うたいてしぼう 2022-01-21 21:39:28 |
![]() |
通報 |
はあ…よし、集中だ集中。
ッ……、!?
『わぁ、花ちゃんが的外した!これは大惨事だよ。花ちゃんどうかしたの?悩み事かい?もしかして花ちゃんにもアオハルな恋が…!?お母さん心配だよ、とっても心配だよー!』
主将変なこと言わないで下さい!貴方お母さんじゃないでしょう!?それに西園寺くんはそんな人じゃないです!
『はは、こりゃぁ重症だな…。花ちゃんが惚れた男は西園寺ってのかい。聞いたかい副主将さんよ。』
「勿論よ主将さん。花ちゃん、男は星の数ほど居るんだからいい男を見つけなさい。西園寺くんというのね、たしか2年B組、花ちゃんと同じクラスよ。」
『かー!アオハルじゃんかよ!私もそんなのしたかったよう…しくしく。嗚呼しくしく。』
だから、違うって、言ってるぅ…。副主将はその情報なんなんですか。どうにかしてくださいよ。
『…まだ茶番のツッコミが出来るぐらいは正常か。恋に溺れるなよー?』
「激しく同意するわ。」
うるっさい!っ。
(時は進み部活。弓道着を着た花はいつもより調子が変で集中しろと頭には言い聞かせていたものの珍しく的を外した。それをフレンドリーでオカン気質の主将といつも冷静なのに謎の莫大な情報網と好奇心が強い副主将に目撃されたしまった。もはや漫才、茶番になってきてしまったので強制的に大声で止め、一つ矢を打つと、真っ直ぐ、ブレることなく的の真ん中に。ふうと息を吐けば主将と副主将は諦めて自分達も部活動に戻った。)
(放課後。長かった授業が終わり、寄り道せず真っ直ぐ自宅への道を急ぐ。特に誰かが待っているわけでもないが、自然と足は速くなっていた。ここ2~3日はなかなか時間が取れず活動ができていなかったので、今夜あたりは配信でもしようかと、自宅に着くや否や早速準備を進め。事前に告知も何もしていない、ゲリラ配信になってしまうが偶にはそれも良いだろう。傍に水分補給用のペットボトルを用意するとヘッドホンを装着。新しく【歌枠】と名付けた配信枠を準備し、マイクのスイッチを入れ)
……あー、あー。声入ってますかー?
あー、疲れた。あれ?『CLEAR』さんの配信だ。
げ、結構前から始まってるじゃん。
やっぱり好きだなあ、『CLEAR』さんの声、落ち着く。
(帰り道、自分の愛用している長い弓と鞄を持ってスマホの画面を見る。通知にはCLEARさんの歌枠と書かれている。スマホを急いで開くとコメント欄はもう書かれているのは当然だがかなり前から始まっていたことが判明。でも視聴し続けているとやはり自分にとってここまで落ち着かせてくれる人の声だと思い、気持ちが弾む。いつの間にか家に着いてしまった。身の回りのことを済ませるとベットにダイブしてコメントを書き送信。その内容は「CLEARさんの配信は心が安らぎます笑。また配信出来る時は伝えて下さると嬉しいです。なんて言ったらダメですかね?」、と送信したところ異様に返信が来た。「あーろん!?またミスっちゃった?笑匿名じゃなくてあろー。になってるよー。」……やばい、間違えた。その言葉だけが脳に響いた。そう、名前のところを匿名ではなくあろー。にしてしまったのだ。このミスは女性配信者に前やったことのあるミスだった。穴があったら入りたい、という訳で私は布団を自分に被せて巣を作った。)
