匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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………、私は、“大丈夫”だとか、“ずっと一緒にいるから”なんて、都合の良い事は言わないわ。貴方の長い人生において、私の生涯なんて本当にちっぽけなんですもの。
( 案外自分のやっていたことは不敬でなかったと知り、「そう?」と少しばかり可笑しそうに笑ってみる。しかし、続く彼の言葉を聞いていると、段々と此方の表情も神妙になり、包み込んでいた手にぎゅっと力が入る。
彼の心情を想像すると、少なからず浮かれていた自分が恥ずかしくなるのと同時に、どうしようも無い罪悪感と、愛しさが同時にやってくる。大切な人をたくさん失くした悲しさは計り知れないが、その“大切”の中に自分が居るのかと思うと、不謹慎ながらも嬉しさも感じてしまって、我ながら馬鹿だと思う。)
…私は、貴方が好きよ。好きな人に想って貰えるのは、これ以上ない幸せだわ。
…でもね、貴方がこの先辛い想いをするのなら、やっぱり私は早く去った方が良いのかしらとも思うの。…貴方に、そんな顔をして欲しかった訳では無いのよ。
( 今思えば、まだしっかりと伝えていなかった気持ちを真っ直ぐ彼の目を見ながら伝える。彼の手を包んでいた両手は離され、眉尻を下げながら、悔しそうに唇を噛む彼の頬へ優しく触れた。
気持ちは伝えても、自分たちはまだ恋人になった訳でもなくて、それらしく“触れ合った”ことも無い。それなら尚更、思い出が増えない内にいなくなった方が良いのではないかと思う。
…恋人らしく過ごす日々が増えれば増えるほど、後が辛くなるのは自分もよく知っている。彼の綺麗な顔がこんなに苦しそうになるのなら、私は、この先の幸せは知らなくても良いと思う──そんなのは綺麗事だし、自分に言い聞かせているだけなのは承知だが──とにかく、この数日間の思い出は、きっと彼の長い人生の中では一瞬で、忘れた方が先の彼の幸せに繋がるのなら、それでも、良い。)
…だろうな。お主は気休めを言わぬ。故に好いた。
(改めて彼女が"ちっぽけな存在"ということを肯うと──イナリとしては全くもって大きな存在であるのだが──胸がちくりと痛む。この女子は自分に関すること以外は、正直に言う。だから信が置ける。尤もそれを表立って口にしたことなどないのだが)
……お主がここを出ると言うならば、我も共に参る。
(早く去った方がいい。そんな言葉を彼女の口から聞くと、暫時黙考したのちに言い放つ。そして言った後に後悔した。自分がどれほど勝手なことを言っているのかは理解している。民に貰った社を、長く住み着いた土地を、好いた女子と添い遂げたいという願いのために捨てると言っているのだ。ここにかつての民がいたら、イナリを面罵したことであろう。どこかで必ず報いが来ることくらい、イナリは分かっている。だとしても彼女を手離したくないのだ。それ程までにイナリの中で彼女は大きな存在となったのだった。イナリの言葉を受けた彼女が見せる表情は呆れか侮蔑か。いずれにしてもイナリは緊張のあまり、その場に凝固して動けなくなり、彼女からの反応をただ待つより他なかった)
──フフッ、気を遣ったのに。貴方が着いてくるなら意味が無いじゃない。
( 彼が言い放った言葉に瞬きを数回繰り返すと、思わず笑みを零し、上記に続いて「お馬鹿さんね」と目を細めた優しい表情で笑いかけた。結構覚悟していただけに、共に社を出るという思いがけない本末転倒な提案に拍子抜けしてしまって無意識に入っていた肩の力も抜けていく。
そして、それと同時に再度愛おしさが込み上げてきてもう一度小さく笑った。大切な社から離れると言うほど自分のことを想ってくれているのだろうか。そうなら嬉しいなぁ とも、それで本当に良いのかしら、とも思う。恋とは、実に難儀だと、改めて思う。)
