(アニメ/マンガ)BL・GL・NL(オリジナル) 小説集

(アニメ/マンガ)BL・GL・NL(オリジナル) 小説集

ブラック  2014-10-18 07:11:51 
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オリジナルや、版権の小説を書くトピ。

小説の練習でもあるので、指摘やアドバイスを暮れたら嬉しいです。
小説集なのでジャンルは色々あると思います。
リクエストなどくれたら泣いて喜びます!
(あ、但し、他の方が不快になるようなリクエストは止めて下さいね)

荒しや成りすましがいたら教えてくれるとありがたいです。

更新のスピードは遅くなるかもしれませんが、必ず更新します!!

では、まずはリクエスト募集です!
スレ番号5まで上げてもリクエストが無ければ、書いて行きますね!!

・版権
(K/カゲプロ/デュラララ!!/リボーン/ボカロ/妖狐×僕SS/とあるシリーズ(アニメに出てくるキャラのみ))
版権で書けるのはこのぐらいです。
後々他の作品も書けるようにしていこうと思います。

・オリジナル
(兄弟、姉妹、兄妹(姉弟)系、学園系、擬人化系)
上のを得意としています。
最近では刑事ものを書こうと思っています。

版権、オリジナルの合作でも良いですよ!

取り合えず、版権かオリジナルまたは合作の中から選んでジャンル(学園系など)を選び、CPなどを書いてください。

リクエスト書き方(参考にしてください)

・版権
(カゲプロ)
・メカクシ団の学園もの
・カノキド(NL)

こんな風に書いてくれたら見やすいかな、と思います。

ではリクエスト募集中!

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  • No.101 by ブラック  2016-02-03 04:16:56 

インフルエンザ(鏡音リン KAITO)

 リンがインフルエンザになった。ミクやレン、ルカやメイコは今日旅行に行っている。勿論俺とリンも一緒に行くはずだった。けれど、インフルエンザのリンを置いて行く訳にはいかず、俺は自ら残ってリンの看病をする。


「ごっ、ごめん、ね……」


 小さい声で謝るリン。その頬を撫でて笑顔を作り、安堵させる。


「リンちゃんが謝ることないよ」


 俺の中では寧ろラッキーだと思っている。リンと二人きりになりたいと思っていたのだから余計にだ。

 そんなことを口には出来ず、なんでもない「優しいお兄ちゃん」を演じつつ、腹の底から湧き上がる欲望を押さえつける。


「ゆっくり寝て、早く元気になろう」

「うん」


 双子でも、レンが髪を下ろしても、リンを見つけることが出来る。

 それだけリンが好きなんだ。まだ言葉にはしていないけれど、いつか、できたら良いと思っている。


 少しして眠ったようで、気づかれないようにそっと唇を落とした。

  • No.102 by ブラック  2016-03-12 02:33:57 

歳の差(BML)

「……は?」

 思わず零れた気の抜けた言葉。どこから突っ込んで良いのか分からない。いや、待てよ、どうしてそう思ったのだろう。
 俺の聞き間違いじゃないだろうか。きっとそうだ、聞き間違いだ。

「悪い、もう一度、言ってくれないか?」

 苦笑いでもう一度言ってくれないかと尋ねると、弟――柚は俯いて真っ赤にしていた顔を、更に赤く染め小さな声で「好き」と呟いた。……冗談、だろ? 
 同性に告白なんてされた事は一切合切ない。逆に告白じゃないけれど兄ちゃんに好きだという事がバレた事はあった。あのとき兄ちゃん、こんな気持ちだったのか?

「なぁ、柚。冗談だよ、な? 俺を脅かそうとしてるだけで……」

 そうであって欲しかった。俺みたいに間違った方向に進まず、いや結構間違った趣味はしているけれども。俺みたいな自分の兄弟を好きになるなんて事にはなって欲しくなかった。
 まだ、同じクラスの超イケメンや、イケメン俳優やホストに惚れた、って言うのなら理解は出来た。
 男としての仕草がカッコイイとか、声が渋くて良いとか、性格が男らしくて良いとかなら、そうかの一言で終る事ができたんだが。よりにもよって俺が好き、って言われるとは予測すらしてもいなかった。

