。我々は知己の仲ではなく、此処は夢?でもない純然たる美しい世界さ。その証拠に…嗚呼、いや、今宵は新涼よろしく過ごしやすくて良い。お前さんもそう思うだろう?」
幻妖たちが集うこの街には似つかわしくないながら、繊細で可愛らしいヒトの子。どれ程の業を背負っていようが魂は純真無垢そのもので、彼らが穢れとしているものは穢れにあらず。少しの"よろしくない戯れ"に興じただけで魂の穢れを畏れる様は、一種の気高さを感じさせるほど。そんな愛嬌に溢れた存在を愛おしまずにはおれず、可愛らしい声に耳を寄せてしまう。よくよく話を聞いてみれば、どうやら街に来て間もないようで、我々を含めた街のことを夢だと認識しているらしい。幼子に諭すように夢ではないことを伝えてみたが、ふと一番わかりやすい指標があったと話題を変える。涼やかな今宵を認識できれば、きっと現実であることを思い出すであろうと。
「それにしても、随分と顔色が悪い…何と嘆かわしいことか。これでは愛おしむにも憚られる…ふむ、風も少しばかり強まってきたようだ。これ以上の長居は身体に障るだろうし、野蛮な者たちに襲われては夢見が悪い…どうか私にエスコートさせておくれ」
見知らぬ土地で見知らぬ者に囲まれたことがよくなかったのだろう。月光に照らされた貌が幾分白く思える。この愛い存在を囲ってしまわねばと提案すれば、ヒトの子の周囲で数段怒りが膨れ上がったように感じて。かつてヒトの子を乱雑に扱い、魂すらも喰えなかった不逞の輩が意見する腹積りらしい。ヒトの子を深く愛している私に楯突こうとは、いつから満足に魂を喰う技量を身につけたのか。分不相応にも程があろうと、昔年の失態を匂わせれば歯噛みするばかりで。やはり、彼等の存在は性に合わないらしく、つい小さく鼻が鳴るのも許してほしい。そんな瑣末な事はどうでもよいのだ。兎角、愛いヒトの子を可愛がるために、我が住処へ連れて行かねばならぬ。これ以上怖がらせては悪いと、努めて甘く優しく囁いてみせ。
(/久しぶりとは思えない素敵なロルでした…!秦野様も可愛らしくて、これからの絡みが楽しみです!)
「…は…?じ、純然た…え?…いや、そう思うだろうって言われても……。」
現代社会では聞き慣れない、昔話の登場人物や一昔前の紳士を思わせるような言い回しと、悪夢を見る子供を宥めるような様子に戸惑いが隠せなかった。またどんなに夢では無いと言われようが、それが現実世界に存在し得ない者の言葉では聞き届けられない。だがしかし、確かに五感に感じるもの全てが現実と変わらない、ハッキリとしたものだった。この化物の言う事が真実なのであれば、この美しい世界とやらで異端なのは人間の方…。そうとなればこの状況は非常に危機的だ。もしもを考えていつでも逃げられるようにと、そっと腰を上げて相手の様子を伺う。
そして次に紳士的化物から顔色を指摘され、手癖のように片手で目頭を押さえる。日頃からの疲労やストレスで目の下の隈は蓄えられ、それに加えて不可思議な出来事や危機的状況に気付き始めれば、血の気も勝手に引いていたようだ。取り敢えずでもこの場から離れられるのであれば、大人しくエスコートされようが、その紳士も例に漏れず異形の化物。そしてそいつから発せられる言葉や声音は胃もたれしそうな程甘ったるく、裏の意味や隠された敵意があるのではと勘繰る。また、今までの化物達の反応を見るに何やら格上の存在に見えた。この誘いが甘い罠とすればその後は…?最後まで連想するのも悍しい何かが待っているに違いない…。エスコートの誘いから数秒思考した後、恐る恐る視線を上げて相手を見据えると同時に、冷静さを装い声の震えを抑えながら、自分自身でも意外な程強気な回答をして。
「…ぉ、…お前が野蛮なもの達とは違う、紳士な化物だって証明できるなら、エスコートされてやる。これが夢か現実かもこの際どっちでも構わない。とにかく俺の味方である証明してくれ。」
(/とても綺麗な描写や言い回しをされる主様なそう言っていただけて少し安心しました…ありがとうございます!と言いつつ最後に無茶振りのようになってすみません…!)