…貴方を大切な社から引き離す訳にはいかないわ。
ただ、そうなると、私が貴方の許す限りここに留まる事になりそうだけれど。
( そんなことしたら罰が当たっちゃうかしら、と肩を竦めて見せる。この社は彼にはきっとかけがえの無いもので、それこそ幾多の思い出が詰まっているはずで、突然現れたこんな人間なんかが彼から奪って良いはずもなく。一方、自分はといえばそもそも神隠しを願った側で、自分の生活に未練もろくな思い出も無い訳で─いつか、彼が抱くこの気持ちが誤りだったと言われても─彼が許してくれる限りは傍に居たいと思ってしまう。どちらにせよ、自分が社に留まるなんてそれはそれで如何なものかとも思うのだが。)
(彼女から返ってきた言葉は呆れでも侮蔑でもなかったが、別の己への愛おしさを含んだ言葉。恐る恐る顔を窺うと彼女の温容を捉え、胸が高鳴った。以前から思っていたが、自分は彼女の一挙手一投足に反応しすぎでは無いか。理性の自分がそうぼやくも、本能の自分はそれを悪いと思っていない。彼女の言葉と表情のおかげで緊張は解け、どっと肩の力が抜けた)
それで良いではないか。ここにいればお主の望みは何でも叶えてやれる。お主が望むのなら、これまでお主が受けた仕打ちを、我がその相手に返してやることだってできる。
…じゃから静蘭。我と共に居て欲しい。
(未だに自分が場違いだと思っているニュアンスの言葉に食い気味で反論する。相手のことを慮っているように思えるが、実際のところは彼女を手放したくないが故の必死の反論だった。彼女を疑う訳では無いが、彼女がイナリのことを好きというのが未だに実感が湧かなかった。酔った勢いの戯言かもしれない。翌朝、何事も無かったかのように接してくるかもしれない。そういうこともないとは言えないから、だからこそ彼女の望みを叶えると力説する。イナリは慎重を通り越して臆病なのだ。特に彼女の前では。)
…仕返しなんて良いのよ。貴方が、私の願いを叶えてくれたんだもの。それだけで今は十分だわ。
( 共に居て欲しい、その言葉に一間の沈黙を得てくすりと笑い、視線を俯かせながら顔を縦にゆっくりと動かした。上記を述べながら視界に彼の姿を映すと、再び優しく微笑みかける。
初めに愛が欲しいと願った自分が、まさか共に居る事を願われるなんて思いもよらず、そのむず痒さに頬が赤らむような感覚を覚える。自分だって本心を全てさらけ出して良いのなら「一緒にいたい」とその腕の中に飛び込んで縋りついてしまいたいが、今は頷いて肯定を示すだけでいっぱいいっぱいだった。自分も存外、好いている者の前では臆病になるらしい。)
少し、肌寒くなってきたわね。長話をしすぎてしまったかしら…。そろそろ中へ戻りましょうか。
(すっかり酔いも覚め、夜風で冷えてきた体を自ら抱いて両腕を数回擦ると、気恥しさも相まって本殿の中へ戻ろうかと促せば踵を返そうと背を向ける。)
──…ッ、!
( 慌てた様子で自分の後を追って隣へ並んだ彼の姿を視界の端に捉え、微笑みを向けようとしたその時、腰に添えられた彼の手に身体がびくりと反応し、此方を引き寄せる力強さに一気に体温が上がった気がして、みるみるうちに顔が赤くなっていくのが分かる。ふわりとした彼の尻尾が身体を包み込むように巻き付いてくると、そっとその毛並みに触れながら、ちらりと隣に立つ彼の顔を見上げた。
何度か彼の柔らかそうな其れに触れたいと不躾な事を言って怒られていたくせに、其方から触れてくるなんて予想外で思わず視線に熱が帯びてしまう。)
…ご、ごめんなさい。とても暖かいわ。
( 驚いてしまった事へは小さく謝罪をして、最後にありがとう、と照れを混じえながら呟いた。)
(/暫く戻って来れずに申し訳ございません。
待っていて頂けて嬉しいです。上げて頂きありがとうございます!!)
