神様は微笑むどころか怒って僕を女体化しました。【小説】

神様は微笑むどころか怒って僕を女体化しました。【小説】

ノアール狐  2015-07-29 00:14:12 
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主人公、珀狼 雅魅(はくろう まさみ)は、不良ではないが、ケンカが物凄く強い。マッチョが10人いても瞬殺できるほどだ。ある日、とあるヤンキー集団と神社でケンカになり、神社を派手に壊してしまったのだった。その日の夜、夢の中で自称神様と名乗る少女に
「反省するまで呪い掛けるからッッ!!」
と言われ、朝起きると白い髪の可憐な女の子になっていた!?

第一章
【一幕】神は僕に微笑んでいる!
【ニ幕】呪ってやる!(物理的)
【三幕】いいえ。違います。
【四幕】僕は男だ!!
【五幕】何て……ひ弱な……
第ニ章
【一幕】これが乙女のたしなみだよ
【ニ幕】ぺったん(意味深)
【三幕】あらこんにちは。あなた誰?
【四幕】もう勘弁してください!?
第三章
【一幕】よし。友達。(確信)
【ニ幕】何をするんだ!?
【三幕】眠い…
【四幕】何かが違う……
【五幕】呪ってる意味ないじゃん!!
第四章
【一幕】どうせ私なんて…グス
【ニ幕】……何の用?
【三幕】あり、がとう…
【四章】え?本当にいいの!?
【五幕】これが私にできること
【六幕】お別れと言ったね。あれは嘘だ。
最終章
【終幕】これから

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  • No.1 by ノアール狐  2015-07-31 16:06:40 ID:63abb97d8

【一幕】神は僕に微笑んでいる!

___________________

珀狼雅魅(はくろう まさみ)は最強の喧嘩男子である。
5人程度の不良の集まりであれば、5分もせずにカタをつける。
10人以上とやり合おうとも、最後は誰一人として彼の前に立っていられる者はいない。まさに鬼のような不良男だ。


……というのが、噂で流れているらしい。
だがそれは、全くの思い込み、勘違いである、と雅魅は噂の一部を否定している。
…まぁ、確かに自分は、5人程度の不良集団に絡まれても5分もせずに全員叩きのめしたが。
しかし、それでも自分は『不良』ではない、というのが雅魅の意見である。見た目に関しては最もだ。
焦げ茶色に染めた髪と、鋭い目と、力量を除けば、どこにでもいる普通の高校生だ。
ピアスはもちろん、普段から制服を着崩してすらいない。……まぁ、授業中居眠りはするが…。
だが、これらに加え、一人称が『僕』である。一人称が『僕』な不良がいるだろうか。いや、普通に考えて、居ない。


といった具合で、珀狼雅魅は不良ではたいハズ。

いや、不良ではない。

断じて不良などではない!


◇ ◇ ◇


ピピピピッ_________
ピピピピッ_________

「…ん……んん……」

朝___
まだ覚醒しきらない寝惚けた頭に、目覚まし時計の不愉快な音が響く。

ピピピピッ_________
ピピピピッ_________

手探りで時計を探すが、見付からない。
……どこいった…

ピピピピッ_________
ピピピピッ_________

「…んぐ……うぅ~……」

ピピピピピピピピピピピピピピピピピ_______

「…ああもう…うるせーなぁ……!」

雅魅は遂に観念し、起き上がって時計を探した。
…どうやら手が届かない場所にあったらしい。

ピピピピピピピピピピピピ____カチッ

小気味いい音と共に、鬱陶しい音が消えた。
雅魅は、「はぁ…」と溜め息を吐くと、そのまま立ち上がって窓のカーテンを開ける。
そして毎日毎日元気に出ている太陽が眩しく輝いている_________


______のではなく、曇天の曇り空から大粒の雨がザァーっと音を立てて窓を叩き付けていた。
「…雨、か………昨日確か梅雨明けしたとか言ってたよな……」
天気予報で梅雨明け宣言をした次の日にこの大雨とは一体どういうことだよ。
そんなことを考えながら時計を見る。
現在時刻、7時5分。今日は金曜日。今日が終われば、明日から至福の休日だ。
はぁ、と本日2回目の溜め息を吐いて、雅魅は制服に着替えるべく、クローゼットを開けた。





2階の部屋からリビングに降りてくる頃にはすっかり目が覚めていた。現在時刻7時10分ちょっと。通っている高校までは、徒歩で20分あれば余裕で間に合うので、朝食を摂る時間は十分にある。
雅魅は、キッチンにある冷蔵庫を開けると中から食材を取り出した。
そして次に、食パンを準備する。
「…っと、コショウもだな」
何を作るかなど決まっている。
サンドイッチだ。
ハム、ゆで卵、ツナマヨ、キュウリ、レタス、コショウ、マーガリン…
雅魅はコレらで簡単なものを作ることにした。
数分後
「こんなもんか。」
皿に乗せたサンドイッチを見て、真顔で納得し、それをリビングのテーブルの上に運ぶ。
イスに座り、テレビをつけて朝のニュース番組を見ながらサンドイッチを食べる。
「………手抜きは手抜きだな。うん。」
味は普通に手抜き感満載だった。
テレビの音と、窓に叩きつける雨の音だけが家中に響く。
…この家には雅魅以外に人は居ない。
別に家族が居ないわけではないのだが。
ただ、両親が家を留守にしているだけだ。

………この2年間。

「………一体何処で何してんだか…」
雅魅は、テレビの横に置かれた写真立てを見る。そこには、高校に入学したばかりの雅魅が、面倒くさそうな顔で写っており、そんな雅魅を挟み込むようにして、2人の男女が写っていた。雅魅の両親だ。
2人はこの日を境に、世界中を旅している。
前からちょくちょく出掛けてはいたが、高校生になって一人暮らしが可能になったところで本格的に旅?を始めたようだ。
「はぁ……行くか」
また溜め息を吐いて立ち上がる。
鞄を2階の部屋に置いたままだったのでリビングの後ろ側にある階段を上がった。
そこでふと、テレビを消してなかった事を思いだし、リビングを見下ろす。
テレビを見ると、どうやらオネェが占いコーナーをやっているらしい。
丁度一位と最下位の発表だ。
『さて、乙女座と蟹座、今日の最下位は~………残念~!!乙女座のあなた!変な人に絡まれそう!!ラッキーアイテムにスタンガンを持って歩くと良いわよ~!』
「なんて占いしてんだよ」
視聴率下がるぞ、と8月24日生まれ乙女座の雅魅はツッコミを入れて再び階段を登り始めた。


