名無しさん 2023-06-18 14:24:24 |
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そうか。
ちょっと残念だけど、バイトなら仕方ないね。
涼くんのおすすめのお店に行こう。
( 彼の通話はどうやらバイト先からだったらしい。このあと仕事が入ったという彼の少しばかり残念そうな表情には、自分苦笑を浮かべて。連絡先も交換したし、これからいつでも会おうと思えば会えるのだから残念に思うことは無い。そう自分にも言い聞かせ。朝食については、彼の方がこの辺りに詳しいだろうと任せることにして。)
ごめんな…。最近辞めちまった子もいて人手不足でさ。
短時間だけでも入ってばかりなんだ。
…お、それなら任せろ!
( 仕方ない、と言ってくれる相手には眉尻を下げつつ再度謝り、勘弁してほしいぜ、と言わんばかりに腕を組んで苦笑いを。
そして、おすすめのお店と言われれば、お詫びにとっておきを紹介しようと早々にベッドから腰を上げ、髪を結って軽く準備を済ませれば彼を連れて近くの店へ。
古びた風情ある小さなカフェのようだが、以外にもメニューは豊富で、朝食にピッタリのものも多数。おまけに値段も安くよく利用しているようだ。)
( バイト先にも色々事情はあるのだということは分かっている。最近は若い子もすぐ辞めてしまうというのは、自分の会社でも同じで。仕方ないとこちらも苦笑して。
彼のおすすめの店へと足を運べば、趣のある小さなカフェ。席に座るとメニューには美味しそうな写真が。それをみると不思議と空腹感が増して、朝食メニューの方へ視線を移すとその中から、サンドイッチを選択。)
俺はこのサンドイッチとコーヒーにしよう。
涼くんは?
んー、俺もサンドイッチにしようかな。中身は違うやつで。
あとはアイスティー。
( 此方もメニューを見ながら悩ましげに眉間へ皺を寄せつつ、相手の注文が決まってから少しして、やっと決心がついたようにメニューを指さす。悩んだ挙句に味こそ違えど自分もサンドイッチにしたようで、相手へ伝えながら店員の呼び出しボタンを押す。
コーヒー飲めるなんて大人だなぁ、なんて自分が苦手な飲み物を注文する相手のことを考えると、ちらりとそこに視線をやる。しかし、今更ながら酔ってお泊まりに誘った自分の言動を思い出すと、恥ずかしくてさっとその視線を逸らした。)
いいね。
もしよかったら、1個交換しない?
そしたらどっちの味も楽しめるかなって。
( 相手はどうやら自分とは違うサンドイッチを選択した。それならば、と1個ずつ交換して食べようと提案を。なんだか馴れ馴れしすぎるだろうかなんて言ってから後悔するも、気にする事はないかとすぐに開き直り。店員が来たので、自分と相手の分とまとめて注文をして。
ふと、視線を感じ彼の方を見ると、視線を逸らされてしまう。どうしたのだろうかと疑問に思い尋ねて。)
?どうしたの?
確かに、それ名案じゃん。
( 相手からの提案には嬉しそうに同意して、早く料理が来ないかなぁなんて先に出されたお冷へ口をつけて。
そうしていると、自分への挙動について尋ねられるものだから、飲んでいたお冷を吹きそうになるのをなんとか抑えつつ、正直に自分の醜態について再度謝罪し、恥ずかしさを誤魔化すためか頬をぽりぽりとかいて。)
いや、昨日、酔ってたとはいえお泊まりを強請ってしまってたなぁって、今思い出したらはずくてさ。
ほんと、ごめん。
…?なんで謝るの?