全身で警戒心を顕にしたかと思えば、こちらの言葉に身じろぎする様は小動物のようで。期待を上塗りする愛らしさに、どうしてくれようかと加虐にも似た愛惜を抱く。初見参の相手の言葉を鵜呑みにせず、己が身を案じ続ける姿は、何と健気で愛らしいのか。甘い誘いにも按じているように見せた刹那、居丈高に証明を求める揺らぎすらも愛おしく、紳士然とした笑みが薄暗く歪む。今以上の警戒心を得て逃げられては敵わないと、咄嗟に口許を片手で覆って。
「ふふ…嗚呼、すまないね。お前さんが可愛らしくて、つい笑いが漏れてしまうのだ。さて、私がお前さんの味方かどうかだったね?何とも奇妙な…そうさね、ヘンペルのカラスもしくは悪魔の証明に準じるものがある。お前さんは随分と諧謔が巧みらしい」
また一つ愛い面を知ってしまったと嫣然と一生し、科を作って軽く首を傾ける。可愛いヒトには、味方か敵かを証明して見せろと言われたわけだが、どうしたものか。如何様な手段を賭したところで、こちらには味方であることの証明はできない。つまるところ、悪魔の証明を求められているというわけで。しかし、それを持って彼を得られるのであれば、悪魔だろうが天使だろうが立証して見せようではないか。
「愛しいお前さんに逃げられてはやり切れないからね。ここは一つ知恵を絞ってみようじゃないか。ふむ…私はお前さんの赦しがあるまで一指も触れず、お前さんは自由に接触できるとする。その証明は、この場でお前さんが私を小突くこと…で手を打とうじゃないか。勿論、証明の間も私から触れる事はしない」
見知らぬ相手からの物理的な接触がなければ、ある程度は心の安寧が保たれよう。そして、その可否を決める権限が己にあるとすれば、心強いのではなかろうか。様々な案を巡らせてはみたが、分かりやすく立証もしやすいものとなると限りが出てくる。提案したものは彼の協力を必須とすることが難点だが、彼さえ応じれば直ぐにでも証明できると言える。しかし、これだけでは信用を勝ち得ることは難しかろうと、彼が手を挙げても返報しない条件まで付け加える。とは言え、その条件も触れないという約束も信用を前提としているため、証明には程遠い稚策なわけで。結局、彼の柔い心に入り込むしかあるまいと、哀愁を含んだ笑みを浮かべ。
「いや、勝手なことを口走ってすまないね。お前さんから見た私は魑魅そのものだろうが、心の底からお前さんと仲良くしたいと思っているのだよ。どうか、この哀れな幻妖に慈悲をおくれ…?」
(/こちらこそ、描写を褒めていただけて嬉しい限りです!実際に自分が同じ立場にいたら、信用できるかよ!ってなると思うので、無茶振りでもないですよ…!どうやって攻略していこうか考えるのも楽しいので、もっと無茶振りしていただいてもいいんですよ…!!)
これが同じ人間の男同士であれば、人間の成人、しかも一般人に対して可愛らしいだの愛しいだの口にする奴は皆無で、言われたとしてそれは小馬鹿にしているか、そっちの対象が男だ。何なら数ヶ月前に離婚した元妻にだって言われたのは結婚する前、付き合った当初ぐらいだけだ。だがコイツは一言毎に必ずと言っていい程だ。だがそれは若い女が無意味に発する可愛いとは違い、可愛らしい人間=愛玩動物や捕食対象の可能性が高い。笑いが漏れると言って口元を隠すが、片方だけの瞳はまるで猫科の動物が獲物に狙いを定めるような鋭ささえ感じ。首筋から腰の方にかけてゾクゾクと悪寒が走った。更に夜風が強まってきたことも相まって鳥肌まで立つので、固く腕を組みひた隠す。これがまた相手を喜ばせ得る行動だというのに気付くには時間が掛かりそうで。
そして続けられた相手の言葉には初手同様に、聞き慣れない単語が多かったが、味方である証明しようと思案している事はわかった。今の時点ではまだ話の通じる奴らしいので、静かに相手の提案を待つ。意外にも回答は早く、非常に分かりやすい提案ではあった。しかし、その言葉を鵜呑みにして触れたら最後、一捻りされるか若しくは片眼から咲き乱れる不気味な花の毒か何かにやられるかもしれない。被害妄想もいい所だが、巨体の化物を目の前にすればそう考える方が正常な筈。つい「誰がお前なんかに…。」と口を突いてでるが、まずったと表情を濁らせ、最後の言葉を飲み込んだ。もうそこまで口にした時点で『誰がお前なんかに触れるか。』と全文口にしても変わらないだろう。相手の逆鱗に触れていない事を祈ったのも束の間、安直だという事は相手も理解していてダメ元での提案だったらしく安堵する。
そして先程までの胡散臭さや不気味さとは違った、哀愁漂う表情と情けを乞う発言にわかりやすく困惑してしまう。肉食獣から可哀想な迷い猫に変身する相手の作戦は効果があったようで、先程言いかけた言葉も気にしているかも?とほんの1mmだけ後悔の念を抱かせた。一瞬心が揺らぐが、厳つい未知の化物に何の力も持たない無力な人間が敵うはずはないし、こんな状況で情けを掛ける余裕も無ければ、元々自分は慈悲深い性格ではないと心の中で言い聞かせて。
相手の言葉に乗るか反るか、一世一代の大博打とも言えよう。酒も飲むし煙草も吸うのに、何故ギャンブルをしなかったが、相手に慈悲を与えて生を得るか死に伏すか、漫画のような生粋のギャンブラーならこの事態も楽しめたかもしれないのにと要らぬ後悔が募るが、ここで押し黙っていても時間の無駄だと思考に集中する。今までの相手から察するに、人間に執着しているらしく、単純に愛おしいからなのか何か利用価値があるからなのかは分からない。着いて行った先でどう扱われるかは分からないが、相手は如何やらこの世界の住人?らしいし、人間1人で元いた場所への帰還方法を模索するより、行動を共にした方が帰還できる可能性は高い。相手を信頼した行動を取り油断させておけば、何かあった時には逃げられる確率も上がるだろう。徐々に方針を固め、少しして腹を括ったかのように一呼吸すれば、恐怖心を隠す為だった腕を組み直し、証明を求めた時よりも毅然とした態度で、相手の希望も含む発言をして。
「…今のところ、仲良くするつもりはない。ただお前がさっき言った通り、何があっても絶対にそっちから俺には触れないことと、必要以上に近付かないこと。それと俺が元いた場所に戻る手伝いをしてくれるなら、すぐに仲良くはなれないかもしれないが信頼はする。まず信頼がなきゃ仲良くもできないし。これが出来るならお前に着いていく。」
(/攻略と思って頂けるならありがたいです…!!!難易度鬼とまでは行きませんが、出来るだけ現実思考でやっていこうかなと思います…!)