「冗談でこんな事、言うかよ……」

 更に赤く染まって、本気なのが伝わる。けれども、同性なのもあり、兄弟だというのもあるのだが、そこは俺が言ってはいけないところだろう。俺だって同じだったのだから。
 だけど、俺と兄ちゃんはそこまで歳の差はなかった。兄ちゃんが21歳の時、俺は16歳だった。5歳差。俺と柚の歳の差は16歳差。歳が離れ過ぎている。

「柚、よく考えろ。今俺は32歳だ。歳の差がありすぎるだろ」
「んなの、関係ない。16でも義務教育は終ってる」
「そうだけど。俺を好きになったって、俺は凄くカッコイイ俳優に比べると全然だからな?」
「んな事じゃない! 兄貴しか、居ないんだよ……。俺の事分かってる奴」

 そりゃ、自分から俺、可愛いものとか大好きだ! って言わない限り、誰も分からない。一人友人が居ただろう、お前の趣味を知っている友人が! 
 
「お前の友人は?」
「アイツは! 訳の分かんないモン、いっぱい使おうってしてくるから、やだ」

 我儘な奴だな、お前。その友人も友人だけど。

「結局柚は俺と付き合いたいのか? それとも兄弟の仲で居たいのか?」

 少し間を置いてから柚が口を開いた。「……付き合いたい」と。付き合うという事は何をするのかも、分かって言っているのか気になった。
 口では分かってると言うだろう。けれど、実際、本当に分かってはいないだろうから、俯いている顔を無理矢理上に向かせた。
 そして、何かを言わす前に口を塞いだ。そのまま舌をねじ込んで酸素を奪っていく。

「付き合うって事は、こういう事もするって分かってるのか?」

 尋ねながら、柚を押した倒す。一瞬驚きながらも俺に応えようとするのでため息を吐く。

「……分かったよ」

 自分に言い聞かせるような一言だった。それでも良かっただろう。
 どうせ俺の弟だ。どうなったって、俺の責任なんだろう。だったら、そういう風に転がるまでだ。

  • No.103 by ブラック  2016-03-22 18:17:06 

ポリスリンちゃんとイカサマ師リンちゃん(ひとしずくP×やま△楽曲より)

「――ところで、この間の勝負あれ、イカサマしましたよね?」

 ポリスの格好をしているリンが紅茶を一口飲んで、口を開く。

「そういうのは、勝負の最中に言うものよ」

 同じく紅茶を飲んで返答したイカサマ師のリン。優雅にティータイムをしていたのだが、急にポリスリン略してポリリンが3日前の勝負にイカサマを使われたことを思い出したのだ。通常ならばイカサマを使った勝負は違法となり、手首に手錠がはめられるのだが、捕まえたくても出来ない時はあるもんだとポリリンは最近思うようになった。

「煩いわ、マフィアレンがぎゃぁぎゃぁ豪華客船で騒ぐからそれで忙しかったのよ」
「あら? 忙しいのに豪華客船のカジノで遊んでいたの?」
「うっ……」 

 言葉に詰まるポリリン。実際、サボっていたのだから何も言い返せない。痛いところを突かれ、思わずカップを落としてしまい、部屋内でガラスの割れた音が響く。何事かとさっきまで喧嘩をしていたイカサマレンとマフィアレンが、こちらを振り向く。

「あらあら、カップを落としてしまう程知られてほしくなかった事かしら?」

 うふふ、なんて妖艶な笑みを浮かべながらイカサマリンは紅茶を口に流す。どこぞのお嬢様のように。その動作がポリリンには気に食わなかったのか、ばしんっ、とイカサマリンの頬を叩き上げ「貴女がイカサマさえしなければ良かった事でしょう!?」と。
 
「何故?」
「私はっ……私は!」

 はいはい、そこまで。手を叩いて中断の声がする。イカサマリンの対イカサマレンが発したものだ。その様子をマフィアレンは気に食わない顔で見ていたが、口出しすることでもないので何も言わず黙っている。

「つーか、お前がサボってた理由さ、コイツ目当てだろ?」

 イカサマレンがイカサマリンを指差す。その瞬間ポリリンは真っ赤になり目を彷徨わせては、俯いている。

「コイツって失礼ね」
「はいはい、すみませんでした。リン」
「もう貴方って……。ポリリン、私と貴女ってどういう関係?」
「いっ、イカサマ師とポリス……」
「そっちじゃねぇよ、バカバカポリス」

