小説家 2018-05-27 13:15:22 |
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( /トピの建設有難う御座います…!あちらの板でお声掛けさせて頂きました、2784の者です。何分至らぬ点も有るかとは思いますが、これからどうぞ宜しくお願い致します! )
( /こちらこそ、ご移動有難うございます。曖昧な募集だったので、声を掛けて頂けて非常に喜んでおります…!どうぞよろしくお願い致します。
それぞれの性格容姿など、人物像からまずは詰めて行きましょうか。こちらの小説家に対するご希望はありますでしょうか?大まかな人物像は、募集板にて書かせていただいた通りを想定しております。 )
( /そうですね…性格につきましては、あちらの板で提示して下さった穏やかで物腰柔らか、というものが基軸にあるのであれば特に希望は御座いません…!大幅に逸れた様な、例えば無口でクール、などの様な物でなければ何でもウェルカムですので…!又容姿につきましても強い要望は有りません故、主様のお好きな様に作成して頂ければと思います。
此方の拾われた少女に関しましても、何か性格容姿等に要望や萌萎有りましたらお聞かせ願えますと幸いです!加えて二点ほど質問がありまして…、一点目は、少女は「訳あり」で拾われたとの事ですが、具体的にどういった事情が有るのか等は決まっておりますでしょうか…?漠然としたイメージだけでも有りましたら是非言って下さいませ。又二点目につきまして、小説家さんは少女に深い愛情を注ぎ、とあり少女もいずれは小説家さんに懐いていくとは思うのですが、双方又は小説家さんと少女のどちらか片方だけでも恋愛的な愛情は微かにでも生まれるのでしょうか…?擬似家族の様な親愛のみでしょうか?此方としてはなくてもあっても素敵な物語になるだろうなと思っております…!初っ端から長々と質問してしまい申し訳ないです。お手隙の際にでもご意見宜しくお願い致します。 )
( /承知致しました。大枠を外れない、穏やかで物腰柔らかな男性で練ってみますね。
少女に関しては、なんとなく想定しているのは一人で行く当てもなくどこからかやって来て小説家に出会った、という流れだけです。なので、例えば両親が亡くなって一人でこの町までやって来て屋敷の前で行き倒れてしまった、というような出会いでも構いませんし、具体的なところはなんでも大丈夫です。性格は、あまり男勝りだったりガサツすぎない方が良いなあというくらいです…!
愛情に関してですが、個人的には途中から少女が小説家に対して家族以上の愛情を抱く、けれど歳の差もあり小説家は自分が長くない事も知っているため、少女に対しての愛情は家族としての物だと自分に言い聞かせて少女からの愛も見ぬふりをする、と言うようなのが切なくて良いかと思っておりました。ただそこに関してはまだ未定なので、物語の中で変わって言っても構いません。
因みに、小説家は心臓病なり肺結核なりを患っている設定にしようと思っています。二人の生活が一年間な理由は、小説家が一年で亡くなってしまったからでも構いませんし、一年で少女が屋敷を出て行ったでも、或いは小説家と少女という関係から夫婦という関係に変わったのでも良いと思っています。だいぶ先が不透明で申し訳無いのですが、行き着く先は進めながら決めていけたらと思っております。こちらこそ長々と申し訳ありません。 )
( /少女に関しての大まかな設定、又性格はガサツ過ぎず男勝りじゃない、との事確りと把握致しました…!それ等を考慮した少女を作成していこうと思います。
家族愛と恋情に揺れ動く小説家さんと少女の双方、なんと切ない…!とても素敵な設定で此方も大賛成で御座います。物語を進行していく中でまた詳しく相談していけたらとは思いますが、是非ベースはこれで進めていけたらと…!
