アスティ 2024-06-05 12:58:40 |
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飲み比べはどうかわからないが、少し強めのヤツを少量飲むモノだな。ま、お前さんも知っての通り俺はそんなに酒強くないから、こういうのが合ってるかなってさ。
(早々に酔い潰れ引き摺られて帰った記憶…正確には残念ながら記憶はないのだが、後から補完したそれらの出来事を思い出して苦笑し)
それにこういう物って用途もそうだが、それに纏わる思い出みたいな物が宿るというか。手に取って感じたことや、その当時の出来事や考えたことなんかを後から思い出すことがあったりして、面白いなって思うんだよ。へへ、それじゃコイツを貰うしようかね。
(常闇の国で小さなグラスを二人で眺めた出来事、その日触れた相方の手の暖かさをいつか懐かしむ時が来るのだろうかと、ぼんやりと考えながら思ったことを口走って。どうやらアスティも気に入った様子、それなら決まりだとドワーフの店主にそのグラス二つの購入を告げて)
ふふ、そうだよねわかるよ。思い出の品ってそういうものだから……でも、暫くは後になって振り返るだけの思い出にはしたくないかな、これにまつわる楽しい思い出もいっぱい増やしていこうね
(購入したそれをしげしげ眺め、相方の言わんとすることに理解を示して頷くと荷物の中に丁寧にしまい込んで。思い出を振り返るなんて言うと少しばかり感傷に浸ってしまいそうにもなるが、思い出は紡いでいくことも出来る、永遠に続くものなどこの世にはなく、いつかは必ず終わりが来る旅だがそれまでにどれだけ彼と心通わせかけがえのない時間を過ごせるか、それは今後の自分たち次第で、願わくばこの先も末永く二人で旅先で笑い合ってこのグラスを手にして酒を酌み交わせる、そんな日々を積み重ねていきたいと微笑んで)
ロゼ、今日は本当にありがとう。デートなんて、私はこういうの初めてだったからどうなる事かと思ったけど、すごく楽しかったよ。……明日からも、変わらず旅の相方としてよろしくね
(デートの正解というものがどうなのか、自分ではあまりよくわからないが、一緒に綺麗な景色を眺め食事をして、お揃いのグラスまで購入した。それは実に充実した時間で、誰がなんと言おうと自分の中では最高のデートだったと断言することが出来て。突拍子もない自身の申し出に付き合ってくれた相方への感謝の気持ちと、ほのかな恋心……デートの締めくくりとしては些かささやかではあるがそれでも今の自分たちの関係的にはこれぐらいが丁度いいと、目の前に歩み寄って軽く伸び上がって頬に軽く触れるだけの口付けをして、明日からも大事な旅の相方として一緒に歩んでいこうと、頬を僅かに上気させてはにかみ笑いを浮かべ願いを口にして)
こっちこそありが……ああ、そうだなっ。明日もきっと色んなことがあるんだろうぜ。こちらこそよろしく頼むよ。
(思いがけないアスティの行動に驚き一瞬言葉を失うも、その後向けられた彼女の優しい笑みに自然と穏やかな気持ちになり、明日からの冒険に思いを馳せて。のんびりと宿へと歩きながら、なんとなく彼女の唇が触れた自身の頬に指先で触れると、滞在期間はさほど長くは無かったが色々なことがあった常闇の国、この幻想的な柔らかい光とそこでの出来事は、生涯忘れることはないだろうとぼんやり考え)
さぁて、次の目的地を決めようかね。そろそろ体に日の光を思い出させてやらねぇと、ほんとに俺たち夜行性の生き物になっちまうぜ。
(体内時計が随分と狂っているのではないかと、だらしなく欠伸をしながらアスティを眺め明日からの行く先を相談し始めて)
そうだね、ここの景色は素敵だったけどそろそろ日の光が恋しいよ。次の行き先は宿に戻ってからゆっくり地図でも眺めながら……!あなたはっ……
(久しく日の光を浴びずにいたことで、改めて普段頭上に燦然と輝いていた、あって当たり前の温かな光のその有り難みを実感させられるのと同時に、ここでの生活に完全に順応するのは自分には難しそうだと苦笑いを浮かべ。次の目的地についてはこれまでとは違い漠然とした案すらもないが、それならそれで地図を眺めながら二人で行き先について話し合って決めるのも一興、宿に帰ってからの新しい楽しみが出来たと胸を躍らせていると眼前には銀色の髪をした一見すれば人間と見紛うほどの精巧な少女の人形、ソリスが立っていて)
『ご機嫌麗しゅうございます、アスティ様ロズウェル様。先日のガイアシザー討伐の折は大変お世話になりました!』
(普段一緒に行動していると思われるアルバスの姿は目の届く範囲には見当たらず、彼女一人のようで。こちらへ向けて恭しくお辞儀をすると礼儀正しく挨拶をしてきて)
私達に何か用……?
