ほんの少し、背伸びをして（ 〆 ）

伊澄くん笑った方が可愛いよー？あ、でも男の子に可愛いは変だよね……。なら、かっこいい……？(1人で自問自答して悩んでいたがまだ迷っているようで最終的に真面目な顔で相手に問いかけ始め

いや、どっちも言わなくて大丈夫です。反応に困るんで… （　至極真面目な顔で問い掛けられると、本当に困ったように曖昧な表情で　）

そう…？伊澄くんの笑った顔綺麗だったから褒めたかったのにな……(困ったような表情を見るとみるみる笑顔が消えてしまい、分かりやすくしょんぼりとして

──神月先輩、可愛い。（　何かを考えるような間がややあって、唐突に真面目な顔で見つめ　）…って、急に言われたら先輩も困るでしょう。

え……？私は嬉しいよ？褒めてくれてるんでしょ？なら、嬉しい。(きょとんとした顔をしていたがすぐに嬉しそうに微笑みながらも少し照れているのか頬を赤らめて

…すげぇっすね。（　予想していたものとは少し違う反応に今度はこちらがきょとんとし、その後独り言のように「まぁ神月先輩ならそうか…」と続けて　）

んふふー、私は先輩だからねー！(なんで凄いと言われたのか分かっていないのか少々自慢げに胸を張りながら言っており

…？　そうっすね。すごいすごい。（　話の脈絡がうまく掴めなかった様子で不思議そうな顔するも、とりあえず同意しておいて　）

んふふー！ありがとう！でも、私は伊澄くんの方がすごいと思うけどな？(同意されると嬉しそうなぽわぽわとした笑顔を浮かべながら

…は、俺？　…っすか？（　唐突な言葉に思わず敬語が外れかけ、遅れて付け足しつつ　）

うん！毎日練習も勉強も頑張ってるでしょ？だから伊澄くんも凄いよ(微笑みながら頭を撫でようとしているのか手を伸ばして

…いや、それなら俺より一年長くやってる神月先輩の方が凄くないっすか？（　避けるか否か迷っているうちに彼女の手が自身の頭に届き、大人しく撫でられて　）

私より伊澄くんの方が上手だし、凄いのー！(どうしても自分が凄いとは認めたくない様子で、頭を撫でた後ぷくっと頬を軽く膨らませて

何なんすか、その張り合い方…（　謎の謙遜に戸惑ったようにぽつり　）…先輩は、よく分からないです。さっきは喜んでたのに。

私は伊澄くんに褒められたいんじゃなくて伊澄くんを褒めたいのー！(ぷくっと頬を膨らませたまま歩いていたが、そのせいか足元の小石に気がつかずつまづいて転びそうになってしまい

それ、どっちもじゃ駄目なんです──…えっ。（　唐突にぐらりと揺れた彼女の身体を咄嗟に捕まえ　）

わっ……伊澄くんありがとう…(自分でも驚いたのか声を出し、ぎゅっと相手の腕に抱きつきながら礼を述べ

び、っくりした…（　思わず素直な気持ちが口からこぼれるも、すぐにはっとして彼女の方振り返り　）すみません、俺、結構強く掴んじゃって…痛くなかったすか？

うん、大丈夫だよー。それに伊澄くんが掴んでくれてなければもっと怪我してたもん(痛がる様子など全くなくいつも通りのぽわぽわした笑顔で答え

気をつけてくださいよ、本当に…（　気楽そうな彼女とは対照的に、鼓動が速くなったままの心臓を落ち着けるように細く息を吐き　）先輩の家、どの辺りでしたっけ。