成程、補足の説明感謝致します。三つのどのパターンも捨て難いものですね。前者二つは悲恋要素が強めで、後者は前者二つより幸せな終わりとなりそうですね…。いえいえ、物語を紡いでいく上で決めていく方がその都度じっくり考えていけると思いますので、お気にならさず…!丁寧な解答有難う御座います!それでは主様のご意見を基に早速PFを作成させて頂きます。 )
名前:雨宮 庵 ( /あめみや いおり)
性別:男
年齢:31
性格:温厚で物腰柔らかな小説家。気品のある、落ち着いた雰囲気を纏っている。実年齢の割に落ち着きがあるため年上に見られがち。美しい庭園のある日本家屋に、使用人なども雇わず一人で暮らしているが、外の道からは生垣に阻まれて中を覗き見る事はできない。人と関わる事は嫌いではないが、病を抱えていることもあり屋敷を滅多に出ない為、町の人と関わる事は殆ど無い。時折出入りするのは医師や物売り商くらいで、この家の主人を見かけることは無いに等しい。非常に穏やかな人柄で、共に暮らすようになった少女に対しても声を荒げたり怒ったりすることは一切ない。やや低めの優しい声を持ち、微笑みを浮かべていることが多い。
容姿:目に掛かるほどの長さの黒髪、屋敷の中にいることが殆どの為、肌は透けるように白い。儚げな影を宿した切れ長の瞳はいつも穏やかな色を浮かべ、少女には特に優しい眼差しを向ける。教養を感じさせる綺麗に整った顔立ちは、色気さえ感じさせるもの。身長は178㎝程で、すらりと背筋の伸びた痩せ型。いつも和装で、着流しの上から温かい羽織を掛けている。ふわりと墨の香りを漂わせている。
備考:少女と出会った事から、二人きりで暮らすようになる。胸に病を抱え、時折発作を起こすことがある。
( /遅くなりましたが、PFが完成しましたのでご確認の程宜しくお願い致します!二人の愛情の在り方や流れの件も承知頂き有難うございます。二つお伺いしたいことが御座いまして、まず一人称は「僕」と「私」とどちらがお好みでしょうか?また、彼の抱える病は心臓病と肺病と、どちらの方が良いなどご希望ございますか?初めは隠しているものの、時折発作が起きてしまい少女に気付かれてしまうというのを想定しています。病というのも二人の物語に於いては一つキーポイントなのかな、と思っております。 )
名前 : 篁紅子( タカムラ ベニコ )
性別 : 女
年齢 : 17を迎えた辺り
性格 : 元来、両親が存命中の頃は明るく天真爛漫といった言葉の似合う極普通の少女であった。然し両親が他界し天涯孤独の身となってからは笑顔も消え伏せ、心を閉ざし内向的な性格へと一転。女衒に売られた事が更に其れに拍車をかけ、やや人間不信気味の猜疑心に満ちた眼差しと何処か反発的な穿った姿勢を多く他者に向けるようになる。心根は非常に優しく思い遣りに溢れ、一度心を許した相手には本来の彼女が持つ一面を度々覗かせる。年頃の娘らしい純真さは未だ多く残っており、袴姿に憧憬を抱いたり、好いた相手に褒められたりすると淡く頬を染める等可愛らしい一面も持ち合わせている。又短期ながらにも遊郭で培われた賜物か、一つ一つの所作は何処か洗練されたもの。
容姿 : 烏の濡羽色と云うべき僅かに藍を帯びた漆黒の髪は、下ろせば腰に行き届く程に長く、元々の毛質か手入れを良く施していたのか癖のない直毛。前髪をあげ櫛を差し、多くの簪や鼈甲も差して綺麗に結われていた髪も、街を彷徨い歩くにつれ段々と乱れ、今や後ろで簡易に纏め後れ毛も多く出る程までに。朧気な光しか灯さぬ黒曜石の様な双眸は大きく美しい形をしており、覆い被さる様に長い睫毛が影を落とす。白粉でも塗られているのかと思う真白な肌に、名の通り紅に色付く唇。あどけなさと艶やかさが同居した顔立ちをしている。衣服は重く華々しい打掛を脱ぎ、白の着流しの様な物だけを羽織り街に出た。身長は160糎程とさほど大きくはないが、体付きは年相応。身を置いていた場所の都合上和装を着る機会しかなかった故にハイカラな袴姿に憧れを抱く。