 ばしんっ、とマフィアレンがポリリンの背中を叩く。「バカって何よ! バカって! レンもバカじゃない!」「うるせ!」何てやり取りが続き、暫らくして恥ずかしそうに「こ、恋人……」と告げた。

「そうね。私達は同じ豪華客船に居た。私とレンはカジノでイカサマをする為に。貴女とマフィアレンはまた違う理由で、同じ場所に居る事を知っていたなら恋人のことは気になるわよ、ね?」

 イカサマリンは優しく笑う。そう、優しく、ポリリンとマフィアレンに微笑む。

「貴方もレンが気になってカジノまで来ていたんでしょう?」

 マフィアレンは目を逸らす。違うというように。けれど否定などできずそれをイカサマレンにニヤニヤされ、マフィアレンは部屋を出て行った。後を追うようにイカサマレンも部屋を出る。
 二人きりで残され、イカサマリンに頭を撫でられたポリリンはイカサマ師を捕まえれない理由を分かった気がした。

 ――だって、好きだから。

 二人きりの部屋で軽く口付けをしていたのは、イカサマリンとポリスリンしか知らない話。

  • No.104 by ブラック  2016-03-24 07:09:06 

雨宿り(雨→陽炎)

 守りたいと思ったから、だからおいらはこのままで居る。おいらが「男」で居れば、アイツは「女」で居ることができる。それなら、おいらが「男」であろうが構いやしない。

「そんなところで何をしているの?」

 雨。文字通り、空から降る冷たい雨の中、おいらは傘を持たずに外に出たため、急な雨に対応が出来ず、公園の屋根付きベンチに腰掛けていると、和傘を差して陽炎はおいらに微笑む。数多の戦の地に立ったような、そんな感じが陽炎からする。

「何って、見たとおり雨宿りに決まってんだろ」

 杯を持つような仕草で陽炎の問いに答える。笑顔は作れているだろうか。普段通りのおいらで居られているだろうか。ここ最近、そんな事ばかりを思ってしまう。その所為で鳳月に心配をかけたこともあったような、なかったような……。

「雨宿りにしては随分味気ないものね」
「そーだな、せめて酒でもあればなぁ」
「あら、貴女飲めたかしら?」
「……一応、それなりに」

 今、おいらのことを「女」として扱ったような気がしたが、気にしない方が良いのだろう。

「陽炎ってさ」

 不意に口から出た言葉。聞きたくて、でも怖くて聞けない言葉。だからこれ以上喋ってほしくない。なのに、一度開いたら止まる事を知らないのか、ぽつりぽつりと言葉を紡いでいく。

「対がいねぇのに、何で……」
「平気そうなのか、そんなところ?」
「お、おう」

 そうねぇ……。陽炎は暫らく考えるような素振りを見せてから和傘を畳み、おいらの横に腰掛けた。肩と肩が触れ合うぐらいの距離。どう考えても近すぎるだろうという距離。

「寂しくないって言えば嘘になるけど……」
「けど?」
「今は私を一生懸命に守ってくれる『殿方』が居てくれるから平気」
「……へ、へー」

 一瞬おいらの事かな、何て思ったけどおいらは陽炎を守った記憶もないし、第一「殿方」じゃない。おいらがしているのはただの「ごっこ遊び」にしか過ぎない。どれだけ男らしく振舞おうと、おいらの性別は「女」であることには変わりない。だから、陽炎がいう「殿方」が誰なのか気になってしまう。鶴か、鳳……はたまた時雨、藍鉄……。一体、誰なのだろうかという疑問と同時に浮かび上がるのは嫉妬心だ。

「馬鹿ね、貴女顔に出すぎ。勿論、貴方の事よ」

 耳元で陽炎の声がする。何を言われたのか、未だに理解できないがおいらが聞いた言葉は間違いじゃないだろうか。間違いじゃなければ良いのに。

「――雨」

 名前を呼ばれたので陽炎の方に振り向くと、陽炎は空を見上げ「止んだみたい」と口に出す。あ、そっちかと滅多に名前を陽炎から呼ばれないので、期待したおいらが馬鹿みたいだと思い、「そ、そうだな! じゃ、雨も止んだし雨宿りも終りだな!」と不自然に立ってしまう。気楽に、いつも通りに振舞おうとしていると、また「雨」と呼ばれる。今度は名前を呼ばれたのだろう。陽炎を見つめていると屈めと言うので言うとおりに屈む。

