焼きソーば 2016-09-12 03:19:13 ID:f9e4b1cb2 |
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突然だが、僕【有田 浩介】が通う中学校には【授業開始二分前黙想】というものがある。これは椅子に座り、目を閉じて精神を統一させ、次に受ける授業へ心を切り替えたり、集中するというものだ。
まぁ、そんなこと言ってても基本的に男子はゲームの内容や休日の友達との過ごし方を考えていたり、女子はLINE等の会話を思い出したりしてるだけなのであまり意味がなかったりするがそれは置いて置いて。
んで、そんな黙想中で目をつむっている僕の目の前に広がっているのは真っ暗な景色だけのはずなのだが……
「ここは……どこなんだ?」
そう、問題はそこ。気付けば目の前に広がるのは青々とした草原と、のんびりと穏やかな雰囲気をした村。ゆっくりと流れる綺麗な川に、雲一つない青空。直前までいた少し古いイメージがある教室は……どこにもない。
「本当にここ……どこ? 明らかに日本じゃない……よね」
……次の授業は理科だったはずだ。
先生がいつも黙想中に言う変な言葉が今頃頭の中に浮かんでくる。
確か先生、『人生の荒波を乗り越えるには腰骨を立てて……』とか言ってたなぁ。
すごくどうでもいい話だね、うん。
うん、まずはよく考えよう。まず多分夢ではないはずだ。二分間の黙想中は流石に寝るには短すぎる。しかも風の感触とかもリアルすぎる。そう考えると、今の僕の状態はよくラノベとかに出てくる【異世界転移】とか【異世界転生】系なのだろうか。
ここまでくると驚くとかの次元じゃない。小説の主人公は「えぇぇぇっ!?」とかよく言ってるけど、はっきり言って、驚くというより唖然……呆然と立ち尽くしている感じ。
ん?そういや思ったけど、 転成系なら死ななきゃ新しい「生」にはならないよね? でも死んだ記憶はないんだけどなぁ……って、あ。
そういや黙想してる時「わぁ」とか「きゃー」とか悲鳴が聞こえた気がする。その時に何かあったのだろうか。うん、自分は本当に危機察知能力が皆無だからね。まじであり得るから怖い。
「えー…………まじか…………死んだってこと?」
信じたくない。いや、だってさ。ラノベは自分と全く関係がない二次元の主人公が頑張るのだから面白いのであって、運動神経とか悪くて度胸もない自分が体験するなんてもってのほかだ。
とりあえず自分の体の確認をしよう。顔はどうしようもないからまずは服とか確かめよう。うん。
そう思ってゆっくりと下を見ると……
「えぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
自分が着ていたのは、何処かの物語に出てくるようなお姫様がきているような服だった。
分かる? あの白いヤツ。無駄にヒラヒラみたいなのがついてる白いドレスっぽいやつ。
そういえば、さっきからなんか声が高い気がする……
え、いやな予感しかしないんすけど。
驚いて横を見た時、水面に自分の姿が映った。
恐る恐るそれを見ると顔は……
「っな!?」
完全にラノベのヒロイン顔でした……
気になったので、もうちょっと近くで見て見ることに。
ねぇ、ちょっと。
スラっとした体型に、腰あたりまで伸びた美しい白銀の髪。大きな黄色の瞳で、白色の肌。客観的に見ればそれなりに魅力的なんじゃないだろうかという胸。
そしてこの人物を、あろうことか僕は知っている。正確に言えば、キャラクター。このキャラクターは、僕が使用したとあるゲームのキャラクターなのだ。名前は【カリン・イース】
それを思い浮かべた瞬間、僕の体は崩れ落ちた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「…………んー…………ん……って、うわっ!?」
「おぉっ! 起きたかねっ!?」
目の前にはボロい天井……と見知らぬおばさん。っち、某有名アニメと同じ展開とはいかなかったか。
どうやら今はベットのようなものの上に寝かされているようだ。
「…………えーっと、ここは……」
「大丈夫っ!? 怪我とかないっ!? 記憶喪失とかじゃないっ!?」
「いや、えーっと、あのぅ……」
女性は手を慌てて振り、青ざめた顔で大きな声をあげる。
「あっ! し、失礼しました! 怪我はありませんでしょうか! 突然貴女様が外で倒れておりまして……」
えーっと……なんだこの人。突然喋り方が変わったぞ?