む。そうか。
こういうことをされるのはあまり慣れていないよう……じゃな。
(イナリとしては何気なく、ただ寒いと言うから此方の方が暖かいだろうかと思い付きでやった事だったのだが、彼女があまりにも大きく反応するので逆に此方が気まずくなってしまう。彼女の今までの事を考えると仕方の無いことで、安易にこんなことをするイナリに非があるのかもしれない。
チラ、と隣の彼女に視線を向けると、此方に同じく視線を向けていた彼女と目が合う。そしてドキッとする。彼女の熱を帯びた視線。それが蠱惑的に見えたから。イナリは彼女のこういうところに弱かった。ふと気を抜くと此方が思いも寄らぬ事を言うしやる。大人しいようでいて、言動は大人しくない。そんなギャップも面白くて好きなのだが)
…今宵はもう横になったらどうじゃ。
此処は我が片付けておく故…。
(本殿へ入るとそそくさと彼女から離れる。繧繝縁に座ると気まずそうに視線を逸らしながら言う。これからは自分がしっぺ返しを喰らわないように立ち回る必要がある。そうでないとイナリの心が持たない)
(/いえこちらも戻ってきていただけて嬉しいです! さて今後の展開なんですけど、どうしましょうか? なにかご希望があったら何でも言ってください!)
…な、慣れてる訳無いじゃない。経験豊富な貴方と比べないで。
( 慣れていない、と言われると途端に自分が幼稚に思えて恥ずかしくなり視線を逸らして、尚も熱を帯びている顔を両手で包むと反論するように上記を述べる。大学時代の彼とはそれなりに出掛けたりしたが今思えば触れ合うことはほとんど無かった。後々考えれば「罰ゲーム」だったので当たり前だが、当時の自分はどうにか恋人らしく振る舞いたいとお洒落をしてみたり色々頑張ったものだ。一方的に頭を撫でたり服に触れたりするのは何とも思わないのだが、相手から触れられるのには滅法弱い。おまけにお互いに想い合っているなんて状況が初めてなのだから無理もないだろう。本殿に着くと離れていってしまう温もりに少しだけ惜しいと思ってしまうが、緊張が解けて少しだけほっとする。片付けを済ましておくという彼の言葉には小さく頷いて「ありがとう」と礼を述べると、その言葉に甘えて自分は一足先に布団へと身を潜らせて休むことにした。暫くは胸の高まりがなかなか収まらずに眠れそうに無かったが、だんだんと自然と瞼がおりてきて、数分後には横を向いたまま小さな寝息を立てて眠りにつくのだった。)
(/実は、狸さんのお話が出た時から気になっておりまして(
狸さんと静蘭が出会ってしまったらどうなるんだろうという興味があるのですが、どうでしょう??)
(/ なるほどいい考えだと思います!ぜひやりましょう! 狸妖怪はどういう感じがいいでしょうか? 「チャラいイナリ(コメディ5割、シリアス5割程度)」みたいなのを想像してたんですが、狸について希望があれば何でも言ってください!)
(/ ありがとうございます!
私もそれぐらいのイメージだったのでそれでお願いしたいです!人間には高圧的だと思いますが、多分、静蘭ちゃんも負けずに口答えしまくると思うので、お互い『なんだコイツ』となっても楽しそうですし、『口答えする人間面白ろ』となっても美味しい気がしています())
(/ 分かりました! 静蘭ちゃんと狸妖怪の出会いはどうしましょう? このままイナリが眠っている間とか、翌朝どこかへ出掛けている間に神社に侵入して…みたいな感じにしますか?)
(/ そうですね…
翌朝、静蘭が早朝に目が覚めてしまって1人で外に出ている時に、社へ遊びにきた狸さんと出くわす、等はいかがでしょう?)
(/ いいですね! ではこういうのでいかがでしょうか?)
