女子生徒 2024-04-30 23:32:52 |
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お返し。
( 彼女からの可愛らしい悪戯タイムを強制終了させるかのような反撃は上手く決まったようで、そこら中に飾りのモチーフとして置かれているサンタの服のように真っ赤に染まる彼女の頬と言葉になっていない声が漏れ出る様子に満足そうに笑えば小さく舌を出して。とはいえ彼女から名前呼びをされるのは周りからの邪推を逃れるためもあるので一向に構わないのだが、さすがに自分の方はいざという時以外は苗字で呼んでも差し支えはないだろう。「ほら、固まってないで行くぞ御影。」とくすくす笑いを抑えようともせず、視線を逸らした彼女の頭を軽くひと撫でしては止まっていた歩みを進めようと促して。少し遠くには寝具や机といった家具類が見えており、その一角にいくつか目的のソファを見えているので。 )
い、……いじわる…!
( ついさっきまではこちらがからかう側だったのにあっという間に形勢逆転されてしまったのが悔しくて、其方を見なくても今彼がどんなお顔をしているかなんて一緒にいる時間が長いみきにとっては簡単に分かってしまうこと。ぐぬぬ…!と悔しそうに頬を膨らませて小さく言葉を零したものの彼に頭をひと撫でされてしまえばなにだか怒るにも怒れなくて、未だ赤みの引かない頬をそのままに残念ながらいつもの苗字呼びに戻ってしまった彼について行くようにぷくぷく頬をふくらませたたまま少し先に見えるソファコーナーへと歩き始めて。そうして漸く目的のコーナーまでたどり着けばやはり大型店というだけあって1人用からファミリー用まで様々な形のソファが置いてあるのにみきの瞳は怒っているのも忘れてきらきらと興味深そうにソファたちを映して「 いっぱいある…! 」とキョロキョロと目移りしてしまいながらも1,2人用のソファの方へとしっかり歩を進めて。 )
んー、どれがいいか……
寝落ちしても体痛くならないやつとか……、
( ぷくりと膨らんだ頬と悔しそうに一言だけ零しながらも、こちらが頭を撫でるだけで反撃や反論が出来なくなる彼女が面白くて可愛くて。けらけらと楽しげに笑いながら辿り着いた販売コーナーには様々な色やデザインのソファが所狭しと展示されており。高校生でこういった所に用事があってくる事なんて滅多にない(少なくとも自分は無かった)のだろう、きらきらと瞳を輝かせて目移りさせる彼女を見ては優しく微笑んで。そのまま一緒に求めるサイズのソファが置いてあるコーナーへ赴けば、座面の柔らかさを手で押して確認したりしながら色々なソファをざっと見やって。「御影、気になるやつあったりする?」と、本日コーディネーターに指名している彼女に意見を仰いでみて。 )
あ、ダメだよ司くん。
寝心地いいやつにしたら今日はここでいっかってなるでしょ?
( 座面の柔らかさを手で確認する彼を見てそうやって調べるのか…!とまたひとつ賢くなれば彼の真似をするように自身も手で押してみたり布地の柔らかさを掌で確かめて見たりと数々あるソファの中で吟味を重ねていき。ふと聞こえた彼の言葉にはしっかりちゃっかりツッコんでは続けて重ねられた彼の質問には悩ましげに首を傾げては「 んー…これいいなぁって思ったんだけど、色がふんわりしすぎかなぁって悩んでる…。 」とその中でひとつ、2人用のなかなか柔らかで座り心地の良さそうなアームソファを示して。カラーリングが落ち着いた雰囲気ではあるのだが柔らかなブラウンのものしかないようでどうやそこだけが引っかかっているらしい。みきはむむむ、と眉を寄せてはみきのセンスとしてはアリなのだけれど男性の一人暮らしの部屋と考えると明らかに女性が選んだんだろうなと直ぐに分かってしまうだろうと考えてしまえば自信満々にコレがいい!と無責任に勧めることはできなくて。 )
う゛………………、
…くそ、否定できねー………。