倒れてたってことは、気絶してたってことか……あまりのショックに……
考えてみてくれる?突然自分が性別変わっていた……なんてことが起きたらどうなるか。私は気絶だったが……
「あー……うん、はい。怪我はないです……はい」
「は、はいっ!」
よほど緊張していたのだろうか、おばさんは顔にびっしりと汗を浮かべている。
「ちょっとお尋ねしてもよろしいでしょうか?」
僕はそういうとベットから起き上がり、おばさんに話を聞くことにした。
「……ということは、ここは【王国第二十三開拓村】であり王国の領地なのですね」
「はい、そうです。ここからずっと北に行けば、王都があるそうです」
あれからしばらくずっと話を聞いていたが、その内容はかなり驚くものだった。
まずここは【アルファス王国】の辺境の村であるということや、魔法やモンスターの存在。それに地理的なことに、世界共通のお金の単位や人種についてだ。
流石に魔法やモンスターについての存在はこの世界では当たり前だったようで少し怪しまれたが、とりあえず問題はナッシング。
「と、ところで貴女様は……」
話を聞いていてわかったが、どうやらこのおばさん、僕を貴族か王族の家系の娘だと思ったみたいだ。
うんまぁ、仕方ない気もする。こんなウエディングドレスみたいなのきた人を待ちで見たら、コスプレかどっかのお姫様か?としか思えないもん。
「ぼ__私は旅人ですよ。ただの……ね」
危な。一瞬ぼくって言いそうになったし。僕っこキャラではないんだ……。まぁ、そう言ってかっこよく部屋から出ようと思ったのだが、一つ気付いた。
(泊まる場所とかないじゃん)
何時の間にか時は夕暮れ。もう異世界にきちゃったんだから諦めて頑張ろう精神でとりあえず王都を目指すつもりだったのだが、流石にモンスターがいる世界は危なすぎる。未だ自分の能力的なのも分かってないわけだし。
しかたない、おばさんに言ってどうにかしてもらおう。そう思った時だった。
「メルさんー。メルさんーって、ありゃ?」
眼鏡をかけた、スーツっぽい姿で高身長な黒髪の女の人が、家の前で私を見て立ち止まった。
「…………魔力量は多いわね。顔は貴族一覧には載ってない新顔ね……」
突然何かを呟き始める目の前のいかにも営業マン風の女の人っ!
その人はじっと私を見て……
「よしっ! 学園に入れるか!」
「へ?」
その言葉から、私の波乱の日々が始まった。
チェシャさんありがとうございます(笑)
なんかさっきからこの女の人にずっとジロジロと見られている。観察されているようでなんだか気味が悪い。
「あ……アスラさん、こんにちは……えっと、この子は……」
おばさん改めメルさんが女の人改めアスラさんにどうにま説明しようとする。
するとアスラさんは眼鏡を左手の中指で素早く上げると、今度は右の人差し指を勢い良く私に突き立てた。
「只者ではない魔力! そしてこの容姿! 私の魔法学園に歓迎しようっ!」
「ま、魔法学園にっ!?」
その言葉に反応したのはメルさん。めをまん丸に大きく見開いてアスラさんの方を見ている。
ちょっと目力凄いんですけど……怖いんですけど。
「魔法学園って、そんなにすごいものなんですか?」
ちょっとだけ気になった私がそう言うと、メルさんは息を荒げると早口になって喋り始めた。
「凄いなんてもんじゃないわよ! 魔法学園には各国の要人の子供や貴族の子供達、それに【神の加護】を持つものがそこらかしこにいるんだから! それに嫌でも能力が高くなるし、魔法学園卒業ってだけでかなり重要視されるわ。それに国としての資格を得られるしあとは__________」
「そうそう。貴族とのコミュニケーションもとれるしね」
長くなりそうなメルさんの言葉を遮ってアスラさんも言う。
簡単にいえば魔法学園とは『将来王宮の騎士や高官を目指す者などを育成する教育機関』らしい。事実、この国の有名人は学園出身であることが多いとか。
魔法学園は案外悪くないかもしれない。お金もかからず寮もついているらしいし。
「アスラさんは学園の学園長なのよ。ま、まぁとりあえず中にどうぞ。貴女もね」