◇ ◇ ◇


鞄を取りに行った後、少しの時間ゆっくりテレビを見て家をでた。
玄関を出ると、目の前は緩やかな坂になっている。
この坂を上がると、道の左右に様々な店が軒を連ねる商店街に続く。
逆に坂を下れば、その先約1km程先に駅がある。
雨は未だに降り続いているものの、先程の勢いはどこへやら、少し小降りになっていた。
「さてと…………ん?」
歩き出そうとした雅魅は、しかし、あるものを見て止まった。
視線の先には、道の途中にあるシャッターの閉まった店の前にある自販機の周りに、6人の男が居る。
だが、それだけならともかく、雅魅が気になったのには別の理由があった。
「…缶ビールとかそこの自販機じゃ買えねーだろ、普通…」
雨宿りなら分かる。しかし、男達は缶ビールを手にしている。
よもやそこの自販機で買えるようなものではない。
別の場所で買ったのは明白。だが、何故わざわざあんなところにいる必要があるのだろうか?
理由は簡単。
人を待っているのだ。
誰を…?
「…………僕じゃありませんように…」
嫌な予感と共に、雅魅は歩みを進めた。
しかしその嫌な予感は見事に的中することとなる。
1人の男が雅魅を見るや否や、他の男達に何やらコソコソと耳打ちした。
「…あの占い、意外に的確だな…」
そして案の定…
「よぉ、そこの兄ちゃんよォ」
あからさまな呼び掛けを無視して通り過ぎようとする。しかし____
「無視たぁ、なかなかいい度胸してんじゃんかよ。なぁ、珀狼雅魅クンよォッ!!」
途端に、白い上着を着た男が雅魅に殴り掛かった。
後ろからの闇討ちだ。
だが、次の瞬間_______

「あッ……?」

雅魅の姿が消え、男の拳が空を切る。
姿が消えたように見えた雅魅は、しかし、消えたのではない。
“目にも留まらぬ速さでしゃがんだ”のだ。
雅魅はしゃがんだ体制から左足を突きだし、右足を軸としてコンパスのように半円を描く。
「あぁッ!?」
必然、男は足を取られ、バランスを崩し、そのままアスファルトの地面に顎からダイブした。
「あ"がぁ"ぁ"ぁ"ぁ"!?」
「ふん。」
3秒にも満たないこの動きは、まさに神速だった。
顎を抑えて悶絶する男を一瞥し、他の男達を見やる。
皆、「えーっと……」とでも言いたそうな顔をしている。
1人を除いては。
シャッターに寄り掛かったまま、真顔でこちらに視線だけを向ける男が居た。その格好は少し変わっている。
まぁ、赤いジーンズを着ている人はそれだけで変わっているが。すると、その赤いジーンズの男が前へ出てきて
「やぁやぁ、君が噂の狛狼雅魅君だね?いやぁ、今日は運がいい。丁度君を探そうかと思ってたんだ。」
などと白々しい台詞を吐いた。
殴り掛かって来た奴がいるのだから尚のこと。
しかも
「というワケで、ちょっと俺達と来てくれないかな?」
などと、あからさまに「喧嘩しようぜ」と言っているも同然の言葉を放ってきた。
しかし、そこで「はい分かりました」と言うほど雅魅も親切ではない。
当然断りたいが、まずは…
「断る、と言ったら?」
定番のコレを聞いてみる。
「そうだな…俺達としては今ここでやってもいいんだがな?」
これを聞いて雅魅は確信した。
早めに片付けた方がいいな、と。
別に逃げてもいいが、それではまたここにこうして来るだろう。
回答は決まった。
「…わかった。行ってやる。」
「ふ、判断が早くて助かる。…着いてこい。」
そう言って赤いジーンズの男は雅魅に背を向けた。
だが、ふとしたようにこちらを振り返った。
「自己紹介がまだだったな?俺の名前は将坂和也(おざか かずや)。覚えとけ。」
それだけ言って、将坂和也と名乗った男は歩き出した。



将坂に連れられてきたのは、近くにある小さな山だった。
その中にある小さな神社で今、雅魅は5人の男達と相対している。
そして今…
「始めろ!全力でやりあえ!!」
将坂の一声によって1対5の喧嘩がはじまった。
「オラァァァァァッ!!」
「おおおおおおおッ!!」
「うらぁぁぁぁぁッ!!」
「せぁぁぁぁぁぁッ!!」
「うぉぉぉぉぉぉッ!!」
5人一斉に突撃して来る。
しかしそれは、雅魅にとってただの的になるだけだった。
雅魅は姿勢を低く構え、体を右に捻る。そして______
「はッッッ!!!」
ぶんッ!と勢いよく右足で回し蹴りを放った。
そして右から順番に、「ぐふッ!」「えぐッ!」「あぐッ!」「おわッ!」「のわッ!」と、綺麗に吹き飛ぶ。
そのうちの一番右側にいた男、そいつは倒れたまま動かなくなった。
一機撃破。
「ぐっ…!クソ野郎がぁぁぁぁ!!!」
1人、半ばヤケクソ気味になって突っ込んで来る。
雅魅は殴り飛ばそうと、身構えた。
だがしかし、男の顔が笑っているのに気が付く。
「ッ…!」
言い知れぬ危険を直感的に感じ、途端に後ろに跳躍した、その瞬間だった。
「ヒャッハハハ!!!コイツでぇぇぇぇぇ!!」
男な懐からナイフを出し、それを上から下へ降り下ろした。

ザッ____!

雅魅はナイフをギリギリのところで回避した。が、制服の前の部分が縦に裂けていた。
「オイッ!久山ァッ!!」
途端に横から声が飛んできた。声の方を見ると、将坂が不機嫌そうな顔で立っていた。
久山と呼ばれた男は、しかし、そちらに見向きもしない。
将坂が久山に詰め寄る。だか次の瞬間

ヒュンッ____!

「っ……!?」

将坂の顔ギリギリのところをナイフが一閃た。
「…久山、テメェ…何のつもり___」
「るせぇッ!」

ヒュッン____!

