ハナミズキ 2015-10-30 16:57:47 |
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まだ、このエメラルダスがオンラインゲームであったころ、ユーリがやったというクエストは【 千年クエスト】と言って、千年前の大古の時代にさかのぼり、ローレライ大陸にやって来たという闇の魔王オリジンとその眷族達の討伐クエストだった。
闇の魔王は世界を暗黒の世界にしようともくろみ、人間を皆殺しにし、闇の眷族と魔物で埋め尽くそうと考えていた。
緑豊かな土地のローレライだったが、一夜にしてその木々や草花を枯らし、焦土化にしてしまった。
そこに、このクエストを受けてやって来た冒険者達が、闇の魔王と眷族の魔物達を討伐するという内容である。
もちろん討伐を行う冒険者は1人ではない。何人もやって来る。その者達と力を合わせクリアしていくのだが、なぜ吟遊詩人の歌では1人しか出て来なかったのかが不思議である。そして、その人物がなぜユーリなのかと言う事もだ。
「なんか謎だらけよね~。でも退屈しないで済みそうだわ」
そう言って笑うのであった。
一夜明け、ギルドHOPE御一行様が、海を渡りローレライ大陸に行くために、港に集まっていた。
「うっわぁ~!すっごく大きな船~♪」
そう言って大はしゃぎををしていたのがアンズだった。
「アンズちゃん、船は初めてなの?」
「初めてじゃないけど~、こんなに大きな船は初めて見た!」
荷物と人を同時に運ぶこの船は、かなり大きめの客船である。陸だけではなく、海にも魔物が潜んでいるので、船乗りの他にも用心棒として、それなりに腕の立つ元冒険者達も乗っている。
海で遭遇をする魔物はレベル40代の中堅クラスなので、そこまで危険ではない。それに、いつも出るというわけではなく、運が悪ければ出くわす。といった感じだ。それより怖いのは海賊の方かもしれない。あいつらは見境なく襲ってくるからだ。
なにはともあれ、何事も無く無事に航海が出来る事を祈り、船に乗り込んだ。
―― ボオオォォォォー ――
大きな汽笛と共に、船が動き出した。
― 8話完
◆ モリトの決心 ◆
グリーン大陸からローレライ大陸までは、船で三日かかる。空を飛ぶ召喚獣で行けば半日といった距離だ。その海を渡るのだからそれなりの大きさの船でならなくてはならないし、客室も値段別に数多く用意されている。
一番安いのが二等客室。50人程が雑魚寝できる広さがあり、値段は1人6000円。(食事は含まれていない)食事は大衆食堂で取り、シャワーは一回に付き500円取られる。一等客室になると1人一万円になり、四人一部屋で食事とシャワー等は二等客室の人と同じとなる。
一番高いのは特別室だ。当然個室で鍵付きである。部屋にはシャワーが付いており、食事はルームサービスで三食付く。値段も1人10万円~と高い。
俺達は二等客室を選んだが、ハロルド達の方はアンズの我儘により一等客室に泊まっていた。人数が四人と言う事もあり丁度良かったんだろう。しかし、アンズの本当の目的は、三日間ハロルドと同じ部屋で寝泊まりする事だ。ここだけの話しだが、実はハロルドは良い所のお坊ちゃんらしい。(byアンズ情報)
上手くいけば玉の輿に乗れると、アンズはこの三日間にかける気満々だった。
甲板から、だんだん遠ざかるグリーンランドを見ている俺とユーリ。船に乗って移動するなんていつ以来だろうか。たまにはこんな旅も悪くない。そう思いながら潮風に当たっていた。
ふと、隣にいるユーリを見て見ると、長い髪が後ろから吹く風になびき、前方へと覆い被さって来ていた。それに気が付いた俺は、ポケットに手を入れて昨日雑貨屋で買った可愛い紐を取りだした。
「髪が邪魔そうだね。ちょっとそのままでいてくれるかな」
俺はユーリの背後に回り、髪を束ねてポニーテールに結んだ。思った通り、ピンク色の紐はリボンの形をとると、より一層ユーリに似合う。まるで・・・・、小学生のようだ・・・・。
「これまた可愛くなっちゃって・・・・。」
俺は思わず苦笑いをしてしまった。そして同時に、赤い石がハートの中にぶら下がっているイヤリングも付けてあげた。
「うん。可愛い。完璧だよ、ユーリ」
こう言う歯の浮くようなセリフを平然と言ってのけた自分にもビックリだったが、「可愛い」と言う言葉を聞き慣れていないのかユーリは、「えっ?」と、驚き、俺の方へ振り返った。
その顔は、恥ずかしさなのか照れなのか、顔を真っ赤にしているように見えた。その顔を見た俺も、「えっ?」と、間抜けな返事を返すのだった。