( ただひたすら寝心地の良さそうな物を吟味していれば彼女からピシャリと核心をつくようなツッコミが。かといってそれを真っ向から否定できる自信などもちろん無いので、ぐぬぬと何も言い返せずに項垂れて。寝転がるだけならまだしも、自分の性格上動くのが面倒だとなれば間違いなくソファで寝るだろう。結果どんなに良いものでも所詮ソファはソファ。体を痛めたり風邪を引くのがオチなので、自分のことをよく理解している彼女に従う他無く。そういうストップを掛けてくれる時点でやはり彼女を連れてきたのは正解だと言えるのだが、当の本人はこちらの問いかけに何やら悩んでいる様子。彼女が示した先には、確かに独身男性の部屋に置くには少し柔らかすぎるのだろう色合いのソファが。だがそんな彼女の悩みなど気にすることなく「いいじゃん別に。コレにするか。」と、けろりと一言。過剰なほどミスマッチで無ければ別に色に拘りがあるわけでも無し、彼女が悩むほど(その悩みの種は分からずとも)の物には見えないので。 )
ふふ、もしそれで体調崩しちゃったら「来ちゃダメ」って言わても看病しに行っちゃうから。
風邪引かないようにしてね。
( どうやら自分の指摘はピッタリ当たりだったらしい。何も言い返すことの出来ない彼の様子に思わずくすくすと表情を綻ばせては脅しになっているんだかいないんだか絶妙なラインの脅し文句を。ソファで寝てしまい体調を崩したら看病に行けるし、崩さなかったら崩さなかったで彼が元気ということなのでみきとしてはどちらにしてもウィンウィン(?)なのだ。此方の悩みなど気にせずにさらりと一言返した彼にぱち…と驚いたように瞳を丸くしてはソファを指さしながら「 で、でもこれ女の人が選んだんだなーって色だよ…?いいの…? 」とおずおずと自分が悩んでいる最もな理由を差し出して。例えば、想像もしたくないけれど、自分以外の女の人が彼の家に遊びに来ることがあるとしたらきっと女同士それは伝わってしまうだろうし女の影があるのではと疑わせてしまうだろう。みきとしては適度な牽制となるので全くもって構わないけれど、それで彼の邪魔になってしまったらと考えると素直におすすめは出来なくて。 )
…確かにお前俺の家知ってるし、来るなって言っても聞かない未来が見える気がするわ……。
( どちらが年上なのか分からなくなるやり取りに居た堪れず頭を抱えて。内容的には何とも優しさに溢れているのだが、教え子が家に来るというのは確かに教師にとっては場合によって大変効き目のある脅し文句だろう。前回はやむを得ずなうえきちんと彼女の家族に連絡もしたとはいえ、そう何度も歓迎をするわけにはいかなくて。…もしもそうなったとしてもちろん嫌という気持ちは無いし、むしろ一人暮らしにとって看病に来てくれる相手がいるというのは大助かりではあるのだが。彼女の口からソファを決めかねていた理由が零れれば「?…何か問題あるか?つーかそもそも選んでんのは御影なんだから"女の人が選んだ色"になるのは当たり前なんじゃねーの?」と、きょとんとした顔で首を傾げて。伺うように言葉を紡ぐ彼女と違い、それでこのソファを選ばない理由が分からないといった様子で。自分的には何の問題も無いのでたまたま近くを通った店員に声を掛けては購入する旨を伝えて。 )
だって司くん風邪引いた時“食欲無いしめんどくさいから”ってゼリー飲料とかで凌ぐタイプでしょ。
風邪ひいた時ほどちゃんとご飯食べなきゃダメなんだからね。
( 以前彼の家にお邪魔した際の冷蔵庫の中や調味料の充実具合等々を見ればある程度普段の食生活はどうしても見えてきてしまうもの。普段から料理をしない人が風邪の時にわざわざ料理をするとは思えずにぷく、と呆れたように頬をふくらませながら鋭い指摘を続けていけばお姉さんぶって分かってる?と言わんばかりに彼の顔を覗き込んで。最も、教師である彼にとっては迷惑だということも分かっているのでお家までは押しかけなくとも家の扉にご飯を提げておくくらいのことはしようと思っているのだけど。意を決して自分がこのソファを迷っている理由を素直に吐露したと言うのにどうやら目の前の彼はその深い訳までは把握していないような様子で店員さんに購入意思を伝えてしまい。もちろん店員さんが売上チャンスを逃すわけも無いのでにっこりと柔らかな笑顔を浮かべながらそれを了承し購入準備を進めるべく品番確認をしてさっさとバックヤードへとはけていってしまい。「 ……もう、みき知らないんだからね。初めて来た女の人とかに指摘されちゃえばいいんだから。 」せっかく自分が気を遣ってあげたというのに、と呆れたように息を吐いたもののその実はみきの独占欲は充分に満たされてしまうのでその声色や表情はちょっぴり嬉しそうで。 )
………お前もしかして、前来たとき監視カメラか何か仕掛けていった?