あ、学園長先生でしたかぁ……。こんな人が学園長で大丈夫なのかちょっと心配だけど。
私が旅人と言ったことに少し安堵したのか、メルさんは私に対して様付けをのけたようだった。
私とアスラさんはメルさんに連れられて、木製のテーブルセットに座る。
しばらくするとお茶のようなものをメルさんが持ってくると、話が始まった。
「それで……あなたのお名前と親、それに年齢を教えてもらってもいい?」
「あぁ……はい。ぼ……私の名前は【カリン・イース】です。年齢は16で……」
危ない危ない。姿が女なのに「僕」なんて言ったら変に思われてしまう。……いや、ボクッ娘とかそういう変な説が生まれるだけか。嫌だな……
カリンのゲームの中での設定は確か16歳であったはずだ。まぁ、身長的的なことも考えるとそんなに疑われないと思う。
「親は……」
なんて言おう。異世界とかそんな概念ないだろうし、ないと言っても不審がられるだろうし。
「あぁそうそうアスラさん、この子は今日そこに倒れてたの。旅人だそうだから……」
メルさんが微笑みながらそう言う。
「今日…………というか、旅人ならその服装は歩きにくいんじゃない?」
「まぁまぁ……。こんな上等な服をきているんだから生まれの血筋がいいことは明らかよ。歩きにくいとは思うけど、何か理由があるんだったら仕方ないわ。なんにせよこの子なら安心よ」
「まぁ、メルさんが言うならいっか。……よし、最後はカリンちゃん、君が行きたいかどうかだよ?」
アスラさんが私の方をじっと見つめる。
え、どうするかって?もう答えは決まってる。メルさんに迷惑をかけるわけにもいかないし、どっちにしろこの世界で生きていく術は身につけなければいかない。
そこまで考えると私ははっきりと言い切った。
「行きます」
私はこの日、明後日に開かれる【アスラ魔法学園入学式】に正式に出ることとなった。
それからは少し時間があるとのことで、近くを散歩していたりして時間を消費したり農作業を手伝ってみたりしていた。
その後はメルさんに見送られ、アスラさんが乗ってきた幌馬車に乗って【王都】へ向かうことに。
うん、まぁ今のところ異世界暮らしに問題なし。とりあえずあとは典型的な【最強】目指すのみ!
……あとできればだけど一度家に帰って友達に最後の挨拶くらいしておきたいね。
(>>4 あー、それは小説家になろうでも感想で言われました(笑) 今は若干修正してます)
「そういや、メルさんとアスラさんって、どんな関係なんですか?」
幌馬車の中を、涼しい風が通り抜ける。気温は……ちょうどいい感じかな?気候的には日本と同じくらいだと思う。
そんな馬車の中、御者台に座って手慣れた手つきで馬を操るアスラさんに一つ気になったことを質問してみた。
「あぁ、私とメルさんは従姉妹なのよ。従姉妹なのに敬語はおかしいかもしれないけど、家族構成的にいろいろあってね……」
「あ……急にそんなことを聞いてしまってすみません……」
あ、なんか変なフラグ立ってるから速攻回避。途中で貴族位とか関わってるんだろうな。何だかんだ言って異世界も普通にめんどそう。
ポカラ、ポカラ。
馬の蹄がそんな軽快な音を出す。
「そうそう、カリンちゃんには魔法の基本を教えておこうかな」
アスラさんは突然振り返ってそんなことを言った。
え、やった、やった。魔法だいぇーい。
「あ、いいんですか!?」
「えぇいいわよ。まぁ、素質があるかどうかは個人次第なんだけどね」
そう言ってアスラさんは革袋の中をガサゴソと漁り始める。
「よろしくお願いします!」
「あ、というかアスラでいいわよ。さん付けで呼ばれるのはなれてないから」
「あ、はい」
「んじゃぁ……」と呟きながら、アスラは袋から分厚い本を取り出すと私の方に投げてきた。
手に持ってみると意外とずっしりしている。
「それはうちの学校の教科書よ。魔法の事に関しては殆ど載ってるから、いつも持ってた方がいいわ」
そういうと、アスラはゆっくりと幌馬車を止めた。気付けば空も暗くなってきている。今日は野営かな?