「折角雨も上がったんだから、雨上がりのキス、しましょう。雨殿」

 耳元で囁かれた言葉。顔が次第に熱くなり、恥ずかしくなる。言葉に詰まっていると陽炎の両手がおいらの頬を包んで「殿方からキスをされてみたいの」何て言ってくる。そんな事言われたら、するしかないじゃないか。恥ずかしいけれど、要望に応えようと試みた慣れないキスだった。そんなキスでも陽炎は満足したようで「ありがとう」と微笑み、和傘を持って公園を後にした。

「柔らけぇ……」

 そっとおいらの唇を触ってみた。まだ熱は残っている。陽炎が喜ぶなら、おいらは一生「男」であり続ける。

  • No.105 by ブラック  2016-03-27 05:06:38 

「The blood which is thicker than red tears and red blood」

【プロローグ】

 ぐっちゃぐちゃの関係。訳が分からない。今、どうなっているのか俺はどこにいるのかさえ、把握できていない。ここはきっと通常の世界じゃない。――それだけは理解できた。

 爆発音に爆風。空に舞う真っ黒の煙、体の外側から焼かれていく感覚、どれをとっても身に覚えのある感覚であぁ、もうこの運命からは逃げれないなと悟った。俺の全身の神経がコイツからは、この犯罪者からはどう足掻こうと逃げることは出来ない。

 ジャラジャラと金属のアクセサリーを鳴らし、白衣を肩からだらしなく下げ、不気味に嗤う国際的犯罪者には敵わない。勿論、知力も握力も、伸長も、学力すら敵わない。

 目の前のビルが倒れていく。その様を見ることしか出来ない。見ながら、あぁ、また死んだんだ。なんて思いながらも一般人の非難を怠らない。それでも爆発は止むことなく、ずっと何時間もそれこそ永遠に煩くなり続けるのかと思わせた。

「……るっせ」

 小さく聞こえた声に、同時に響く銃声。きっと『また』撃たれた。味方の侵食。踏み荒らされる死体。この犯罪者は自分の味方すら裏切り、死体を玩具の様に扱い、尚且つ死体が更にぐちゃぐちゃになっていくのを楽しんでいる、凶悪犯。


【犯罪者と警察官】

 国際的犯罪者と共犯中のテロリスト。ほぼ無名だったテロリストの名を挙げたのは、この凶悪犯だ。名を六土 里杜ろくど りとと言う。天才科学者で主に、爆弾の製作を行っている。
 自分で作った小型爆弾を売るのと、作戦、各員の健康状態を監視しているらしい。情報課曰くなのであまり期待できる情報なのか怪しい。
 金髪に肩に届くぐらいまで伸ばされた髪、両耳には赤いピアス、指には何個も指輪をつけ、腰には自作の爆弾をぶら下げている。たまに口からチェーンが覗いている時があるが、大体は自作の飴を舐めている時だと思われる。

「今回の事件もコイツか……。絶えないな」

 資料室から聞こえる小さなため息。後輩が発したもので、特に注意する事ではないので何も言わずただ聞き流す。

「そう言えば連夜れんやさんって、里杜と戦った事ありましたよね?」
「あぁ。任務で出向いた先に居ただけだ」

 俺の所属している課は主に里杜主犯で行われている犯罪に出向く。というかそれしか任務がない。全く事件がないときはないで暇だが、あるときはあるで忙しいのだ。課の名前は長くて忘れたがいずれどこかで言う事でもあるだろう。

「やっぱ強かったですか?」
「……ある程度はな」

 互角に戦えば負けるだろう。右側にある刀をそっと撫で、ぼんやりと画面の中を見つめる。
 敵いはしない。何度も言い聞かせ、負けを認めた。そういう時に限ってコイツは、攻撃の手を止めて撤退する。理由なんて分からない。こじれた関係なのだから聞くこともない。