じぃっと愛しいヒトを観ていれば、不意に腕組みをして。かつて街に訪れていたヒトの子も、よくああして黙り込むことが多かったと記憶している。大抵は何らかの考えを纏めている間の癖だったが、目の前の彼はどうだろうか。肌が粟立っているように思えたのは、小夜風にあてられたためか、別の理由があるのか。何れにせよ、加虐心が煽られることには違いなく。此方から触れない事を提案した手前、何かしてやろうと思えど流石に自制心が働くもので。すっと目を細めて見つめるに留める。
「嗚呼、お前さんが聡いヒトで善かった。斯く許りに嬉しい事はない…と、あまりにも愛いので無意に抱擁してしまうところだった。約束を反故にしようとしたわけではないのだ、相済まないね。これでお前さんを損ずることなく嚮導できよう」
薄皮一枚は入り込めたのだろうか。先程までのしをらしさは何処へやら、ぱっと晴れやかな笑みを浮かべてみせ。腹の中は分からずとも、信頼しようと云ってくれる彼は紛う方なき好人物で。腹に一物あろうが、只々純朴であるより非常に好ましい。溢れる愛おしさに我慢が効かず、抱擁せんと身体を寄せるが、あわや髪が触れるところで踏み止まる。決して彼が提示する条件を無視したわけではなく、身体が意に反して勝手に動いてしまったのだ。私は悪くない。そう、ヒトの子があまりにも愛い事を言うものだから想いが溢れてしまったのではないか。私は、一寸も、悪くない。しかし、突然に大男が迫ってきたことで驚かせてしまったかも知れない。然程申し訳ないとも思ってはいないが、言葉だけでも謝ることにして。それより何より、この可愛らしいヒトが折れてくれたことが有難い。もし、此方の手を取らないとなれば、文字通り無理にでも手を引かせただろうから。心身ともに傷一つなく美しいままで連れ立てることの何と悦ばしいことか。何処ぞの不埒者とは違うのだと自尊心が磨かれる。
「さて、お前さんの許可も得たことだ、疾く此処を離れ街を案内したい。斯様に眇たる場所とは比較するまでもなく猥雑で賑やかな…兎角、筆舌に尽くし難い街でね。お前さんも御気に召すのではないかな」
必要以上に近づくなとの言葉を思い出し、パッと身体を離す。先程よりも小さく感じるヒトの子に、得も言われぬいと苦しさを覚えて。この愛い存在を抱くどころか、触れることすらできないことは非常に無念であが。それは扨置き、彼の気が変わらぬ内に暁闇街を案内せねばと、人好きのする笑顔を貼り付けて。あの素晴らしく刺激的な街へ足を踏み入れれば、きっとヒトの子は気に入ってくれるであろう。空腹にも睡魔にも苛まれることなく、望むもの殆どが叶う桃源郷。魂が街に溶けるその時まで、一番の特等席で総てを見せておくれ。
(/可惜夜が不審者然としすぎて怪しさ満点なので、まずは心を開いてもらえるように頑張ります…!)
まさか此方に触れるな近付くなと言ったそばから抱擁を迫られるとは思う筈も無く、動き出した巨体に驚いて身動きが取れず、恐怖でキュッと喉の奥が締まる感覚がした。ほんの少しでも揺らげば触れてしまう距離まで一瞬で到達し、月明かりは遮断され巨体の影に隠れてしまった。そして此処に着いた時と同様に心臓は大太鼓の様に力強く脈打ち、見開き零れ落ちそうな眼球は近付き過ぎた巨体に上手く焦点が合わせられない。
故意では無いと弁明するが、そうでなく本能的な物であればその方がタチが悪い。もし捕食されそうになったとしても、愛しいあまりについ、致し方無いとそれだけで済まされてしまう。そんな奴と行動を共にするなんて、とんでもない選択をしてしまった。
やっと条約を思い出した相手の体は離れ、再び月明かりに照らされる。無意識に呼吸を止めていたようで自然と息を大きく吸い、吐き出すと身体の強張りが少しずつ緩和する。遠くなった相手の表情は完璧な笑顔で、憎たらしくて仕方ない。職場でも腹が立つ理不尽も多かったが、今に比べたら何倍もマシで可愛いものだった。相手が化物でなければ性にもなく唾を吐きたいところ。実際はそんな事は出来ず「…次からは気をつけろ」と許してしまう他ないのがまた悔しい。驚きと恐怖と怒りと、こんな情緒のジェットコースターはいつまで続き、何処まで自分の精神が保てるのか不安が募る。そして早急に街へ案内をしようとする相手の言葉に続けて、殆ど意味をなさないであろう釘を刺す。
「へえ…繁華街的な所があるんだな。俺が気に入るかどうかはお前のエスコート次第。さっきの条件も忘れるなよ。」
自分の中での街のイメージは中華街のような異国情緒溢れ観光客や地元民等の活気のある街だが、きっと人間如きが想像できるような場所ではないのだろう。きっと間違いないのは住人は化物達だということ。果たして他に人間は存在するのか、それ次第で安全性や帰還の可能性が大きく変わる。この化物が言うには野蛮な者達から匿ってくれるような事を言った筈だが、その時にならなければ分からない。それなら到着迄に出来る限り情報は知っておきたいと思い、幾つ尋ねてみることに。そしてこんな状況で聞ける筈もなかったが、人間同士の初対面なら当たり前に開示し合う大切な情報について知らなかった事に気づく。自身の情報を与えるのは気が引けるが、お互いの信頼にも関わるだろうし、最初の質問にも丁度良いかと、歩みを進める事を促しつつ問いかけて。
「なあ、向かいながらでいいから色々教えて欲しい。街の事も色々聞きたいけど、まずはお前の名前。お前らにも名前ってあるよな?因みに俺は秦野 宏樹。」
(/対よろです…!!!