……綺麗じゃ
(盃と空になった瓢箪を社務所へ片付けへ行き、入浴を済ませ戻ってきてみると彼女は眠っていた。勢いで想いを告げ、そして今こうして夫婦でも恋人でもない微妙な関係になった。こんなにはっきりしない関係は不健全、と思うものもいるかもしれないが、今はただ彼女と同じ想いを共有出来ている事実だけで満足だ。眠っている彼女に近付くと、その頬に手を当て優しく撫でながらぽつりと呟く。ハッと我に返ると一つ咳払いをして、そそくさと繧繝縁へ戻る。変化を解くとその上で丸くなり、これからの彼女との接し方に思案を巡らせながら、意識を夢の中へと手放す)
(久しぶりに訪れてみると、そこはよく整えられた空間だった。建てられてから随分と時が流れたのに、当時の姿をほぼ保っている。あの狐のことだから、きっと活気に溢れ楽しかったあの頃を忘れてしまわないようにしているのだろう。意味は分かるが全く理解はできない。しかし間もなく朝日が昇るというのに姿を見せないとはどういうことだろうか)
『イナリ。
イナリおらんのか?
フウリ様のお成りじゃぞー!』
(フウリと名乗った狸は声を張り上げる。だが待てど暮らせど本殿からも社務所からも出てくる気配はない。おかしい。以前ならフウリが入っただけで飛んできて何をしに来たと睨めつけるのがお約束だったのに。裏の風呂にでも入っているのだろうか。ゆらゆらと身体を揺らしながら裏の露天風呂へと向かう)
( 空が白み始めた頃ぱちりと目が覚めた。静寂の中で小さな寝息が聞こえると、上半身を起こして繧繝縁の上で丸くなって寝ている彼の姿を視界に捉える。目を細めて思わず口元を綻ばせるが、彼の寝顔を眺めていると昨夜の出来事が嘘だったように思えてしまう。しかし、あれは紛れもない事実で、思い出しただけでもまた熱を帯びてしまいそうで、首を横に振って深呼吸をするとゆっくりと立ち上がる。あまり長い間睡眠を取った訳では無いが、熟睡したのかすっかり頭も目も冴えてしまい二度寝をする気も起こらなかった。寝ている彼を起こさないように静かに本殿を抜け出すと、小袖や乱れた髪を手で整えながらまだ薄暗い空を見上げる。)
──…、誰?
( 心地の良い風に当たりながら社周辺を散策し、裏にある露天風呂への道まで来ていた。周囲に咲く花々に足を止め、特に何をする訳でもないがただしゃがみこんで其れらを見ていたが、ふと、背後から近付いてくる音に背筋が伸びる。立ち上がり、音のする方へじっと顔を向けると、呟くように上記を述べた。)
(/ ありがとうございます!
また、改めましてよろしくお願いします!何かあればまたご相談しましょう!)
『……やあやあやあ。俺の姿が見えるんだ。今どきの人間にしては珍しいね』
(露天風呂へ行くとそこには見知らぬ女がいた。イナリと最後に会ったのは昭和が終わる頃だが、その時は斯様な女はいなかった。すると肝試しか何かに来ている女だろうか。いずれにしてもコイツは背を向けている。その無防備な背中に飛び付いて驚かせてやろうか、なんて思っていると何とその女はこちらを振り返り、自分の存在を認めたでは無いか。しかもさして驚く様子もない。フウリは一般的なタヌキより二倍も三倍も大きな図体をしているし、顔付きだって狸というより狼のように凶暴で、しかも理知的──これはフウリが自称しているだけだが──で一目で他の狸とは違うと分かるはずなのに。これは久方ぶりに弄べそうな人間だ。一瞬ニヤリと笑うと、すくっと立ち上がり優しい声色で話し掛ける。口調も現代人に親しみ易いように砕けさせて。まずは甘く優しく。そして後に圧を掛けながら支配的に。それがフウリが人間で遊ぶ時の遊び方だった)
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