幹部 2023-08-04 22:34:15 |
通報 |
夜鈴、こっちに来い。
(相手が書類を取りに行っている間に煙草に火を点けると、深く吸い込み紫煙を吐き出し。先端から細く立ち上る煙の帯を眺めていれば足元へ戻ってきた相手が差し出す書類に一瞥をくれ、その内容を確認すると書類は相手に持たせたままソファへ深く座り直し。勉強だと言っているのに一体何を楽しみにしているのかは知らないが、至極素直に口にされる「わくわく」こそ何度教えても一向に文字を覚えられない理由を知らしめている事に気付いているのかいないのか。紫煙を吐き出すのと同時に溜息を零すものの、それを敢えて指摘し叱るような事はせず一度煙草を口に咥えると自らの足の間に出来た座面の空間を叩いてそこへ座るよう声を掛け)
是!………次する仕事、交給我口巴(長い脚が開かれスペースが作られると許可を得た犬が擦り寄るのと殆どが同じ動機で与えられた許可のままに懐に納まって。口にする返事は『はい』のみ、それ以外を相手に渡す気は無いと力強い声を送ってから収まった懐は利く鼻が大好きな匂いが濃くなったことで意識は蕩け、ただでさえ働かない頭がくらりくらりと酔っ払ってしまう。頭の中が相手の事だけで埋まると好意がだだ漏れに好きだからもっと欲しいと本能のまま無意識に鼻から深く息を吸い込むとそのまま肺へ落とし込み、煙草の燻された匂いが混ざるのが美味しいと咥内には唾液が溜まる。大きな音を立ててごくんと溜まる生唾を飲み込めばもっと相手に褒められたい、ご褒美が欲しい、喜ばせたいと気持ちが募り『俺に任せるください』と下手な敬語でやる気に満ちている事を伝え。少しの不信感も見せず無防備にがら空きの背中を預けながら顔はこれからはじまるだろう読み聞かせの書面に向いて)
…一番上に書かれてるのは何て読む?よく見るだろ。
(足の間へやってきた相手は既に集中力に欠けている事が手に取るように分かり、その全身から憧憬や敬慕とはまた違った類の、それこそ飼い犬から向けられる純真な信頼やら好意に似た感情が溢れている様子に目を細めて再度紫煙を吐き出し。書類は相変わらず相手に持たせたまま煙草を口に咥えると深い藍色をした髪を結う紐を解き、先程乱したまま整えられる事の無いその髪を手櫛で梳きながら日本語で書かれた「調査報告書」の文字について問い)
調べ、……書く。調べる、不知道、書く。…………好的!大哥の持ってる仕事、調べたやつを纏めてる紙。これ、そういうやつです(やるからには褒められたい、その一心だけで文字の羅列を読み解こうと辛うじて認識可能の文字を言葉にしてイメージ沸かし。それでも『わからない』と強がることなく素直に独り言。まるで謎解きをしているかのような本来の問い掛けとは逸れてしまった呟きをぼつぼつとこぼしながら、途中で閃き。辛うじて結ばれていた髪が解かれて気紛れに彼の手が整えてくれているのを邪魔しないように動きを止めたまま『わかった!』と明るい声を発して。書面に向けていた顔を振り向かせて、『書いてある文字を読む』ではなく『この書面が示すもの』を回答にして)
そうだ。調査報告書。言ってみろ。
(懸命に理解しようとしているらしい独り言が聞こえる中手櫛で髪を整えた後には慣れた手付きで三つ編みに編んでいき、結紐で髪を結んだ丁度その時理解に至ったらしい声が聞こえてくるとそれに続けて振り返る相手からの回答は想定とは少し違った物で。しかしそれなりに答えを導き出そうとした結果なのだろう。意味が理解出来ているなら凡そ問題は無いと判断し咥えていた煙草を指に挟んで吐き出す紫煙と共に告げると、片手で紙面の文字を指差しながら読み方を伝え)
調査報告書。…謝謝!(覚える気の有無は別として、簡単な命令を素直に受けると言われるがまま相手の発音をそっくりそのまま繰返して。先程まで緩み始めていた三つ編みがもう一度結びたてのしっかりとした物に変われば感謝の意を唱えて。読み取れる文字の中から行った推理が正しいものだったと踏むと彼が丸を与えてくれた事を喜び、振り向いていた顔をまた正面に向かせ。並ぶ文字の読み方を覚えている内にもう一度その音程をそっくりそのまま声でなぞり「調査報告書。調査報告書。……劉、大哥!名前。我最喜歡的角色!」書類を文章として読み解くことは諦めているが、その中で記載される一文字だけは難無く見つける事が出来たようで。指を差して『俺の一番好きな文字』と見つけたことを喜ぶように好きで仕方が無いと甘ったるい声で伝えて)
あぁ、俺の名前だ。よく見つけたな。