あと今更質問なのですが、暁闇街に行ってからその後の選択肢がざっくり常世へ行く、現世へ行く、魂を喰われるになると思うのですが、3つ目になると具体的に如何なるとかありますか?
例えば魂のみ喰われ肉体は脱殻のように残る、又は肉体も無に帰るのか、あとはゾンビ式に魂を抜かれた肉体から可惜夜様の様な人ならざる存在が産まれるとか…、もしあれば教えて頂けますでしょうか…!)
「あい分かった、重々気をつけよう。然れど…あまり可愛らしい反応をしてくれるな。私は慮外にお前さんを愛寵しているらしい。その吐息すら愛おしく、卑しい色慾に乱されるのだよ。此処でお前さんを掻き抱けないとは…斯様に口惜しいことはない。は、ぁ……先刻のお前さんの顔…アレは私以外に見せないでおくれ?これ以上に悋気深くなっては、お前さんをどうにかしてしまう」
可愛いヒトがいるであろう場所をチラリと振り返り、聢と着いてきているか確認を一つ。厭忌の籠った表情で再三の注意を促す一方で、此処で別れることはしないのかと鷹揚に微笑して頷いてみせ。気が触れても可笑しくない状況だろうに、何と気丈なのだろう。やはり、彼は今までに邂逅した凡ゆるヒトの子の中でも、特に愛らしく己が手の中にいることを懇請させ得る何かがある。斯くして暁闇街に案内しようというわけだが、魂を喰べることすら惜しく思える。あまりに可愛らしく在られては暁闇街へ辿り着く前に手を出してしまうと素直に彼へ云い、柳眉を八の字に歪めてみせ。彼と出逢い幾許の時間も経ってはいないが、健気な姿勢から果ては吐いた息に至るまで、まさに彼の総てを愛おしいと思ってしまうのだ。愛い面を一つ一つ振り返っていれば、先刻近づいた際の表情を思い出し。目一杯見開かれた両眼は此方を映しているようで捉えきれておらず、壊れた発条仕掛の玩具のようにハクと同じ動きを繰り返す唇。此方が離れれば、途端に呼吸の仕方を思い出したように膨らむ胸郭。その一連の恐怖に縛られた様相が愛らしく、悉皆心が奪われてしまって。今すぐ愛しい彼を何とかしてしまいたいと、甘美で淫靡な震えが背筋を駆け巡る。先は抑えたれた衝動が再び逆巻く予感に、熱く艶っぽい溜息が溢れ。何らかの間違いあって彼に触れた暁には、化け物よろしく理性が焼き切れたままに貪ってしまうと、間違えが起きないよう胸の前で両腕を組む。思わず力が入りすぎて爪が食い込んでしまったが、どうせ袖に隠れて見えぬのだ…一向に構うことはない。そして、街外の連中と同等の位置まで成り下がらなければ、それでよいのだ。
「名前とな…嗚呼、諱…否、私の場合は諡かね。まぁ、どちらでも良いな。私は…そう、可惜夜と呼ばれていたのだったね。お前さんは…秦野、宏樹…ひろき……ヒロキ…ふむ、宏樹というのか。実に口馴染みがよい素晴らしい名だ。宏樹…ふふ、これは何とも…つい呼びたくなってしまうな」
街に向かい始めたところで名を尋ねられ、名とは何だったかと歩みを遅くする。暁闇街の仲間同士でも、"お前さん"やら"そこの"やらと名で呼び合うことが少ないためか、久しく名で呼ばれていないことに気づく。以前は何と呼ばれていたのだったか、記憶を探ること寸刻。己が享楽のため醒めない夢を見せ続けるものだから、いつからか可惜夜などと呼ばれるようになったのだと思い出す。己が名よりも、可愛いヒトの名を知れたことの方が重要で。姿、言動も可愛ければ、名も愛らしいのかとつい意味もなく名を口にしてしまって。歩きながら鼻歌交じりに何度も彼の名を口遊み、身体に馴染ませてゆく。折角、ヒトの子から話題を提供してもらったのだ。此方も何かしら話題を振ろうな、と彼の名も口に馴染んできたところで問いを投げかけ。
「…して、宏樹よ。お前さんは、何か"彼方"で……いいや、彼方ではどのような生活を送っていたのかね。此処に来るようなことなのだから、まさか幸せ一色だったわけではあるまい?彼方ではどのような地獄を見てきたのか、此方しか知らぬ私に教えておくれ」
(/基本的に魂を喰べられてしまった場合は、記憶やら人格やらのその人らしさが消え、身体だけが残り、その身体も付き添う人外さんによって喰べられるか、自然に消滅するか異なると考えていましたが…魂を喰べるためだけに可愛いと慈しむのも動機づけが弱い気がするので、人外さんと情交したヒトが魂を喰べられ、人外さんや暁闇街、現世に未練が強ければ新しい人外さんとして生まれ変わる……って感じにしようかなと思います…!生まれ変わった後は、元の人格や記憶を引き継ぐも引き継がないも個体差ありとします。もし、現世に未練があった場合は、それこそ永遠に現世へ戻れない哀しきモンスターが爆誕してしまうわけですが…ヒトの魂を喰べればヒトに戻って現世へ帰れると考えて、ヒトを捕食しまくってる人外さんになってるかもしれませんね…!人外さんの話が出たので、序でに街の内外で人外さんの立場がどのように変わるのかも載せておきます!暁闇街の人外さんは、ヒトの子至上主義で余程のことがない限り、身体や精神を傷つけようとはしないです。魂を喰べる理由は特になく、ヒトが小腹空いたからとスナック菓子に手を伸ばす感覚とほぼ同義。魂を喰べる迄の過程を愉しんでおり、本能のままに喰い散らかす街外の人外さんを嫌っています。街の人外さんは、魂を喰べれば現世に帰れる、ヒトに戻れる、大きな力が手に入る…など何かしらの益を求めているため、魂を喰べるためなら平気で身体も精神も傷つける上に、喰べ方もまさに"喰い散らかしている"に近いです。