「ぐッ……!!」
久山は将坂に向かってもう一度ナイフで一閃する。
今度は将坂も避け切れず、ナイフがかすり、左の頬に赤い線が走った。
「久山…テメェ何しやがる?あぁ?」
「ごちゃごちゃうるせぇんだよアンタはッ!!俺はコイツを殺るッ!そうすりゃ…最強の喧嘩野郎を倒せりゃ、今度は俺がッ……」
「舐めた口聞いてんじゃねぇぞカス野郎がぁッ!!!」

ゴンッ____!!

「あがっ……!!」
将坂は久山の額めがけて頭突きをした。
久山は地面に転がり、頭を押さえてのたうち回る。
「珀狼雅魅クンよ…」
「……何ですか」
「わりぃ。ちっと参戦してくんねぇか?」
将坂は完全にキレていた。
彼の目の前には、久山と同じように、ナイフやら鉄パイプやらを構えた残りの3人の男がいた。
恐らく、全員久山と目的は同じだろう。
「あーあー……珀狼雅魅の名前を出した時から様子が変だと思ったら…コレかよ…」
将坂は心底呆れたふうに言った。
どうやらこの状況からするに、裏切り、または謀反のようなモノらしい。
「珀狼雅魅君」
「雅魅、だけでいい。」
「あそ。んじゃ雅魅君、わりぃけどこっから共闘と行こうや…」
「…了解。」
「行くぞォッ!オラァァァ!!!」
そして、まさかの共闘が始まった。


◇ ◇ ◇

  • No.2 by ノアール狐  2015-08-02 03:36:45 

「でぇぇぁぁぁぁッ!!」

バキンッ___!!

「ひぃ!?」
「とぉぉぉいやぁぁぁぁッ!!」

ズバァンッ___!!

「う、うおおお!?!?」
「チィ!何だコイツ!?有り得ねぇぜ!?ひぃぃ!?」
「そぉぉいッ!!」

ドゴォンッ!!


____雅魅は今、絶賛暴走中である。
先程までの威勢は何処へやら、男3人は、へっぴり腰になって雅魅の攻撃から逃げ回っていた。
一方、追い立てている雅魅は、まるで腹ごなしの運動といった感じだ。
「クソッ………うわぁッ!?」
雅魅の正面であとずさっていた男が、後ろにある社の階段に気付かず、転ぶ。
その隙を見逃すまいと、雅魅は男の前まですぐさま移動し、足を思いっきり上へとあげて、
「ふんッ!」
男に向けて思いっきり振り落とす。

バギッ____!!

振り落とした足は、男に当たらず、木で作られた段状の足場を粉々に粉砕した。
「きぇぇぇぇ!?!?」
男は奇声を上げ、ギリギリのところで回避し、そのまま少し距離を取って雅魅に向き直った。
「てっ…テメェッ!こ、ここ殺す気か!?」
顔を恐怖で真っ青にしながら、裏返った声で叫ぶ。
ナイフを振り回しているような奴が何をほざく。
「別に殺すなんてこと、しないっつーのッ!!」
雅魅は、粉々になった木の木片を手に取ったかと思うと、それを勢い良く男に向かって投げ付けた。
木片は真っ直ぐ男の額に衝突し、男は「ふがッ!?」と声を上げて倒れ、そのまま動かなくなる。
「ふぅ、これで2人目。次は……」
倒れた男が気絶しているのを確認して、雅魅は歩き出す。
そして社の裏手に回ると、そこには___
「?」
___そこには誰も居なかった。
周りを見る。
誰も居ない。
そのまま社の横側に回ってみる。
「……誰も居ない。」
周りを見るが、やはり誰も居ない。
そこで雅魅は、ふと、社の下を見た。
するとどうだろう。反対側から除く2人の男が居た。
「みっけ!」
「「やべッ……!?」」
雅魅はそのまま社の下を通って、一目散に逃げる男2人の肩を掴んで後ろに引っ張る。
「「うおぁッ!?」」
鉄パイプが2つ、カランカランと音を立てて転がる。
同じ声を出して、同じモノを持っていた倒れる2人を見て、雅魅は一瞬、兄弟なのではないかと思った。
だが顔からして違うだろう。
仰向けになっている2人の襟首を掴み、そのまま投げ飛ばした。
「これぞ人間魚雷っ!」
「「何じゃそりゃぁぁぁぁーーー!?!?」」

バゴンッ____!!

男2人は綺麗に社の壁をぶち破り、綺麗に折り重なって気絶した。
「ふぅ…今のでラストか……」
合計4人、気絶し倒れていることを確認し、雅魅は一息付く。が、大事な事を思い出した。
「あ、将坂さん」
そう。将坂のことだ。
共闘宣言をしておきながら、自分は久山と1対1で勝負したいとか言って、雅魅のいる本殿とは別で上にある小さな社の前に行った。
しかし、久山はナイフを持ったままだ。
「今頃どうなっているか分からな___」
い、の一言が出る前に、雅魅は固まった。
そして
「……ぁぁぁあああああああああああ!?!?!?!?!?」
上から“その男”は落ちてきた。

ドスッ!と音を立てて地面に落ちたかと思えば、そのまま“その男”ピクリとも動かない。
一瞬、死んだのかと思ったが、「ぐふぅ…」と息を吐いたのが聞こえて、生きているとわかってホッとした。
そして、“その男”が落ちてきた方を見ると、そこに居たのは______
「はッ!ざまぁ見やがれ!この将坂和也に、そんなナイフで勝てると思ってんじゃねぇぞッ!!」
_____そこに立って居たのは、切り傷だらけの“将坂”だった。
将坂は、斜面に生えている木々を上手く伝いこちらに降りてきた。
「…っと。………………ありゃー……派手にやったなぁ…」
「…」
周りをよく見てみる。
看板は粉砕し、社は半壊。
小さな祠などはめちゃくちゃだ。
と、その時

ウーーン……!
ウーーン……!

