東 恭弥 2017-07-12 00:49:21 |
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…あ?ンなわけねぇだろ、料理なんかしねぇよ。
(寝室からリビングへ移動する最中に背中を突かれると一瞬足を止めようとするも、その前に背後から声が聞こえ問い掛けに眉を寄せ。そもそも趣味でもない限り一人暮らしの男が料理をする事に意味を見出せず、当然だとばかりに言葉を返すとソファの脇に置いてあった袋から数種類のカップラーメンを取り出しテーブルの上に並べ、選ぶ事を促すように視線を其方へ向け)
残念だなぁ――。
(迷いもなく言いきられると相手らしい回答に くす と小さく笑い、大して落胆してもいないのに寂しそうな口ぶりで返し。しかしテーブルに並べられていくカップ麺を目にするとそんな演技も忘れて真剣な眼差しで右へ左へ視線移動させ、何往復かしたあとに味噌野菜ラーメンと表記されたパッケージを指して)
…これが良い。最近発売されたばっかで食べたことないし。
……ん、了解。
(気落ちしたような声を背に受けてやはり性別を抜きにしても恋人ならば料理ができた方が良いか、と一瞬は考えるものの、生まれてこの方一度たりとも料理をした事が無い己が一から学ぶのはあまりにも非現実的で。無理やり手伝わされて包丁を持ったのも数える程しかない。何より面倒臭いと瞬く間に一人戦意喪失していたところで、不意に相手から声を掛けられると指差された物を手に取りながら小さく頷き。お湯を沸かす為キッチンへ向かい電気ポットに水を入れながら「…俺死んでも料理できるようにはなんねぇからな。」ふと相手の方を見遣ると何を思ったのか念を押すような言葉を掛け)
―…え??
(料理のためにキッチンに立つ相手にちょっかいをかけるならまだしもお湯を沸かす僅かな時間に手を出すのはさすがに控えた方がいいかとソファの端に座り、もうすぐ漂ってくるであろう香りを楽しみに待つことにして。己の言葉を真に受けていたような切り返しがくれば じ と顔を見つめ、きっと真剣に悩んだ上で答えを出してくれたであろう相手がかわいくて愛おしくて、笑っちゃいけないと思いながら破顔すると当然手料理よりも相手が大事だと努力も虚しく笑い含みながらデレてしまい)
…死なれちゃ困るし、料理しなくていいよ。―っ、あは…かわいーなー。
…食わせねぇぞこら。
(合った視線は直ぐに逸らされる事は無く、つい手元に意識を移すふりをして目線を落としてはお湯を沸かし始め。それからはただ待つだけで特にする事も無く手持無沙汰にキッチンに佇んでいたのだが、ふと料理が全くできない己に対しての肯定的な言葉が聞こえて来るとぱっと顔を上げて其方を見遣り。素直な安堵と喜びを感じたのも束の間、笑われた上に度々相手の口から聞く不名誉な言葉に途端に眉間に皺を寄せ)
(不機嫌そうにされれば直ちに笑うのを止め、何も聞かなかった見なかったことにして相手の視線から逃れるようにソファに寝転び。こんなに空腹なのにご飯をもらえないことほど酷い仕打ちはないし、相手も本気ではないだろうと甘い考えが頭の片隅にあるからか真に受けていない態度でリラックス、片手にスマホを持ち何の気なしにいじりながら話題転換すると図らずも初デートの誘いになって)
…ねぇ、ご飯食べたらどこか出掛けません?夜のドライブもいいでしょ。
(相手の表情から笑顔が消え視線が逸れて呆れたように小さく息を吐き出した時、丁度お湯が沸けると開封した相手の分とついでに作った自分の分のカップに注ぎ。そんな時に不意を突くような誘いの言葉はあまりにも急でつい理由を探ってしまい、蓋を箸で固定して器用に両手で二つのカップラーメンを持ちリビングへ向かう間も暫し無言で思案しており。ふと思い浮かんだのは相手が先程言っていた埋め合わせの件で、手に持っていた物をテーブルに置くと相手が寝転ぶソファの空いたスペースに強引に腰を下ろし。その視線が小さな画面に向いているのが何処と無く不満で、軽い仕草でスマホを取り上げテーブルに置くと「埋め合わせ?」無遠慮に相手の足の上に圧し掛かりつつソファの背凭れに身を預けると、横目で視線を遣りながら問い掛け)
うん、…そうそう。埋め合わせ。今度は俺が運転しますから。――あ、お酒飲んでいいですよ。職員の忘年会の時とか結構飲んでましたよね。
(いい香りを引き連れてソファへとやってきた相手をスマホ越しに見ていたが片手から奪われてしまえば元より相手が来るまでの暇潰しだったこともあり素直に引き渡して。その代わりと言っては何だが肘をついて上体を起こすとソファに座る相手の腰元に両手を回し、数分で出来上がってしまう即席麺には目もくれず相手の横顔を見つめながら頬や耳に好き勝手に口づけ。不意に出てしまった誘いだっただけにそんな考えまで及んでいなかったものの、埋め合わせも兼ねたドライブデートにしようとハンドルキーパーを申し出て。酔っ払った相手を独り占めしたいという願いもひっそり抱きつつ飲酒を勧め、ようやく相手の顔半分をキスの嵐から解放してやると ね? と瞳を覗き込んでからソファを立ち上がりキッチンに向かって、料理はしないと宣言するような人物が立派な冷蔵庫を持ってるなんて理由は限られてくるもの。中身はアルコール類が大半を占めているのではと予想しつつ冷蔵庫の扉に手をかけて)
―…何飲みます??