ヒトを溺愛する街の人外さんを小馬鹿にしている一方で、中々ヒトの魂を喰べられないためおこぼれに与ることが多く頭があがらない…といった感じです。街の内外で大きな力量差はないですが、おこぼれ云々の関係上、外の人外さんが街の人外さんに強く出ることは滅多にないです。また、街の内外で元来住んでいた人外さんとヒトから生まれ変わった人外さんに大きな偏りはなく、それぞれの思想をもとに好きな方で生活しています。可惜夜は元々暁闇街に住んでおり、己の欲のためだけに魂を喰べて暮らしていました。そのため、人外さんもヒトの子も関係なくまぐわい貞淑とは程遠い生活を送っており、中には人外さんへ生まれ変わったヒトの子も存在したかもしれません。己の欲望のまま行動しているため、余程気に入った存在でない限り、記憶に留めているかどうかすらも怪しいです。今は秦野様がダントツのお気に入りで脇目も振らず心血を注いでいるため、例え秦野様が人外さんになっても交流が続くと思います…!長々となりましたが、現段階で考えていた設定はこんな感じでした!もし、付け加えやこの方が面白い!動かしやすい!というところがあれば、じゃんじゃん変えていただいて構いませんので、お手隙の際にでもお知らせ下さいませ…!)
「…そんな事言われて誰が2度もお前の前で驚くかよ。…はぁ…冗談であってくれ…。」
この化物のくどい台詞は読んだ事もない官能小説の台詞を想起させ、それが自身に向けられた物だとすると吐き気さけ催す。人間に対する執着が色欲に駆られての事で、もし相手の言うように掻き抱かれれば、死より屈辱的な何かが待ち受けて居るかも。相手が理性と衝動の衝突に?いている様は大きな背中に隠れて見える筈もないが、見たくも無いもので周りの暗い景色に視線を移す。そしてどうか全て冗談であれという祈りをポツリと呟き、此奴の前では2度と恐怖を見せまいと自身に誓った。
まず相手の名前を知る事はできたが、あまりに何度も自分の名前を繰り返し口にされるとむず痒い気持ちにもなり「あっそう…」と一言だけ返事をする。先程の失敗を踏まえれば余計な事は口にせず、感情を鎮めて大人しくしている事が得策であろう。化物相手に愛想を振り撒く必要も無いと考え、以降は此方から会話を振るのも辞めておこうと口を閉じる。しかし相手から話題を振られてしまっては話さない方が不自然なので一呼吸置いて出来るだけ感情を沈めてから口を開く。
「俺の生活は現代人にしたら案外普通の事で、地獄って程でも無い。特別に何かあったとか、別に無い。良くある事だし、俺は上手くやってたし、俺は別に何も、…。」
振られた話題はよりによって"彼方"での生活について。しかも不幸な内情を聞き出そうとは、周知の事だがなんて悪趣味な化物だ。5年間の夫婦生活が解消されてからこの数ヶ月で最も触れられたく無い、散々聞き飽き話し飽きた話題。やっと落ち着いていた所で再び穿り返されると気分も悪い。声色に出ないよう細心の注意を払ったつもりだが、内心私生活が破綻しかけていた事を悟られまいとする気持ちと、それは絶対に自分のせいでは無いと思いたい気持ちが鬩ぎ合っていた。
元妻に対しての未練は一切無い。でも彼奴がくだらない愛情を求めたせいで俺の未来ある生活が崩れていったんだ。俺は十分な愛情を注いで来たから5年も続いたというのに、それでも足りないと求め続けたから俺の世間体を犠牲にして彼奴を手放してやったんだ。寧ろこの自己犠牲を賞賛されたい。と一瞬思考に走るが今はそんな事はどうでもよくて、相手の言い振り的に此処は社会で地獄を見た者が来るらしい。そんな人間五万といて、これから行く街にも人間が居る事は期待出来る。しかし、やんごとなき事情があって社会に苦しめられる人間もいれば、そもそも社会に順応出来なかった人間もいて、近年では後者の場合も増え社会不適合者とも呼ばれる。勿論自分は前者で、仕事疲れが溜まっていた結果、この世界に送り飛ばされてしまったのだ。だから街中で自分とは相反する人間に出会ったとして、現世へ戻れるよう協力できるかは微妙なところ。それでも自分は社会からあぶれた人間には該当しないので、早く戻れる可能性も高いかもとありもしない余裕が生まれる。先程の発言から続けていけしゃあしゃあと自分と今までの人間は違うという事を延べて。
「まあ確かに少しは仕事が忙しくて疲れてたけど、それだけでこんな所に来させられるなんて、それこそ地獄だ。此処にくる人間は人生詰んだ可哀想な奴が多いのか?もしそうなら俺は上手くやれてたんだから、早く元の生活に戻らなくちゃいけない。明後日からまた大事な仕事があるんだ。」
(/こんなに詳しく教えて頂いてありがとうございます!!本当に素敵過ぎる世界観で感動してます…。ヒトに戻る為に人の魂を貪る人外さんは、喰べる度にヒトの心が失われてゆくんでしょうね…哀しい…けど此方としては美味しい設定です…!あとは可惜夜様に魂を喰われた元ヒトの子とのエンカウントとかもありそうですね(完結したとしてもスピンオフまで出来ちゃいそうな予感…)。秦野目線、なんやかんや言いつつも危険な誘惑から守ってくれる可惜夜様に揺らいでしまうかもしれないです……。とにかくめちゃくちゃ素敵です!今の所大満足ですので、何かあればお知らせします…!!)