( 彼女の指摘はあまりにも的確で、本当に見られているのではと思うほどまさに調子を崩したときの自分の行動をズバリと当てられればぎくりと固まり。そのままじとりとした視線をこちらを覗き込んでくる彼女に向ければ、冗談ではあるが可能性のひとつとしてそんな問いかけを。とはいえ少し考えれば、これだけ長いこと一緒にいるに加えて心許ない冷蔵庫を見られているのだからそんな推理はきっと簡単なのだろうと当たり前に分かることではあるのだが。にこやか且つ素早く対応してくれた店員さんを見送っては、配達の手続きもしなければいけないのでレジへ向かおうと。そんな中で聞こえてきた彼女の言葉は予想だにしていなかったもので、二度目のきょとん顔を披露した後へらりと笑顔を浮かべては「はは、何だそれ。お前そんなこと心配してたの?……仮に誰か来るとしても、ソファを選んだ張本人が看病だーつって押しかけてくるぐらいだろ。」と可笑しそうに言葉を繋いで。何の意図もなく自然と出たものだが、まるで彼女以外がもう部屋に来ることなど考えていないかのような台詞となって。 )
、
……ふふ!そんなのしなくても好きな人のことくらいわかるよ。
( じとりとしたダークブラウンでこちらを見つめながら冗談交じりの問いをなげかける彼にきょとん、と瞳を丸くしたかと思えばそのままくすくすと可笑しそうに笑い出し、そのままつん。と彼の頬を人差し指で軽く突いては楽しそうに頬を弛めて。監視カメラなんかに頼らなくても好きな人のことならばなんでも分かってしまうのだという恋する乙女はいつだって無敵で最強、みきは彼のダークブラウンを愛おしそうに見つめてはまたへらりと微笑み。きょとんと瞳を丸くしたかと思えばとんでもない殺し文句をさらりと零した彼に今度はこちらが瞳を丸くする番で。きっと彼は気づいていないし無意識なのだろうけれど、好きな人から自分以外の女性を部屋に入れるつもりがないような発言をされてときめかない女は当然居るはずもなく(みき調べ)じわじわと熱の上がってきた顔を自覚しながらもどうしようもないほどのときめきを発散する術はどこにもなくて「 っ、………ぎゅ、ってしていい…? 」と真っ赤になった顔を両手で隠しながらいつものようにダメ元でこのトキメキの発散をしようと小さなおねだりを。最も、断られる前提でいつも言っているのでいざ許可されたら許可されたで慌てるのはみきの方なのだけれど。 )
えぇ……?
そんなの分かるの絶対お前だけだって……。
( 大人しく頬をつつかれながらも怪訝な表情は崩さず、彼女曰くの恋する乙女のパワーとやらを実感するに終わり。お前だけ、なんて言いながら自分も彼女のことならきっと他の人より少しばかり気付くこともあるのだろうが、もちろんそれも無自覚で。彼女の夕陽色が綺麗にまん丸く見開かれたかと思えば、その瞳もすべて小さな両手に隠されてしまい。彼女の手がその顔を覆う直前に見えたのは本日だけでも何度か見る機会のあった真っ赤に染まった頬。そのままぽそぽそと、彼女の中の何かが限界を超えた際にいつも頼まれるおねだりを零されれば「また急だなお前は。…ダメに決まってんだろ、まったく。」と腰に手を当て、呆れたような笑みを浮かべて。そもそも仮にハグをするのに差し支えのない関係性だったとしても、こんな人の多いところではさすがに出来ないのだが。 )
せんせーが分かりやすすぎるのもありまーす。
( 未だ怪訝そうな顔を崩さない彼に対してくすくすと頬を弛めてしまえばそのままふに、と一度だけ彼の頬を指先で摘んで満足したらしくその手は離れて。普段散々わかりやすいと彼にからかわれているのでそれの仕返しのつもりらしい上記の言葉を返せばそれにプラスしてべ、と赤い舌を小さく出してこれもやっばり彼の真似で。案の定断られたハグのお強請りはいつもの事なので特になんにもショックを受けたりはないのだけれど、この胸の中の致死量のときめきはどうにかしなければならない。みきは両手で顔を隠しながら「 だってきゅんきゅんしたんだもん…ときめきで死んじゃう…。 」ともごもごくぐもった声で何度目か分からないこのお強請りの理由を説明し。ちらり、と両手の隙間から顔を覗かせては、困ったような…もとい恥ずかしそうの夕陽色で彼のダークブラウンを見つめて。 )
うっせ。
お前にだけは言われたくねーよそれ。
( 彼女の細い指が離れた後、ただでさえ分かりやすいと日頃揶揄っている相手に同じ言葉を返されるも残念ながら彼女の言っていることはすべて当たっているため反論のしようもなく。細い指の隙間からちらりと覗く夕陽色はどこか恥ずかしそうに熱の込もったもの。そんな瞳に見つめられれば少しばかり絆されそうになる気がしなくもないが、「──、…ばーか。ほらさっさと行くぞ。」と一言だけ返せば支払いを済ませるため踵を返して。道中で季節物の商品として炬燵やら完全に自分がダメになりそうな家具に惹かれてしまいそうになったりしたが、またもや彼女に的確な指摘を受けると考えれば泣く泣く()諦めて。 )
─── ふぅ。
炬燵も人をダメにするクッションも着る毛布も全部阻止!