「それで、何か情報は掴めたのか?」
「それが、全く……。次の行動や、場所、時間など全く分からないです」

 落ち込む姿はいつも通りか、心中で呟きながらモニターの中を見つめる。これまで行われてきた犯罪の数々。少しくらいはパターンがあるはずだ。それさえ掴めれば場所の特定ぐらいは出来るだろう。一体、何が目的だ。一つのマップに廃墟が映る。次の爆破現場だろうか、今までの行動を分析すれば、何か手がかりになるかもしれない。

「ここの廃墟。今までの行動を分析して調べておけ」
「はい!」

 正しく敬礼した後輩は、資料室で一人、里杜の分析をパソコン相手に始めた。

 **

 真っ暗の部屋の明かりを点け、壁に凭れる。前までならこういう状態のとき、支えてくれる手があった。今は当の昔になくなっている。久々に疲れた、ような気がした。右目に激痛が走る。思い出してはいけない、何もなかったようにしろというように。過去の記憶を蘇らせてはいけない。もし、蘇ってしまえば、俺はここに居られなくなる。

「……もう、昔の話だろ」

 誰も居ない、元々二人部屋だった部屋でそっと呟く。クローゼットの中に仕舞ってあるのは代えの隊服。サイズが合わないのが面白い。何故置いているのかと後輩達に良く聞かれるが、大して気にしていないし、気にする必要性もないと思っている。この身になってから、サイズが合っていた隊服も大分大きく感じる。きっと気のせいだと思っている。

 あの日、あの事件の時――。何かが終わった。

『バカ、逃げろ!』
『うるさい』
『意地張ってる場合か! 良いから行け!』
『嫌だ』
『ったく、どうなっても知らねぇぞ』
『お互いな』

 息を殺して泣く声。何度も謝罪する言葉。必ず仕留めるという言葉。それだけが聞こえて後は何も覚えていない。そこに居た筈の人物が急に居なくなって、気がついたらこうなっていた。

 右目の痛みを耐えるように右の布を掴み、蹲りながら小さく息を漏らす。ないはずの義眼から何か流れ出る感覚を覚えながら。

  • No.106 by ブラック  2016-03-27 06:36:25 

【命令には逆らうな】

 おい……。小さく舌を打って手に持っているボードを自分の肩に当てる。それほど痛くはないが、見ている方が恐怖で支配されているのだろう。そんな快感に浸りながら不機嫌な表情を作り出してボードを再び見下ろす。

1号:7人
2号:3人
3号:9人

 それぞれの数字が並べられている。大して多い訳でもないが、少ない訳でもない。全体で32、3人程の人数だ。3人をピックアップしただけで、他が良い成績だという事ではない。所詮使い物にならないガラクタなのだから当然だが。

「俺は何つった? 一人も残すなって言ったよな」

 爆破テロをする時の絶対命令。『誰一人生かすな、残さず殺せ』それが、毎回毎回命令違反。まぁ、
それが目的なのもある事は誰にも言わないでおく。言ってしまえば意味がない。

「命令に逆らったらどうなるか、てめぇら味わってんだろ。おい、8号」

 声を掛けられ、8号は震えた。何て無様な野郎だと内心で嘲笑しながら表情は不機嫌で、「てめぇ、殺害人数0ってどういう事だ?」と問う。そうすると8号は言い訳する素振りを見せなかったが、だからと言って命令違反を許しておく訳にもおかず、舌を打ち「役立たずは死刑牢だってつってんだろ」そう小さく囁けば、8号は何度も頭を下げる。今度は仕留めるだとか、必ず成果を出してみせるだとか、そんな馬鹿な台詞を吐いていた。くだらないし、そんな甘ったるい事を許すわけもない。だからポケットに入れていた拳銃を取り出して一発、8号の脚に撃つ。当然8号から呻き声みたいな悲鳴みたいな声がする訳だが、お構いなく「死刑牢、行け。ガラクタ」と放った。

 死刑牢。役立たずが直行する牢屋。牢屋と言っても何日も過ごせる訳じゃない。過ごせやしない。死刑牢に入った者で生きた奴は居ない。そう、俺がこの手で始末する。簡単に言えば針地獄で串刺しにする。刺さった時の身が抉れる音や飛び散る血液、辺りに漂う血の匂いやその他諸々、そういうのが好きだから余計に串刺しにする。後始末はいつも成果が悪い奴ら。俺にとってテロリスト何てただの駒でしかない。俺の作る爆弾がなければ一瞬で警察側に捕まるだけの雑魚だ。

