ビギナーさん 2021-01-23 23:00:09 |
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…………
(彼は一人残された後、しばらくは眠っていたようだが突如むくりと起き上がってカーテンを閉め、電気を消して部屋を薄暗くした後スマホをポケットから取り出す。言葉少なにどこかに連絡をしていたようだがしばらくして通話を切り、また煙草に火を点けると煙を揺らして)
はい、次の飲み物ですね。・・・ふふ、甘いもの、承知しました。
(どこかご機嫌な様子でいたのを客に指摘され、雰囲気に当てられて甘い酒を所望されるとニコニコとしながらシェイカーを振って仕事をしていて)
………人使い荒いっての。
(彼は気だるそうに呟き、ジャケットの袖に腕を通すと髪を軽く整えてから部屋を出る。デスクの上に置いたルーズリーフをちぎって作られた即席のメモには走り書きの文字で「仕事。今夜は帰らない。」と残されていて)
・・・あ、オーナーこんばんは。・・・ふむ、なるほど承知しました。
(店にオーナーが出勤してくると何かを耳打ちされて頷く。どうやらこれから店にお得意様が来店してくるようで、ないとは思うが粗相のないようにと言われ、高めの酒やグラスを用意し始めて)
……はぁ?同行しろ、って…急すぎんだろ?…はいはい、分かってるって…。
(仕事相手から急にバーに行く予定があるから来てくれ、と無茶な頼みをされて彼は困惑したように首を振るが有無を言わせぬ相手の様子に渋々頷き)
「ハァイ!マスター、来たわよ~!」
(いかにも陽気そうなお姉さんが手を振りつつ、脇にアンドラスを抱えるようにして入ってきて)
・・・いらっしゃいませ。
(キィ、と静かなドアの開閉音と共に明るい女性の声が聞こえ、反射的に視線を動かせば女性に抱えられるかのようにして来店した相手の姿を見つけ目を少しだけ見開くも優しく笑顔を見せる。表面面は繕ってはいるが内心、バクバクと心臓が動いて驚いていて)
「やぁ、いらっしゃいませ。よく来てくれました」
(オーナーがニコニコとした笑みのまま近づけば女性の手を取り、手の甲にキスをし歓迎して)
…!
(彼の方も気付いたようだがすぐに目線を逸らし、借りてきた猫のように女性に連れ回されるがまま席に座り)
「あ!そうだ、この子結構カワイイでしょ?アタシが仕事依頼した子なんだけどね、強いしカワイイしで気に入っちゃった!」
(彼女はすでに酔っているんじゃないかと疑いたくなるほどに饒舌に語り始め、アンドラスの髪をわしわしと掻き回し)
・・・・・・。
(女性とオーナーが話している姿を横目に見つつ、グラスを柔らかな布で拭き、しおらしく座る相手の様子も見る。いつも家で見る姿しかなかったのでこんなにも大人しい姿に少しびっくりして)
「ほう、そうですか。確かにキレイなコですね・・・。そうだ、キレイなコといえばうちにも1人いるんですよ」
(うんうん、と頷いて女性の話を聞いていればふと思いついたようにリアンに視線を向けて)
・・・はじめまして。
(にこ、と人当たりの良い笑みを浮かべて女性へと挨拶し)
「へぇ…キミも中々カワイイわね。でもアタシはこの子の方が好きよ。だってこの子はデンジャラスでキュートだもの。キミにはデンジャラスさが無いわ。」
(彼女は目を細めて貴方を見つめ、表情を綻ばせるがアンドラスを愛でるように抱きしめ)
………やめろって…メリッサ。
(嫌そうに眉をひそめ、手でぐいぐいと女性を押し退けるが彼女はお構いなしに離れようとせず)
「あら、良いじゃない。今キミに依頼してるのはアタシよ?依頼人のことそんな風にしていいの?」
「はっはっは!厄介な人に好かれたなぁ、君も!」
(ニヤニヤと面白そうにメリッサがアンドラスに絡んでいる姿を見て)