(何故彼女がここにいるのか、偶然の可能性も勿論あるが後をつけられていたと考える方が自然だろう、目的は現状ではわからないが得体の知れない正体不明の気味悪さを感じる二人組のその片割れが突然目の前に現れたことに、先程までの浮ついた気持ちは完全になりをひそめ、警戒心をあらわにして見据えて)
『……マスターのご命令です、アスティ様……ご容赦くださいませ。……ロズウェル様、マスターが貴方様と個人的にお話しがしたいそうです、要求を聞き入れてくださればアスティ様は解放するとお約束します、勿論聞き入れて頂けますね?』
(アスティと対峙したソリスは素早く手を前に突き出せば袖口に仕込まれていた小さなボウガンを放ち、そこから放たれた矢が肩にヒットした瞬間脱力し倒れ込みそうになったアスティを抱き止めると、その首元にボウガンの鏃の先端を向けながら目の前の彼へと抵抗をしないよう牽制しつつ自らの要求を伝えて)
…よう、珍しく一人でお散歩かい。どっちかってーと、ご主人様は明るいお天道様の下よりこういう仄暗い場所の方が似合う気がするけどなぁ。
(ソリスの姿を確認すると、やや強張ったアスティの様子に気付きわざとらしく軽口を叩き。そのままアスティとソリスのやりとりを眺めるも、不意をつくような一撃を肩口にもらい崩れ落ちたアスティ、ただの矢ではないことは明白)
ッ!!…てめぇら、何企んでやがる…?
(穿ち焔の柄に手をやるも、アスティを人質に取られたこの状況で強硬手段に出ることはできず、その機械仕掛けの瞳を睨みながら問うて。睨み合いを続けながら、攻撃をするでもなく逃げるでもなく、その様子はソリスが投げた要求を不本意ながらも聞き入れようとしていることを暗に告げて)
ロ……ゼ……ごめ……
(襲いくる強烈な眠気、力が入らず全く言うことを聞かない身体に微かに残る意識で、まんまと人質として取られてしまうという失態を演じたことを相方に向けて言葉を振り絞って謝罪しようとするが、途中で力尽きて完全に昏倒してしまい)
『その質問への答えはマスターがお持ちです。……出立の準備が済み次第、西側の出口までお越しください』
(最初に出会った時の口数の多さからすれば嘘のように表に出す感情は薄く、一切余分な事を話さずにまるで機械的に主命だけを果たさんとしている様子が見て取れて。その一方で宿屋に置いたままの荷物などがあるだろうと、その辺の配慮は欠かさなかったりと人質をとって行動を強制する悪辣さとはアンバランスなようでもあって)
(人質としての利用価値を鑑みると一次的な昏倒だとわかっていながらも、意識を失う相方を見遣り腸が煮え返り)
…アスティに少しでも妙なことしてみろ、稼動させたままバラバラに分解してやる。
(悪態を付きながらソリスに背を向けて宿へと向かい。魔力を原動力として動く人形に対し脅しなどまったく意味はないだろうが、言わずにはいられずに吐き捨てた自身の行動にも苛立ち。乱暴に荷物をまとめながら、つい先ほど購入したグラスをちらりと眺めれば怒りと不安が入り混じり苦々しい表情を浮かべて。それでも…ここで逆上しては向こうの思う壺、意識を落ち着かせて宿を後にして)
…よう、待たせたな。
(西側の出口へと二人分の荷物を背負い現れ。念のため、闇に包まれた周囲にアルバスが潜んでいないかをちらりと探りながら、ソリスに声を掛けて)
お待ちしておりました。……ご安心ください私のマスターは闇討ちなどは致しませんので、さあどうぞこちらへ