「許してください!」

 8号が死刑牢で叫ぶ。俺はその様子を無表情で眺める。これが此処の掟。俺が共犯している限り、此処の掟は全て俺が作る。理由なんてコイツ等に述べる必要もないし、今言う必要だってない。それに使えないガラクタを側に置いて置く様なそんな優しい人間でもない。だから、不良品はぶっ壊す。――レバーを下げる。そうすると、天上と壁一面、床から針が飛び出す。避け切れないし、逃げ切れない速さ、見た目は普通の誰もが想像する様な牢屋と変わりない。ただ、違うのは針が飛び出すだけ。

 ――グシャッ。

 本当はもっとえげつない音だったが、分かりやすくするなら、一番伝わりやすいだろう。糸も簡単に潰れ、俺の体中に8号の返り血を浴びる。俺の勝ちだ。一人、死刑牢の在る部屋でただ口角を吊り上げた。

 **

 お前ら、アレだろ。無名のテロリスト――あぁ、俺はたった今あっち側じゃねぇ、こっち側の人間だ。……だから、取引しねぇか? 
 お前らが欲しがってんのは最高武器、テロだから爆弾とか銃とかだろ。今の仕入れ先の国、そろそろ戦争が始まるんだろ? そうなったら火薬とか値段がぶっ飛ぶだろ。そうなるとコストとかも面倒くせぇし、金もかかる。
 何が言いたいかって? つまりだな、俺が爆弾製作してやるってつってんだ。金も払わねぇで良い、火薬の仕入れも俺が全てする。銃は作った事ねぇが、銃なんざ要らねぇ爆弾作れば良い。お前等は何も払わねぇで構わねぇ。なぁ、そっちには得な話だろ?
 何が目的か? そんなモン決まってんだろ、お前等と一緒だ。だから、共犯者にならねぇか?
 ――そうだな、次のテロん時、俺が作った爆弾だけで成功したら俺に爆弾製作、作戦、健康管理を任せてくれ。それ以外は必要ねぇし、何も払わねぇで良い。あぁ、分かった。じゃぁ、それで。

 ――払うのは、てめぇらの命で構わねぇ。

「……またあん時の夢かよ」

 最近よく見るようになった夢。同じ内容ばかり。重たい頭を持ち上げてベッドに腰掛ける。今は何時だ、そんな事気にしてもしょうがないし意味がないが、何となく時計を見た。午前10時20分、そろそろアイツが姿を現す頃だろうか。

 コンコンッ

 ドアがノックされた。あぁ、思った通りだ。入室許可を与え、ソイツは部屋の中に入って来る。

「里杜様、朝食の用意が出来ましたが……」

 言葉に詰まったようで、どうしたら良いのか分からないのだろう。多分、俺が起きていたんだと思ったから余計だろう。寝起きだという事に気づき、だけどいつもこの時間帯に朝食を持って来ているから困った表情をしていた。

「あー……わりぃ。今起きたから、後で食うが取り合えず持って来てくれ」

 他の連中とは違う喋り方という訳じゃない。至って普通だと思うが、他の奴からしたら違うんだろう。そういう陰口なのは聞いた事があった。だからと言って死刑にする程鬼ではない。どれだけ陰口を言おうと有能であればそれで良い。

「かしこまりました」

 丁寧にお辞儀をして、廊下まで持って来ていた朝食を部屋に入れる。何処かのお屋敷で使われているその台は、俺が買った物だ。火薬より安い。朝食がテーブルに並べられ、寝起きなので紅茶を淹れられる。

「具合でも悪いのですか?」
 
 不意に尋ねてきた。コイツ、今は召使にでもしておこう。この召使にだけは俺に話しかける事の出来る権限を与えた。他の奴等は用事がない限り、一切話しかけるなと命じた。この召使にだけ、用がなくても話しかけても良いという権限を与えたのは、役立たずの飯やこのアジトの掃除などをして貰っているからだ。あと、二人きりの時は敬語を外せとも言った事がある。返答はしっくりこないだった。

「いや、別にそんなんじゃねぇよ。つか敬語外せよ、誰も見たり聞いたりしてねぇぞ」
「そうですが……。私は住む場所もなく、食べる物もなかった時に里杜様に拾って貰って頂いて居る身で、まして何も知らなかった私に勉強など教えてくださり、さらには仕事まで与えて貰っているので……」