「よし、今日はここらで野営しようか。続きはまたあとで教えてあげるわ」
「はいー」
そんなこんなで野営の準備が始まった。キャンプっすか……おぉ……インドアの私にアウトドアに切り替えろと言いたいのですなあなたは……
「よし、んじゃぁ説明はじめるね」
「はいー」
晩御飯(干し肉と干しいも)を食べ終わると、早速テントのなかで講義が始まった。
え、ご飯の感想? 干し肉はビーフジャーキー的な感じで私は好きだった。干し芋はほんの少し甘みがあって、それでいて弾力があるのでこれまた美味しす。ただ、ちょっと喉が渇くかな?冒険での食糧は基本的にこの二種類らしいけど、私はすぐに飽きること確定だな……どうにかしないとね。
「まずは、魔法がなんなんのかについてね。これは単純に、自分の中に存在する【体内魔力
オド・MP
を練り上げて、色んな魔法に精製するわけ」
例えれば植物がデンプンを消費して成長するように。人間が食べ物を消費してエネルギーにするように。
アスラは身振り手振りでジャスチャーをしながら私に説明する。
「だから体内の魔力を消費するわけ。ちなみにゆっくりと回復はするけど、体内魔力が0になれば気絶してしまうわ。とりあえずそれには気をつけることね」
私も何度か経験あるわと笑いながら言うアスラ。なかなか無茶なことをしたんだろうなぁ。
「あとは属性についてね。これは絶対に覚えておいた方がいいわ」
結局話をまとめると、この世界には光、闇、水(氷)、炎、大地、風の六種類が存在するらしい。
それぞれ相反しあう属性があり、属性を考えて魔法は使わなければいけないという。
あとはやっぱりステータスもあるらしくて、学校で詳しく調べるとのこと。ステータスはHP,MP,SPの三つがあって、それぞれ体力・体内魔力・瞬発的なスタミナを表すそうだ。この他に攻撃力とかも表示してくれるんだとか。
その後も魔法に関するレクチャーをいろいろと受けて話は終わりとなった。今日は意外と遠くまで来れたので、早ければ王都には昼頃にはつくかもということ。
ちなみにこの世界ではラノベと同じく【冒険者】が存在していて、主な仕事はモンスター退治だそう。
それらは冒険者の強さ的に称号が得られ、最高位の者たちは【星
エストレジャ
】と呼ばれるということや、個人の強さはランクF−からSSS+までに分類されるということも教えてもらった。ついでにアスラのランクはA−だそうだ。
他にもいろいろモンスターのことや、役に立つ薬草のことについて、それと後はちょっとだけ魔法を使うのい必要な詠唱の技術や魔力の練り方も教えてもらった。
ということで、いろいろあった一日だがとりあえず終了。
ほんと、なんでこんなとこにきちゃったかなぁ……
あ、たまに見にくくなってるところがありますね。
なろうから直接コピーしてきたんでルビの部分が上手くできていないみたい。
【星
エストレジャ
】
……うん、すごい見にくい。これは【星(エストレジャ)】って意味です(笑)
「あ、ついたわよカリンちゃんー」
そんなアスラの声を聞いて私は幌から顔を出す。って、あれ?意識もしてないのに一人称が「私」になってる気がする……まぁいっか。この姿的にはその方が楽だし。
時刻は真昼。太陽が憎いぐらい暑い。
そんなこんなで私が見た光景は、高い城壁。
数十メートルはあるかなというくらいの大きさを誇っていて、街全体を囲っているようだ。
城門は開け放たれていて、通行許可をもらうために荷物検査をしている行商人や旅人がズラリと列をなしていた。
「私達はこっちね」
アスラはそういうと、全く人がいないやや小さめの門へと向かった。どうやらここは国である一定の地位を受けたもの達が許可なしで通れるVIP専用通路的な門らしい。
予想通り、アスラは見張りの兵士に手を軽くあげただけで馬車ごと門を通り抜けた。
「さて、どうしようかしらね。とりあえず生徒証も発行しなきゃならないから、まずは学園に向かいますか」
街に入った瞬間、いきなり付近の通行人から注目された。まぁ、馬で中に入ってるからね……
話によれば、もう寮生は寮に入っているらしい。個人部屋か複数の人数が入れる大部屋かどちらになるかは運次第だという。でも……