(適当に何曲か歌った後、休憩がてらコメントでも拾おうかとチャット欄に目を通したところ、何故か異様にコメントが流れるのが速い。一体何事かと過去のログを遡ると、そこには見覚えのある名前が。何してんだ…と半ば呆れ気味に苦笑いをする中、配信に来てくれた某クラスメイトの顔が脳裏をちらつく。きっとアカウントを間違えたにせよ、折角コメントまで残してくれたんだ、雑談に繋げるいい話題にもなるだろうと触れることにして)
休憩しようと思ってコメント遡ってたんですけど、有名人の方が来てくれてるみたいですね。えーっと…、次回からはしっかり告知するんで安心してください。僕、あろー。さんの配信よく覗くんですよ。流石にコメントまでは残せないんですけど……
(恐る恐るコメント欄を見てみればやはりバレてしまっているようだった。CLEARさんがなんとそれを見ていたらしく反応してくれた。しかも自分の配信を見てくれていたらしくかなり嬉しくてコメントを返そうと指が動いた。「わー!反応してくれてありがとうございます!告知の件はよろしくお願いします笑。コメントはいつでも書いてもらって大丈夫ですよ、コメントでよく雑談するのでいつでも歓迎です!無理にとは言いませんけれども。」意外と長文になってしまったが大丈夫だろうか。憧れている人に対しての特有の心配が生まれてきた。)
…へぇ、じゃあ今度覗いたときは何かコメント残しておこうかな。あろー。さんこそコメントありがとうございました。
(軽く触れただけで思った以上の長文で反応が返ってきて驚いたものの、どこか「彼女らしさ」を感じて小さく笑いが零れる。彼女のコメントのお陰で話題にも困らなかったし、いい感じに喉を休めることが出来た。そろそろ歌枠として再開しようと、リスナーへ向けて一言伝えた後イントロを流し始め)
…よし、大体喉の調子も戻ってきたし、またなんか歌おうか。コメントは適度に拾ってくので、皆さんも遠慮なく書き込んでくださいね。
ふふ、こんな形でCLEARさんとお話出来ると思ってなかったけど…めちゃ嬉しい…。
明日は部活ないし配信してもいいなぁ…。
(勿論今の話は聞いているが、それとはまた別に反応が返された時の声が脳で再生を繰り返している。こんなん恋する乙女じゃないか、と思ったがあくまでCLEARさんは憧れている人、しかも自分も歌い手をやっている以上余計な事があっても嫌なので恋愛感情は抱かないと決めてある。今度はコメントをしてくれるようだし明日配信してもいいなぁと思ったのだが、その時浮かんでくるのは西園寺くん。一瞬脳がおかしくなったのかと思ったがきっと先輩がおかしなことを言ったからだし、歌い手活動をしているのは今のところ家族と西園寺くんだけしかいないからだ。きっとそうだと心を押し殺す。)
……じゃ、今日もご視聴ありがとうございました。またね。
(あれから数時間後。歌いに歌った長時間配信もそろそろ終わりを迎えようとしていた。最後に締めの挨拶をして、マイクのスイッチもオフ、そして配信を切る。久しぶりの活動ということもあって、自然と気合も入っていたらしい。風呂も夕飯も済ませ、軽く咳払いをして喉の調子を安定させると、「明日の学校に響かないといいけど」なんて考えながら眠りに落ちた。)
わぁ…もう終わっちゃった。
…………はっ?!もうこんな時間じゃん早くお風呂ー!