俺は、なぜそんなにユーリが驚いているのか分からず、更に的外れな返答をする。
「いや、マジで可愛いよ?イヤリングも似合ってるし、めっちゃ可愛いって!」
「・・・・・・・・・・、ありがと・・・。でも、なんかその口調・・・、ケントみたい…。」
「えっ?!」
しばらく間があった後、2人はクスクスと笑いだした。
「ごめんごめん。でも普段はこんな感じなんだぜ」
「なに?じゃあ、今まで猫被ってたの?」
「そりゃあ、少しは被るだろ。今までは友達とは言っても素性は知らなかったんだしさ」
「そりゃそうよね。じゃあ、私もこれからは素でいくわ。これからの付き合いも長くなりそうだし、その方が気が楽よね」
そう言いながら、俺達は今までの時間を埋めるかのように話し出したのだった。
甲板で俺達は長い時間話しをしていた。今となってはもう無い、故郷の話しや家族の話しなどだ。
ユーリは千葉県に住んでいて、家族は両親の他に弟が1人いたそうだ。中学生になった頃に病気が悪化して入院生活を余儀なくされたという。入院中も院内学級に通い勉強はそれなりにできるらしいが、歴史だけは苦手だったと言ってたな。それと、ユーリの弟と俺が同じ年だと初めて聞いた。
好きな食べ物はパスタとハンバーグ。嫌いな物は沢山あり過ぎて分からないそうだ。(笑)
俺と初めて会った時も、弟と歳が同じだって事で色々と面倒を見てくれたのがその理由だったらしい。ほんと、あの時の事は感謝してる。ユーリと出会わなかったら俺は、このキャラを育てる事は諦めていたかもしれないし。
俺の方は東京に住んでいて、今は一人住まいの大学生だった事。実家は北海道で大自然と食い物が美味い所だと言うと、一度行ってみたかったと言っていた。
ユーリは俺に、今まで何回告白された事があるのかとか、何人の女の子と付き合った事があるのかと聞いてきたが、俺は全力でそれを拒否した。(汗)
そりゃあ、告白された事や女の子と付き合った事もあるけど、そんな事人に話す事じゃないだろ?恥ずかしすぎる。(汗)
すると今度は、バレンタインに何個チョコを貰ったかと聞いてきた。話すまでこの話しが終わりそうもなかったので、俺は正直に答えたさ…。最低個数を・・・「5個…かな」とね。そうしたら急に、「へぇ~、モリトってモテるんだねぇ~」と、意味不明な事を言ってきた。チョコ5個でモテるってどう言う事ですか!? みんなそれくらい貰ってるだろ?たぶんそれ全部義理チョコだしさ…。それに、その数の中には母さんと婆ちゃんのも入ってるし…。
ユーリと話していて再認識した事は。やっぱりユーリは凄いという事だった。
人を見る目があるというか、観察力がすぐれているというか・・・。
まず、ハロルドの事だ。ハロルドは信頼して頼っても良い人物だと言った。言葉使いや周りに気を使う姿勢は、両親の躾が行き届いていた証拠だという。それと、いずれハロルドには自分達の素性がばれるかもしれない。とも言っていた。それだけ洞察力もある人物だというのだ。
次にケントだが、彼もなかなかの人物らしい。言動や行動がチャラく見えるけど、本当のケントは真面目なのではないかと言う。場の空気を盛り上げるためにわざと演出してる可能性もあるんだってさ。確かに、そう言われればそうかも知れないと、俺も妙に納得をした。
リズは長女で、下には沢山の弟妹がいるんじゃないかと言う。母親の様な面倒見の良さがあるんだって。それに、器が大きい。とも言っていた。確かにリズは周りをよく見ている。俺達の事も気にかけてくれてるしね。悪い人じゃないという事は俺にも分かるさ。
最後にアンズの事だけど、ユーリが言うには、悪い子ではないらしいがかなり自己中の気質があるらしい。自分が一番!と言う考えの持ち主のようだ。
ハロルド達4人の中で一番年下であり、女の子と言う事で、守ってもらって当たり前。我儘を聞いてもらって当たり前。と思っているらしい。だから自分より年下に見えるユーリが気に食わないようだ。今はまだ、俺がユーリの兄だと思っているのか、それほど風当たりは強くはないが、他人同士だとばれたらどうなるんだ?!
まぁ、そんな事は追々考えればいいが(考えたくもないが…)、ユーリの事だからどうにかしちゃうんだろうな。(苦笑)
ユーリじゃないけど、面倒くさい事を考えるのはよそう。起こってもいない事を考えるなんて、今の俺にはそんな余裕はないからな。
今目の前で起こっている事に全力で立ち向かうしかないんだ。俺は1人じゃない。ユーリと言う仲間がいる。ユーリを守るためにも俺は強くならなきゃいけないんだ。いつまでも守ってもらう立場じゃ男として情けないもんな…。
さぁ~て!俺は強くなるぞ!!(精神的に!)