(自分の言葉に従い無邪気に復唱する様はまるで親に従順な子のようでもあり、礼を述べて再び此方へ背を向けた相手が何度かその単語を口にするのを煙草を吹かしながら聞いていて。こんなにも熱心に覚えようとしているというのに単語の1つすら中々覚えられないのは何事なのか、脳の容量が足りないとも言えるがその記憶力や頭の回転の速さは認める他無いものがあり、その能力値の差には首を傾げるばかりで。そんな事をぼんやりと考えていれば不意に相手の口から自らの名前が飛び出し、その双眸には暗号にすら見えるであろう文字列の中から一文字を見付け出し至極嬉しそうな、ともすれば男心を擽り兼ねない声で伝えられるその言葉に鼻から抜けるような笑みを漏らしつつ褒め言葉と共に頭を撫でてやり。元はと言えば自分のボスである首領からもらった物。大切な名ではあるがその意味は何とも酷く、自分滑稽な程安直な命名とも思えてしまい。頭を撫でていた手で煙草の灰を灰皿へ落としながら果たしてその意味は知っているのだろうかと問うて)
お前、意味は知ってるか。
─────殺。来来、這就是我喜歡它的原因。(落ちた問いに余す程の時間を作り、息さえも止めて飽きる迄の間を十分に置いてから漸く短く酸素を吸い込んで。顔だけではなく身体の向きごと振り返り、行儀悪く一人がけ椅子の肘置きの部分に足を置くと彼の体を跨ぐように向かい合って。伸ばした両手は宝石や壊れ物を触るように普段の動きからは信じられない程に繊細な動きでそぉっと相手の顔を包み。指先が輪郭に触れたまま親指が彼の視力を持たない目を表に出すように髪を梳くって、陶酔しきるうっとりとした表情で彼の名前だから知っているのだと。加えてはこっちへと呼び掛けてから触れていた手を離し、彼の懐の中へ潜り込むように首をすくめて身を小さくし頭を寄せて『だから好き』と独り言ちる。調査報告書の一言さえ読めないが、彼の事だけはちゃんと知っている。それが何も持たない駄犬が見せる全ての愛だと身を寄せたまま付け加えて)俺が役立たずなる、ます、そん時は他所に捨てねぇで殺 す出来る人が大哥。大哥の役に立てないなら俺の命なんか存在する価値無いって知ってる人。
(問い掛けによって室内には静寂が満ち、相手にしては珍しく回答するでも分からないと口にするでもない沈黙に急かす事はせずただ言葉が続けられるのを待ちながら煙草を吹かし。そうしていれば徐に体を捩り此方へ向く相手に合わせて煙草を指の間に挟み遠ざけ、意外にもすんなりと出てきた答えに驚きと感心の混じる表情で僅かに眉を上げ。果たして教えた事があっただろうか。そんな事を考えているうちに大胆にも膝の上へ乗り上げるような体勢を取るのを咎めずに居れば次の瞬間には普段の相手の振る舞いからは凡そ想像も付かない程繊細な手付きで頬に触れられ、露わになる両の瞳と付け足される言葉に目を細め。時折目にする普段の無邪気な表情とはかけ離れた陶酔感漂う面持ちは決して嫌いでは無く、それが忠誠心につながると思えば尚の事。薬が切れれば反抗的な態度が目立つようにはなるものの、こうして彼を許容し蜜を与え続ければ薬を投与しなくとも従順になる日は来るだろう。他者なら女子供であれ無断で踏み入る事は許さない懐にしなだれ掛かって来る体をそのままにまた一度深く煙草の香りを吸ってから紫煙を吐き出し、その間耳触り良く紡がれる言葉へと意識を向けながら何処か宥めるような手付きでその髪を繰り返し撫で。まだ拙い日本語で伝えられる言葉が途切れると耳元へ唇を寄せ、普段薬漬けにした相手に暗示の如く言い聞かせるのと同じくゆったりと潜めた声で立ち上る紫煙と共に囁き)
…あぁ、そうだ、夜鈴。お前を殺 してやるのも生かしてやるのも、大切にしてやるのも俺の他には居ない。この世界に俺だけだ。
(絶えず鼻に届く燻る煙草の匂いには相手の姿が重なり強い安心感を得て。懐の中で顔をくっつけると当たり前だが聞こえる心音が嬉しくて、相手が今この瞬間を生きている事実を噛み締め。撫でるような優しい手つきで触れられれば他の誰もが許されない特別な場所が自分だけは許されている特別感が見えないはずの尾を揺らし、声も表情も見せなくとも嬉しさを抱いている事が伝わり。催眠術のように一文字一文字が脳を焼切る程の重さを持つ声が隔たり無く直接的に耳に入ると、身動きひとつせずに大人しくしたまま少なくとも今は彼の為に命が役立っていると知る事が出来たと実感してから落としていた頭を上げて「測試、正解。給我奨励」褒められると前提に信じきった雰囲気でにこにこと懐っこい笑顔を見せながら『テストの正解です、御褒美をください』とあまりにもストレートな内容で褒められることを望み、願ってみせて)
…一文読む度にそうやって強請るつもりか?