( 気分はまさにひと仕事終えた後。会計に行くまでの道中、尽く人をだらけさせるのに特化した魅惑の家具たち(冬はそういったものが特に多い)に惹かれる彼を正論パンチで引き剥がす作業を繰り返すこと数回行っていけば、あとは今会計を行っている彼と合流すれば本日の目的である買い出し補佐の仕事は早々に終了するわけで。もちろん彼のお金出し彼のおうちで使うものなのだからある程度は自由に買ってもらって構わないのだけれど、それで体調を崩してしまったり体を痛めてしまったら元も子も無いので本日のみきは買い出し補佐の他にそんな彼の欲望を打ち破る役だったのかもしれない…と知らされざる自分の新たな任務を発見したことに満足気に頷きながらもベンチで彼の買い物が終わるのを大人しく待っていて。─── 本当はちょっぴり夫婦茶碗とか、そういったペアの食器類に目移りしてしまっていたのだけれどそれはきっと彼にはバレていないので良しとして。 )
───『すみません、お姉さんあちらのお客様のお連れ様ですよね?』
( 目的の物はしっかり買えたものの、誘惑に負けるように魅力的な品を見つければあっちへフラフラこっちへフラフラ。しかし何を見ても反論の余地など許されない同行者のド正論に勝てるはずもなく、しおしおとソファのみを購入するためにレジにて手続き中。そんな自分の知らないところで店員のお姉さんが彼女に声を掛けていることなどもちろん気付くはずもなく。──『ただいま当店でお品物をご購入して頂いたお客様にクリスマスのサービスとして粗品をプレゼントしておりまして~。カップルのお客様には、ペアのマグカップかミニクッションがお選び頂けますが如何でしょうか?』とプレゼントの写真が載ったチラシをにこやかに差し出して。マグカップの方は淡いピンクとブルーのペアで、中央から少し下にワンポイントとして白いラインが1本入ったシンプルなもの。続いてミニクッションの方は、彼女ならば抱きしめた際にちょうど良いサイズ感になるだろう。こちらも色合いはピンクとブルーだがマグカップよりは少し落ち着いた色で、デザインは可愛らしいテディベアが小さなハートを胸に抱いているもので。 )
─── へ、?