備考 : 一人称 「 私 / わっち 」 二人称 「 名前+様 / 貴方様や主様 」 齢14の頃に両親が事故で他界し、親戚も知り合いも居らず行く宛もなく街を亡霊の様に歩いていた所、女衒に目を付けられ遊郭に売り飛ばされた。約三年間近く留袖新造として遊女となるも、客を取る前に、このまま遊郭で一生を終えるくらいならと決死の覚悟で逃亡を図る。簪や鼈甲など金目になる物は売り、交通の為の賃金と最低限の食糧に費し、三日程かけて小説家さんの屋敷が在る街まで辿り着いた。心身共に疲れ果て、屋敷の前で行き倒れていた所を小説家さんに介抱してもらい、当初はまた遊郭に売られるのではと警戒心を露にしていたものの次第に心を許す様になる。短期間ではあるが三年間遊郭に身を置いていた為、砕けた廓言葉は未だ抜けない様子。因みに、浪漫溢れるご時世の代名詞とも言えるハイカラなモダンガールの服装や袴姿に憧れを抱いている。
( /小説家さんのPF、確りと熟読させて頂きました…!不備も勿論なく、何から何まで想像通りで興奮冷めやらぬ侭で御座います。又一人称は個人的には基本は私で、ふとした拍子に僕という一人称が漏れたりすると嬉しいです。病は、そうですね…。矢張り当初猛威を振るっていた結核、肺病がしっくり来ます。此方も主様の仰います通り病は物語を進めていく上で欠かせないものだと思っております。
次いで訳あり少女のPFがやっと完成致しましたので是非ご確認の程をお願いしたく思います…!主様が提示してくださったものに、「遊郭に売り飛ばされ、逃げてきた」というものを付け加えてしまいましたので、若し不適切不必要だと感じる場合には仰って下さいませ!遊郭は昭和初期まで存在していたとはいえ、袴姿やモダンガールといい勝手に大正色を強くしてしまい誠に申し訳ないです。 )
名前:雨宮 庵 ( /あめみや いおり)
性別:男
年齢:31
性格:温厚で物腰柔らかな小説家。気品のある、落ち着いた雰囲気を纏っている。実年齢の割に落ち着きがあるため年上に見られがち。美しい庭園のある日本家屋に、使用人なども雇わず一人で暮らしているが、外の道からは生垣に阻まれて中を窺い知る事はできない。人と関わる事は嫌いではないが、病を抱えていることもあり屋敷を滅多に出ない為、町の人と関わる事は殆ど無い。時折出入りするのは医師や物売り商、出版に携わる人間くらいで、この家の主人を見かけることは無いに等しい。非常に穏やかな人柄で、共に暮らすようになった少女に対しても声を荒げたり怒ったりすることは一切ない。やや低めの優しい声を持ち、微笑みを浮かべていることが多い。
容姿:目に掛かるほどの長さの黒髪、屋敷の中にいることが殆どの為、肌は透けるように白い。儚げな影を宿した切れ長の瞳はいつも穏やかな色を浮かべ、少女には特に優しい眼差しを向ける。教養を感じさせる綺麗に整った顔立ちは、色気さえ感じさせるもの。身長は178㎝程で、すらりと背筋の伸びた痩せ型。いつも和装で、着流しの上から温かい羽織を掛けている。書き物を生業としている為、常にふわりと墨の香りを漂わせている。
備考:一人称「私/僕」後者は相当に気を緩めている時以外は滅多に出ない。二人称「紅子」少女と出会った事から、二人きりで暮らすようになる。小説家として多くの書物を世に生み出し、書物だけで生計を立て不自由なく屋敷に暮らせるほどには売れ筋は好調の様子。贅を極めることはなく、生活自体は質素なもの。肺病を患っており、時折体調を崩すことがある。
( /少女ちゃんの素敵なPFありがとうございます!遊郭から逃げてきた設定も、大正色の強い感じもとても好みですのでお気になさらず!不備なども一切御座いませんので、このままお相手くださいませ。時代設定も元より曖昧だったので、明治後期〜大正前期くらいの設定で大丈夫ですよ。溺愛する少女ちゃんに袴を買ってあげたり、髪を結ってあげたりする想像が膨らみます…小説家の一人称、病の設定も承知致しました。書き足しておきましたので、ご確認下さい!
さて、物語としては必然的に少女を拾うところになるかと思うのですが行き倒れている少女を見つけて屋敷で介抱するという始まりで良いでしょうか? )
( /一先ずは不備がなかった様で安心致しました…!好き勝手に練った構想を快く受け入れて下さり感謝感激で御座います。時代設定の方態々有難う御座います; 書き足されたPFも確り拝見させて頂きました。主様の素敵な想像に此方も期待と楽しみが止まりません…!
はい、此方も最初の始め方はそれで良いかと思います…!となると、絡み文は此方から出した方が遣り易いかとは思うのですが如何致しましょう…? )
( /ありがとうございます、此方こそこれからの二人の物語が楽しみでなりません…!