パトカーのサイレンが聞こえた。わりと近い。
「しまった……近隣の住人に通報されたかよ。クソが」
「はぁ…警察沙汰なんて嫌だったのに…」
これでは学校どころか、人生にも影響が及んでしまう。
それは流石にマズイ。
雅魅は辺りを探索する。正面から堂々と階段を降りようものなら、すぐに警察に連行されるだろう。
かと言って、他に道という道はない。
斜面を降りようものなら、途中から掴むモノが無くなり、バランスを崩して6、7メートルは落ちる。いろいろとダメになるだろう。

“普通なら”。

「ん?おい、何する気だ雅魅君?」
「決まってる。ここを降りる。正面からなんて行きたくないけど僕には学校があるし。」
「正気か!?途中から掴むモノが無くなって落ちるぞ!来るときに下がどうなってるか見ただろ!?」
そんなことはわかっている。
しかし、雅魅とて怪我をしたいわけではない。
だが、雅魅には勝算?があるのだ。
雅魅には、普通の人間より並外れた体がある。力も、体力も、並ではない。
となると、頑丈さも倍というわけだ。
雅魅は斜面___というかもう小さい崖だ___に生えている木に手を掛ける。
「将坂さん。」
「な、何だ?遺言なんて聞かないからな。」
「違うよ……ただひとつだけ言っておきたいことが」
言っておきたいこと?と、将坂は不思議そうな顔をした。
そんな将坂に向かって、雅魅は言う。
「僕は桁外れだから大丈夫。」
「…」
そして___

「神は僕に微笑んでいる!」

それを言った直後、雅魅は降りていった。
___否。落ちて行った。
将坂は慌てて、雅魅が落ちた下を見る。すると
「ほっ!……それっ!……ふん!」
「あの野郎、なんつー脚力してんだよ……」
そこには、斜面___いや、やっぱり崖___に生えている木々を、3メートルにも及ぶ距離をジャンプして移動する雅魅の姿があった。まるで猫科の動物のように軽やかにジャンプしながら移動している。するとその時___
「とりゃぁッ…!」
___地面へ向けて落ちて行った。
その場所は地面から5、6メートルはありそうな場所だった。もし着地に失敗すれば、足をやるだろう。しかし

スタッ。

「…………ふぅ。よし行こうか。」
「マジかよ……!」
雅魅は華麗に着地した。
それどころか、何事もなくスタスタと歩いて行く。だが、ふと将坂を振り向いた。
「将坂さーん!鞄を忘れたッ!」
雅魅のこの一言で、カッコ良さが台無しになったのは言うまでもない。


◇ ◇ ◇


将坂から、神社に忘れてきた鞄を投げてもらい、雅魅は学校へ向けてダッシュした。
ちなみに、警察には将坂が上手くやっておいてくれるというのだから心強い。
雨は霧雨程度にまで落ち着いている。
制服が裂けているため、人に見られるとマズイ。
そう思った雅魅は、途中、近くの公園のトイレでジャージに着替えてから、また学校へ向けて走り始めた。

そして10分後___

「はぁ…はぁ……ふぅ」
ずっとダッシュし続けたのにも関わらず、少し呼吸が乱れた程度で済んだ雅魅は今、学校の近くの路地裏にいる。
いつもの道に行こうとした結果、路地裏を使う羽目になったのである。
路地裏から出ると、登校中の生徒が何人か見られたため、遅刻は免れたようだった。



下駄箱に靴を入れて上履きを履く。
ジャージ姿のせいか、周りから見られてる気がする。
……いや、周りからの視線はいつも通りか。
そんなことを考えていると、目の前を歩く女子生徒2人と目が合った。
同じクラスの女子だ。名前は忘れたが。
目が合った途端、2人は露骨に嫌そうな顔する。
そして互いにヒソヒソと話し始めた。
それがこちらにまで普通に聞こえてくるのだから、ヒソヒソの意味はないが。
女子生徒の会話は内容は、
「どうしよ~!あの不良と目が合っちゃったよ~!」
「うぅ…目付き悪いよね、珀狼君って……!」
「あ~怖い怖いっ!」
………だそうだった。
…今までずっとそうだった。雅魅を見れば皆、口を揃えて言う。
『不良』、と。
…嫌だった。
『珀狼雅魅は不良』という勝手な思い込みによる噂で、自分に『不良』というレッテルが貼られるのが。
だがもう遅い。皆、自分を見れば不良と言う。
確かに喧嘩で相手を幾度となく叩きのめしてはきた。
しかし、自分から喧嘩しに行ったのではない。が、かと言って、断ればその後が面倒になる。
どにらにせよ、迎え撃つしかなかっただけだ。

……こんな言い訳、ただ見苦しいだけだとわかってはいる。しかし、意見を言わずにはいられない。
いや、意見を言って何が悪い。
周りが何と言おうが、自分は自分を『不良』とは絶対に認めない。
……しかし、自分がそうであるように、周りもそうらしい。
『珀狼雅魅は不良』
このレッテルを剥がすことは無いだろう。劇的な逆転劇がない限り。
皆、雅魅を恐れているのだから。
「……………………どうせみんな同じだ」
そう。同じ。みんな、同じだ。
自分を不良だと、指を指して言う。
一生変わらない、そのレッテルを、ずっと自分に貼ったまま、自分をずっと避け続ける。
ずっと、ずーっと、ずーーっと、ずーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっとだ。


「珀狼くーん!」
「……ん?」
後ろから声が飛んできた。
振り返ると、そこに居たのは
「おはよー!珀狼君!」
「…坂本か…おはよう」
坂本千園(さかもと ちその)。
雅魅のクラスメイトで、雅魅が普段会話をする数少ない人の1人だ。
坂本は腰辺りまである茶色の長いポニーテールを揺らし、首をかしげる。
「…どうかしたの?珀狼君?」
「いや…あの………坂本は、僕のこと不良で目付きが悪くて怖いって、思わない…のか?…べ、別に僕は自分を不良って認めてないし目付きも全然気にしてないけどさっ……」
雅魅は質問して、慌てて取り繕う。
一方の坂本は、『は?』という、頭に『?』マークでも浮かべていそうな顔でキョトンとしている。
やっぱり何でもない、と言おうとしたその時
「……熱でもあるのッ!?変なモノ食べたッ!?誰かに何かされたッ!?」
「………………は?」
返ってきた言葉に、雅魅は頭は真っ白になって立ち尽くす。その間、坂本は「え?大丈夫?」だの「ちょ、おでこ熱くない!?」だのと言って、雅魅の頬や額をペタペタと触っていた。
「は、珀狼君?ボーっとしてるけど大丈夫?微妙に熱あるよ……?」
「ん…?あ、ああ……それよりどう、なんだ?僕のことを、どう思う?」
「え?あ、え?どう…思うか…?…うーん……」
坂本は一人でうんうん唸る。そして___