「ほう、普通とな。宏樹に起きた総ては、彼方の大方のヒトが経験していると?それらを"普通"で片付けるには、聊か勿体無いと思えるが……例え、大衆が一斉に類似する夢を見ていたとして、其処で感じたもの、得たものはヒトの数より多かろう。万人がまるきり同じものを抱かないのであれば、普通ではなく特別になろう。ヒトの子は…宏樹は、少しばかり己が特別…そうさね、世界にとって唯一であることを自覚するといい」
普通のこと、よくあることと話す割には、何とも歯切れが悪く、そう思わざるを得ない環境に身を置いていたにしても不自然なもので。何度か彼のような人種…日本人と言ったか、それらのヒトの子は"慎ましい"という言葉が似合う自己犠牲の塊であったことを思い出す。常に周囲へ気を配り、不和があれば己が身を切って収める。幼い頃から規則やら規定やらに縛られ、少しでも背伸びをすれば歌舞伎者と揶揄される。弱き者を救い慈悲をかけることを美徳とし、己が余裕がなくとも優先させられる。さりとて、それらで首が絞まって行くヒトを、偽善者だの身の丈知らずなどと好き勝手に批評して救いの手を差し伸べない。山奥の湧き水の如く清らかにみえる上澄みの底では、ドロリとした泥濘が積もっているのだ。斯様な環境で育っていたならば、普通だから我慢せねば、みんなは頑張っているのに己は…と自己犠牲が根強くなるのも想像に易い。この世には普遍的な出来事はあれど、ヒトの子が起こす内容は普遍にあらず、それらに付随するであろう想いも陳腐とは程遠い…言うなれば至宝に値すると。可愛らしい彼が何を想起し、どのような判断を下して普通と評したのかは分かりかねるが、多少の無理を飲み込んで普通であろうとしたのならば、その枠から出してやりたいと思い。神ではない、然れど"普通"ではない己が彼にしてやれることはその程度なもので。この街で愛しい彼が彼自身を特別だと思えれば重畳である。
「…なぁ、宏樹よ。お前さんは、誰かが、もしくはお前さん自身が作った温かい料理を最後に食べたのは何時かね。その食事も只の栄養補給ではなく、食自体を愉しんで食べたのは?何にも苛まれることなく、ゆっくりと温かい布団の中で身体を休めたのは?気分転換に好きなことや趣味に没頭したのは?日々の愚痴から世間話に至るまで心置きなく共有できる御人は?総てとは言わないが、挙げたものの一つも当てはまらないのであれば、私から見て"上手く"やっているようには思えないがね……嗚呼、これは不躾だった、すまないね」
可哀想な者が来るのかと問われれば、概ね可哀想と思われるヒトの子が多かったなと頷いてみせ。しかし、それは今し方案内している彼も例外ではないわけで。まるで他のヒトとは違うと言わんばかりの物言いに、はてと首を傾げる。疲れの滲む顔は目袋に隈を湛えており、肌は不健康に生白く、お世辞にも順風満帆な人生を歩んでいるようには見えず。また、可哀想な者の前につけた"人生が詰んだ"という言葉にも引っかかりを覚える。もし、他のヒトの境遇と己が人生を顧みて判断したのだとしたら、あまり褒められた言葉選びではないと嗜め。かつて街に訪れたヒトの子が教えてくれた幸せな生活の条件を、つい矢継ぎ早に尋ねてしまい。まだ混乱の最中にあるかもしれない彼に、酷なことをしている自覚はあるが、吐いた唾は飲み込めないもので。ふぅ、と小さく息をついて謝罪を一つ。
(/いえいえ!上手く纏まらず、長々と書いてしまってすみません…読んでいただけて有り難い限りです!まさに人外に成り果てるか、人外さんとして街で華やかに生きていくのか…そのうち、ちょいモブで出しても面白いかな~など考えていました…!元ヒトの子との遭遇もいいですね!可惜夜は秦野様がいる時点で、その他に興味なしなので、出すとしても当て馬枠になりそうですが…崇拝している子も大好き好きで猛アタックしてくる子も、こんな身体にしやがってと恨みを持っている子でも捨て難い…妄想が広がります。今のところ、おちょくり感満載な可惜夜なので、もっとかっこいいところを引き出せるように頑張ります…!ご検討ありがとうございます!いつでもお待ちしております!)