それもそうですね、では御言葉に甘えて絡み文をお願いしても宜しいでしょうか?因みに此れ以降も何か確認事項や展開の相談などあれば、いつでもお声がけ下さいね。此方も何かにつけてお伺いすることもあるやもしれませんが、何卒宜しくお願い致します! )
…ッ、ぅ、…
( 昼時には青々とした天も、刻が進むにつれ淡く橙色の幕を下ろし、今や所謂黄昏時の時刻へと変化している。和装と洋装を掛け合わせた衣服を纏う小洒落た人々が闊歩していた大通りとは一転、人気の少ない街外れを、衣服と髪が乱れるのにも構わず息も絶え絶えに彷徨い歩き。軈て前方に連なる生垣を発見すると、最後の余力を振り絞り大門の前まで足を運ぶも、心身に襲い掛かる疲労には抗えず終ぞそのままどさりと地面に倒れ込み、同時に黒曜石の如き双眸を意識を手放す様にゆっくりと瞑り。 )
( /了解致しました、また何か聞きたい事や相談したい事が出来ましたら再度顔を出させて頂きますね。主様も何か有りましたらなんなりと…!はい、此方こそ宜しくお願い致します。ロルの長さは中~を目安にしましたが調整可能ですので…!ロルに関して長さ含め絡みづらい、返しづらい等至らぬ点が御座いましたら又お申し付け下さいませ! )
──…こんな時間か、…
( もう日も沈んだ刻だろうか、昼過ぎから文机と向き合ったまま漸く筆を置き外を見遣ればいつの間にか空は茜と藍を混ぜたような色合いに。ぽつりと呟きを溢しつつすっかり遅くなってしまったと腰を上げ庭へと出るとちょうど見頃を迎えている牡丹の花の根元に茶碗に汲んだ水を掛けてやり。日の出ている時間が長くなってきたとは云えまだ夕刻になれば肌寒い、門へと向かい郵便受けの中身を取ろうと手を伸ばした所で、外で何かが落ちるような音を聞き思わず手を止めて。何の音だろうか、と静かに門を開けて通りに目を向けると門の前に倒れている一人の少女の姿を目の当たりにし驚いたように息を呑んで。何処から歩いて来たのか、着ている着物は薄くだいぶ汚れてしまっている。軽く肩を揺すり何度か声を掛けた後、何にせよ此処に放っておく訳にはいかないと少女の身体をそっと抱き上げると、再び門を閉ざして藍の濃くなる中屋敷へと戻って行き。 )
( /絡み文有難うございます!とても絡みやすかったです。では背後は一旦失礼致しますね。)
──…、
( ゆらり、ゆらり、と宛ら赤子を眠らせる為の揺籃に優しく揺られている様な心地好い不思議な感覚を、憔悴し切った身体と朦朧とした意識下でも微かに感じ取っていた。然し彼の腕の中で揺られている間は僅かにでも瞼を動かす事はなく、薄い着物に包まれた白く細い体を呼吸と共に小さく上下させるのみで。── 何時間、否若しかすると何分かも経っていないのだろうか。震える様に薄らと開かれた黑の双眸が初めに映し出した物は、見慣れぬ高い天井。己がとある一室に横たわっている、と最低限の状況をぼんやりと理解し、次いで幾度か瞬きをした後、身体は横たわらせた侭徐ろに顔を横に向けては今居る場所を把握せんと目視出来る範囲を隅々まで見遣り。 )
( /絡みづらい等なかったようで安心致しました。はい、それでは此方も一度退がらせて頂きますね。 )
──…嗚呼、良かった。目を覚ましたんだね…気分は?
( 腕の中に抱いた微かな重み、少女を布団に寝かせ、目を伏せたままの顔に掛かった髪を耳へと掛けてやると桶と手拭いを取りに一度部屋を出て。一体何処から来て、何故門の前に倒れて居たのか、医者に連絡した方が良いだろうか。色々なことを考えながら、一式を持ち襖を開けて部屋へと戻れば、いつの間に目覚めたのか黒曜石のような瞳を此方へと向ける少女と目が合い、優しく微笑み掛けて。その瞳が、同じ年頃の少女のあどけないものよりも何処か大人び過ぎているような、少し暗い色が浮かんで見えたのは気の所為か。何を問い詰める訳でも無く、まずは汚れを落とそうと水に浸して軽く絞った手ぬぐいで相手の顔をそっと拭い )
──ッ、!