キーンコーンカーンコーン____


鐘が鳴ると同時に顔を上げ、ニコッと笑うと、坂本は言った。


「ふふ、教えてあーげない!」


◇ ◇ ◇


今は昼休み。
雅魅は屋上に来ていた。
この高校の屋上は解放されていて、生徒達に人気の場所となっている。
転落防止の為のフェンスがあるので、危険はない。その分、少々狭く感じるのだが。
今、ここには雅魅意外誰も居ない。
今朝の雨のせいで、設置されたベンチも、床も、全てびしゃびしゃになっているからだろう。
それに、現在進行形で霧雨が降り続いており、景色を楽しめない。
今日は教室が騒がしい筈だ。
「ふぅ……」
妙な気怠さの中、購買で買ったパンを食べる。
だが食欲がないので、少しかじるだけ。
教室に入った時からこの調子で、顔色も悪いらしく、坂本に「昼休みに保健室行くよ!」と言われた。だが、面倒だったが為に、普段は来たりしない屋上へとやって来たら、案の定人がいなかったので今に至る。
「何であいつは……はぁ…」
後が続かず、代わりに溜め息が出た。
フェンスに寄り掛かると、ギィィと軋む音がして、同時に、首に水滴が落ちる。
その冷たさが妙に心地いい。
「あぁ~……風邪かなぁ……」

キィィ……

「ん?」
扉が開く、軋む音が聞こえ、扉の方に目を向ける。
するとそこには____

「あー!!いたいた!もう、保健室行くよって言ったでしょー!?」

____お節介女子、坂本が居た。

  • No.3 by ノアール狐  2015-08-04 03:55:42 






「先生!病人を連行してきました!」
ツパァン!と保健室のドアを勢い良く開けた坂本は、どこかの兵士の如く声を張り上げた。が、しかし、そのあとの白衣を着た先生の言葉にて見事に撃沈した。
「__坂本さーん、ここは保健室なのでお静かにねー」
「はぃ……」
「アホだな。」
「アホ!?今アホって言った!?ねぇ!?」
注意した直後にまた騒ぎ出した坂本をもう無視し、白衣を着た先生こと、森桐澤瑠璃(きりさわ るり)は雅魅の方に体温計を持って来た。所々が寝癖でぴょんひょん跳ねてる短い髪は、まるで寝起き。縁の赤い眼鏡を掛けている彼女は確か年齢は20代だと聞くが、見た目は17、8の学生でも通用しそうだ。
桐澤は、その綺麗でボーイッシュな整った顔を雅魅に近づける。
反射的に後ろに下がる雅魅に、口許を綻ばせた。
「君は…珀狼雅魅君だね。ふふ、やっぱり最強の喧嘩男子クンでもさすがに体調不良には叶わないか」
「……そうですね。これでもにんなんで風邪くらい引くんじゃないですか?」
「ふむそうだね!うんうん!やっぱり君も風邪は引く!当たり前だ。ふふふ」
何やらテンションが高い桐澤に、雅魅は心配になって、いつの間にか静かになった坂本に声を掛けた。
「なぁ坂本。この人、マッドサイエンティストじゃないよな?」
「さー…どうだろ……」
「ちょ、何言ってんの!!大丈夫だって!そんなにマッドじゃないよ!」
雅魅と坂本はギョッとした。
『そんなにマッドじゃない』=『一応マッド』
つまり
「「マッドサイエンティストなんですね。」」
二人の指摘が図星だったためか、桐澤は「ぐっ…!」と言って黙りこくった。そして
「…………………さて?何の用かな君達!」
「無理矢理ずらした!?」
「ちょ!?」
開き直った桐澤。
何か凄く不安になってきた………。
「だ、大丈夫大丈夫~!学校じゃ別に何もしないから!っていうか校長からの圧力が……」
「………圧力が無かったら?」
「もちろん自由に研究するさ!」
「何を!?」と坂本が鋭く突っ込むが、それを無視して二人をソファに座らせた。
………本当に大丈夫なんだろうか…
「まぁ、それはいいとして、雅魅君が風邪気味なんだろう?」
「え?あ、はい。良くわかりましたね?」
坂本か勝手に答え、そう問うと、桐澤は「ふっふっふっ!」と得意気に笑い、言った。
「さっき風邪引いてること前提で話をしたら雅魅君は否定しなかった!よって風邪だ!」
「そういえば………誘導尋問の要領か…」
雅魅がひとりでに納得していると、目の前に体温計が差し出された。すかさずそれを受け取り、脇の下に挟む。
「は~い。お熱ぴっぴしましょうねぇ~」
「何だそれ……僕は子供か…」
「!?」
雅魅が文句を言った瞬間、桐澤が目を見開いた。
何か変なことを言ったのかと心配になり、隣の坂本に問う。
「僕は今何かおかしなことを言ったか?」
「え?いや、別…にゃぁッ!?」
突然、桐澤が坂本の横から、坂本の前を通過して身をのりだした。
「ねぇ雅魅君!!!キミ、自分のこと『僕』って呼んでるの!!!?」
「うわッ……!?えッ?あ、はい」
「はぁぁ~!変わらないなぁ……」
「え?」
その瞬間、雅魅は意味が分からず固まった。
変わらない…?一体どういう意味なのだろうか。
桐澤は、しまった、という顔をして固まっている。
「あの…先生、それはどういう……」
「えッ……?あ、いや…別になんでもないよ……?うん」
坂本の質問に焦る桐澤。
そして無理矢理笑顔を作って言った。
「ほ、ほら!一年生の時から変わらないなぁ~、って思って!あは、あはははははは!」
「あ、そうなんですか。」
「…」
坂本はアホだからすぐに納得したらしい。
でも、雅魅は納得できなかった。
知ってるけれど忘れて思い出せないといった感じの感覚だ。
あれは、そう。優しくて、でもちょっと怖くて、でも心地良かった………あれは……
と、その時___