俺は嬉しかったけどな。
( 先程の提案にのってくれたことには嬉しそうな笑みを浮かべて「やった」と呟き。
彼が視線を逸らした理由には、「あぁ」と納得しつつも、なぜ謝らなければならないのかと不思議そうな顔をして。泊まるときめたは自分だし、それに彼に誘われたことは何故か嬉しかったのだから。)
松風さんが嫌じゃなかったなら良いんだけど…
なんつーか、俺の威厳?が圧倒的に無いなぁ、と思って。
( 不思議そうな顔をする相手に、なんとか思っている事を伝えようとするがどうにもこうにも上手い言葉が見つからないらしく、結局はちぐはぐな回答になってしまう。
要するに、出会った時からかっこ悪いところしか見せていないのが悔しくもあり恥ずかしいという事なのだろう。まぁ、元々威厳なんてあるタイプでは無いが。
そんなやりとりをしていると、サンドイッチと飲み物が到着し、待ってましたと言わんばかりに気を取り直して瞳を輝かせる。そして、自分のサンドイッチを1つ手に取ると「 どぞ 」と笑顔で相手の方へと差し出した。)
あぁ、ありがとう。
( 彼の言うことは完全に理解はしきれないが、おそらく恥ずかしいのに違いないと思うと少しだけ柔らかな微笑みを浮かべて。
差し出されたサンドイッチを見て礼を言うと、ふとなにか思いついたように口元に笑みを浮かべ徐ろに口をあーんと開けて止まってみる。いかにもそのサンドイッチを食べさせてくれと言わんばかりのその行動は、彼の目にはどう映るだろうか。)
( 差し出したサンドイッチが受け取られるのを待っていたが、相手はそうする事なく、笑みを浮かべたかと思えば口を開けて静止する。その様子をみて瞬時に意図を汲み取るが、耳を赤くしてどうしたものかと一間おろおろとしてしまう。
決して嫌な訳では無いし、寧ろ期待したような目で此方を待っている相手が不覚にも可愛いと思ってしまったが、こういったのに慣れていないのでとてもむず痒い。
だが、意を決したように腰を浮かせ、手にしたサンドイッチを相手の口へと運べば「……美味しい?」と恥ずかしそうにしながらも小さく問う。そして続けざまに質問を。)
…松風さん、意外と甘えただったりすんの?
ん、美味しい。
…え?違うと思うけど。どちらかと言えば甘えられたい方。
こんなことしたの涼くんが初めて。
( 戸惑いこそあれど、自分の口へとサンドイッチを運んでくれる相手が最早愛おしく、遠慮なくそれを一口食べると何度か噛んで飲みこむ。当たり前だが美味しい。ふとあいてからの質問には素っ頓狂な声を出すも、しばらくして内容を理解すれば自分は甘えられたい側の人間だと話し。そしてこんなことをしたのは彼が初めて。なぜそうしたのかと言われると自分でも分からない。
次は自分のサンドイッチを1つ手に取ると彼へ差し出して「涼くんもあーんする?」 と期待の籠った眼差しで見つめ。)
( 違うと否定する返答を聞けば、ふぅん、とだけ返し特に興味が無いように装うが、実際はまだ鼓動が高鳴っていて。
大人の余裕が感じられる彼は確かに甘えられたい方だと感じるし、ただの気まぐれだと思ったが、自分だけだと聞くとそれはそれで変な期待を抱きそうになる。
必死に平常心を保とうとするも、今度は相手がサンドイッチを此方へ差し出し、再度期待の目を向けるものだからまたも此方も固まってしまう。
しかし、ここで遠慮するのもなんだか悔しくて、意を決したもう一度体を乗り出すと大きく一口かぶりついて。
口いっぱいのサンドイッチを頬張りながら、照れながらもなんだか不貞腐れた子どものように続ける。)
前言撤回、松風さんは甘えたじゃなくて意地悪だ。
……サンドイッチはめちゃくちゃ美味しいけど。
たしかに、ここのサンドイッチは美味しいな。
( 素直に一口食べてくれた相手にはやっぱり可愛いと、そんなふうに思ってしまう。意地悪だという言葉には、なんのことやらと首を傾げるもこんなに悪戯したくなる相手は他にいないと愉しそうに笑って。そのまま彼にサンドイッチを渡すと自分の手元にあるものを食べて、たしかにどちらの味も美味しいと頷く。コーヒーを合間に飲みながら満足そうに一息ついて。)
( 首を傾げてとぼける相手をじとっと見つめるが、なんだか此方もおかしくなって一緒に笑ってしまう。歳が離れているとはいえ、そんなことを感じさせないぐらい相手とは気負わず話ができる。
自分も残りのサンドイッチとアイスティーを胃に流し込めば、満足そうに「 だろ? 」と美味しいと言ってくれた相手へ笑顔を向ける。自分が好きな店を相手が気に入ってくれるのもとても嬉しいものだ。
朝食を平らげても相手とはまだ会話も続き、気がつけば幾らか時間は過ぎていた。ふと携帯で時間を確認すれば、店の中に1時間はいたらしく、少し名残惜しいが腰を上げて。)
そろそろ出ようぜ。
今度会った時は松風さんがおすすめの店、教えてよ。
あぁ。それまでにいくつか候補探しとくよ。
( 彼との時間はあっという間に過ぎてしまい、腕時計に目を移すともうそんな時間かと驚く。相手と話している時間は飾らない自分でいられるそんな気がして、とても心地の良いものに感じている。名残惜しそうに席を立つと「会計はまとめて払う」と伝えて、支払いを済ませると店の外に。)
バイト頑張って。
…あ、じゃあ、その時は俺の奢りな。
( あっという間に支払いを終わらせてくれる相手には、なんだか不服そうにしつつも礼を言う。しかし、全部払ってもらってばかりでは此方の気持ち的に示しがつかないため、上記を告げては明るく笑った。)
ありがとう。松風さんも仕事頑張って!