っ、ふはっ、
(相手の腕が腰に回って来ると抗う事無く身を預けるように僅かに其方へ重心を傾けるが、繰り返される頬や耳に触れるだけの口付けに思わず笑みを漏らしてしまい。相手の真意はどうあれこうして触れてもらえるだけで大切にされているような気がして心は十分に満たされ、肯定の言葉にもぼんやりと耳を傾けながらゆるゆると頬を緩ませており。しかしふと職員での集まりの話を持ち出されると逡巡するような間を開けてから「……よく見てるんだな。」何処と無く驚いたような声色で呟きながらも好きなだけ酒を飲みながらのドライブに内心少しばかり浮足立っていて。念押しするように目を合わせられたかと思えば頷く暇も無くキッチンへ向かう相手を横目で追い、問い掛けにぼんやりと冷蔵庫の中身を思い浮かべ。どちらにせよ冷蔵庫に入っている物はビールか日本酒のようなものばかりで、先程相手から飲酒を促された事もあり厚意に甘えて「ビール。」と然程間を置かずに答え)
人間観察が趣味なんで、――っていうのはもちろん冗談で、逢坂先生イケメンだからね。…見ちゃってたのかも。
(確かに言われてみればそんなに前から相手のことをしっかり見ていたことに自身も驚き、咄嗟に趣味を作り上げるも途中で笑いがこみ上げてくれば以前から無意識のうちに視線で追いかけていたのかもしれないと1つの可能性を挙げて。扉を開けると思った通り酒類がきれいに並べられた庫内から缶ビールとノンアルコールのビールも自分用にちゃっかり手に取り、扉を閉めてソファへ戻れば相手の隣に腰かけ、早速蓋を開けようと両手の指先を器用にプルタブに引っかけながら相手を見遣り)
…俺の分も貰っちゃっていいですか?
――……俺はお前の事嫌いだった。
(一度は相手の言葉を真に受けて己も観察対象だったのだろうかと想像し身を固くしたが、直ぐに破顔し冗談だと告げられると目に見えて安堵したように肩の力を抜き。しかし続けられる直球に容姿を褒める言葉には何と無く居心地悪さを感じてしまい、困ったように眉間に皺を寄せて暫く黙り込んだ後現在の関係に至る前、正確には抱き締められる前までの相手への苦手意識を包み隠さず伝え。その時丁度時計が大体三分辺りを指し蓋を開けて粉末スープを入れ適当に混ぜ、問い掛けに顔を上げて相手を見遣ると「あぁ。良いぜ、好きなだけ飲んで。」小さく頷いて答えると出来上がったカップ麺の内相手が選んだ方を相手の前に置き)
ですよねー、きら…、ぇ……??嫌い!?どうでもよかったとかじゃなくて?――嫌いだったんですか。
(こちらも相手の内面を深く知るまではこんな気持ちにならなかったわけで、相手も同じ程度のものだろうと安直に考えていたのが落とし穴、まさか嫌われている最低地点からのスタートだったとは知らず缶の蓋を開ける手が動揺で力んでしまい プシュ と軽快な音を立てて両方同時に開けるとふらついた手元のせいで溢れた自分のビールを慌てて一口含み。聞き間違いじゃないかと確認しながら相手の片手へ缶を握らせ、のんびり乾杯なんてしてる気分でもなくなったのか缶同士を カツン と軽くあてるだけに留め。やけに喉の渇きを感じてカップ麺には手をつけずビールばかり飲んで)
死ぬほど扱い辛かったからな。お前のそのわけわかんねぇテンションも好きじゃなかったし。
(自分用のラーメンを完成させる事に意識を向けていた所為で相手の様子に気付かないまま言葉を続けていたが、ビールを握らされ其方に視線を向けた事で漸く動揺した様子とそれに伴う心情を推し量り。あまりにも分かり易い反応に思わず肩を震わせて笑ってしまい、一口ビールを煽ってから「なんだよ、別に気にする事じゃねぇだろ。それでも欲しくなるくらいお前に魅力があったって事なんだから。」一度ビールをテーブルに置くと僅かに身を前へ乗り出すようにして身を屈め、相手の顔を覗き込みながら微笑んで告げ)
中庭で嫌いって言われたのも愛情の裏返し的な?そんな感じかと思ってましたよ…俺。