 言いたい事は分かったので小さく溜息を零す。仕事と言っても犯罪者のお手伝いだから楽しいのか何て分からないが。頭を掻きながら「別にアイツ等が居る時でも話しかけて構わねぇし、敬語外しても構わねぇから。拾って貰ったから敬語を使わねぇといけねぇ理由なんてねぇから」と言うと、やっぱり否定の言葉が返ってくる。そんな無礼な事出来ないとか、あぁ、本気で拾われたってだけでこの召使には生きる希望があったんだなと思った。だから、強制はしない。不意に敬語がなくなったら違和感だろうが、それで腹を立てるつもりはない。

「そうか。まぁ、お前の好きにしろ。言葉遣いと態度はな」

 鋭い目つきで睨んでやると、召使の肩が震えている。隠し通せているとでも思っていたのだろうか。

「これやるから食え」

 テーブルに乗っている朝食を取り、召使に差し出す。恐れ多くて受け取れない何て台詞が聞こえるが、そんなのお構いなしだ。この召使が他の連中からどんな扱いをされているかなんて百も承知だ。えこひいきだとか、図に乗っているだとか言われているが、俺に言わせれば役に立たないガラクタが何を言っているだ。元々この召使は「俺の身の回りの事を担当」として此処に居る。アイツ等は「俺の作った爆弾でテロを起こす」という役目で居る。元の契約が違う事も知らない馬鹿共から、召使が食事制限をされている事も知っている。初めは自分自身が気にしているのかぐらいだったがあまりにも様子が可笑しい事に気がつき、盗聴器を召使に仕掛けたところ、食事制限や暴力が行われていた。

「で、ですが……里杜様の朝食で……」
「また殴られるってか?」

 そこまで驚く必要もないのに、かなり驚いていた。あぁ、本人も知られてないと思っていたのか。

「じゃぁ、俺の部屋使え。ただ寝て食う為の部屋だ。お前が来てもスペースは十分あるだろ。俺の部屋にはお前以外近づかねぇよう言ってるからな」
「し、しかし何故そこまでして私を守る、と言いますか……えっと」
「アイツ等には使えねぇガラクタは始末って、つってるけどお前には違う言い方しねぇとな。ただ、お前を側に置いていたい、じゃ不足か?」

 召使は俺の今ふっと思いついた言い訳でも満足したようで「それだけで満足です」と言った。そして俺は召使にほぼ強制的に飯を食わせた。

「里杜様」

 飯を食い終わらせ、俺も残ったのを食した後声を掛けられ、召使に視線を向けると「私は里杜様にどこまでもお供します」何て言われた。これじゃまるで本物の召使のように思えたから「ついて来れんならな」と、少し意地悪な返答をした。

  • No.107 by ブラック  2016-03-28 01:07:43 

 「好きになったのはお前なんだ」「え? 嫌よ」

 同じ学校、家も隣同士幼馴染である。そう、文系と理系の幼馴染。だから趣味も合わないし、会話もあまり成立しないのだが、俺はそんな幼馴染の理系少女に恋をした。始まりはいつだったかなんて覚えていないが、気がついたら好きになっていた。今のこの瞬間までは!

「お前が好きなんだ!」
「え、嫌よ」

 パラパラと崩れていく俺の初恋、なんてもんじゃなくもう一瞬で崩れていく初恋。眼鏡をかけた理系少女は何が悪いの? 何て顔で俺を見る。

「お、俺の……何が、嫌いなんでしょうか……?」

 もはや涙目である。

「そんな事言っても『数学』は教えないわよ」
「え? スウガク?」
「来週のテスト、貴方、数学大丈夫なの? だから私に機嫌取らせて数学を教わろうとしたんじゃなくて?」

 そうだった。コイツは理系だった。本嫌いだった。漫画は読むらしいが……。つまり、今の俺の告白はただのご機嫌取りにしか思われていない。それもそれで悲しい。
 がっくりと項垂れてその場にしゃがみ込む。具合でも悪いのかと尋ねてくるが、そういう事じゃない。此処が自分の家なら良かったのにと二人きりの夕暮れの教室で思うしかない。だってコイツは理系だから……。

