サン・テグジュペリ。 2022-11-20 11:57:35 |
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最近、堰を切ったように仕事が増えてきたねぇ
君の采配が上手だからかな
(疲れているのは確かだが、彼女の前ではあまり表に出さないようにしていた。少しは甘えた方がお世話上手な彼女の母性をくすぐれるのでは…?なんて、ふと思ってはいたが。仕事自体はあまり好きではないが、頑張れば頑張るほど彼女が喜ぶのであれば、苦ではない。あと仕事の間は隣にいれるというのが本音だが。さっきまで寝起きだった人間とは思えない動作で、立ち上がって彼女の手を引いて)
あはは、本当に褒めるのが上手いんだから、………本当に寝てた?
(少し照れくさそうに頬を掻く。目を細めるも、やはり少し申し訳ない。彼はまだまだ青年で、そして芸能界の人間としても日が浅い。気負いすぎて心が押し潰されてしまわないかと日々心配しているが、…何となく、飄々とした彼は、大丈夫な気さえしてしまう。彼に手を引かれつつ、待たせておいた車の元へ行きながら、その颯爽とした歩き姿に首を傾げて)
もちろん、十分に寝ていたよ
(仕事なんて二の次のような生活をしていた人間が、よくもここまで変われたもんだと、我ながら思って。彼女よりも芸能界に入って長いからこそ、自分がこの裏があって当たり前の世界から守らないと、という気持ちが日に日に増していく。今のように嘘だってつくのもお手の元だ。車の後部座席の扉を開けて、彼女に入るように促して)
ならいいんだけれど…
(すこし訝しげに彼を見詰めた。彼はなんとなく、取り繕うのが上手いような、そんな気がしているのだ。とはいえ、自分はただのマネージャーにしか過ぎない。彼に過剰な干渉をしてはいけないのだと、世話焼きな心をぐっと堪える。促されるが後部座席、奥の方へ座っては、彼に隣に座るよう、自分から促した。運転手に、「遅くなってごめんなさい、待っててくれてありがとうございます。」と律儀に感謝を告げて )
今日はすごくいい夢を見れたからね
(彼女の隣に座りながらつぶやくように言って。いつもはあまり夢を見ないくせに、さっきのうたた寝の時に見た夢の中には彼女がいた。マネージャーなんて関係ではなく、一人の女性として。発進された車の中で、次の番組の準備をすることもせずに、車窓から外を眺めて)
あら!ふふ、それは良かった。…でね、太宰くん。次は、クイズ番組なんだけれど…太宰くん頭いいからなぁ…ごめんね、今回もわざと間違えてほしいのよ。
(むむ、と少し悩みに唸った。オファーを受けたは良いものの、彼としてはすごく退屈だろうと思う。分かりきっている問題を、分からないふりをして、わざと間違えて、笑いをとる。不快かもしれない。気持ちの良いものではないかもしれない。だが彼は、いつも、二つ返事でいいよと承諾している。ううむ、と唸ったまま、窓の外を見ている彼を見詰めつつ、眉尻を下げた。)
……いいよ、間違えるのなんて余裕だよ。
(外の風景を見ていたのは決して退屈だからではなく、彼女のブラウスのボタンがかけちがっているのか、下着が目に写ってしまうからだ。さっき一瞬だけ見てしまった下着にしか意識がなく、何気なく口にした一言が、思ったより嫌味にしか聞こえず。)
あら、……そう、なら、いいんだけれど…
(少し、ちくりと棘のあるような言い方に少しだけ悲しそうな顔をした。そうだよね、嫌よね…なんて勝手に解釈してしまいつつ、ブラウスのボタンの掛け違いなんて全く気付くこともなく、浅いため息を吐いては仕事用のスマホから番組監督への連絡などを済ませておき、ふと彼に身を寄せれば、「着くまで音楽でも聞いてる?」と、問い掛けて)
音楽はいいかな、…それにしても、今日はあついね
(トゲのある言い方をしてしまった事に気づかないほどに、ブラウスのことをどう言っていいか考えて。女性の下着なんて、何度も見てきたと言うのに、こんな事でドキマギしてしまうとは…と、自分に呆れて。ようやく考えた苦肉の策で、自分の服のボタンをいじりながら、彼女に大して笑いかけて。その時に、彼女の傷付いた顔が目に入り、自分のせいだと言うのに「どうしたの?」なんて、心配そうな顔をして)
うん?そうかしら、…クーラー下げてもらう?
