匿名さん 2015-10-26 21:45:04 |
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(暖かい体温、背に回された腕、それらに何の疑いを抱けるだろうか。離れていく彼を名残惜しいと思いながら、いつも通りの笑顔に安堵する)普通、朝食なんて質素なもんだろ。お前は変なところで凝り性だな。(貧相な食生活を送っていた青年は朝食だけは美味いと言うが、子供でも作れるメニューばかりであり、果たして成人男性の腹が膨れるのかは疑問である。現に、青年の身体はどちらかというと細身な方だ)
せ、せやけどなぁ、今日はなんちゅーか…凝りたい気分やねん…まあ、いつも通り簡単なやつになるわ…(頬を掻きながら眉を下げ笑えば先程冷蔵庫から取り出したものでやはり簡単なものにしよう、と考えを一変させるなりキッチンへと戻っていけば腕まくりをして。量はそんなに無いのは事実で腹が膨らむかと問われれば答は否だが、余裕が無い事には代わりがなく。)アーサー、朝食が出来るまでソファーに座っとって?直ぐ作ったるから。(微笑みを浮かべてもう一度振り向いては首を傾げて見つめ。一度、彼にも手伝わせた事があるのだがその時はとても頭を抱えたくらい彼は料理が得意ではなかったのである。分かっていたことだが、改めて実感した男は手伝わせないと胸に誓ったのだ。)
(こて、と傾けられた首と視線に頷き返すと定位置であるソファーの真ん中に大人しく座る。何だか世話されているという感覚が、それも何というか共同生活と呼ぶには何もさせて貰えないぐらいのものをひしひしと感じている)朝飯なんて手軽なもんでいいじゃねえか。(拗ねている訳ではないが、何となく不貞腐れているような言い草になってしまって自分でも何だか大人げない。いや、実際に彼の隣に立たせて貰えない事に多少なりとも不満を感じているのだが。確か、前に一度手伝ったことがあったが、その際も怒られたのである。隣に座るテディベアをぽすっと抱え込んだ)
せやなぁ、手軽なものにしよか。(大人しく定位置へ座った相手を見れば満足そうに頷く。不貞腐れている様な言い方の彼を見つめれば小さく笑って、これは不満を感じているなと雰囲気から感じ取りつつもキッチンを使うとき彼を隣に立たせるのだけは勘弁したい。例えそれが彼の不満であっても。くるりと向きを変えては朝食を作ることに専念しようと手を動かし)…アーサーの料理はどうやっても失敗するからあかんなぁ…、ほんまに…(そう呟いた声は相手にも聞こえないくらいの小さなもので、その表情は眉は頼りなく下がっていて何とも言えない表情で決して彼の料理が上手くないことでそう呟いているのではなく、生前の彼も料理が上手くなかった事をふと思い出してからの言葉である。今はそれも己からすれば思い出で、いまはソファーに座っている彼と暮らしているのだと思考をしては軽く頭を振ってはその表情は消え去っていて)
…買い出しか、久しぶりに外に出る気がするな。(ぽつりと漏らした独り言。前回のデートはいつだっただろうか。十年やそこらをこの家で過ごしたように錯覚する、左程変わり映えのない日々はすっかり時間の感覚を麻痺させているようで、良く思い出せない)べ、別にデートの心算じゃねえけどな。必要な物を買いに行くだけだし…、な。(慌てて自分の考えをかき消す。デート、これはデートに含まれるのだろうか。もしそうだとしても、何故か義足になっている不自由な両足ではままならないだろうな、とぼんやり思った)
……アーサーを外に出しても平気なんやろか、ずっと、出しとらんかったけど…。(彼が死んでから、蘇らせた時からずっと彼をこの家の中から出していない。それもずっと長い間。彼の友人や己の友人には彼が死んだと伝えてある、その所為もあってか彼を外へ出そうという気にはなれなかったのだ。けれど、つい先程口走ってしまった買い出しという言葉、その言葉を撤回しようにも時は遅し。そんな事を思いながら簡単に朝食を作り終えればお皿を持ってリビングの机の上に置き)アーサー?朝食出来たでー!いつもと変わらんけど…(ソファーへ座っている相手に声を掛ければ机の上の質素だが己にしては頑張った方の料理を横目に苦笑を浮かべて。本当は一人で買い出しへ行くべきなのだろうが、この家に一人彼を置いておくなど出来そうにもなく、どうすればいいだろうかと考えてみるもいい案は浮かばず小さく溜息を吐く。)
ん、いい匂いだな。(声が掛かれば胸の中のテディベアをそっと降ろし、料理が並べられたテーブルまで歩み寄る。きぃ、と歯車と螺子の軋む耳障りな音を聞いて、やはり外出は厳しいのかもしれないと思い当たる。自分が良くても彼が変な目で見られやしないか、不安だ)…美味そう。(いつもと変わらないと言うが、同じ味を出せるのは何だか魔法の様でもある。何故それが彼にできて自分にできないのかと日々首を捻って考えてはいるのだが、今のところ、何一つ判っていないのが現状だ。彼にも座るよう促し、朝食を口に運んだ)