( 大きな双眸を忙しなく動かし、先ず把握した事はこの邸内が遊郭の類ではない事。連れ戻された、と云う可能性が無に均く成った安堵と果たして今居る此の場所は何処の誰の邸なのかという不安が同時に胸中を渦巻き。幾多の物思いに耽ていると、目線の先に在る襖が静かに開かれ姿を現した家主であろう人物。年の頃は三十路近くか、幾許か。美しい真黒の髪に若々しい白皙、何よりも綺麗で端整な面持ちが一際目を引いた。暫し惚けて近付いてくる彼を見遣り、されるが侭に己の顔を拭って貰っていたが、一度我に返れば反射的に勢いよく彼の掌を払い除け。重々しい身体に鞭打ち軽く状態を持ち上げつつ、瞳に警戒心を浮き彫りにし乍敵とでも言いたげに其方を睨めつけ。 )
…すまない、怖がらせてしまったね。私は、君を傷付けるつもりは無いよ。
( 大人しく此方を見詰めていた少女が不意にその瞳に怯えた様な色を浮かべる。まるで威嚇する子猫の様に、その小さな身体で必死に警戒を顕にする様子に、怖がらせてしまったと謝罪を述べ乍その手を下ろして。此方を警戒して不安定に揺らいだ黒い瞳、暗い色を宿してはいるが宝石のように煌々と瞬くその少女の瞳に思わず目を細める。一体彼女は何に恐れ、怯えているのだろうか。彼女を怖がらせ無い様に一度部屋を出ようと、冷たい水に浸した手拭いを一度軽く絞り相手に差し出し、水を張った桶も相手の方へと押しやると再びゆっくりと立ち上がり乍優しい微笑みを見せて )
──何か、食べる物を持って来よう。その手拭いで、少し汚れた所を拭いておくと良い。
( 力無く伏せられていた双眸を凜然と向け、見据える其の先の彼は、あろう事か謝罪を零す。介抱してもらった身である己が如何に無礼な態度をとっているか、自分自身が良く分かっている。然し彼は怒りを全く見せず行き場のなくなった掌を緩りと下ろし。穏やかな顏に、差し出された手拭い、彼は善人なのかもしれないという可能性が微かに脳裏を掠めるも、未だ外観のみでは信用するに足りないと相反する思いが鬩ぎ合い。眼前にある手拭いを一瞥しては徐に立ち上がる彼と動く唇を無言で見詰め。すうと小さく息を吸い込み、言葉を被せる様に僅かに震え凛とした声音を響かせ彼の人間性を試すかの様な問を投げ掛け。 )
──そんな事云いんして、ほんにはわっちを女衒に売る心算でありんすか。
───…私はしがない物書きだ、君を何処かに売ってしまおうなんて、そんな事は考えても居ない。
( 立ち上がり、此方を揺らぐ瞳で見据えながら微かに震えた声で、其れでいてはっきりとした声で言葉を紡ぐ彼女を見れば少々驚いた様子で。彼女の言葉と口調から漸く理解した、彼女は遊郭に其の身を売られた過去を持つのだと。少しの間を置いて、先ずは怖がらせない様に自分の身を明かし、相手を見つめる瞳は酷く優しげな色を孕み。彼女が望まないなら、長く此処に引き止めておくこともしないと、もうひとつの選択肢も提示し乍彼女が安心できる方を選べるように、安心させるように微笑んで見せ )
君を此処に縛り付けるつもりもない、…唯、少し身体を休めた方が良い。もし此処が少し不安なら、よく知っている医者の診療所に連絡を取るよ。──君の好きな方を選べば良い。
( 視界に映る彼の表情が、明確に驚愕の色を露にする。己が何者で、何処からやって来たのか凡その目処がついた筈。遊郭から逃亡して来た年端も行かぬ小娘何ぞ厄介で迷惑に決まっている、きっと彼も態度を一変させるだろう、と其方を見詰めていると、あろう事か酷く穏やかな声音で身分を明かし始め。続け様に滔々と告げられる言葉達、その全てに少しの賊心も感じられず彼が根幹から優しい人間なんだと理解すれば、今度は此方側が僅かに瞠目し。動揺した素振りを露呈させつつ、提示された今後の選択肢について何方を選ぶべきか思案し、軈て小さな声量で不安気にぽつぽつと返答を。 )
──…此処で休ませて、くだしゃんし。外に出たら、何時何処で女衒に見つかるか分かりんせん…。
…勿論。少し待っておいで、すぐに粥を作ろう。
( 暫し相手を見つめてその返答を待っていたが、相手の瞳から僅かに警戒の色が薄れ、唇から溢れた小さな言葉に頷くと優しく微笑んで。女衒から逃げて来たと言うなら自分以外の者が居ないこの屋敷の方が安心だろう。軈て立ち上がると部屋を出て、その静かな足音は遠ざかって行き。彼が戻って来たのは其れから半時足らず経った刻、盆に乗せられた器からは湯気が立ち優しい香りが部屋を充たす。小鉢には彩豊かな刻み新香、食べ易いように小さめに切った林檎、そして温かい緑茶も乗った質素ではあるが食べやすい食事の並んだ盆を相手に手渡して。)
──食べられるだけで良い、少し食べてご覧。食べたら、ゆっくり休むと良い。此処には私以外誰も住んで居ないから、安心して構わない。
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