(待ち合わせ場所へと逃げることなく現れた相手、人質をとっているのだから当然だが、本当に彼は打算も何もなくこの堕天使のこと大事に想っているのだなと、疑っていたわけではないが主人から聞いていた堕天使という存在の悍ましさを考えれば驚くべきことだが、態度には出さず。周辺を気にする様子を見せる相手の振る舞いに意図を理解し、不意打ちで人質をとったりと十分に卑劣な手段を講じた後では信用はないだろうが、とにかくこの場にアルバスは居ない事を重ねて伝えるとアスティを軽々肩に乗せ担いだまま踵を返し森の奥へ歩き出し)
これから向かうのはマスターの生まれ故郷のその跡地……そこでマスターはお待ちです……堕天使によって刻み付けられた同じ痛みと苦しみを知るロズウェル様を……
(少しずつ周辺に深く茂っていた木々が次第に減っていき、久方振りに夕刻時を告げるオレンジの陽の光が彼女たちの身を照らす。堕天使と関係があるとされる災禍の楔と呼ばれる大いなる暴の力、それによる惨劇の地が目的地であることを伝えると改めて彼の過去については粗方調べがついていることを示すように話し、歩みを更に進めていくと元はアルバスの故郷へと繋がる街道があったのだろう、剥き出しの土の上に無造作に伸びた雑草という荒れ果て、荒廃した景色が広がっていて)
…そのようだな。
(砂漠の国で見た彼女の飾らない性格、魔力で動く人形とわかっていてもその印象は悪くはなかったが、相方を人質に取り選択肢を与えない交渉の進め方に自身の単純な認識を忌々しく重い。それでも、主人が傍に居ないというのは本当なのだろうと、周囲への警戒を緩め)
……お前…クソっ
(ソリスが呟いた言葉から、自身の忌まわしい記憶を擽るようなアルバスの物言いを思い出して。大方自身の過去は主人からインプットされているのだろう、小さく悪態をつくと、脳が忘れていた陽光の明るさに眩しさを感じ、手の平でその沈み行く太陽の光を遮りながら苦々しい表情を浮かべ荒れ果てた地をゆっくりと歩いていき)
(互いに無言のまま荒廃した土地を進んでゆくと、やがて砂漠でも見たような、楔が打ち込まれたことを示す深く抉れた大地が見えてくる。深穴の周辺には倒壊した木造の建物の残骸などが散乱しており、そこそこ栄えた街であったことを示すように大きな建物の痕跡も点在しているが、今では見る影もなく)
マスター、ロズウェル様をお連れしました
(深穴から僅かに離れた街外れ、そこには屋根や壁がボロボロにはなっているものの、爆心地から外れていたおかげか他の建物よりは比較的しっかり形の残った教会だったであろう建物が佇んでいて。ソリスはその建物の裏側へと周りこめば、そこに存在する背が高く朽ちて葉が落ちた木の下に佇む真紅のロングコートの背中へと、自身に課せられた責を全うしたことを伝えて)
『ご苦労……。よく来たなロズウェル。歓迎するぞ、息災であったようで何よりだ』
(アルバスはゆっくりこちらを振り返ると短く自身の魔導人形を労い、相手の方を見やれば、あまり感情の込もらない抑揚のない口調でそう語りかける。彼の足元の木の根元には表面に何か文字らしきものが刻まれた丸い石、その側には真新しい白い花束が添えられており、それが何者かの墓標であることを示していて)
(ソリスに連れられ辿り着いたのは朽ちた教会を思わせる寂れた建物。彼女が声を掛けた男の後姿に目をやりながらも、ちらりと男の足元の墓石を見遣り)
何が歓迎だ。さっさと要件を言えよ。…返答次第で叩っ切るぜ。
(刀の柄に手をやりながら低く落ち着いた声で言葉を投げ。2対1、かつ先日のガイアシザー戦で見せたアルバスの戦闘スタイルとその身のこなし、仮にサシでやったとしてもその結果はわからない。研ぎ澄まされた神経がささくれ立つような感覚を得ながらも、アルバスからは殺気、いや、一戦を交える気すら感じられないようでやや混乱すると、それは次第に苛立ちに変わり)
てめぇ、みっともなく人質まで取って何しでかそうとしてんだ。答えやがれ!