ピピピピッ___

ピピピピッ___


「っと、そういえば熱計ってる最中だったね!さ、みせてごらん!」
「ぇ?あ、はい…」
独自の思考から強制的に引き戻された雅魅は、言われた通りに体温計を見せた。
すると、桐澤の表情が曇った。
「あちゃ~……マズイなぁ……ホレ」
何度だったか、聞く前に見せられる。
そこに表示してあった温度は…
「………38度ピッタリ…」
「…マジか…」
「ん~……まぁ、おめでとう!早退できるよ!」


◇ ◇ ◇


雨上がりの青空の下、雅魅は今、下校中で、重い足を動かしている。
あれからすんなり下校した雅魅は、しかし、重い体とは裏腹に、早く帰れることを少し嬉しく思った。
そして、2つある門のうちのひとつ。
雅魅の家の方角である、東門を出た___のは良かった。良かったのだが……
「……坂本、お前何で付いてきた?」
「え?いや、何でって………38度も熱がある人をひとりで行かせるワケないでしょ?心配だよ。だから付いてきたんだよ?」
雅魅は面喰らってキョトンとなった。
何故、こうも『当たり前』のように言うのだろうか。
坂本は何故、僕に対してこうも熱心になってくれるのだろうか?と。
そんな風に思っていることを知ってか知らずか、坂本は「それに」と言って付け足した。
「珀狼君が喧嘩に巻き込まれないように監視しなきゃ。」
「…言えてる」
雅魅は観念したように、苦笑して言った。不思議と、悪い気はしなかった。



坂本と頻繁に話をするようになったのは、つい1、2ヵ月ほど前からだった。
坂本はこれでも生徒会副会長をやっており、様々な仕事をこなしている。
ある日、生徒会で使うのであろう大量の資料をたったひとりで運んでいたところを、雅魅が見かねて手伝ったのがきっかけだった。


『…ちょと貸してみな。』
『えッ!?』
最初の、坂本が驚いた顔は今でも忘れられない。それほど驚いていた。
『えと……あの……』
『……生徒会室までだろ?一人じゃ大変そうだし、それに危なっかしい。運んでやるよ。』
僕が言うと、坂本は少し戸惑ったような表情になった。
当たり前だ。不良というレッテルを貼られている自分が、人助けしているのだから。
しかし、それでも坂本は
『え?あ………ありがとう…!』
と、笑顔でお礼を言った。
『おう。さっさと運ぼう。他の奴らに見られたら大変だ。』
『え?』
この頃からアホなところは変わっておらず、意味を理解していなかった。
『いや、ほら。僕、不良とか言われてるから、さ……』
そこでやっと気付いたらしく、『あっ』と声を出してうつ向く。
『……………………………じゃないよ』
『ん?』
僕には何を言ったのか分からなかった。
坂本は、そのまま微笑んで『何でもない!』と言って、先に行ってしまった。
……あの時坂本が何と言ったのか、未だにわからないままだ。




「なぁ、坂本」
「ん?何?」
「……………やっぱり、いい。」
「えー!何それ!気になる!ね?何?教えてよ~!」
相変わらずアホの坂本を置いて、雅魅はひとりでそそくさと早歩きになる。しかし___

「うッ…!?」

「え、ちょ!?珀狼君!?」
急に目の前が暗くなっていき、体から力が抜ける。
体を支えていられず、その場に膝を着いた。
遠目から見ると、厨ニ病っぽい姿勢だろうが、これは真面目な方だ。
少しして、頭の圧迫感に耐えながら立ち上がる。
フラフラしてまた倒れそうだ…
「だ、だいじょッ!?え?えぇ!?だだだだだ大丈夫!?!?!?」
「大丈夫だからちょっと静かにしてくれよ…頭に響く…」
「あ、ごめん……でも、本当に大丈夫?」
再び大丈夫だと言って、突然の酷い頭痛に耐える。
フラフラの足に力を込めてしっかり立ち上がり、坂本の方を振り返った。
「……もう少しで…僕の家に着く。」
「え……?あ、あぁ、うん。」
心配そうな坂本をよそに、雅魅は歩みを進める。
目の前に緩やかな坂が見えてきた。
あともうすこしで雅魅の家だ。
「そこの坂を下ったところが、僕の家だ。坂本は___」

と、そこまでいいかけたところで、

「まだだよ。」
「は?」
ということになった。
まだ、とは何のことだろうか?
雅魅には分からなかった。
「まさかここからひとりでいいとか言わないでしょうねー?」
「……言う。」
「ダメ。」
キッパリと言われて、雅魅はポカンとなる。
そんな雅魅に、坂本は
「だって、そんなフラフラなのに…坂で転んだりしたらどうするの!」

と言う。それに対して

「どれだけ過保護なんだ!」
雅魅がそう言うと、坂本は突然、シュンとなった。
「…ごめん」
「あ、いや…坂本?」
坂本はうつ向き、悲しそうな表情をする。

その顔は、今にも泣き出しそうで____

「…あぁもう……わかったよ…ついてきたいならついてこい…」
仕方ないとばかりにそう言った。

____しかし雅魅は自分の甘さを後悔することとなる。

「え?本当に?やったー!!」
「坂本!?おまッ…!演技かよ…!」
雅魅は呆れて溜め息を吐いた。
そこまでして一体何がしたいのだろうか。
坂本は笑顔で雅魅の方を見ると、坂の先を指差して言った。
「私の家はね、すぐそこなんだ~!」

………なるほど。
わかったぞ。
雅魅は坂本を半目で睨み、言った。
「…お前、僕と家が近いこと分かっててついてきたいんだろ?で、家が近いことを僕に知らせるために。」
「ま、まぁ、それもあるよ?…いや、それもあるけど!!あるけどね!?珀狼君が心配なのは本当だよ…?」
「…わかってるよそんなの……」
今までの行動を見れば、嫌でも分かる。
ただ、わからないことがひとつ。それは
「……何の目的があるんだ?」
そう。目的。
家が近いことを知ったところで、何になるのだろうか?
坂本は人差し指を顎に当て、暫し考える仕草をする。
そして、答えを出した。

