飄々男子 2017-09-18 20:10:16 |
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( 綺麗な正座の姿勢を維持した侭、何かしらの反応を待っていると其れは直ぐにやって来て。小さく言葉を洩らし、驚いた様を顕著にする彼に、余裕といった態度が崩れ己の望んでいたものが見れた、と嬉しさを沸き上がらせるも、今は面に出すのをぐ、と堪えて。彼が困惑している事は明瞭であり、同じ問を寄越してくると暫し黙り込み、少しの間を置いてから小さく吹き出しケラケラと笑顔を零して。冗談だと否定してみせるも、こちらも亦彼が先程言った言葉と同じものを。正座で痺れ掛けてきた脚を少し崩し、流石に彼も此処で観念するだろうと楽観視すると口角を上げ勝ち誇った笑顔で其れを言い放ち。 )
…ふ、冗談に決まってるでしょ。──ま、私は一向に構わないけどね。
( 彼女の強ばったままなのを不思議に思いつつ、問の答えを待っていると、唐突に噴き出されたと思えば冗談だ、と告げられ 。そこまでは想定内じゃないこともなかったのだが、先程自分が放ったのであろう言葉をそのまま返され 、理由があるわけではないのだが、なんとなくいたたまれない気持ちが込み上げ 。次の瞬間の彼女の勝ち誇った笑みに呆れや疲れとは全く違う種類であろう溜め息を吐いて 。しかし、此方とてこのまま終わるのは不愉快だったのか彼女が本気ではなく、自分を揶揄っていたのは明白だ 。だとしたら何処までやれるのか見させてもらおう、と言わんばかりにベッドの空けたスペースを見つめた後、彼女の顔を珍しく真面目に見据え、 )
そっか 、じゃあどうする ? 寝ないの ?
( 彼が吐いた溜息に観念したのだと勝手に思い込み、心中で勝ったと清々しい気持ちを浸透させ。然し其の考えは如何やら浅はかだったらしく、大人しく降参する彼の姿を思い描いていた筈が、眼前の彼は珍しく本気さを窺わせる視線でこちらを見詰め、寝るか否かと問い掛けてくるではないか。勿論真面目に横たわる気は毛頭なかった為に、彼と己の馬鹿な攻防は終わりを迎えるとばかり思っていた甘さを悔やみ。動揺は僅か乍にも生まれたが、強気で冷静な表情は一切崩すこと無く、きっと彼もこちら同様引き下がるのは癪に障るのだろうと予測し。ならばこちらも応える迄であり、き、とやや鋭い眼光の侭に彼と視線を合わせ。 )
…なに、寝てほしいの?
( 先程の自身の戸惑いと溜め息から僅かではあるが安堵していたであろう彼女が珍しく真面目に問うた自分を強い目でしっかりと見つめ返しているではないか 。予想を上回り、強気な彼女に思わず感嘆の声を漏らしそうになり 。彼女に関してはなんとなく察しがつくが、自分がこれほどまでに負けず嫌いだったとは新しい発見だった、それとも相手が彼女だからなのか、なんていろいろな考えを巡らせ乍ら、彼女の返事を待ち 。そして、変わらず強気な態度で応じてくる彼女に、らしさを感じ、シーツの皺に一度だけ目を落とすと、口元だけ小さく緩ませて見せては 、)
…、寝てほしい、っていったら ?
…アンタ、ほんと馬鹿。
( 彼を射抜く視線は衰えず一定の力強さを保っていたものの、返ってきた返事により揺らりと光が弱まり。其れは動揺から来るものなのか、将又素直に肯定の意を示した彼の言葉から来る羞恥なのかは本人も知る由はないのだが、直ぐに行動を起こすことが出来ず、ぐ、と言葉に詰まったように口を噤み。然し先刻心に決めた通り、引き下がる訳にもいかない上に彼は恐らく己を煽っているのだと思慮しては、ぽつりと呟いた後に焦点を彼からずらし周囲を見渡し。次に耳を済ませ、人影と足音が全く無いのを確認すると、渋々といった風に徐に身体を横たわらせ。だが近距離で目線がぶつかるのを恐れてか身体の向きは彼と反対で、縮こまった背中を向け。 )
( 戸惑いやら羞恥、等己には知る由もない複雑な感情で揺れる彼女の瞳をしっかりと捉え乍ら 、相手の反応を待ち 。言葉が返って来たと思えば、控えめな悪態をつかれ、どちらもが引かない勝負のような会話に思えるが何故か何と言われても仕方ない程のことをしているような後ろめたさを感じて 。そして、僅かの間があった後顔は背けられたものの、本当に彼女はベッドに寝転がり、やり過ぎただろうか、という背徳感を思わせるも、冗談だったといって終わらせるには何だか惜しい気がしてしまい 。愉快そうに笑ってみせれば、彼女の背中へ言葉を投げ掛けて 。)
あはは 、人と寝るなんて何年ぶりだろう 。
( 何処の学校でも共通ではあるが、保健室のベッドというのは矢張り柔らかいもので、身体がベッドに横たわった瞬間感覚的には白い羽に包み込まれているように感じ反射的に頬が弛み。狭いスペースに二人、絶対に恥ずかしさの余り可笑しくなって仕舞う、と考えていたものの、背を向けて仕舞えば其れも杞憂だったらしく思考回路も乱れる事なく。反対方向を向いている分、何処に視線を遣るかと彷徨わせているも、結局シーツに花弁のように広がった己の黒髪を見詰め乍背中越しに降ってくる彼の言葉を静かに聴き。最後まで聞き届けた後一呼吸置くと、視線を合わせる時に生まれる羞恥と緊張感がないからか、極めて穏やか且つ冷静に努め。 )