(ちょっと待ってくれよ……女子寮とか勘弁だからね……)
一応転成したとは言っても、男子である。幸い個人部屋には風呂とかは付いているらしいのだが……
「アスラさん、私の部屋は……」
「あぁ、カリンちゃんは個人部屋ね。今年は大部屋希望が多くて……」
よかったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。本気で死ぬかと思った……(精神的な意味で)
「ついたわよ」という言葉と共に、アスラが手綱を下ろして馬車から飛び降りた。
私もアタフタしながら幌から出る。
「ふぁ……」
学園は黒いフェンスで囲まれてあった。今私たちがいる正面玄関前には二つのペガサスを形どった像が左右対称に置かれてある。木々に遮られてあまり見えないが、校舎と思しき建物も複数個見えた。
「はい、アスラです。玄関前の馬の片付けお願いね」
突然アスラが宙に向かって喋り始める。恐らく魔法を使っているのだろう。
「さ、まずはあなたのステータスとかを測りにいくわよ」
「あ、はい」
私はアスラにひきづられるようにして門をくぐるのであった。
「よし、じゃぁここに手を乗せてみてくれる?」
アスラは校舎の一室に私を連れていくと、一冊の本を取り出してそう言った。
私はその指示に従って手をゆっくりと本の上におく。すると、本の上に青い薄い板のようなものが現れた。
…………しばらくの沈黙。そして……
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
「ど、どうしたんですか!?」
いきなりアスラが大声をあげたのでビックリした。アスラが見ていた本のの上に表示された板を見ると……
【カリン・イース】 ランクSSS+ レベル1 所持スキル数 ?
うわ、最初からSSS+かよっ!?
「こ、これは前代未聞……やはり私の目は間違っていなかったわね……」
動揺しながらそんなことを言うアスラ。
ランクは上にいけば行くほど個人の強さを表すものでもあるため、SSS+ということはつまり……
(チート……か)
とりあえず死ぬようなことはこれでほぼないことがわかったので良かった。
さて、折角だし異世界学園ライフ楽しんじゃいますか。
(最初は完全チートで行こうと決めていたこの小説。50話超えた現在はメッチャ成長系に変わってるんだよなぁ)
「えー、我が学園に素晴らしき才能ある皆さんが来てくださったことに大変な感謝を……」
広いホールのような場所に、新入生が集められて現在入学式の真っ只中だ。
前の方ではアスラが講演をしている。
新入生たちは一度学校見学などで顔を合わしているのだが、私は別で昨日入ったからか、かなり注目を集めている。
中にはどっかの貴族の敵意ある視線も……
「それでは、第二十七回アスラ魔法学園入学式を、これにて閉式とさせていただきます」
アスラのその言葉と共に、生徒達は少し足早に外の廊下へと出て行く。
全員、入学式の後に発表されるランキング表を見るためだ。
これは入学前に検査されたステータスを基準にスタートの能力を総合的に並べたもので、生徒がお互いに切磋琢磨し合って実力を高めていくというもを目的に張り出されるものだ。
例えるなら、学校の学力順位だろうか。
そんなランキング表だが、一位の者は国から注目されるなんてこともしばしばあるため、上位になるのは結構重要なことだったりする。
さて、早速ランキング表の前に新入生は集まると、それぞれ歓喜や悲鳴をあげていた。
そんなかで栄えある一位に選ばれたのは……
一位 【カリン・イース】 ランクSSS+
当然のごとく私だった。うん、二位の人がA+なのでこれは異常だろう。新入生も「無理だわ」的な雰囲気をしていた。
授業は明日から始まる。生徒達は今日中に友達を作ったり店に必要な道具を買いに行ったりするそうだが自分はどうしようか迷っている。とりあえずアスラのところにでも行ってみようかな。あ、でも今職員会議中かー。
「うーん、とりあえず部屋に戻りますか」
特にやることもないし退却退却。変ないざこざに巻き込まれるなんて絶対嫌だし。