(結局夜ご飯を挟むも配信を終わりまで見た。そうしたらお風呂の時間を等に過ぎていてわたわたしつつも今日のやる事は終わった。疲れ果てたようにベットへうつ伏せるように行きそのまま布団を被らずに寝てしまった。朝、少し鼻が詰まっているようでそれをお母さんに言うと何故か軽い風邪と思い込んだのか温かい飲み物やのど飴を持たせてくれた。休み時間の時だろうか、正直そこまでいらないと思っていたが温かい飲み物は心身共に暖かくなりこれだけは良かった。昼休み、友達は広く浅いものだから一緒食べる友達がドタキャンして他の子と食べるなんて日常茶飯事だ。でも今日は凄く不安だった。一人で屋上でお母さんが作ってくれた唐揚げを一口、その少しだけ、少しだけの酸っぱさは自分が一人なのだと実感させられるものだった。昨日は西園寺くんがいたからか余計に一人と認識する。)
(次の日。やはり昨日は羽目を外し過ぎたのか、少し喉が痛む。この調子じゃ今日2日続けての配信は難しそうだ。
昼休み前が始まる少し前。昨日授業を抜け出したことが担任の耳に届いたらしく、生徒指導という名の呼び出しをくらってしまった。貴重な昼休みの数分を説教に費やされてしまう痛恨のミス。今更教室に戻って弁当を食べる気にもならず、昨日に引き続き屋上でランチタイムにしようと決めた。きっと誰も居ない……と思ったのだが、屋上に続く階段を登った先には見知った背中を見つけ)
……灰鈴?
びゃっ!?さ、西園寺くん!?
…びっくりした。どうしたの?あ、お昼ご飯か。
………もしかして一人が良かった?一人がいいなら私教室戻るけど。
(少しだけ悲しい味がした唐揚げを飲み込んだ直後。背後から話しかけられて思わず体が跳ねて出したことの無い声を出しながら驚き背後を向くと今考えていた西園寺くんがいたので少し驚きつつも冷静になる。が、寂しかったせいか心の中は嬉しくてたまらなかった。相手の様子だとお昼休みだからお昼ご飯を食べに来たのかなーと。昨日お昼休みは誰もいないと教えたし前までは屋上に来ることは無かった西園寺くん、もしかしたら誰もいない方がよかったかなと不安になり聞いてみて。だんだん不安が降り積もってきたのでお弁当を畳む準備をする。)
いや、別に気にしない。
灰鈴こそ、今日は一人で飯食ってたんだろ?先に居たのはそっちなんだし、邪魔だったら俺が別の場所行くけど。
(昼食を片付けようとする彼女を言葉で制す。自分的には、場所がどこであろうが誰であろうが昼食が摂れるのならば何の問題もないため、それは杞憂だと首を横に振って。そもそも、彼女がこうして一人で昼食を摂っているのは珍しい気がする。意識はしていなかったが、いつもは女子友達と一緒に食べていた気が…。それなら寧ろ自分が邪魔をしてしまったのではないかと、腰を下ろす前に立ち去る準備を)
いやいや!むしろ西園寺くんが来てくれて嬉しいってゆーか
なんてゆーか…、い、一緒に食べよ…?
(西園寺くんが気にしないのならいいかとお弁当を片す前にまた少し広げると西園寺くん自身が別の場所に行くと言い出したので慌てる、一人だったしまた寂しい気持ちになるのは嫌なので本心を伝えて。少し照れくさいがカタコトになって一緒にお昼ご飯を食べようと誘う。これ以上恥ずかしい気持ちになるとどこかで爆発してしまいそうなので目を逸らせる、でもなんか悪い印象を与えないかと目を合わせようとするもやはり無理だともう一度目を逸らす。)
……いいよ。
(彼女からの意外な誘いに驚いて目を見開くも、自分を誘う時の緊張している様子が面白かったのか、小さく口角を上げて許諾する。今は目を逸らされてしまったが、それでも感情が読みやすい彼女は見ていて飽きない。まだ何処か恥ずかしがっている彼女を横目に隣へ移動すると、自分も昼食にしようと相変わらずのコンビニおにぎりを取り出して)
(/ちょっと前のオカンな主将さんと謎に情報網が凄い副主将さん。また出てくるかも知れないから画像乗っけとくね。
https://uploda1.ysklog.net/uploda/7c56790e7a.png
