セレン 2021-07-14 10:24:29 |
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ありがとう、ございます……。そのぐらいでちょうどいいです。
(ふと、自分は何をしているんだと思う。監禁されて、目の前には殺人犯がいるのに、こうして首輪の調節というイレギュラーなことをしてもらうだなんて。
今頃、警察のみんなはどうしているだろうか。私のことを探しているだろうか。それとも……、もういないものとして扱われているだろうか。きっと必要とはされていないと思うと、涙が出てきた)
……稲葉さん、どうしたんですか?…あ、その何か、してほしいこととか…あったら
(口元が緩む。ありがとう、そう感謝されたのはいつぶりだろうか。幼い頃両親に数回言われた事しか覚えていない。その後は怒られてばっかで、ああ僕があれをするようになってからはもっと…。そうだ、あの頃稲葉さんと出会ったんだ。地獄のような日々の中で稲葉さんだけが僕の女神様になったんだ。嬉しくて、ありがとうという貴女の顔がどんなものか見たくなって、見ると透明な雫が頬を伝っていた。反射的に首輪から手を離し震えを押さえつけつつ慎重に名前を呼んで望みを聴く。自分のせいじゃないか、そんな思いを抱えながら)
必要と、されたい……。誰かにとって必要だったら、それでいいんです……。
(きっと情けない表情だろう。けれど、必要とされたかった。この中では彼と自分の二人きりで、何を言っても許される気がしてしまった。殺人犯に気を許す、それは警察としてはあってはいけないのに……。
調整された首輪は、今は苦しくもなんともなく普通に動ける。必要とされたい。誰かに抱きしめられたい。この人なら叶えてくれる気がしてしまった)
必要と………。ねぇ、稲葉さん、僕じゃだめなんですか、僕なら…その望み叶えてあげられます、だってずっとずっと前から僕は必要としてたから
(僕なら、叶えられる。その想いが微かに溢れてしまう。たとえ僕が叶えられるとしても貴女がそれを望むかどうかは別なのに、欲が滲み出てしまう。抑えるように、未だ震える手を力強く握る。でも、貴女と、稲葉さんともっと一緒にいたいから、自分勝手にここまで連れてきたんだ…今更辞めることなんてできない、したくない。心の中で決意を固める。たとえ地獄に落ちるとしても貴女と一緒にいる、そんな決意と共に視線を合わせると嘆くように言葉を紡いで、安心したいがために抱きしめようと腕を伸ばして)
抱きしめて、必要として……。私、足を引っ張ってばかりで、だから弾き出されたのかもしれない。独りぼっちは、もう嫌です……っ。
(伸ばされた腕にしがみつくように、自分も手を伸ばす。頭の中では、自分は警察のみんなからも家族親族からも見放されてしまったと思い込んでしまっていた。でも、目の前の彼は方法こそ犯罪だが私を独りぼっちから救ってくれた。必要としてくれた。それが嬉しくて、思わず笑みがこぼれる。いけないはずなのに、彼を信用してしまっている)
(お久しぶりです。1年間お返事出来ず本当に申し訳ありません……。急にいなくなってしまった手前、またここに書くのは失礼かと思ったのですが、もしまだいらっしゃるのであればもう一度させて頂きたいという気持ちで書かせて頂いてます。改めて何も言わず1年もお返事しなかった事本当に申し訳ないです。)
(こんにちは、お返事ありがとうございます。
お元気そうで安心しました。私の方もここ一年は色々とあったので、なかなかここに来れずにいました。
またやりたいと思っていただき嬉しく思います。こちらこそ、改めてよろしくお願いします)
(まさかこんなに早くお返事をもらえるとは思っていませんでした……、とても嬉しいです。早速ではありますが続きを書かせて頂きました。何か不備などあれば教えていただけると幸いです)
────僕はッ!いつだって、いつまでも、稲葉さんを必要とします……!!