「暇だ……」
結構豪華なこの一人部屋にはやはりというか私しかいない。
ちょっと窮屈な寝室と風呂場は木のいい匂いがプーンと漂っている。
暇だ
実は既に入学式から二時間くらいは経っている。
時折配布された教科書を読んでみたりするのだが、いかんせん全くわからない。
あ、そうそう。この学校には【学生服】がある。男子は白のシャツの上に、季節によって上着をきたりセーターを着る。
女子は白のシャツに淡い色の短めのスカートでシャツの胸元には赤いパータイを着ける。こちらも男子と同じでセーターや上着を着ることもある。この服個人的には好きだ。元男子の自分が言うのもどうかと思うが、女子の制服の方がセンスがあるきがする。
さてさて、昼寝でもしようかなーと思ったところ、勢い良く部屋のドアが叩かれた。
「……………………めっちゃ音大きかったな……なんだろ?」
とりあえずノブの鍵穴から向こうを伺ってみる。うん、見えない。
これ、話さないといけないタイプですよね~。
「はい、なんでしょうかー?」
私がそう言うと、扉の前ではアタフタと慌てるような音が聞こえた。なんだ?
「えーっと、なんでし_____」
「こっ! この部屋はカリン様の部屋とお見受けしますっ!」
「あ、はい」
声的には女子の声……けど、一体なんの用だろうか。
「わ、私は【ユーラ・スレイユ】と申します! ひ、一つお願いがあるんです!」
……………………なんか面倒そうな感じなんですけど……
「えーっと、なんですか?」
ゴクリ。
「わ、私の……」
私の?
「い、いや私と……」
???
「と、友達になってくださいっ」
えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…………
そっちかい……
(これからは一話ごとにタイトルをいれていきます。この小説、途中から視点がいったりきたりするんで……)
タイトル【お友だち?】
一応警戒しながらドアを開けると、そこには青い瞳を持った美少女が立っていた。
服は神官服のように白で、左右の腰には二本の刀を下げている。
「あー……まぁうん。特に何もないけど入って入って」
「あ、ありがとうございます!」
とりあえず害はなさそうなので部屋にいれてあげることに。
するとユーラと名乗った少女はおっかなびっくりと言った感じで部屋の中に入ってきた。
その後私がちゃぶ台のようなものをベットの横から私が取り出して水を並べていると、少女は正座をして固まっていた。
「あー……えーっと、ユーラさんだっけ。なんで私の所に?」
「は、はいっ! そ、それは……」
下をうつむき、拳を握りしめるユーラ。薄っすらと涙目になってる気もする。
「わ、私は能力が低かったりしてよくいじめられてたんです。この学校でもやっぱり最下位で、知り合いからいじめられて……」
なるほど。私はまだ初対面だから、もしかしたら少しでも仲良くなれるかもしれないと思ったのか。
「……で、でも……やっぱりカリン様は学校一位ですしそのぅ……お邪魔でしたら……」
ユーラはごもごもと小さく呟くように言った。人差し指を交わらせて顔を真っ赤にしている。
何これ可愛い。
「……っ……いや、全然邪魔ではないよ? というか、私も友達を作っとかなきゃと思ってたところだし……」
「…………へ?」
ぽかーん。そんな簡単に話が通るとは思わなかったのか、ユーラは唖然とする。
「いやいや、だからそんな事なら別に構わないよ。ランクが高い低いとか私にとってはどうでもいいことだし」
「え、えぇ、ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
ユーラは驚いたのか、大声で叫んだ。
「本当に……いいんですか……?」
ゆっくりと深呼吸しながらユーラは聞いてくる。
「うん。よろしくねー」
「本当にですか……?」
「うんうん」
私が首を縦に振った……と、その瞬間。
ユーラが突然大粒の涙を流し始めた。何事何事っ!?
「う、うぇぇん。うう、友達……になってくれる人、初めてできたよぉ……」
えっ、初めて!? 相当なぼっちじゃない!?