…そうね。それも学校の保健室のベッドだなんて初めてよ。
( 柔らかな感触に身を預けたまま 、彼女の背中を見つめたまま返答を待ち 。相変わらず此方を向かない彼女は真っ赤に火照った顔をしているのか、それとも変わらず強気な顔か、意外と抵抗はなく淡々とした顔をしているのか正直、彼女がどんな表情をしているのか気になって仕方なかったが覗き込むような真似はせず 。そして間もなく返ってきた思いの外冷静なトーンの言葉に内心苦笑混じりで、そりゃそうだ、なんて思い乍ら 。もし自分が他人と寝たことがあったなら彼女は少しでも複雑に思ってくれるだろうか、なんてことを冗談っぽく思いつつ 。悪戯っぽく笑ってやれば )
でも、悪くないでしょ ?
( 途轍もない眠気が襲っている訳ではないが、このまま此の白いベッドに身を預けていては、本当に眠りに落ちて仕舞いそうだな、等と場違いな考えを浮かべ。するとその意味無い思慮を打ち破るように彼から言葉を投げ掛けられては、意識を其方に集中させ。姿や顔は見えずとも、その声音から悪戯めいた笑みを浮かべているのだろう、と想像すると何故か自然と口元が綻び。何処か楽しげに、けれど落ち着き払った口調で其れに答えて。続け様、お互い顔を合わせていないのを良い事に珍しく心中を吐露してみせるも、其れは善意の心算で言ったものだが捉えようによっては複雑な思いを抱えるであろう言葉であり。 )
まあそうね、一人よりかは。…二人でベッドに寝転がる何て、緊張するかと思ったけどアンタとは大丈夫だったみたいね。
( 少し弾んでいるような気がするが思ったよりリラックスした雰囲気の声で返ってきた言葉になんとなく安堵の気持ちを覚えて 。しかし、続いた言葉は己にとってはかなり複雑なもので 。自分は普段そこまで心が狭い人間ではないし、他人の言葉など気にしない方の人間ではあるものの、何故か彼女から言われたそれは重石のように心に残り 。確かに他意があったわけではなく、くだらない意地の張り合いから始まって今に至るわけだが、端から見たら不純異性交遊だと訴えられてもおかしくない風景だ 。だが勿論のこと自分たちは清廉潔白である 、だからといってもそうも意識されないのは何だか複雑を通り越して 、いたたまれなくなってきて 。自然といつもより声のトーンが下がってしまい 、)
もしかして、馬鹿にしてる ?
?馬鹿になんてしてないけど…
( 男女の彼是や色恋にはお世辞にも敏感とは言えない質である為、己の放った言葉に悪気が含まれているものとは気付かず唯返事を待って。彼女の胸中も、最初は異性とベッドに、等と躊躇いと恥ずかしさを感じていたものの順応性が有る為か今は安心にも近い穏やかな心境で。決して彼を異性として見ていない訳ではなかったのだが、其の考えは届かず、返ってきた言葉とトーンの下がった声音に疑問を覚え。何か自分は気に障る事を言って仕舞っただろうか、と純粋に暫し思慮するも、心当たりが無い為に端的に答え。一体如何したのだ、と彼の顔を見ようと身体を其方の方向に少し動かすが、距離感を思い出すとピタリと思い留めまた反対の向きに身体を置き。 )
( なんとなく察してはいたが 彼女自身全く以て悪気がなかったらしく、短く否定らしい言葉を返されてはまたどういう意味なのかわからない溜め息を吐いて 。その言葉を頭の中で復唱し、こうも理解されないとなると、なんだかこれ以上言うのも阿呆らしく感じてきて 。どうやら自分のことを気にかけてくれたらしい彼女が此方を向こうとするが 、何かを気にするようにピタリ、と動きを止め向き直る 、その動きになんとなく焦れったさを感じて 。彼女に言葉を返すことなく、暫くの間が空けば、重たそうな口を開き、先程さらの変わらぬトーンで 、)
ねえ 、こっち向いて 。
( 理由を話してくれるのかと静かに待っていたものの、鼓膜に入ってきたのは彼の声、ではなく溜息であり。結局彼の意図も汲めず理由も分からず、只只疑問を覚えるばかりで次第に渋面になっていくも、見覚えがないにしろこちらに非があるらしいので反抗は見せず。暫し静寂が辺りを包んでいたが、直に先程と変わらぬ低いトーンで彼から其方に向くようお願いされると、苦渋に満ちた不愉快そうな表情が滲み、極力聞き入れたくない内容だと考え。然し口調は怒りも不機嫌さも感じられない極めて淡々としたもので、間も空けず短く否定し。 )
嫌よ。
( 理由も言うことなく、こんな態度を取る自分に彼女は怒っているだろうか、なんて心配とはまた違うが検討違いなことを考え乍らいたが、彼女はそんな自分の言葉を何を言うでもなく待ってくれていたらしい 。しかし、自分が絞り出したという表現にも近い言葉は間髪入れずに拒否され 、予想外の速さに内心驚きさえあり 。だが理由なんて自分でも明白ではないもののどうしても彼女顔が見たかった 、どうすればいいものかと悩んだ結果何かしら思い付いたのか、「 じゃあ、わかったよ 。」と感じだけは諦めたように呟き 。唐突に、彼女を背中から包むよう抱き締めて、下記のよう続け 。)
こっち向くっていうまでは離さないよ 。
なッ…!ちょっと、何してるのよ…!