― 9話完
ありがとうございました。
これにて ビヨンド・ザ・ドリーム グリーン大陸編を終わらせていただきます。<m(__)m>
ローレライ編は、また別の章になりますので、そのうち載せようかなと思います。
長い間お待たせいたしました
途中でネタが尽き、暫く執筆から離れておりました
またボチボチとのんびり書いていこうかと思います
ビヨンド・ザ・ドリーム ローレライ編 始まります!
船に乗って三日目。遠くにローレライ大陸の山が見えてきた。まだテレポートスキルが使えない頃に、何度となく船に乗ってやって来た大陸だ。その頃は、船に乗っても15分で着いていたと言うのに、今となっては三日もかかるとは…、船酔いが辛い…。
心配していた魔物との遭遇は、船の用心棒として雇っている元冒険者達が退治してくれたので、乗客には被害が出なかった。魔物より厄介だと言う海賊も、今回は姿を現さずヤレヤレと言ったところだろう。
甲板では、ローレライ大陸を懐かしそうにモリトとユーリが眺めていた。地図上ではグリーン大陸の二倍の大きさはあるが、その半分以上は草木が枯れて焦土化をしている。
高くそびえ立って見えている山々も、茶褐色の色をしており、草木などが生えている様子が見られない。
山のふもとの方に、多少だが緑が見えているのが救いだろうか。それさえ見えなければ、ここはただの廃墟にしか感じられない。
「やっとローレライね」
「あそこの人達も相変わらずなんだろうな…。」
あそこの人達というのはゲーム内のモブ達の事である。
以前はプログラムされた通りの行動で、元気いっぱいに動いていた。だが現実となった今でも相変わらず元気一杯なのだろうと想像したのだ。
穏やかな気質の人が多いグリーンランドとは違い、ローレライの人達はたくましい。
一般人なのか、盗賊や山賊の類なのか分からいような、豪傑な気質の人がほとんどなのだ。
国の半分以上が荒れ地とかし、その土地では食物は育たない。微かに残っている水源の周りに家を建て、小さな村や町が幾つも出来ている。
食物が育たないので輸入をするしかないのだが、それをするにもお金や物が必要となる。人々は危険と知りつつも、マナを取りに鉱山へと入るのだ。
マナとは、鉱物・鉱質・宝石の原石の様な物だが、その用途としては多種多様である。石炭の様に燃える石があれば光を放つ石もある。この光を放つ石は、人々の暮らしには無くてはならない物だ。部屋の明かりや街灯等に使われているからだ。
ゲルゲンやアマンダ、ミスリルなどと言う原石は、武器を錬金する時に使われ、それらを使わないで錬金をしたものに比べると、切れ味や刃のもろさが数倍違う。良い物を長く使おうと思うのなら、原石を練り込んで錬金した物の方が良い。当然それらは値段も高いが、それだけの価値もあるというものだ。その鉱石や宝石の原石を輸出をして、日々の糧を得ているのが、このローレライの人達なのであった。
船がローレライのグラ港に着くと、人々と貨物が船から降ろされる。船から降りたモリトは大地を足で踏みしめながら、大きく背伸びをし、深呼吸をした。
「やっと着いたな。船旅がこんなに辛いとは思わなかったよ…。」
少々げんなりした様子で肩をすくめて言う。。
「あら、そう? 私は楽しかったけど?」
船旅というものを初めてしたユーリの方は、楽しくてしょうがなかったようだ。
グラ港に降りた2人は、久しぶりに来た街の様子を見て歩く事にした。
パッと見は以前と変わらないようだったが、雰囲気がどことなく以前と違って見えた。いかつい姿の男ばかりというのは同じだが、前はもっと陽気で楽しい人ばかりだったはずだ。それが今は、陽気に楽しく酒を飲んでる人が半分。ニヤニヤと舐め回すような目つきで見てくる得体の知れない男が半分と言ったところだろう。
後者の男達が気になったユーリは隣を歩くモリトに小声で話しかける。
「あの人達っていったい何者なのかしらね?」
「人相が良くないとこを見ると、どうせ流れ者の元冒険者ってとこじゃないかな」
あまりジロジロ見て因縁を付けられてもたまらないので、さり気なく流し目で雰囲気を探る。
「この大陸に王様がたったって聞いたけど、兵士とかはいないのかしら?」
「それらしい姿のやつは見えないよな」
そんな話をしながら道を歩いていると、前の方からより一層人相の悪そうな集団が歩いて来た。
見た目は思いっきり山賊風だ。
その集団はガハハと下品な笑いをしながら一件の酒場に入った。気になったモリト達はその後を付けてみる。
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