(何の挙動も声も無くこんなにも褒められる事への喜びを全身から醸す事が出来るのはある種の才能なのではないかと思える程。本当に犬のように表情や声の無いまま分かりやすく感情を露わにする様子に不思議と気が休まる思いで手を動かしていれば、顔を上げた相手からの率直な要求と毒気を抜かれるような笑みに表情に呆れを浮かべて問い掛け。とは言え結局のところ望まれるままご褒美を与えてしまうのは言うまでもなく、何らかの合図のように口に咥えていたいた煙草を一度深く吸って紫煙を吐き出すと灰皿に先端を押し付けて消火してしまい。肘掛に片肘をのせて頬杖をつくと、未だ此方からは触れないまま短い言葉で望む物を問い)
…何が欲しい?
我想要接吻的許可!(呆れる感情が垣間見える問い掛けには意図を持って聞かなかった振りを決め込み。その反応こそがそのまま回答となって暗にその通りだと訴えているのも意識の上か、それとも無意識下の事かは定かではなくて。他の部下が聞けば信じられないと慄くか、それとも夜鈴に甘いと嫉妬をするか、そんな褒美の選択肢に見せる犬のリアクションとはそのどちらでも無いらしい。嬉々と笑顔を見せたまま大型犬が飛び付くように彼の首に腕を回して力さえ込めればそのまま抱き締めるに変わる体制で、少しの迷いもなく『俺は口付けをする許可が欲しいです!』と少しも隠されないハートマークを溢れんばかりに纏いながらただ一つの願いを訴えて。腕こそ回したが力を入れない事で待てをしているつもりなのか、見せる表情は何処か過去の命令も従えていると誇らしそうですらあり。)
(こうして無遠慮に飛び付かれるのは何度目だろうか。既に慣れた物だがつい眉が寄ってしまうのは毎度の事。細い体を受け止めながら花の咲いたような笑みを見て、その口から躊躇いも恥も無く明け透けに伝えられる欲求は大方予想通りの物で。相手は自分をしっかりと上司と認識しているのか時々疑いたくなるものの、一応彼なりの「待て」の姿勢を貫いている意識があるらしい事はその表情から何となく窺う事ができ。これはこれで躾け直す必要があるとは思うのだが、今は約束通り褒美を与えてやる気分になったようで此方から下唇へ軽く歯を立てるように唇を重ね)
………ッ、ふ。(大好きな綺麗な顔が近づくと求め願ったご褒美が叶えられると嬉しくて心臓がどきどきと早鐘を打ち、下唇を噛む焦れったい刺激がびりびりと背中を痺れさせて。近づく事で今まで以上に煙草の残り香が濃く香るとそれが余計に意識をとろんと蕩けさせ、目の前のこと以外何も考えられなくなって。首に回した腕が力を無くして、相手にめろめろで本能のままに『待て』が出来なくなってしまう。久し振りの煙草の苦味を求めてぐにぐにとした舌が彼の口内へ伸びるとより深い口付けを望み、普段厳しく結ばれる唇をぺろぺろと舐めて「喜歡」鳴き声のように吐息の合間にぽつぽつと繰り返し呟くのは『大好き』とストレートな好意の声、抱きつく腕はほんの少しだけ彼の服を掴むようにぎゅうと力が入って)
(たった一度、唇を軽く刺激する程度の触れ合いで相手の体から力が抜けて行くのが分かり、同時に自制心をも吹き飛んでしまうのか求めるように口内へ差し込まれた舌先につい鼻から笑みを漏らして。こうして本能的に求められるのは決して悪い心地ではなく、軽く舌先を絡めた後には直ぐに唇を這う動きに変わるそれに暫くは好きなようにさせておき。まるで犬が出す甘えた声のように吐息の合間に囁かれる睦言に些かの劣情が刺激されるものの、そんな感情は直ぐに飼い犬に対するのと同じ微笑ましさに変わってしまう。しがみ付くように服を握る手の感触が伝わってくると相手の腰を支えるように片腕を回し、その口内へ舌を捩じ込むと何処か焦らすように上顎を撫で歯列をなぞり)