あ、いや、えっと、……
( 突然かけられた声にハッと我に返ればそこにはにこやかな笑顔の店員のお姉さん。なんだろう、と素直に話を聞いていればどうやらお店のキャンペーンで声をかけてくれたそうで、“カップルのお客様”という部分に思わず否定をしそうになったものの、こうして彼と並んで歩いていて初めてカップルに間違えられたという記念すべき嬉しさとちょっぴりの照れで頬を淡い桃色に染めれば否定の言葉はふにゃりとしたはにかみに変わり。お姉さんが笑顔でシンプルで使いやすそうなマグカップと可愛らしいクッションの写真が載ったパンフレットをじ、と真剣な夕陽色で見つめては少し悩んだ後に「 えと、…じゃあ、マグカップでお願いします! 」と今日のデートの為に昨晩塗ったオレンジ色のマニキュアで彩られた指先でマグカップの方をとん、と指さして。マグカップならばおうちに何個あってもいいし、シンプルなデザインなので別にみき用じゃなくても来客用(ほんとはみき専用してほしいけれど)として使えるのではないかという考えで勝手に選んでみたものの心の奥でちょっぴり“勝手に決めちゃったけどいいかな”、“せんせー使ってくれるかなぁ”と不安もあったりして思わずちらりと彼の方を見ては不安げに眉を下げて。 )
『ありがとうございます、マグカップですね。ではすぐにお持ちしますね~。』
( 可愛らしいお客様の照れた様子に、まだ付き合いたてなのかしら。なんて微笑ましく思っていれば、少し悩んだ後に選ばれたマグカップ。にこにこと了承すれば、店の一角に今回のプレゼント企画を宣伝しているスペースがあるのでそちらへと小走りで向かい。イベント用に広げられた机の上には大量のプレゼントが用意されており、マグカップが2個入っている箱がぴったり入る紙袋にその箱をひとつ入れるとまたもや小走りでお客様の元へ。『お待たせいたしました~。本日はありがとうございました。』と彼女に袋を手渡せばぺこ、と一礼、そのまま次はレジを通ったばかりの家族連れのお客様の方へと向かって。───「悪いお待たせ。明日には届くみたい………って、何それ。」店員が彼女の元を離れて少し、支払いとその他手続きを終えて戻ってくればベンチで大人しく座って待っていたはずの彼女の手にいつの間にか小さな紙袋があることにきょとんと。 )
わ…!
ありがとうございます、大事にします!
( 店員のお姉さんが戻ってくるのを待っている間はちょっぴりのそわそわとドキドキで正直落ち着かなかったのだけれど、いざマグカップの入った袋を渡されればぱぁあ!と夕陽色の瞳はきらきらと輝いて。大切そうに両手でそれを受け取ったあとぎゅ、と胸に抱き締めれば嬉しそうにふにゃふにゃ笑ってお姉さんにお辞儀を。それからしばらくして戻ってきた彼にキラキラした笑顔で紙袋を差し出しながら「 あのね、お店のクリスマスのキャンペーンでカップルの人にってペアマグカップくれたの!だから、……えと、お、おうちで…使ったらどうかなって…。 」とにこにこ元気に話し始めたものの段々と不安も襲ってきたのか声は最終的に小さな小さなものになり。これじゃあまるでペアだからみきの分も置いてね!とわがままを言っているようで、みきは差し出していた紙袋をそっと胸元で抱きしめては「 …お、お客さん用に…とか… 」ポソポソ付け足して。 )
へえ、いいじゃん。
マグカップなんて何個あっても困るもんじゃねーし。
( "カップル""ペア"の2つの言葉に目を丸くしたものの特に嫌がったり言及などしたりせず、差し出された袋を受け取…ろうとしたのだがそれは叶わず。段々と彼女の声は小さくなるし、最後に付け足された言葉が本心ではないことくらいはさすがに分かる。「うちに来る客っていっても友也とか男友達くらいだし、あいつらに出すのにペア物は気持ち悪いだろ。…俺のとこにあっても片方使わないままで勿体無いしお前1個持って帰れば?"カップル"用なんだろ?これ。」自分と男友達が色違いのペアカップを使う様を想像してどこかげんなりとしながら、別にペア物だからといって必ずしも同じ所に置いておかなきゃならないわけではないだろうと。お互いが1個ずつ持っていてもペアはペアだしそもそも貰ったのは"自分たち"だろ?といつもの意地悪な、しかしいつもよりは少し優しさも混ざったような笑みを浮かべてどこか不安そうな彼女の顔を覗き込んで。 )
!!
い、いいの……!?
( ホントはやだけど、でも我儘を言う勇気もなくて。けれど彼から告げられた提案にぱっと分かりやすく表情を輝かせてはきらきらと光る夕陽で彼を見上げて嬉しそうに表情を綻ばせ。置いてある家が違くとも、ペアマグカップはペアマグカップ。カップル用ならば尚更。いつもの意地悪な笑顔の中に優しさと温かさを感じればさっきまでむくむくと湧いていた不安はあっという間に散ってしまい。紙袋を持っている手を口元まで持ってきて緩んでしまう口元を隠せば「 じゃあ、マグカップおそろいしよ?─── …司くん。 」とにこにこふわふわ浮かぶような甘い声色で小さくおねだりを。 )
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