匿名さん 2023-03-21 19:31:37 |
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承知致しました。
( 淡々と仕事をこなす様を横目に自身も業務に励む。彼女が滞りなく取り組めるようにするのが秘書たる自身の役目であり、存在意義とも言える。スマートフォンで話し出したのを見て手を止め、邪魔してしまわないように無言で近くに歩み寄り。メモを受け取ると、電話が切れたタイミングで一言理解した旨を告げ。鞄を手に取りつつ、確認するように問い掛けて。無論仕事に使う書類以外のもので、と暗に示し )
藤城社長。何か必要なものはございますか?
( / では、桃吾は25歳とさせて頂きますね。続きから出させて頂きました。絡みづらいなど、何かありましたら仰ってください。特に何もなければ、背後会話への返答は不要です。)
S社はお得意様だから話が終わった後に会食できるように手配しておいてくれる?場所は間宮に任せるから。
( 電話の内容はあまり良いものではなく、額に手を当て僅かに溜息を漏らし。問い掛けられた言葉に顔を上げて指示を出せば席を立ち。ハンガーにかけてある上着を羽織り鞄に必要な書類や手帳を収めて。時折時計を気にしつつドアに手をかけ部屋を出て歩きながら今後のスケジュールを確認するように彼に視線を向け )
この後の予定は何か入ってる?
はい。予約、入れておきますね。S社の方は確か煮魚がお好きでしたから、和食料理の店にしましょうか。
( 彼女の様子を見るに、上手くいっているわけではない模様。となれば、ご機嫌取りとはいかずとも、気分を害することは避けなければならないだろう。歩きながらスケジュール帳を開くと、予定を確認。書き留めたメモを見ながら淡々と告げ、彼女へと視線送り )
今日はもう入っていませんが、明日はA社、明後日はE社に伺うことになっています。今後数日が期限の資料はすべて出来上がっているので、そんなに忙しくはならないかと。
そうね、…和食のお店なら上手くいくかも。
( 取引先に関しての情報は、此方から伝えなくても全て頭に入っている彼は秘書としてとても優秀で。和食の店を予約していると聞けば、幾度か手こずった商談も今回はきっと上手くいくであろうと頷き。明日以降の予定を聞けば心做しかほっとした表情を浮かべ、会社を出ると入口前に止まっている社用車の前まで向かい )
間宮も知ってると思うけど、E社の社長は手強いから何度も資料の作り直しをさせられるけど今回は一発でいけそう?
社長ならきっと上手くいきますよ。
( 彼女の成功に力添えができれば良い。何とか良い方に向かってほしいものだと、力強く頷いて。社用車のところまでくると、助手席の扉を開けて彼女をそちらへと誘導してから自身は運転席へ。シートベルトを締めながら、自信ありげに答え。実際のところはわからないものの、成功の予感がしていて )
絶対大丈夫です、って言い切るのは難しいですけど。でも、突っ込みどころを作らないようにいつもより綿密に作成してあります。
間宮がいれば心強いわ。そんな気がしてきた。
( 助手席に乗り込むとシートベルトを締めちら、と視線向けると僅かに笑顔向け。その後鞄からパソコンを取り出すと膝の上に乗せると、取引先から届いていた数件のメールを返信するためキーボードを打ち込み。時折彼の作った資料を眺めれば確信したように頷き )
これなら一発で落とせるかも。…さすが私が見込んだ秘書だけはあるわ。他の社員も間宮を見習ってほしいんだけど、そんな事言ったら嫌われそうね?