「教えてあーげない!ふふ!」

とても楽しそうに言う坂本を、見つめて雅魅は言う。
「ふーん。」
とだけ。
すると案の定、「え?何その反応!面白くな~い!」などとむくれたのだった。


◇ ◇ ◇


「はぁぁぁぁ~~…………」
盛大に息を吐いて、ベッドにin、ではなくベッドにドンする。
つまり、ベッドに倒れ込んだ。

家の前まで来ると今度は、坂本は自分も家に入ると言い出したのだ。
曰く
「やっぱり珀狼君ひとりじゃ危ないよ!今日は私も一緒にいる!」
というのだ。
もちろん、全力で拒否し、帰らせた。
坂本を追い返した後、家に入ると、安心感のせいか、急にドッと疲れが襲ってきたので、ベッドにドン、もとい倒れ込んだのだ。
そして今に至る。
頭痛が酷く、気分が悪い。

今は7月の初め。
梅雨が明けて本格的に暑くなる季節だ。
こんな時期に風邪など、不幸意外の何者でもない。
だが、どう思ったところで結果は変わらない。
少しでも良くなるため、雅魅は部屋の茶箪笥に入っている風邪薬を飲むことにした。
だが____
「…ぐ……ぅ……………動か…ない…?」
雅魅の体は、まるで石にでもなったかのように動かなかった。

___甘かった。

強がらずに坂本と一緒に居れば良かった。
そんな後悔が滲み出るが、もう遅い。
頭がボンヤリ霧掛かってくる。

____まずい。

直感的に感じた。
このまま意識を保っていなければ、手遅れになる可能性がある。
だが、その半面、なぜこうも酷くなるのか疑問に思った。
たかが風邪で、ここまでなるだろうか?

そこまで考えて、ふと、とあるモノが思い浮かんだ。

____神社。

今朝、ボロボロに破壊してしまった神社だ。

____ああ、あれのせいか。

思考がうまく働かず、そんな風に思ってしまう。『天罰』なんだ、と。

意識が沈む。
黒い闇の中、底無し沼にでも嵌まったかのように…
ゆっくり、じんわりと…


____そして雅魅の意識はブツリと途絶えた。

  • No.4 by ノアール狐  2015-08-11 08:53:05 

【ニ幕】呪ってやる!(物理的)

_________________



……夢だ。

夢だと認識できるほど自分の意識がハッキリした夢だ。
目の前にはまるでテレビのように雅魅の記憶と思われるシーンが映っている。
だが、何か足りない気分になる……

そんなビジョンが、幼少期から最近のモノまでよりどりみどり。

もしかして、これが___


「『走馬灯』、とでも思いました?」
「うあぁッ!?」

パリンッ___


一体、何が起こったのか、雅魅は理解不能だった。
目の前に、白い髪の女の子が上から逆さまで現れて、目の前に展開していたビジョンがガラスの如く砕けて散った。

「ビックリしてくれたみたいで何より。」
再び、白い髪の女の子が目の前に現れた。
今度は普通に上から飛び降りて来たらしい。
………どこから?
「聞いてる?」
女の子は巫女服のように、白と赤だけの着物を来ている。
見た目からして、年齢は14、5歳だろう。
とても可憐だ。
「あの…本当に聞いてる?」
「まぁ、一応」
それを聞いて、白い髪の女の子は「ふむ」と頷き、佇まいを正した。
「コホン……突然のことで驚いていることでしょう。」
「まぁ…それなりに?」
「ちょっと黙って聞いてください。」
「はい…。」
普通に答えたら怒られたので黙っておくことにした。
「よく聞いてくださいよ?私の名前は千風(ちかぜ)。貴方が壊した神社の神様なのです!!」
今までの威厳はどこへやら、「えっへん!」などと、無い胸を張る。雅魅からすればペッタンコの壁だ。
「……ちょっと」
ペッタンコの自称神様、千風がこちらをジトっと睨んでくる。
「何でしょうか神様」
「あなたね、神様に向かって無い胸とかペッタンコとか失礼極まりないよ!?」
驚いたことに、この神様は心を読めるらしい。
でもまぁ、よくあるありきたりな話だ。
「事実でしょう?」
「!? 神様に向かってその態度は何ですかぁ!?ってゆうかあなた、私の神社ぶっ壊しておいて謝罪とかしようと思わないんですかぁッ!?」
「ごめん」
「ご、ごめん!?軽すぎませんか!?!?」
…雅魅は内心、少し楽しんでいた。
ちょっとイジれば面白い反応を返してくれるから。
例えそれが神様相手だろうが変わらない。
多分、それを悟られたのだろう。
自称神様の千風は、悔しそうに目に涙を浮かべて、キッと雅魅を睨む。相当にご立腹らしい。
だが、その怒った顔を見ると、ふいに懐かしい感覚がした。
保健室で桐澤に感じたモノと同じ感覚が…
そんな風に思っていると、千風が口を開いた。
「………ってやる…」
「え?」
「呪ってやる!」

・・・

「は?」
呪う?誰を?……僕をか。
雅魅は冷静に判断する。
慌てたりなどしない。とゆうか、慌てるやつなんて居るだろうか。
夢と分かるほど夢の中で、呪うなどと言われても、文字通り現実味がない。

そんな雅魅の思考をまた読み取ったのか、千風は、今度は自身の周りに黒いダークオーラを展開していた。
神様って凄い。
しかし、そんな思考を知ってか知らずか___多分知ってるだろうが___、千風は頬を膨らませ、ムスッとした顔で雅魅を睨んでいる。
アホみたいな顔だな、と心の中で笑う。
それがいけなかったのだろう。
千風の怒りは頂点を限界突破したらしく、凄まじいダークオーラを放ちながら___
「反省するまで呪い掛けるからッッ!!」
と言った。
「呪いって___」
何だ、と問う間もなく、千風が何やらブツブツと言い始めた。