(やや語気を荒げ吐き捨てて)
何故お前はよりにもよってこの娘と行動を共にする、お前にとって堕天使は忌むべき仇ではないのか?後悔、憎しみ、怒り……お前を苛み続ける深い傷は、この呪われた血を持つ存在によって刻み付けられたものだろう
(腹立たしげに声を荒げる相手とは対照的に、落ち着き払った態度でソリスが抱える堕天使の少女一瞥してから、相手からの質問には答えようとはせず、堕天使は相手にとっても大切なものを奪い去った許し難い憎むべき存在ではないのかと逆に一方的に質問を投げ返し)
ロズウェル、俺はお前と戦うつもりはない。……むしろ良い同志になれると思っているのだ、俺とお前が手を組み、そしてソリスの力があれば必ずや天界の驕り高ぶった聖者の皮を被った獣どもを一掃できる……今度は奴らに教え込んでやろうではないか、奪われる者の痛みを…!苦しみを…!
(静かに、しかし次第に膨らんでいくのは負の感情。絶大な権力と発言権を持つセレスティアル家の統べる天界を堕とす……そんな驚くべき計画を目論み、そしてその計画の一端を彼にも担わせようと言う。これまでの落ち着き払っていた態度が嘘のように目を見開いてギラつかせ狂気に満ちた表情浮かべて両手を広げて声をあげる様子は、妄執に取り憑かれた狂気の復讐者そのもので。そんなアルバスの様子を横目で見るソリスはただ黙って静かに瞳を伏せて)
…天界を…だと?
(堕天使に対して何かしらの思惑があるのだろうと踏んでいたが、その野望の大きさに思わず声を出して。自身のトラウマを刺激するような言葉が呼び覚ますのは、あの惨劇と妹の亡骸。しかしながらそれらと同時に浮かぶのは短くも充実した旅を共にした相方の優しげな面影)
確かにお前の言うとおり、奪われた痛みも苦しみも忘れることはないだろう。あれを引き起こした元凶の息の根を止めない限りはあの世に行けねぇと思ってる。…だがな、それと天界をどうこうしようってのは、また別の話だろうに。
(かつてアスティが話した彼女とセレスティアル家に纏わる過去。モルドールと滅びの山での様々な出来事が、昨日のように脳裏をよぎり。ふとソリスの憂いを帯びた機械仕掛けの瞳に気付くも、その意図は読み取れず)
天使など皆、二面性を持つ獣だ……。この地『エルマナ』はな、かつて天使を崇拝していた土地だ。俺たちは物心がつく頃からずっと来る日も来る日も奴らに感謝の祈りを捧げ、生きてきたのだ……天使こそが世に調和と安寧を齎す聖なる存在であると、そう信じて疑わなかった……!だが、その結果がこのザマだ……!堕ちた同胞が地上で何をしようが奴らは素知らぬふり、それが邪悪以外のなんだというのだ!?……故に奴らは等しく罰を受けるべきなのだ
(天使全てが悪ではない、憎むべき仇は別にいるのだから天界そのものを堕とすのは筋違いである……相手の言い分を最後まで聞いた上で、改めてこの土地がどういった場所であったのかを語るアルバスの投げかけた視線の先の古びた教会、割れたステンドグラスに描かれるのは辛うじて天使モチーフのものであるのがわかり、かつての信仰こそが天使そのものへの憎悪に繋がっている事を示していて)
憎むことでしか救われない思いはある。ならば憎めばいい、誰かに遠慮することはない。お前にはその資格がある……だが、憎むばかりでは自分を毒するだけだ。それを然るべき相手に受け止めて貰わねばならない。そうして世の中の痛みは正しく循環していくべきなのだ。さもなくば……報われない魂が生まれ……それはやがて、亡霊となり己を苛み続けるだろう……お前にも身に覚えがあるのではないのか?