(笑い出す相手を恨めしそうに見遣り、過去には本気で受け取っていなかった言葉に今更ショックを受けるも、裏を返せばそんなどん底ポジションにいた己が相手の恋人になっている奇跡も起こっているわけで。顔を覗き込んでくる微笑みにつられるようにして優しく笑みを返し。数秒前まであれ程気落ちしていたにも関わらず相手のフォローのおかげですっかり自信取り戻すと停滞していた思考が戻り始め、ぐぅー と情けなく鳴った腹の音を隠そうともしないまま割り箸を持って両手合わせ)
嫌いから好きにまでなってもらえたなら怖いものないですね。…よし、腹ごしらえしようっと!いただきまーす。
あー…まぁそうだけど。
(言われてみれば中庭で告げたのは半ば相手の言う通り愛情の裏返しのようなところもあり、気まずそうに視線を逸らすと曖昧に頷いて。しかしそんな相手の落ち込んでいた気分も己の言葉でいとも簡単に立ち直ったようで、あまりの単純さに呆れつつも笑みを浮かべて箸を割り。最早食べ慣れた味のラーメンを啜りながらこの後のドライブの事を考えていれば「……海行きてぇな。」ふと思いついた言葉が口を衝いて出てしまったようなぼんやりとした声色で呟き)
……―。…海、か。良いですね。
(有耶無耶にされてしまった答えに緩く首を傾げると再度尋ねるべく箸を止めて口を開くも、先にデートの希望の場所が口にされれば頭の中はこれからの楽しい計画で埋め尽くされていき。どんなに急いで出発したとしても海に到着する頃には宵の空が広がる時刻、昼間とは違った海もまた一興だろうと思い馳せては自然と食事のスピードが早まる中、最後のノンアルビールを飲み干すと良いことを思いついたと言わんばかりの笑顔を湛え チラ と視線向けて)
!…ぁ、そうだ…折角だし花火買っていきましょうか。
…花火なんか何年もしてねぇな。
(自然と零れた願望に対し肯定的な反応があれば自ずと決定事項となり、夜の海も良い眺めなのだろうと思いを馳せながらラーメンを頬張っていた時、重ねての相手からの提案に思わずぽつりと呟いて。大人2人、それもいい歳した男が揃って花火をする光景もなかなか滑稽だと感じる反面仄かに浮かれつつある事も自覚しており、早々に完食すると空になったカップやらを纏めてコンビニの袋に入れ。まだ寝癖が付いた相手の髪を雑に撫でると「早く準備しろよ、寝坊助。」揶揄うような言葉と頬への口付けを残し寝室に向かうとクローゼットから適当に動きやすそうな服を取り出し手早く着替え)
ん…、はーい。
(頬に口づけ受けては余計に早く行きたくなってカップ麺を啜り、味が気に入ったのか汁まで残さず飲むと相手と同じ袋に入れて。相手を追い寝室に向かいながら片手で簡単に寝癖を整え、ちょうど着替え終わった様子の背中に軽く体重預けるようにして抱きつけば折角のデート、昨日から続けて着ているヨレヨレの服なんかで行きたくないとわざとらしく嘆き)
初デートなのに…この服じゃ行きたくないー。俺にも服貸して?
あ、前借りた服あるけどそれ着るか?
(着替えを終えて振り返ろうとした時、それよりも僅かに早く後ろから抱き着かれると若干身を屈めるようにしながら背後から聞こえる声に暫し逡巡し。そう言えば、と思い出したのは雨に濡れた時相手から借りたまま返していない服の存在で、それを着る事を提案しつつも相手を背中にくっ付けたまま一応クローゼットを覗き真新しいシャツを取り出し。「どうする?」顔を後ろへ向けて其方を見遣り問い掛けて)
逢坂先生の服にする。…ん。
(以前借した服はなんとなく相手の部屋に置いておきたくて、取り出してもらったシャツに片手伸ばしつつ振り返ってきた顔に気づけばチャンスとばかりに唇奪い。すぐにくっつけていた体を離すと早速今着ている服のボタンを外し、整理整頓されたクローゼットの中をチラ見して、借りたシャツに腕通しながら生地感と色合いの良さそうな1本のジーンズを指し)
ぁ、…そのジーンズも借りて良いですか?
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