「『我、月読命(つくよみ)の名を継ぎし神、千風が命ず。森羅万象の理(ことわり)を破壊せしめる力を以て、彼の罪人(かのつみびと)に制裁を下せ。』」
千風がそういうのと同時に、雅魅の体に異変が起こった。
「……ぐぅ!?…熱ッ……!?」
ここに来て、初めて焦りが出てきた。
感覚がリアルなのだ。
まるで現実のように。
そして理解する。これは、“夢であり現実”なのだと。
「一に、心」
「ぐぅぅッッッ!!!!!」
心臓がドクンッ、と大きく鼓動し始める。
苦しさのあまり、手で左胸を押さえつけるが意味を成さない。
そんな雅魅を見る千風は、どこか悲しそうだが、心配する言葉の代わりに紡ぐのは次の言葉のみ。
「ニに、技」
「ふぐぁぁッ…!?!?」
次に雅魅を襲うのは、急激な目眩と脱力。
体を支えていられなくなり、その場に倒れる。
地面?は大理石で出来たかのような感触でヒンヤリしている。
「三に、体。」
千風言い終わると、雅魅は全身を焼かれるような熱さにのたうちまわる。
千風の前に、青、緑、赤の炎が入った3つのガラス玉が浮かんでいた。サイズは片手に軽く収まる程度。
千風はおもむろに、青い炎の入ったガラス玉を手に取る。
「…これは、お返しします。」
そう言って、未だ苦しみ続けている雅魅の元へ歩いて行くと、ガラス玉を胸の上に近付けた。
すると、ガラス玉がまるで吸い寄せられるかのように雅魅の胸へと沈んで行った。
途端、心臓の鼓動が元に戻り、苦しさが消えた。
「はぁ…はぁ……うぐぅぅ…」
「…」
しかし、体は未だ熱く、力も入らない。
苦しみ続ける雅魅を一瞥し、千風は残る2つの炎が入ったガラス玉をそれぞれ手に取った。

「…ごめんなさい」

そう言うと、両手を高く掲げた。
そして___

「___滅ッ…!!」

パリンッ____!!


「うぐぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”ッッッ!?!?!?!?!?!?」


____千風か2つのガラス玉を割ると、ガラス玉は光となって消えた。
その途端、雅魅は言い表すことが出来ないような痛みに襲われ、断末魔のような叫びをあげた。

最も簡単に言えば、“魂を傷付けられた痛み”とでも言おうか。
体は焼けるような熱さ以外、変化は無い。
身体的な痛みとはまた別の、違う痛み。正に“魂が傷付いた痛み”だった。


……意識が薄れる。
首を何とか動かし、千風を見ると、申し訳なさそうな、悲しそうな顔をして笑っていた。
「……おやすみ、雅魅。」
その言葉を聞いたのを最後に、雅魅の意識は途切れた。


◇ ◇ ◇


ピピピピッ____

ピピピピッ____

朝___
まだ覚醒しきらない寝ぼけた頭に目覚まし時計の不愉快な音が響く。

ピピピピッ___

ピピピピッ___

手探りで時計を探すが見付からない。
どこ行った………

ピピピピッ___

ピピピピッ___

「ん……んん…ぐ…」

ピピピピピピピピピピピピピピ___

「……………チッ」
雅魅は遂に観念し、舌打ちをしてのっそりと起き上がる。
しかし、そこでふと、不可解な事に気付いた。
着ている制服が、普段の2、3倍大きいのだ。
「は?大きさ…………………………………………………………………!?」
次は声がおかしい!?
「あー、あー……あーいーうー…えぇー!?」
明らかにおかしい。まるで女の子のようだ。
そして、雅魅の脳裏にあの言葉がリピートされる。

『反省するまで呪い掛けるからッッ!!』

そう、“呪い”。
「…ッ!!!」
未だなり続ける目覚まし時計を気にする余裕もなく、半ば転げ落ちるようにしてベッドから降り、姿見の前に行く。
雅魅が写っているであろう鏡を見る。
そこには____

「・ ・ ・」

____血の気がサァーっと引いて行く。
鳥肌が立ち、呆然として立ち尽くした。


そこに写っていたのは、“白い髪の華奢な女の子”だった。

  • No.6 by 残酷少年レイン  2015-08-11 15:03:51 

りりめろ辞めなよ。

  • No.7 by りりめろ@ゆらゆらはりりめろのあこがれ  2015-08-11 15:05:55 

は?何が?あんたにいわれるすじあいないんだけど?

  • No.8 by 残酷少年レイン  2015-08-11 15:14:23 

ノアールが可哀想じゃん。

  • No.9 by 匿名  2015-08-11 15:16:29 

ここはノアールさんが小説を書いてるとこ。言い合いならトピ移動してください。

  • No.10 by 匿名さん  2015-08-14 02:20:15 

このーー


小説トピックをーーー


現在を以てーーーーー



閉鎖することをーーーーー



宣言致しまーーーーーーす

  • No.11 by 林檎  2015-08-14 02:22:23 

え…?ここって、ノアールsがとても大事にされてたトピですよね…?

  • No.12 by アマツ  2015-08-14 02:27:04 

しったことか!

  • No.13 by アマツ  2015-08-14 02:29:06 

ここに記された物語は、一旦消す。
そして、また別の形で創造する。
これはアマツが決めたこと。
アマツが考えて決定した。

  • No.14 by アマツ  2015-08-14 02:30:42 

アマツは…



僕は、この下らない小説紛いの遊びを止める!

  • No.15 by YUKI  2015-08-14 02:32:23 

もったいないけど、こんなに荒らされてはしかたないね。
新たに書いてくれるのを待ってるよ。稲荷好きさん

  • No.16 by ノアール狐  2015-08-14 02:35:48 

どうせ誰も見てないんだから、意味ないさ。

代わりに僕は、これからしっかり学んで、努力して、夢に手を伸ばす。


どんなものでも、『小説』は書くからね!

本になるか、WEBになるか。
でも、絶対に、ちゃんとした『小説』書くから。


今、決めた。

今更、決めた。


けど、これは僕が決めたこと。
絶対、小説っていう小説を書いてみせるよ!

たとえ僕がどんなに疎まれてても、僕を嫌って邪魔者扱いするような人も黙らせるような『小説』を書けるようになってやる!!


それが、僕の新しい夢だよ!

  • No.17 by ノアール狐  2015-08-14 02:39:16 

これ見てる人、しっかり目に焼き付けておいてよね!!

僕はノアール狐であり、玉藻前であり、アマツである。

僕はいつか、沢山の人が面白いって言うような物語を書いてやるッ!!

  • No.18 by 林檎  2015-08-14 13:54:00 

期待してますよ!(*´罒`* )

  • No.19 by 匿名さん  2015-08-14 18:15:32 

ニートフラグ乙。
だいたいチャットでこう言うヤツはすぐに諦めてニートになる。

できるわけないよ。

  • No.20 by 匿名  2015-08-14 20:41:53 

>19
修造の前でも同じことが言えるか?

  • No.21 by 林檎  2015-08-14 22:19:53 

諦めるなァァァ!!!お前ならまだ出来るぞ!?!?←


失礼しました。w

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