https://uploda1.ysklog.net/uploda/c9fbb91903.png
ショートのが主将さんでロングで三つ編みしてるのが副主将さんだよ。
あと、今回ロルに山田くんってのが出るけどクラスメートの男子で数少ない花の友達だよ。歌い手界隈を知っていますが花があろー。なのは現在知ってないよ。(花の事狙ってる可能性大です。))
……!えへへ………。
コンビミのおにぎり…。あ!昨日ね、CLEARさんの配信があって、楽しくて時間忘れちゃうぐらい凄かったの!それで山田くんにメールで教えたらめっちゃ共感してくれて!語れる仲間が増えるって嬉しいなぁって。
(西園寺くんが横に座ると安心したのかなんなのか声がダダ漏れになっていて。パリパリとコンビミおにぎり特有の包装の音がしたので見てみるとやはりおにぎりのようで。もう少し栄養バランスが整ったものじゃなくていいのかなぁと思ったが言ったらダメな気がしたので口をチャックした。が、CLEARさんの配信と山田くんとの語り合いを思い出しチャックした口が開いた。ペラペラと嬉しそうにCLEARさんの事も山田くんの事も話した。)
(/承知!頭に入れときます~)
へー……良かったじゃん
(さっきまでの緊張が嘘のようにペラペラと饒舌になった彼女。さっきまでの気まずい空気よりは全然マシ、寧ろ明るくなって会話も弾みやすい雰囲気……なのだが、話題が話題。いくら正体を隠しているとしてもそれは自分な訳で、気恥ずかしさやら触れにくさでどうしても反応が鈍くなってしまう。こうして話題にしてもらえるほど配信が好評だったのは有難いものの、どうにもならないこの感情を押し殺すようおにぎりを口に運び)
ん……?あ、そういえば西園寺くんってCLEARさんに似てるよね!なんか…カッコいい雰囲気みたいな…声も、相槌の仕方も!
(相手の反応が鈍めでおかしいと思ったがCLEARさんをそこまで知らないのかなぁと自問自答で納得してしまい。そういえばこの3日間ぐらい西園寺くんとCLEARさんがどうにも似ていると見切り発車で口走り理由もその内溢れてしまった。るんるんで楽しそうに話すのはきっと西園寺くんといる時間が楽しいし今のCLEARさんの話をするのが楽しいからだ。)
そう?俺は言われたことないけど……
(似てるもなにもそれは……、喉まで出かかった言葉をなんとか飲み込んで、当たり障りのない相槌を返す。今まで自分がCLEARではないかと疑われたことが無かったのは事実。知名度がそこまで高いわけではないし、このまま静かに活動していければいいと思っていたのだが。そう簡単にはいかないようで、下手すればバレるのも時間の問題ではないのかと背中には冷たい汗が伝う。別に彼女に正体を明かしたからと言って今後の活動に支障が出る訳ではない筈だが、どこか複雑な心境で彼女が嬉々として話す様子を眺め)
うーん、卑怯だけどさ……。
私は自分があろー。で西園寺くんがCLEARさんなんだったら私だけカミングアウトとか西園寺くんがずるくなるけど…っっ!ごめん変なこと言って…
(どうしても謎が解けない為、卑怯であることを先に伝えると途端にデリカシーのなく少し相手からしたら腹が立ってしまうような事を言ってしまい。はっとしたときにはもう遅く、罪悪感と申し訳なさが頭を侵食して謝ることがその時できる精一杯だった。とても心が痛くて箸も止まった。)
そこまで考えたんならもう分かってると思ったんだけどな……。そう、俺がCLEARだよ。
(もうここまで勘付かれているのなら、必死に隠す必要もないだろうか。寧ろそれが原因で彼女を苦しめることになるのなら……。相手から無意識に出たであろう言葉を受けそう判断すると、あっさりと自分の正体を明かしてしまった。この空気に耐えられなくなったのか、同じ境遇の彼女に自分を重ねたのか、それともちょっとしたファンサービスなのか。この真意は自分でも分からないが、誰かに話したことで自分の中で抱え込んでいたものが少し軽くなった気がする。そんなに思い詰めることもないとでも言いたげな表情で少し笑って見せ)
はい、これで平等?
トピック検索 |