( 間髪入れず否定してしまったものの、彼の方を向いて真っ赤に染まった顔を至近距離で見られるのは阻止したかった為これで良いのだと言い聞かせ。何か考え込んでいるのか、また静かになった彼に諦めたのかと察し危惧すべき事態にならなくて良かったと少し安心が生まれ、続いて発せられた呟きに矢張り諦めてくれたのだと確信してホッと一息吐き。一先ずは大丈夫そうだ、と口元を綻ばせたのも束の間、いきなり背中にふわりと覆い被さった何か。余りに唐突の出来事に一瞬何が起きたのか分からずにいたが、直ぐに抱き締められているのだと状況を把握すると忽ち顔を朱に染めて咄嗟に声を上げ。身長差が大きい訳ではない為に近くに感じる声音と密着した身体に嘗てない程の動揺を見せ、然し無闇矢鱈に暴れる事も出来ず、手で押し退けようと控えめな抵抗をしては小さな声量で抗議し。 )
ば、ばかじゃないの!?はやく離して、身体近いし…!
なッ…!ちょっと、何してるのよ…!
( 間髪入れず否定してしまったものの、彼の方を向いて真っ赤に染まった顔を至近距離で見られるのは阻止したかった為これで良いのだと言い聞かせ。何か考え込んでいるのか、また静かになった彼に諦めたのかと察し危惧すべき事態にならなくて良かったと少し安心が生まれ、続いて発せられた呟きに矢張り諦めてくれたのだと確信してホッと一息吐き。一先ずは大丈夫そうだ、と口元を綻ばせたのも束の間、いきなり背中にふわりと覆い被さった何か。余りに唐突の出来事に一瞬何が起きたのか分からずにいたが、直ぐに抱き締められているのだと状況を把握すると忽ち顔を朱に染めて咄嗟に声を上げ。身長差が大きい訳ではない為に近くに感じる声音と密着した身体に嘗てない程の動揺を見せ、然し無闇矢鱈に暴れる事も出来ず、手で押し退けようと控えめな抵抗をしては小さな声量で抗議し。 )
ば、ばかじゃないの!?はやく離して、身体近いし…!
( 相手の体温を感じ乍らなんとなく安心感を感じ 、動揺で埋め尽くされている相手の頭の中など知る由もなく、目を閉じており 。やっと頭の整理が出来たのか、控えめ過ぎるくらいの抵抗と言葉を発し出した彼女 。しかし、その程度の抵抗では微動だにせず 、むしろ此処まで来たら引けるわけもなければ、引く気も毛頭なかったらしく 。相手の言葉を却下するように先程よりも腕に力を入れ、後ろから相手の肩に額を乗せるよう、すり寄り 、相手の匂いに包まれるような感覚を覚え乍ら 。睫毛を上下させるよう、何度か目を瞬かせると、相手に反して穏やかな表情と落ち着いた、というより何処か眠そうな声で 、)
… こっちむいてくれたらね 。
~ッ!
( 当然と言えば当然だが、幾ら身長差が小さいからといって体格差と力の強弱なら男である彼の方が圧倒的に上、女である己の微力な抵抗では適う筈もなく。最早成す術は無いが、この場を如何やって切り抜けようかと必死に頭を回転させるも、回された腕により一層力が込められると動揺と顔の赤みを加速させ。続いて、ふと肩に感じた細やかな感触と重み、其れが彼の額であると把握すると更に縮まった距離感に声にならない声を上げ。己の抗議も虚しく、何処か眠気も感じさせる穏やかな声音の彼の主張は依然変わる事はなく、混乱した思考回路でもこの状況を打破するには彼の言葉を聞き入れるしかない、と分かれば抑え気味の声量乍焦った様子で言葉を発し。 )
ちょ、寝ないで!…わ、分かった!そっち向けば良いんでしょ?!
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