・・・まぁ、私はしがないバーテンダーですので・・・デンジャラスさがなくて申し訳ありません。ですが、お酒を作る腕は保証致しますよ。
(メリッサの言葉に苦笑いしつつ、自分にはバーテンダーとしてのプライドがあり、その腕には確固たる自信があることを伝え)
「言われなくたって、アタシもそこは信用してるわ。ねぇ、キミも何か飲む?奢ったげるわよ。」
(穏やかな笑顔になると嫌そうな表情のアンドラスの方を向き)
………別に…いらねぇよ。酒は好きじゃねぇ。
(彼は無愛想な様子で首を振り、話をシャットアウトするように煙草の煙を揺らし始めて)
「あら、つれないのね。じゃいつもの頂戴。」
(彼女は残念そうではあったがすぐに取り直して酒を注文し)
かしこまりました。
(そう答えると、先程マスターから言われた酒を作ろうと、年代物の酒とグラスを取り出し、酒は他のシロップと共にシェイカーへ注ぎ入れる。数回シェイクしてからグラスに注げば鮮やかな色をした酒が出来上がっていて、その出来栄えに自分も満足そうにする。仕上げにミントを飾り、余分な水気を拭き取ればメリッサへと渡して)
お待たせ致しました。どうぞごゆっくり。
(今の酒を作るために使った道具や酒を仕舞おうと少し横にズレて始めると、ふと煙草を嗜んでいるアンドラスのために飲み物を用意しようとグラスに氷とコーラを注ぎ入れてからアンドラスに差し入れ)
「あら、ありがと。」
(グラスを受け取り、早速口を付けると満足そうに微笑み)
…………ん。
(彼は謝意を述べようとしたのか軽くカウンターを指先で叩き、口だけを動かして「悪い」と伝え)
・・・・・・。
(音に気づき顔を上げると声には出ない謝意を述べられたので、目を細めて柔らかな表情を見せると自分も口だけ動かし「平気だ」と答えて)
「でね、マスター。その時に…」
(彼女は酒が入って更に機嫌が良くなった様子で饒舌に喋り始め、好き勝手喋った後欠伸をして)
…………。
(彼は無言のままコーラを飲み干し、グラスをかたんとカウンターに置いて)
・・・お代わりは?
(欠伸をして少し眠そうにしているメリッサを横目で見ながらコソッと相手に小さな声で問いかけてみて)
「おや、メリッサ。もう限界かい?」
(オーナーはアンドラスとリアンのことは気にせず、メリッサに声をかけていて)
………。
(彼は無言で首を横に振り、メリッサを親指で指して)
「何言ってんのよマスター、まだ飲めるわよ。こうなったら閉店時間までいるわ。同じの頂戴。」
(彼女は意地を張るように赤らんだ顔を不満げに膨らませ、どことなく呂律の回らない舌ったらずな声で注文を飛ばし)
「・・・だそうだ」
(マスターは少し呆れたようにリアンに向かって視線を投げかけ)
「・・・かしこまりました」
(マスターとアンドラスに向け苦笑いを見せれば先にチェイサーを用意しメリッサに提供すれば、先程彼女が飲んだ酒と同じものを作って渡し)
「ほら、キミも飲みなさいよ~。」
(彼女はその一杯を飲み干し、完全に酔ったらしくアンドラスに絡み始める。が、ふと鼻を鳴らし)
「あら、そうだわ。アタシ今ご機嫌だからちょっとした特技見せたげる。アタシね、すっごく鼻が利くのよ。犯罪の匂いだって嗅ぎ分けられるの。」
(少し自慢げに胸を張ってそう言い、すんすんと鼻を鳴らしてアンドラスの匂いを嗅ぎ、「キミ、アタシの想像より随分とデンジャラスな仕事やってるのね。血と脳漿と…死臭が匂ってるわよ。」と微笑み)
・・・・・・。
(メリッサから言われた随分な物騒な匂いの数々に、拳銃を使ったり拷問でもしてる仕事・・・警察、ねぇな。あいつ、マフィアだったのか・・・と考えつつ、表面上は『私は聞いてませんよ。私は壁ですよ。聞いてても口外しませんよ』のスタンスを貫いていて)
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