「そんな、現代社会も良く知らないヒトの形をした化物の癖にそれっぽい事ばっか言って…。世界に1つだけの何とかってやつは、この世界にもあったんだな。」
まさか相手のような人ならざる者に説法を説かれる事があるとは思ってもおらず、くだらないと言わんばかりに一蹴する。有名な歌の歌詞にもなるように自分は世界で唯一の存在だと思う人は多いだろうが、自分にとってはただの慰めでしかなく、殆どの人間が似たり寄ったりで特別なのはほんの一握りだけと思っていた。社畜バツイチの一般人男性は日本だけでなく世界で見たらより一般的になるだろう。だから辛いとも思わないし、同情で周りの気を引くような卑怯な奴にはならない。
そして此方の問いに対して、ブーメランのように説教臭い問いが返ってくると表情は徐々に暗く歪んでいく。その時は相手に言われるがまま、ギシと奥歯を噛み締めるしか出来なかった。温かく楽しい食卓を囲んだのも、安らかな眠りについたのも、記憶に居るのは何年も前の若かりし自分。趣味の音楽もCDやレコーダーは物入れの奥底で眠り、持っていたギターも弦は錆びつき埃を被っている。会話をする人間は歳を重ねるごとに減っていき、数ヶ月前に最後の1人も出て行った。まさに全てが相手の言う通りだった。尽く図星を突かれていくと体の芯の部分が痛む。鋭い針で刺されるのとは違い、返しの着いた槍で一突きされ、引き抜かれるその時まで痛みを与えるようだった。破綻している事をひた隠す自分への恥じらいか、得体の知れない化物に哀れみの目を向けられた事への怒りか、熱いものが込み上げ身体の末端まで巡って行く。客観的に見れば化物は愚かな人間に目を覚まさせ現実を見せてやろうとしているだけだ。だがそれでも自分は上手くやっているという夢を信じて止まなかった。たった1人で身を粉にして働き社会の一部として生きる事は普通で、ギリギリだろうと自分だけは破綻せずに上手くやれていると思わなければ、今の自分は普通じゃない本当に可哀想な人になってしまう。自分を守れるのは自分だけ。その言葉通り、心に武装をし夢を見る事で守ってきた。それを簡単に崩されてしまってはたまったものではない。相手の言う通り幸せな生活と余裕があれば流せた事だろうが、此処で黙っているだけではいけない、何か言い返さなければいけないとボロボロのプライドを建て直そうと必死になる。相手の顔が見える隣まで大股で歩み寄り、見上げると同時に暗がりに浮いた白肌の相手をキツく睨みつけて言葉を吐き捨てる。
「……本当、不躾なも程があるだろ。俺は俺なりに上手くやってんだ。…ヒトを敬いたいのか、それとも馬鹿にして弄びたいのかどっちなんだよ。お前はただの変態化物じゃなくて、人の生活に土足で踏む混むクズだ。そんな奴に俺の事も彼方の世界も分かるはずない。」
いつもなら棘を吐くことで少しは楽になる筈だが、先程刺された槍の返しが引っかかってしまっているのだろう、傷が癒える事は無かった。それにこんなにムキになって余裕の無さを露呈させては相手の思う壺だっただろう。やはりこれ以上相手と一緒にいては精神が保たない。さっさと街に着いてこの化物とも離れた方が良いかとも考え。やり切れないような、不貞腐れた表情で「…それで…街にはまだ着かないのか。」と一言。
(/秦野もかなり臍曲がりなので第三者きっかけの方がより近付きやすい気がするので、当て馬モブさん大賛成です…!もしご要望あればキャラの方も此方からももう一体提供できますので!
意地悪な可惜夜様も背後の癖に刺さりまくりなのに、かっこいい可惜夜様も見れるなんて幸せこの上ないです…!!!)
「化け物なりに永くヒトを見てきたからな。実際にこの両眼で見ることは叶わなくとも、想像くらいはできよう。まぁ、生憎と片眼は潰れてしまっているのだから、正確には両眼ではないわけだが……して、幾分か心はスッキリしたかい?そう憤れるのであれば、私が心配せずともお前さんは聢と"宏樹"というヒトを認められているのであろう。いやはや、先のものは真に不躾な質問だった。お前さんの瞋恚も甘んじて受け入れよう」
烈火の如く此方へ詰め寄る彼は、怨嗟にも思えるような怒気を孕んでおり、彼の柔い処を踏み抜いたのだと改めて実感する。あれ程までに警戒心を露わにしていた相手に詰め寄るとは、些かお痛が過ぎたらしい。出逢ってから幾許も経っていない彼は、何処かぼんやりとしていて儚げな夢の浮き橋のような印象が強かったが、如何やら違うらしい。己の領分に踏み込まれて怒れる自尊心がありながら、己を唯一と思える傲慢さを持たない様は、此方の吐息一つで倒れそうに見えて倒れない奇妙なアンバランスさがあり、弥次郎兵衛を思わせる。また、今までに暁闇街へ訪れたヒトの子は己を見失っているケースが多かったため、己を護るために全身で憤れる彼には一種の眩しささえ覚える。突然、近づく彼の顔に喫驚し瞳孔がキュウと縮まるのを感じるも、怒りを真正面から浴びながらハッと気を取り戻どす。此方が全面的に悪いことがわかっている以上、多少の棘を含んだ物言いにも怒りは沸かないもので。更に深まっていく距離に、如何したものかと困ったように眉尻を下げて微笑してみせ。
「嗚呼、街までは5町…否、6~7町ほどで着こう。証拠というのも何だが、ほら…遠くに灯りと建造物の影が見えるだろう?そろそろ私の仲間たち、いやいや、お前さん風に言えば"化け物"だったな。ふふ…止ん事無い者たちが多いからね、化け物と呼ばれた時の彼等を思うと…ふ、ふふ…私だけ愉しんでしまってすまないね。何にせよ、私の傍を離れることはお勧めしないが、お前さんに誘拐されたい等の性癖があるなら止めはしないよ」