美味そうやろ?っちゅーても、有り合わせみたいなもんなんやけどな…(素直に感想を述べてくれる相手に笑いかけながら席に座れば朝食を口に運んで。やはり、自画自賛だが家事全般は得意なだけあって料理も上手い、と自分自身思いつつ、つい先程の彼の足が立てる音を思い出しては相手にバレない程度に顔を俯かせれば眉を下げて周りの人達から彼が変な目で見られやしないか、ただそれだけが不安で。己が周りの人にどう思われようが、どう見られようが構わないが彼だけは変な目で見られる事だけは避けたい、そう心から思っている。)…アーサー、美味い?(へら、と笑いながら首をこてん、と傾げて問い掛ければこういう簡単なものなら彼にも作れたりはしないだろうか、自分がちゃんと見ていれば大丈夫だろう、と彼を滅多にキッチンへいれようとはしないのだがなんとなく、彼にも出来るような気がしてそんな事を思考してみたり。)
まあ、いいと思うぞ。そう凝った料理ばかり食べても飽きる。(あのワイン野郎の料理とか、と思ったが口に出すのは美味い料理を台無しにすることもあり憚られる。そういえば如何してるだろうか、まあ死んでくれた方が世の為にもなるだろうきっと)……美味いに決まってるだろ。(彼の問いかけに、ふいと視線を逸らしながら放った言葉に、そうじゃなきゃこんなに食べたりしない、なんて可愛げのない台詞を一つ。すっかり空になった皿をさっさと流し台へ置きに行ったのは些細な照れ隠しだ。素直じゃないところも、一向に直らないどころか開き直っている部分すらある。これでは駄目だと判っているのに、こうも屈託のない笑顔を向けられるとどこか後ろめたい気すらしてくるのだ)
はは、そらそうやわ。(既に食べ終わったらしい相手を見つめてはくすくす笑って可愛げのない台詞でも彼の言葉であればどれも愛おしく感じてしまう。素っ気ない態度であってもきっと己はそれを愛おしく思ってしまうだろうし、彼であるからこそ意味があるのだと思う。己も一歩遅れて完食すれば流しへ食器を持っていって)アーサー、食器洗うん手伝ったって?(首を傾げて見つめれば手伝いを要求して。幾ら料理をさせないからと言ってキッチンへ入らせないわけにもいかず食器を洗う手伝いくらいなら彼でも出来るし、枚数は少ないが二人でやればすぐ終わって後はゆっくり出来るからとスポンジを差し出す)
おう。わかった。(流石に食べてはいそのまま、という訳にもいかないので素直に手伝うことを了承する。元より片づけは嫌いではないから、渡されたスポンジを泡立てて水と向き合う。さあさあと手の中を滑り落ちる水の冷たさに顔を顰めるが、青年の体温がそれと同等までに低い事を知る由もない)そうだ、他に何か買う物とかメモに書いておいた方がいいんじゃないか?(自分は茶葉しか用はないが、彼は色々と物入りかもしれないからと、そう声を掛けてみる。金が許すのなら新しいティーセットも欲しいな、なんて心中でひっそり思った)
ん、そうやんなぁ。必要なもん、書いとこか。(彼から提案されたものにふむ、と頷いてはそうした方がいいかと納得しては少し遠い所へ買いに出かけようかと洗った皿を拭きながら考えてみる。近場の所になど行って知り合いに会えばややこしい事になる、そう思っている為ついでにドライブもすればいいかなんて。彼の手からスポンジをそっと取ってはそれを水にさらし洗えば彼の手にタオルをそっと載せて。)ほな、必要なもん書いてこか。アーサーは茶葉だけ?(首を傾げればメモとペンを取り出し己の必要なものをサラサラ書き出しながら彼の必要なものは茶葉だけだっただろうかと問いかけ、もし他に欲しいものがあるのなら買ってあげようと思っている為に遠慮などする必要は無いと見つめて)
ああ、それでいい。(きゅ、と蛇口を捻れば流れる水は今や指先にかかる雫のみとなり、載せられたタオルでややきついぐらい強く自分の手を拭く)…その、俺は…お前といると楽しいんだが口は下手になる、から。嫌だったら他の奴ら呼んでもいいんだぞ。ほら、お前って賑やかな方が好きだろ。(思い付きから溢れた言葉は止めどなく、何かを誤魔化すように続けられる。先程蓋をしたばかりだというのに、腹の底から湧き上がる疑問符たちを踏みつけて、だって彼が自分に隠していることなんて何一つないのだから。そう確信するために、記憶の中にある騒々しい人混みを脳裏に浮かびあげたりしてみるのだ)