またな。
( 店の外に出て激励の言葉を貰えば此方もお返し、少し後ろ髪が引かれるような思いをしながらも来た道を戻るように小走りで去っていく。また次も会えるのだと思えば既に楽しみで、バイトも頑張れそうだと鼻歌を歌いだした。)
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相手と出会って約1週間ほどが経っただろか。
平日はお互いに仕事やバイトで結局すぐに会うことはできず、少し残念な気持ちを抱きつつも、いつも通りそつ無く仕事をこなしていた。
だが、そんなある日、滅多にならない携帯から着信を知らせる音が…バイト先へと向かいながら着信元を見てみれば、そこには“母さん”の文字。途端に眉間へと皺を寄せ、舌打ちを。すぐさま着信拒否にするものの、その後もしつこくメールやらメッセージやらが届く。嫌気がさして全て無視すると、乱暴に携帯をポケットへと突っ込んでしまった。
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( 仕事が忙しく中々彼に連絡は取れないでいるが、近々また食事にでも誘おうかとスマホを取りだして相手の連絡先を選択する。今度は彼がゆっくりできる休みの日を選択しようと、相手の予定に合わせる気満々で文面を打つ。)
「仕事が忙しくて中々連絡できなかった。ごめん。今度涼くん、休みいつ?その日にまた食事でもどうかな。」
( 文面を送信し終えると、嬉しそうにスマホを眺める。仕事の休憩とはいえ、普段スマホを眺めて笑っているなんて絶対しないため、同僚からはついに恋人ができたのか、など質問攻めにあったのは後の話。)
( 最近は機嫌よく過ごせていたのに、母親からのしつこい連絡に大分参ってきてしまった…、今日もまた家にはほとんど滞在せず外をぶらついて乱れきった心を落ち着かせていると、携帯に表示された「松風さん」の文字が目に入り、慌ててメッセージを開く。相手からの文章を読めば途端に表情が柔らかくなり、すぐさま返信を。)
「 全然大丈夫。仕事お疲れ様。
今週末はバイト休みだから、行けるよ。
せっかくだし、今度は俺がそっち行く。」
( 上記を返信し、約束通り食事へと誘ってくれる相手を思えば嬉しそうに笑って、気持ちを切り替えんと大きく息を吸えば、相手からの返信を待つ。
前回は自分家の周辺で過ごしていたため、相手の家が遠くて不便だったことだろう、そこで次は自分が向こうの最寄りまで行こうと考えたらしい。)
「わかった。じゃあ、土曜の夕方17時頃、○○駅で待ってて。
なんなら、今度は俺の部屋泊まりに来てもいいけど?」
( 返ってきた返信には、直ぐに上記のように打つ。自分のマンションの最寄り駅を指定すると、その近くで美味しいご飯どころを探さなくてはと意気込み。ひとまずその後はスマホを仕舞い仕事に戻ることにして。)
「 分かった! 松風さんが良いならそうしようかな。
土曜、楽しみにしてる 」
( 相手からの返信を読めば、心の中で“やった”と呟き、今度は自分が相手の家に泊まれることを楽しみに思う。ふと、このやりとりが本来恋人同士の行うもののように感じて照れくさくなるが、別に知り合い同士がご飯を食べて泊まることも普通だろう、と自分で自分を正当化して。そもそも既に自分の家に相手も泊まっているわけだし、何も変なことは無いはずだ。
相手へ再度返信を返すと、今頃また仕事をしているだろうと此方も携帯を仕舞い。早く土曜日にならないものかと待ちわびる。)
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……ッ!…お前、こんな所まで付いてきたのかよ!
…離せッ!!
( それからまた数日後。
着替えなどの簡単な荷物を持ち、電車にのっては約束していた最寄り駅へ。
少し早めに着いてしまったが、時間まで適当に過ごそうと改札口を出た時、突然腕を掴まれて其方を振り向いた。
そこに居たのは白髪混じりにやつれきった身に覚えのある女性で、実際はもっと若いはずだが、その姿のせいで老婆にも見える。その女性は眼孔鋭く此方を見つめ、まるで呪文でも唱えているかのように『……涼、助けてよ 』と縋ってくる。
必死に振りほどこうとするが、しつこく迫ってくるその姿に、悲しみと怒りと、様々な感情が湧き上がり、自然と目に涙が溜まる。
暫くしてそんな2人の剣幕に周囲がざわつきはじめるのは言うまでもない。)
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