(先程までの狂気的な振る舞いから一転、まるで聖職者が信者へと教えを説き、導くように口にする。相手が砂漠で見た過去の呪いにも似た記憶を体現した何か、あの夜のことまでは流石にアルバスも知り得ないようだがそれでもそれに近しい経験をしたことがある、そんなことを匂わせるようにそう語りかけては、ソリスの元へと歩み寄る)
ソリス、そいつをこっちに寄越せ……なんだ、その目は……道具のくせに言うことを聞けないのか?
『……承知いたしましたマスター……』
(アルバスはソリスの前に立つと、彼女の抱えているアスティをこちらへ受け渡すよう命令する。伏せていた顔を上げアルバスを見やるソリスは悲しみか罪悪感か、はたまたその両方の感情が綯交ぜになったような瞳を一瞬揺らがせ、僅かばかりの沈黙……しかし、最後にはその命令を聞き入れたソリスはアルバスの両腕にアスティを委ねて)
自分を毒するだけ、かい。あぁ、それは理解しているよ。ただ、そいつとどうやって付き合っていくか、俺はまだ答えを出せていないんだよ。
(荒廃したこの地とその顛末が導く成れの果てを語り、心の内側に入り込んでくるかのようなアルバスの声を聴き入りながらも、アルバスの動作にはっとして)
…ソリス、お前にだって考えがあるんだろう!言ったらいいじゃねぇか、機械だろうが人形だろうが関係ねぇだろ!
(ソリスの瞳の動きを見遣り少し声を荒げるがその言葉はソリスには届かなかったのだろう。アルバスに支えられダラリと腕を投げ出したアスティの姿に腸が煮え)
…アルバス、そいつをこの場でどうしようって魂胆かは知らんがな。これ以上アスティに何かしてみろ、刺し違えてでもこの場でお前の首を刎ねるぜ。
(声のトーンを下げながらも、毅然たる態度で言い放ち)
……交渉は決裂のようだな、残念だ
『マスター……!ここで血を流すべきではありません……、ここは……あの方の墓前です……!』
(何故こうもこの堕天使の娘の肩を持つのか、理解に苦しむといった様子で、これ以上の交渉は無意味であると悟ればアスティのこめかみに銃口を押し当て、差し違えてでもと言い放つ相手のことなど歯牙にもかけていない様子で引き金に手をやる。しかし、そんなアルバスの凶行を止めるべくソリスが脇から走り込んできたかと思うとその手を掴んで銃口をアスティの頭から引き離し、アルバスの背後にある墓標へと目線を投げかけてから、哀願するようにその冷酷な表情浮かべた顔を見上げ)
……!また、その目か……!紛い物のその目を俺に向けるな……!お前のような人形に彼女の何がわかる……!
『マスター……うぅ……』
(ソリスから先程と同じように作り物とは思えない感情のこもった目を向けられた瞬間、アルバスはまるで我を忘れたように彼を前に人質をとっていることで一時的に優位に立っている立場であるということすら忘れたように激昂しソリスを思いっきり殴りつけて大きな隙を晒して)
止めろっ!!
(アスティに突きつけられた銃口、引き金を引こうとする指先、全てがゆっくり見えて。こんなところで終わっちまうのか、そんなわけないだろう、ゆっくり見える光景と真逆に数多の感情が溢れて。それを打ち破ったのはソリスの悲痛な声。この場で最も情緒的な色を含んだ声は、皮肉にも魔導人形である彼女の口から発せられ)
…アルバス、てめぇ…!
(投げかけられた言葉に感情を昂らせソリスを殴りつけたアルバス、その光景が再び怒りに火をつければ、穿ち焔を抜き払った身体は飛ぶようにアルバスへと距離を詰め刃を払い。それでも、脳裏に浮かんだソリスの悲しげな瞳がそうさせるのか、彼の首筋に叩き込まれようとするのは、逆さにした刀の峰)
ぐっ……貴様……!