んぅっ、………んえ、──むぅ、(余計な考えなんて少しも考えられないと頭の中は彼の事が好きで仕方がない事と、そんな彼に触れることを許されているという幸福感で一杯で。腰に回る手が更なる濃い分を高める反面で、意識をするよりももっとずっと奥深くで触れられる事の嬉しさとその嬉しさを受け止めきれない恐ろしさで銃口を向けられるよりもずっと強い恐れを抱き。触れられるのが嬉しいのに恐ろしい、アンバランスな気持ちは自分のことなのに到底理解できそうにない。上顎を撫でる焦ったい動きには欲に素直過ぎるが故に焦ったさが苦しくて、続けられる歯列を擽る甘過ぎる毒に争わずに素直に辛い苦しいと訴える様に吐息の熱に染まった苦しそうな声を届けて。普段楽しそうに可愛さを全面に押し出している笑みに止まる目元を薄く開けば悶々とする熱に魘されて涙の膜が薄く張り。呼吸は次第に浅く荒くなり、焦らされる苦しさにいやいやと駄々を捏ねる子供の様に頭を少しだけ振って。気性荒く場を引っ掻き回しては周りを馬鹿にしては主人のこと以外に見向きもしない姿からはこうも大人しくとろんと蕩けた顔を見せる事は他の誰も想像出来ないことだろう。それ程までに彼に魅了された顔で鼻に掛かる吐息を漏らすだけで)
(口内をただ撫でるだけのような甘ったるいばかりの口付けの最中に聞こえてくるのは呻き声にも近い苦しげな物で、同時に首を振る仕草に何を意図しての物かは分からないがつい笑みが零れると一度唇を離し。見ればその双眸は淡く涙に濡れているようで、普段からは想像もできない表情に目を細め。妙な事にこの瞬間に僅かな快感とも優越感ともつかない感情が込み上げるのは時折ある事で、徐に片手で相手の頬を掴むと再度その唇へ口付けを落としてから未だ笑みの混じる声色で述べ)
もっと色気ある声は出ねぇのか?
………、(酸欠状態で既に正常な判断をする余裕が無くなってしまっている。可愛らしく見せたいと演じる愛嬌も本能の前では役に立たず、既に本能を剥き出しにした状態で力の抜けた指先が縋り付く様にただ彼の服を掴むつもりで指先を引っ掛けているだけ。その分相手の事だけを見ているからか、普段の彼が見せる表情とは違う僅かな違いを見抜いてそれが良いものだと判断すると余計に興奮してしまうのだ。くったりと力が抜けて夢中になった姿ではふはふと浅過ぎる呼吸で何とか酸素を取り込むと隠さずに素直な声で『そんな余裕ないです』となんとか伝え)没有寛余
(対面した相手の表情が興奮を滲ませ上気しているのに気が付くとどうにもこのまま暫く眺めていたいような気分になるが、至極率直に余裕が無いと言われればあまり意地悪しているのも酷なようには思え。一方でこのままでは読ませる予定だった書類に戻るのにはそれなりに時間が掛かるような予感がしており、呑気にもどうするべきかと思案しては相手の頬から手を離しソファの背凭れへ身を預け。肘掛に片肘を置き頬杖をつくと犬猫の類を愛でるのとほぼ変わらない手付きで顎の下を擽ってやりながら声を掛け)
満足しただろ。勉強の続きだ。
………… 是的我明白(身体から力が抜けた状態でくったりとしたまま顎元を擽られるのを大人しく受けて。既にわかりやすいほど勉強に対する集中力や意識は残っていない雰囲気で、両方の腕を相手の脇下辺りに回して抱き着きながら『はい、わかりました』と返事だけは従順で。ぴとと抱きついたまま顔だけを振り返らせて彼が持っている【調査報告書】を覗こうと言う意思だけは示して「その獲物、どする。俺が捕まえる、仕事です?それとも潜入するしてもっと情報集める?大哥の為、なにでもするます」見ているだけでも眠たくなってしまう文字の羅列を追い掛けるのは一旦置くことにしたのか、相手がこの紙を選んだという事は役に立てる事が有るはずだとその一点にのみ意識を向けた質問を口にして)
トピック検索 |