(ふわりと貴女の匂いが鼻を掠める。貴女に、稲葉さんに、他でもない稲葉さんに求められることが出来た。あの時貴女を助けることが出来て本当によかった、その安心感と満足感で一粒の涙をこぼす。今感じるのは、貴女の温かい熱に、首元にあたる冷たい金属、どこか歪さは感じるけれど、これから上手くやっていけるそう思えば貴女の背後で微かに笑みをこぼしながら、今不安だろう貴女を安心させるように力強く抱きしめて)
あ、あ……。こんなの、いけないってわかっているんです……! ごめんなさい、ごめんなさい……
(彼の腕のなかでふるふると震えるのは嗚咽のせいか、はたまた別か。冷たい首輪と温かい体温がアンバランスだが、もうどうでもよかった。ただ、嬉しかったのだ。嘘偽りない彼の言葉が。
今正気に戻っていれば、きっと彼を拒絶することもできていただろう。警察として、堕ちてはいけない狂気に身を委ねることもなかった。けれど、この瞬間だけでもいいから、誰かに必要だと言ってもらいたかったのだ)
(/とてもいい書き出しでした! 無理のない範囲でやっていきましょう)
大丈夫……大丈夫ですよ。そう、大丈夫です。
(今の僕に貴女の傷を癒すことは出来ない。だから、少しでも、貴女が自分のことを責めないように、僕のことを安心できる人物だと思えるように。ただ”大丈夫”と何度も何度も繰り返した。しかし、貴女を傷つけたくない。そんな気持ちとは裏腹に、貴女が泣く姿を見て心臓が熱くなっていく。抱きしめる手は緩めず、自然に、貴女を警戒させないよう首元まで手を移動させたところで、カチャリと金属音が鳴った)
(/お気遣いとお褒めの言葉ありがとうございます。とても返しやすいロルでありがたいです。不備などありましたら教えてくださると幸いです)
へっ、あ……、あの、どうしたんですか?
(ぼやけた頭に響く金属音。そこで自分が首輪をされていることを思い出して、異常な状況に寒気がした。大丈夫とは言われたが、今自分は逃げることはおろか自分では動けない。今の状態は、普通の人から見れば袋の鼠なのだ。先程弱みを見せたことを一瞬後悔するも、少し冷静になって、いつも通りを装って質問してみる)
──……お腹空いてませんか?あれから何も食べていないので、大丈夫かなって思って、ほら!好きなものとかあったら作りますし!
(時が止まった気がした。鳴った音はわずかだったものの、響く金属音は確実に貴女に届いているはず、狼狽して逸る気持ちを抑えるも微かに指先は震え、不規則な呼吸が自身の脳内に響く。ゆっくり。笑顔を作る時間が欲しいから、少しずつ、貴女から離れていく。目を細めて、口角を上げて、貴女が震えているのか自分が震えているのかわからない、ただ離れなければと思ったから手を離し、貴女の目の前に。ワントーン高い声が、喉の奥から出る)
……確かに。自分では気づけませんでした。最近はまともに食事をしてなかったからですね。作りやすいものでよかったら……。
(笑み、自分の目の前にいる彼は確かに笑みを浮かべている。不自然さを感じたのは警戒心か、警察の勘か。それでもお腹の具合を気にかける言葉に嬉しいと思ってしまう。不規則な睡眠と不摂生のせいでいつも疲労しきっていたので、なにか食べたいと思った。同時に、この部屋について調べようとも)
よかった!なら、ここで待っていてください。すぐに作って来ますね!
(笑顔を貼り付けながら出来る限り明るく振舞う。キッチンへ向かうため、一刻も早くあなたから離れなければという警鐘のため、話の終わり際貴女への視線を外していく。その表情には怯えが滲んでおり、けれど声だけは高いままベッドから離れると、軋む音と共に自身の沈みがそこにはあって。部屋から出る時、視線だけを動かしぬいぐるみだらけの室内を一瞥する。わずかに差し込む外から光、小さな棚には本が何冊か、テレビやスマホなんて外の様子を知る物はないし、部屋から出ようにも鎖は室内を歩き回れる程度の長さ。唯一外を確認出来る窓だって、スリガラスな上、内側には檻を設置している。時計も、ここにはない。”安心”そんな感情を呼び起こす部屋、浅く吐息を漏らせば部屋から出て、一回、鍵をまわし)
……本当に、どこに来ちゃったんだろう。見たところ、通信機器もないし。
(そっとベッドからおりれば、辺りを散策しようとして諦めた。どうせこの長さでは部屋の隅に手が届くぐらいだと気づいたのだ。あの彼がそんなに油断をするわけがない。今のところ自分に敵意はないらしいが、変わるかもしれないのだ。窓は鉄格子にすりガラス。一度入った精神科もすりガラスだったなとぼんやり思えば、足音があまり聞こえないことに気がつく。
彼が帰ってきたときに動いていたら、何をされるかわからない。そっとベッドに戻り、彼が帰るのを待っていた)
────違う、違う、違う……ッ!僕は、ただ守りたかっただけなのに…っ(階段を下りて一階に差し掛かった瞬間、支配していたはずの身体が力無く座り込んでいく。隠すように両手で顔を覆う。手のひらに醜い笑顔の形を感じて、不安だけで震えが現れていたのじゃないのだと理解した。純粋にただ守りたい気持ちが、いつの間にか独占欲に変わってしまったようだった)……行かないと、おかゆがいいかな、食べやすいもの……(深呼吸をしながら立ち上がると少しだけ震えが止まった。最低限の食材しか入っていない冷蔵庫を見ながら、その中で作れるものを頭の中に思い浮かべると調理を始めて。作り終われば、鍋に入った卵のおかゆとおかゆにあう梅、さけ、ゆかり、それと器をお盆に乗せ、小さくため息を吐いた後彼女の部屋に向かって)稲葉さん、すみません遅くなりました……!(扉を二回ノックし開けると柔らかな声色で話しかけて)
(/遅くなってすみません……!)