(彼のような手練れを前にしては一瞬の隙が命取り、怒りに身を任せた行動で失態を演じたアルバスはその一撃をなんとか回避しようと試みるが刀の峰による打撃は避けきれずに肩口に吸い込まれ、骨を砕き。ダラリと腕が垂れ下がり両手で支えていたアスティの身体が地面にドサっと落下し、思惑をめちゃくちゃにしてくれた相手に向けて憎々しげな目を向けて)
罪の所在を知りながら死者の無念を晴らそうともしない……あまりに怠惰!貴様のような者こそが最も唾棄すべき人間だ。貴様だけはこの場で……!
『マスター……!無茶です、そのような傷で……!どうしても……ロズウェル様と相いれぬとおっしゃるのでしたら、私が戦います……ご命令を!』
(もはや、理屈ではなく本能で彼を相いれぬ存在と認識したアルバスは勝算も何もかもかなぐり捨ててただ、感情任せに拳銃を彼へと向けるが、片腕の自由を奪われた状態で勝てるような相手ではない、そんな狂気とも取れる主人の行いを咎めるのはソリスであり、あんな酷い仕打ちを受けた後だというのに二人の間に立ちはだかると何よりまず主人の身を案じ、眼前の敵の始末を命じるように毅然と言い放ち)
……っ……もう良い……この場はこれまでだ、退くぞ
(強い覚悟に満ちたソリスの口調と眼差し、それを見たアルバスはハッと目を見開いたかと思えばビックリするぐらい一気に気持ちを落ち着けて沈静化し、自分たちの戦略的敗北を素直に受け入れると地面に倒れたアスティへ拳銃向けて牽制しつつそのままその場を去って行って)
(屹然としたソリスの振る舞いと、機械仕掛けの人形とは到底思えない瞳の色を見遣り、無言でそのやりとりを眺めて。自身が彼等へ刃を向けるのと、おそらく本質はきっと似たもの。それであれば、覚悟を決めたソリスを言葉で止めるのは不可能だろう)
―
…アスティ、おい、しっかりしろ!
くそっ、なんだってこんなことに・・。
(その後彼等の姿が見えなくなると、アスティの元へ駆け寄りその身体を抱き起こし揺らして。医術は愚か、応急処置の知見すらない自身の体たらくを悔やみ。物理的な損傷ならともかく、意識を失った状態のアスティには穿ち焔の治癒の力を当てにするわけにもいかず)
……っ……う、ん……ロゼ……?私、どうなって……
(受けた矢に使われていた毒は単純に強烈な眠気を誘う類の物であったようでしばらく経って、昏睡状態から目を覚ませば記憶の混濁や肉体的なダメージ等はなく、気を失う直前の状況も明瞭に覚えていたため眼前にある見慣れた相方の顔を見て一度瞬き、それか周囲に目をやれば見知らぬ周辺の景色、そして自分が意識を失う根本的な原因となった元凶の姿もない事など様々な疑問が押し寄せ、少し混乱している様子を見せながらもゆっくりと起き上がり)
……?ロゼ、見て……!これって……
(相方の腕の中で目を覚まして起き上がったすぐそば、そこに置かれた丸い石と花束に目線がいき、何気なくその墓標らしき石に刻まれた文字に目を向けると驚愕したように目を見開き、相方の袖を慌てて引き、そこに刻まれた文字へと注意を向けさせる。そこに書かれた死者を弔う言葉自体は何もおかしな事はなかったのだが問題はそこに眠る人物を示す名前で『愛する想い出と共に安らかに"ソリス・ミルフィオール"』あの魔導人形と同じ名前、それが単なる偶然かそれとも……考えるまでもないだろう、まだ状況は理解出来ていないが、自身が気を失う直前までの状況を考えれば恐らくこの地は彼らにとっての何らかの因縁の地、そこに同名の人物の墓標がある事は間違いなく意味があるのだろうと神妙な表情を浮かべ)
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