そんなことを思いつつ、とりあえずユーラが泣き止むまで待つことにした。
「さーどうするかなぁ。ユーラさんはどこか行きたいところでもある?」
「いえ……友達と行く場所なんて考えたこともなくて……カリン様はどうですか?」
「あ、その前に友達なんだから様を付けるのはおかしいって。もっと気軽でいいんだよ」
「そ、それでは……カリンさん……」
オーケオーケー。呼び捨てにするのはまた今度からでもいいだろう。とりあえずせっかくできた友達だし、親交を深めないと。
「……とりあえず外出届け出したりして街を歩いてみようか」
「わ、わかりましたっ! すぐに荷物を纏めて来ます!」
そう言うや否や、ユーラはものすごい速さで部屋から出て行った。
なんか、面白い子だなぁー。
……今回は自分で読み返して一番ひどいなと思った回(笑)
やっぱこういうのを女主人が言っちゃダメだよなぁー……と思いました(´Д` )
とりあえず、読んで「酷い」「キャラ崩壊」「作者無能」なんていわないであげてください(笑)
【街をお散歩?】
「いやぁ、王都は活気が凄いなぁ……」
「うぅ、緊張します……」
そんなこんなでやって来たぞ王都よ!(もともと居たけど)
なんせこの街は活気がすごい。細い道にだって人が溢れている。
確か外出届を出す際に先生が「まずは銀行に行って親からのお小遣いとか確認してきなさいー」と言ってたのでとりあえずは銀行へ向かうことに。私は恐らく口座さえも作られてないとおもうが……
「ユーラさんってステータス検査の時の職業は____」
「双剣士ですっ!」
お、おう……まだ聞いてもなかったんだけど……
ユーラの職業である双剣士は二刀流の剣士のことを指す。盾役にはあまり向かなくて、素早い動きとて数で敵を圧倒する職業だ。もしこのまま二人でパーティーと呼ばれるチームを組んで、学園の実習テストなんかをやる時にはできれば盾が欲しいな。まぁ回避盾もよくないことはないのだが……
「明日からの授業って、どんなことやるの? 私あんまり知らなくて……」
「あ、えと……あー……基本的にはクラス別にポーションの作り方とか、簡単な魔法の使い方をやるそうです」
ほうほう。ポーションと言われると紫のローブを被ってて鼻の尖った老女がぐひひひ言いながら木の杖で緑色の物体を混ぜてる図しか想像できないのは私だけだろうか。
……と、そんなことを話しているうちに銀行についたようだ。
銀行は凄くずっしりとした作りで、重たい石が何十個も積み上げられて作られていた。
私たち二人は横に並んで銀行へ入る。
「うーんと、お客様口座ってあるから、あそこじゃない?」
「あ、本当ですね」
広い屋内の右奥に預かり口があるようだ。数人が並んでいるので私たちもそこに並ぼうとすると……
「あら? これはこれは。スレイユ家のユーラ殿ではありませんか?」
突然ユーラが誰かに馬鹿するような言い方で話しかけられた。言葉を発したのは六人程の女子グループの中心にいた女子生徒。支給された学園の制服と同じ……ってことは、これ同級生か?
「最近はどうです? お家の借金はきちんと返せていますか~?」
「こらこら、話しかけると何か得体のしれないものが移ってしまいますわよ」
ユーラを見ると下唇を強く噛み締めて目には涙を浮かべていた。ここで手を上げてしまえば自分の両親の名が傷つく。言い返すこともできないのだ。
「で、一人ぼっちのスレイユ家の娘さんはどこにお出かけで___」
「そろそろいい加減にしろよ」
ブッチーン。私の頭の中で何かがきれた音がした瞬間に、気付けば元いた世界のように素で言葉を発していた。まぁいいや、このアホな同級生をどうにかしなければ。
「あなたは誰ですの? かの高名なルドウェス家の娘の私に口答えするとは……あなたは何処の貴族の__」
「……まず私は貴族の子ではない。次にユーラには既に友達がいる。……ま、あんた達みたいに人の悪口を影からぐちぐち言ってる奴なんか、世の中のクズだよ」
「い、言いましたわねっ!」
あ、きたきた。リーダーがキレはじめたぞ……?