此方への信頼感は殆ど希薄になってしまっているだろうに、大人しく後を着いてきながらむっすりと不貞腐れた様子ではあるが、街までの距離を確認する姿の何と可愛らしいことか。思わず笑みが深くなってしまうのも許してほしい。彼の愛らしさを再確認したところで、街からは然程離れたところまで来ていなかった筈と目を凝らせば、遠くの方にチラチラと揺らめく灯りが見え、もう暫くで着く旨を伝える。街が目視できるようになれば、チラホラと己と同じような異形の姿も確認できる。既に来訪者の情報が広まっているのか、今宵は街の外へ出向いている者たちが多いように思える。可愛いヒトを己がものにしようと、知己の者もそれ以外のものも此方へ近づいてこようとする気配を感じて。籠絡されぬよう心して進むように言葉をかけるつもりだったが、これまでの会話を思い出し、彼には丁寧に忠告せずとも大丈夫だろうかと簡潔に言い換え。大凡、ここまで弱っていないヒトは久方ぶりのことだから、甘言を弄して近づいた者たちが返り討ちに合うであろう未来が予想でき、唖然とした彼等の顔を思い浮かべると笑いが漏れてしまう。こうして案内すべき可愛いヒトも、暁闇街に住む彼等も同じように愛おしいのだと思う。まぁ、彼等に伝えたところで面倒なことになるのが分かっているので、言うつもりも悟らせるつもりもないのだが。己が気付かないうちに慈しみの滲む笑みへと変わっていることも知らずに、街の方へと歩みを進め。
(/可愛い秦野様と可惜夜がお近づきになれるなら、当て馬でもモブでも何でも作っちゃいます…!今のところ、モブさん候補としてメンヘラ気質で色々やらかした結果帰るところを自分で潰し可惜夜に惚れ込んで人外さんになることを望んだ子と可惜夜の手管にまんまとかかって望まずして人外さんになってしまったため激しく憎んでいるけど甘やかされた日々が忘れられないウルトラツンデレっ子の2人を考えておりました!ヒトの子も複数人同時で暁闇街に来ることも可能なので、モブ人外さんとくっつくヒトの子がいてもいいのかな…とも考えてまして…!モブさんの詳細なご要望がありましたら、それらに沿ってPFを練らせていただきますので、教えていただけると幸いです!)
一方的な怒りをぶつけたにも拘らず、此方を気遣い、憤りと自身の過ちをも受け入れ、更に困ったような微笑みを浮かべる相手の様子が余計に気に食わなかった。まるで現世で見た、癇癪を起こした子供に接する親のようで、自分よりずっと余裕のあるヒトのように見えて不服ではあったが、その反面で受け止められた事にほっとしていて。もしかしたら勢いに乗じて思いの丈を吐き出して楽になれたかもという若干の希望さえ芽生えようとしていた。それでもまだ自制心、というか相手の手に堕ちてたまるかという負けん気は残っていたようで、心の隙間を見せぬよう暫くは不貞腐れた態度を変えず少し間を空けて着いていく。
そして相手の言う通り街の灯りに近付いている事も確認できて。街の灯りは現代の街灯とはまた違うぼんやりとした光を放ち、建造物も大きく見えるが高層ビルのような無駄に背の高い建物もなく、いつか行った国内観光名所の街を思い出される。相手の眼から垂れる花にばかり注目していたので特に気にしていなかったが、黒地に紅白の彼岸花が映えた和装姿で街の中に立てば映画のセットのようにも見えるだろう。少し街に興味が湧いたのか、歩きながら目を細めて街を見つめる。
「へえ、見た感じ良さそうな街だけど…。だって俺からしたら化物だし、他に何か呼び方がある訳じゃないだろ。…ちょ…誘拐される性癖なんて無いし、全然笑えないからな。てか化物に誘拐されるような街に行くのか?襲われる前に早く元に戻らないと…。」
街の仲間達の事で1人笑いを堪えつつ離れるなと忠告を受ければ、誘拐なんてとんでもないと言うように足早に相手と距離を詰めて隣を歩けばぶつくさと。相手と触れない程度の距離感ではあるが、先程までのやり取りや、最初の抱擁未遂を除いて、此方に手を出すような動きは見せて来なかったことで相手への距離感も麻痺してきているようだ。誘拐と言われると、シャンプーしている時に何となく背後に気配を感じるアレと同じで、何処からか突然に化物が現れるのではと周りをキョロキョロと見回す。その時に何となく相手の様子を見ると、嫌味ったらしい胡散臭い笑顔が何処か違和感があり、笑顔なのに哀愁を感じるその表情について、何かあるんじゃないかと眉を顰めて尋ねてみて。
「…それは何の表情だよ。そうゆう顔されると、何か起こるんじゃないかって構えるだろ…。」
(/ちょろっと聞いただけでもどちらも可愛いモブさんで…!!!PFと言うより構成的な所になってしまうのですが、超ツンデレ人外さんが出てくるなら、秦野が可惜夜様に堕ちかけたり堕ちた時に登場して、秦野を自分と同じ目に合わせないという口実を使って2人を引き裂き、可惜夜様を取り戻そうとしたり…。メンヘラ人外さんはもう思う存分メンヘラを発揮して頂ければそれだけで美味しいので第一の刺客としてもいいかななんて…。勝手に妄想が膨らんでおります。あとは魂を喰われて人外になった場合は、可惜夜だったら同じ右眼から花が咲くけど種類は違うとか、別の場所から同じ花が咲くとか、結晶化部分でもいいですし、何かしら親から子に遺伝するような感じでもいいかなあ…と。遺伝が必然でも良いですし、喰らう側に遺伝させるさせないの選択権があって、儀式的なものがあっても面白いかなと…!これ面白いかなー…?ってぐらいなので、聞き流してもらっても構いません…!!!
モブさんPFを作られるのであれば、此方もヒトの子PF準備致しましょうか…!?父性溢れる純朴で人を疑わないばかりに不幸に見舞われる男性とか何処か可惜夜様に似て人を沼らせてきた罪な男性とかとか…。いつでもご用意できますので^_^ )
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