光栄です。
( 柔らかな笑顔に心ときめかせながらも、特にそんな素振りは見せずに簡潔な一言で応じ。運転中のため、彼女の方を見ることはなく、仕事の話と同列のような淡々とした声色で平然と好意伝え。信号が赤で止まると、漸く彼女へと視線向けてふっと笑み溢して )
見習う、か……俺なんか見本にならないと思いますよ。好きな人に喜んで貰いたくてやってるだけだから。
何言ってんの。…ほら、信号青になってる。
( 自分に好意を伝え此方に笑み向ける彼を呆れたように溜息混じりにいつもの様に軽くあしらい、目の前の信号に視線向けた後再びパソコンを操作し始め。ひと段落ついた所でパソコンを閉じると、車窓から見える景色をぼんやりと眺め )
わかってます、大丈夫です。
( あしらわれるのはいつものことで、そのため特にショックを受けるでもなく怒るでもなく世間話のようにさらりと流し。青になると再び視線を前に向けて運転に集中して。やがて辿り着いた目的地。これから商談本番、やや緊張した面持ちで )
じゃあ、行きますか。
絶対決めるからね。
( 目的地に到着するとゆっくり深呼吸をしてシートベルトを外しひと言告げると車の外へ。身嗜みを軽く整えると、一際目立つ高層ビルに臆することなくS社のエントランスを通り抜け。受付にアポを取っている旨を伝えると応接室へと案内され )
少しだけ緊張します。やはり、慣れません。
( 応接室で、商談相手が来るのを待つ。資料も会食の場も用意して、でき得る限りのことはし尽くした。それでも不安、というよりも単なる緊張でそわそわと落ち着きない様子で。相手が現れるなり冷静を装い、恭しく一礼し。これから勝負のときであり、気合いを入れると彼女へと目配せをして )
…此方が今回ご用意させて頂いた資料になります。御社にとっても決して悪くない条件かと思われますが。
( 隣に座る彼と目が合えば、それに応えるように小さく頷き相手側に用意した資料を机上に差し出し。提示した資料を手に取り時折眉間に眉を寄せ、隅々までチェックする様子の商談相手に対し、なんとか勝ち取る為ここぞとばかりに強い口調で堂々と伝え )
その点に関しましては──
( 資料の一部に対し、挙げられた疑問点。想定内のその質問に対し、淀みなく説明をして。相手はどう受け取るだろう、ちゃんと伝わっているのだろうか。自身の発言で問題ないだろうか。補足があれば彼女がしてくれるはずだと甘えつつ、相手の様子を窺って )
ご理解頂けたようで何よりです。先程も間宮が説明した通り──本当ですか…!有難う御座います!今後ともよろしくお願い致します。
( 秘書である彼の対応は此方が補足するまでも無く完璧なもので。商談相手も完璧なまでの説明に、驚きの表情浮かべながらも何とか納得してくれたようで商談は成立し。その場で立ち上がると深々とお辞儀をしほっとした表情浮かべ、会食の場を設けている旨を伝え秘書の彼に目配せし )
──間宮、お車までご案内して。
はい。お荷物、お持ちします。
( なんとか上手くいった。安心感と達成感に満足して笑み浮かべ。彼女に倣ってお辞儀をしては、視線を受けてこくりと頷いて。相手へと歩み寄ると鞄を受け取り、駐車場まで案内し。一息つくと、彼女へと声を掛け )
上手くいったのは社長のおかげです。
今回は間宮のおかげよ。ありがとう。
( 相手が車に乗り込むのを見届けていれば、隣に立つ彼に気付きにこりと笑顔向け。その後商談相手に声を掛けられると後に続くようにその隣に座り、今後の方針や雑談等たまに笑顔を交えながら話し始め )
いえ、此方こそ。
( 車に乗り込むと、予約した店へと向かって走らせ。電話のときとは違って和やかに交わされる会話を聞きながら、あくまでも運転に集中して自ら参加はせず。目的地へと辿り着くと、先に降りて後部座席の扉を開け、相手の荷物を預かり )
此処の店の煮魚は美味しいと評判なんです。きっと気に入って頂けるかと。
ここ予約取るの大変だったんじゃない?
( 以前テレビやSNSでも話題になっていたお店だと気付けば、秘書の彼にこそっと耳打ちしながら訊ね。相手は煮魚が食せると聞きご満悦の様子で、出迎えに来た店員に促されると店内に入っていき。店内は全室個室でゆっくりと食事ができるようになっており、部屋に通されると女将らしき女性が挨拶をしに来て相手にお酌をし始め )
実は、親が料理長と仲良くて。だから、贔屓にして貰っているんです……これ、内緒ですよ。
( 有名になる以前から見知った店であり、行きつけの場所。他よりも優遇されている自覚はあるため、こそこそと静かに答え。相手と女将が談笑しているのを横目に、メニューを開くとその中のひとつを指差し。よくテレビでおすすめされている煮魚ではないものの、隠れた人気メニューで )
この季節の刺身盛り合わせ、時期によって変わるんでおすすめです。
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