「あ、あなたこそどうなのよ。自分の身分もわかってないのかしら? 私は貴族で__」
「しょーもないね。別にあなたが偉いわけじゃないの分かってる? あなたの両親が偉いだけですよ? あれ、もしかして知らなかった? 分からなかった?」
「………………………」
おぉよし、このままあとはどんどん神経を逆撫でするだけの簡単なお仕事だ。
「あれ、答えられないの? もしもーし。平民の私でもわかるのに偉い偉いあなた様はどうして分からないんでしょうねー……。あ、ごめん、今まで言った言葉の意味が難しすぎて内容がわかってないのか、ごめんごめん」
「う、う、う……」
あともうちょっとか……?
「うーん、視界にいれるのやだなぁ。なんか得体のしれないのが移っちゃいそうだから」
私がそういうと、ついに女子生徒は半泣き状態に。取り巻きに慰められながら出て行った。
「あ、えっと、あのぅ、ありがとうございますっ!」
ユーラがぺこりと頭を下げる。
「いやいや、別に私がイライラして言っただけだから気にしないで」
「い、いえそんなことは……」
さてさて、だいぶ時間をとってしまった。
ということで急いで列に並んだ。
(作者<後半やばいな)
(なろうの方の最新話はカリンさんが学生ですらなくなってる(笑) あと、魔法じゃなくて『能力』ってのもでてて、そろそろ『能力』対『能力』の展開に……!? )
もう一話更新!
この段階ではまだまだストーリーは進んでおりませんー
うん、口座がないなんて嘘だった。しかも何か預けてる額が多すぎるからカウンターの中入って事務所で渡すとか言われたんだけどどゆこと?
まぁ、お金があるのは悪いことじゃないしいっか。
あとなんか「名前が書かれてないけど誰かから貴女への配達物です」とか言われて二メートルほどの箱も持って帰ることになった。やばい、結構重い。
「あ、ユーラさんもお金とか引き降ろした?」
「あ、はい!」
よしよし、次はとりあえず昼食かな?時間的にはかなり遅いのだが……
「うーん、カフェ的な所に行って軽食でも食べようか。この後のことはまた後で考えよう」
「は、はいっ」
うーん、この頬を赤らめて答える姿は反則だろう。可愛すぎる……なんてことを思ったりもしてみた。
「わー、ここ美味しいねー」
「よ、良かったです! ここ、よく私が通ってて……気に入って貰えるか心配だったんですけど……」
昼食的な何かはユーラ行きつけのカフェで食べることになった。
表通りから少し離れた場所にあるのだが、店の雰囲気も悪くなく、サンドイッチのような食べ物とカフェオレは絶品だった。
軽食を食べたあと私たちはとにかく遊びまくった。
いろんな店に行って装備を見たり、適当に歩きまくったり。
なんか転成前にはなかった楽しみだな、こんなこと。
気づけば時刻も夕方。寮の門限が近づいてきたので二人でダッシュしてとりあえずセーフ。
その後は明日からのこととかを色々話してたりした。
あ、あと二人とも呼び捨てで呼び合うようにしました。はい。
本当にユーラは今日のことが楽しかったのか、部屋に帰る直前号泣していた。可愛いから許す。
うーん、本格的な授業が始まるのかぁ。楽しみ。
さぁ、そろそろ明日に備えておやすみ……ん?
そういや私宛の荷物まだ開けてなかったな。時間あるし開けとこ。
ベリベリ、ベリベリ。
梱包をほどき終えて中から出てきたのは、とても美しい杖であった。
アスラから聞いたのだが、魔法を使うには干渉するために専用の道具がいるとか。恐らくこの杖もそうなのだろう。
高さは二メートル。先端部は三日月のように曲がっていて、その空間には不思議なことに白色の水晶が浮いていた。
誰が送ってくれたかは知らないけど、感謝。そしてGood night!
なろうの方でこちらの小説をリニューアルすることを決定。
現在2話新規再投稿完了。今日中にあともういちわ再投稿するつもり。
こっち側の更新は……どうしよ、希望があればします。
こっちでの更新は続けますよー
そろそろカリンさんに最初の試練が訪れます……
あ、でもまだ先に話を挿入するからまだ先かな?
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