(彼の苦肉の策も失敗に終わった様子。首を傾げながら問いかけるも、やはり自分のブラウスのボタンのことは全く頭の片隅にも浮かばなかったようだ。運転手に、クーラーを少し下げて欲しいという旨を伝えた後、彼からの問いかけには、首を横に振り、「いいえ、なんでもないわ、」と目を伏せて)
………ごめんね、はっきり言わなかった私が悪い。
(気づかない彼女の純真さに頭を抱えたいところを抑え、運転手に聞こえないように耳元で「ボタン、かけちがっているよ」と囁いて、指先で彼女のブラウスを指さして。「今すぐかけ直した方がいい」と、続けて忠告をする)
えっ?……ぁ、あっ。ごめんなさい、見苦しいものを、
(彼に耳打ちされ、初めて気がついた。自身のブラウスに視線を落としては、前屈みになれば簡単に下着が見えてしまう様になっている。頬を赤く染めては、あたふたとボタンをかけ直して)
見苦しいなんて、そんなことないよ
誰にもみられなくてよかった
(自分からしたらご褒美以外のなにものにでもない光景に、強く否定をして。恥じらう姿を見れただけでも、今日の仕事を頑張れる気がして)
…そう、??なら、…いいや!恥ずかしいから忘れてちょうだいね、
(いつもの癖で、なら良かったと言いそうになるも、かぶりを振っては頬を赤く染めたまま上目遣いに小首を傾けて。)
もちろんだとも、直ぐに忘れるよ
(いつものように誤魔化してみるが、忘れるつもりなんて毛頭なくて。そろそろいつもの調子が戻ってきたのか、車窓に写ったカフェを指さして「この前、ロケで言った場所だね」と、話を振って)
…あ。本当だ!あー…あそこのパフェがすこぶる美味しかったのよねえ、
(彼の指さしたカフェに視線を移しては、すこしきらきらと瞳が輝いた。そのロケの後、プライベートの時にひとりで来ては名物のパフェをたらふく食べたものだ。頬を緩ませては、「今度二人で行く?」なんて誘って)
美味しかったね
ご一緒したいのは山々だけど、大丈夫かい?
(甘味については詳しくもないし、どちらかというと苦手だ。でもここでそんなことを口にするほど野暮ではなく、いつもの笑みで交して。2人で行こうなんて天にも登るような提案に飛びつきたいところを抑え、少し眉を寄せて。この前2人で出かけた時に雑誌に取られ、スクープになったのを思い出して。その時は何とかなったものの、マネージャーである彼女の元にはかなりの文句が入っていたようで)
大丈夫って?………ああ、そういえば、…あぁ…不便になったものね、昔からの友達だっていうのに、男女ってだけでもう二人でどこかに行けなくなっちゃった。
(彼とは学生の頃からの友人だった。昔はたくさん出掛けていたが、今となっては、どこに行ってもスキャンダルに。熱愛に。スクープに。友情が劣情として変換され、世に出されるようになってしまった。彼には幸せでいて欲しいから、自ずとプライベートでの付き合いも減っていっていた。少し寂しそうな顔をしながらも、彼の心配していた事とは別の解釈をしていた。自分が他人にどう言われようが興味は無いが、彼にバッシングが行くのだけは、嫌らしい。肩を竦めては、眉を下げて視線を外し、)
これだから世間様は……、私たちの仲には何も無いと言っているのに。
(学生の頃は彼女とどこへ行こうが何も言われなかった。何回も2人で出かけても、当の彼女は意識さえしてくれなかったのは、今ではいい思い出だ。何も無いと自分で口にしたものの、勝手にショックを受けて。自分にヘイトが向いたとしても性格上気にもならないが、そのせいで彼女と一緒に居れなくなるのだけはどうしても避けたくて。)
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