あ……っ。大丈夫です。おかゆ、ありがとうございます。
(ふわりといい匂いが鼻腔をかすめる。おかゆか。しかも卵粥のようだ。布団でぬくぬくと暖まりながら待っていると、自然と母親に看病された日のことを思い出す。警察学校に入って以来はそんな機会もなかったため、懐かしい、暖かい気持ちになって自然と笑みが溢れた)
そうだ……、あなたのこと、なんて呼べばいいですか? ずっと考えていたんですが、呼び名がないと不便だなって……。
(彼に会ってから、ずっとあった疑問。彼だけが私のことを覚えているというのは、いささか不平等ではないか。なぜか今は抵抗や通報をしようなども思うことなく、ただ単純な疑問として口から出ていた)
(/大丈夫です、お返事ありがとうございます!)
いえ、あ、好きなものをえらん、で……ここに来て、初めて笑ってくれましたね(トッピングに指差し、説明しようとした時、秒針の刻む音のない静かな部屋に彼女の笑顔が響く。監禁してまでずっと見たかったそれを、間近で見ることが出来た途端、何ものにも代え難い嬉しさが身体に満ちていくのを感じる。生きていてくれて良かった。彼女の笑みにつられて自身の表情も緊張の糸が解けたように綻び)
そう言えば名前を教えてなかったですね…、僕の名前は真……瀬戸井真っていいます。(昔から人との関わりがなかったせいか、名前が漏れていなかったのだろう。自身の名前を聞く彼女に向かって聞き取りやすいはっきりとした声色で名前を伝えて)
し、真さん……。改めて、よろしくお願いします。あ、の。良い名前ですね。
(しん、というその響きは、聞き取りやすく喋ってくれたからか案外すぐに馴染むことができた。しん、真と書くのだろうか。自分は何をしているんだろうと心の片隅では思いつつ、良い名前だなと言ってしまう。本心、なのだろう)
久しぶりです、こんな風に誰かの料理を食べるなんて。いつも自炊だったので。
(湯気のたっているおかゆやトッピング達を見つめながら、呟くように言った。正直得意ではなかったため、彼の料理に見とれていないといえば嘘になる。まだ自分のことを大事にしてくれる人はいるんだ。再び、彼の優しさに溺れそうになってしまった)
こ、こちらこ…そッ、ぁ……えっとありがとうございます。
(至って普通の会話。まるで、日常を過ごしているかのようなやり取りに、どう返事をしていいかがわからなかった。経験不足か、どこかこの空間に違和感を感じているからか、微笑みながら、何か返事をしなければと考えるも、動揺の滲み出る不安定な言葉が口から漏れるだけだった)
これからは僕が作るので、稲葉さんはゆっくりしてて大丈夫ですよ。……稲葉さんの料理に比べれば、僕の料理なんてまだまだですが…、ぁ…熱いので気をつけてください、
(ここに連れてきたのも全ては彼女を守りたかったから。稲葉さんは何もしなくていい、ただゆっくりここで安心していてくれればそれで十分。その為には手を煩わせることがないように、自分の能力を上げる必要がある。休んでていい事を優しく伝えると、棚の上におぼんを乗せお粥を器によそっていく。”自炊”という言葉を聞けば、ほんの少し前、モニター越しに料理を作っている彼女を思い出す。実際に食べたことはないのになんだか心が温かく感じる料理、思い出すだけで自然と笑みが溢れてしまう彼女の料理と比べると自身の料理のなんと拙いことか。余韻で小さな笑みは浮かんでいるも、眉を下げて謙遜すると自嘲するような表情になり。器によそい終われば、れんげと共にお粥を差し出して)
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