……え?他のヤツ?何言うてんねや、俺はそないなこと思ったことないで?そら、賑やかな方が好きっちゃー好きやけどな?アーサーと一緒におる方がもっと好きやねん。それに、あいつら今の時期忙しいらしくてな…(きっと、彼の脳内では友人達の顔が出てきているのだろうとどことなく察し双眸を一瞬細めるも困った様に笑いながら述べる。紙には自身が必要なもの、食材、そして彼が必要なものを書き込み終えるなりズボンのポケットへとしまって)あんな、今日は買い物がてらドライブでもしよか思うとんねん、どう?ドライブ行かへん?(車の鍵を見せつつ首を緩やかに傾げては問いかけ。中々彼を外へ出せない事もあり、普段行けないところへも行けるとなれば彼はきっと疑問を浮かべつつ頷いてくれるなんてその自信はどこから来るのだろうか、そのまま見つめて)
そうか。…そうだよな。悪い、変なこと言って。(彼の言葉に心が仄暗い悦びで満たされていくのが判る。それでも、日向に居る方が似合う彼に心配は尽きない。曲りなりともラテン、ならば女性の方が好きではないかとか。所詮そういった類の心配が多いのだ)…ドライブ?それはいいな。余りこの足で歩けそうにもないし…。(そっと逸らした視線の先に尖った爪先、人間のそれとは全く違う部位に何とも言えない、持て余した感情を隠して無理に笑った)
ん、ええよ。謝らんといて(にへら、と笑えば相手の髪の毛を梳くように撫でれば友人達から見た己はきっと歪んでしまっているのだろうと何となく予想はできるのだが歪んでいてもそれは愛でしかないのだからどうしようもない。それ程迄に己は彼を愛しているのだ。)せやろ?海なんてどうやろか。やっぱ遠くなってしまうんやけど、買い物のついでやしええやろ?(彼の足の義足の事を考えればあまり海など近付くと錆びてしまうのでお勧めはできないが彼と一緒にみる海はきっと格別なのだろう、と双眸を細め。海でも何処でも彼と行けるのならどこでもいいのだが、首を傾げ乍微笑むように笑い)
…うん、ちょっと疲れてるみたいだ。(らしくもない考えを振り払い、愛おしい恋人とのデート計画に思考回路を切り替える)海か…、いいんじゃないか。この時期じゃ泳ぐのには向いてねえけどな。…錆びそうか?(彼の提案に緑の双眸を細め、暫く見ていない風景を思い出せば俄然行く気にはなったが、彼の視線の先を辿れば己の足に行き付く。これが何で出来ているかは知らないが、一見すると金属なようなので潮風で痛むかもしれない。であれば長居は出来ないが、車の窓から見るだけでも結構だろう。不安を取り払うように微笑んで見せた)
流石に寒いのに泳ぐ気にはなれへんわぁ。風邪ひくやん?…錆びてしまうっちゅーか、砂とか入ってしまいそうやなぁって(微笑む相手に微笑み返す。錆びてしまう可能性もあるが砂が入れば錆びるよりも大変な作業になってしまうだろうと肩を竦めて見せるも己が彼をおぶる事も出来る為に海に行かないという選択肢はなく)せや、寒いんやからちょい暖かい格好せんとなぁ。コートは流石に早すぎるやろうし…カーディガンぐらい羽織らんとな(そう彼に言いながら彼の服にカーディガン等あっただろうかと視線を斜め上に上げ考え込んでは無かったらそれも買っておこうとメモに追加しつつ必要なものはこれぐらいかと改めてメモに視線を落とした)
ああ、今度は夏に行こうぜ。別に砂なんて気にしないさ、お前とデートが出来ないことに比べたら遥かにマシだからな。(そうだろう、と同意を求めるように傾げる首と共に金が揺れる。海に入れないのであれば海岸沿いを散歩するのも悪くないと思うが、確かにこの足では不便だろう。ならロングブーツを履いてみるのも、と悩んだ末に思い当たった妥協案を口から滑らせる)そうだな。まあ、食材のついでに買えばいいさ。(立ち尽くしていてもきぃ、と音をたてるそこに少しだけ眉を顰めて、何があって両足を失うことになったのか、どこか引っかかる思考に蓋をした)
せやなぁ、今度は夏に行こか。……そうかもしれんね、マシか(同意を求められれば眉を下げながらクスクスと笑いつつそれに同意する。彼の足に負担にならないようなモノを今度いくときには必ず用意して行こう。音のなる両足に眉を顰める彼に視線を向けつつ、疑問には思っているのだろうかと内心呟くも彼にその理由を話したくはないし、その為にその時の記憶だけ閉じ込めたのであっておそらくこの先もきっと彼にその理由を話すことはないだろうと双眸を細める)ほな、買い物行こか。なんか暖かいもん、羽織ってき。俺も暖かいもん羽織ってくるわ(彼の背を軽く押しながら笑いかけ、己自身もコートを羽織ってこようと思案しては自室へと一度足を向けクローゼットの中から暖かそうなコートを手にとってそれを羽織り再びリビングへと戻って)
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