「ねぇ、ちょっと」
「イヤベツニナンデモナイデス……」
「ねぇってば」
「イヤダカラホントニ……」
「アパート通り過ぎてるわよ」
「…………」

 あえて聞かない振りをしていたら、自分の家を通り越していたらしく、しょんぼりしながらアパートに向かい、階段を上っていく。高校に通うため、このアパートに引っ越して来た。幼馴染の麻衣(まい)も俺と同じ理由だ。

「じゃぁ、また明日。何かあったらいつでも来て頂戴」

 302号室と303号室の前でのいつもの挨拶。何も言わず俺は302号室のドアを開けた。

  • No.108 by ブラック  2016-03-28 02:17:09 

【出会い】

 くだらない、でも生きなきゃいけない。お金がない。それなのに、どうやって食べ物を手にしたら良いか何てすぐに分かった。だから盗みを働いた。食べ物がない、お金がないから盗めばいい。初めて盗みをした時、恐怖に襲われた。いつ捕まるのか、捕まったらどうなるのか俺は生きていけるのだろうか、そんな恐怖を俺を襲い続け、いつの間にか無くなっていた。生きるためにしている事なのに何が悪いんだという風に思い始め、盗みに対しての罪悪感はなくなっていた。
 そんな時、出会った。

 その時もいつも通り生きるために、盗みをするためだけに街に出た。誰から何を盗もうか、金目の物、それとも食料……。色々悩む中、一人、白い白衣を着た男が俺の前から歩いてきていた。白衣のポケットの中に四角い何かが入っている事に気がつき、俺はそれを財布だと思った。だから、前からやってきた男からポケットの中に入っていた四角い物を盗って何事もないかの様にすれ違った。いわゆるスリってやつだ。
 路地裏に入って財布を確認しようとするといきなり「そんなモン、盗ったって何の役にも立たねぇぜ?」と声がした。勢いで振り返ると、目の前にはさっきスリをした男が居た。
 何も言えず、ただ驚いて開いた口を閉ざし、どうすればいいのか何て分からず、脚が震え、今にも死にそうだと思った。俺は此処で捕まって殺されるのだろうか、そういう思考から抜け出せず、ただ、首を振って「いやだ……」と言い続けた。

「何が嫌かは知らねぇが、危ねぇから返せ」

 手を出しながら男は近づいて来る。俺には手錠が見えていて、今から捕まって死刑になって、死んでしまう。怖い、という感情が再び訪れる。逃げたいけれど脚が震えていて動けない。でも動かないと殺されてしまう。

「あっ……。ご、ごめっ……ごめん、なさ、い……」

 涙目で今にも泣きそうになって俺は謝罪した。とにかく謝らなければと思い、精一杯謝罪するが目の前の男は足を止めず、俺の方に歩いてくる。

「本当にっ、も、もう……しません、から……。だから、ころ、さないで……ください……」

 ピタリッ、と俺の目の前で男は足を止めた。駄目だ、殺されると思って目を瞑った時、穿いていたボロボロのズボンのポケットに何かが入ったのが分かった。何が入っているのかは見ていないけれど、目を開ける勇気もなくてただ、震えていると「金、欲しいならやるからこんなモン、盗むんじゃねぇぞ」と手に持っていた四角い物を取り上げられた。男はそのまま踵を返して俺から離れていった。

【出会い、再び】

 偶然は重なる何ていうが俺はつい最近まで嘘だと思っていた。だが、嘘ではないかも知れないと思うようになった。
 あの男に見つかり、俺は殺されると思ったが俺は今でも生きている。生きる為に行っている盗みも今では少し怯えながらになってしまう。また、見つかってしまうのだろうか。そこに秘める、僅かな思い。もう一度会えないだろうか、そうしたらお金が手に入るかも知れない。
 親は居るが、俺を子だと思った事はなく、家出をしても捜されもしないので現在も家出中の身だ。だから、帰る場所もないから公園や目立たないところで野宿をしている。ある時、とある廃墟で寝て起きたら夕方で、いつもの事なのでこのまま盗みに行こうとすると、見覚えのある男が誰かと話しをしているのが分かった。あっち側とか取引とか詳しくは聞けないが、何かしら聞こえてくる。そして爆弾という単語の後に俺が盗った時と同じ形をした四角い物があった。俺が盗ったのは、財布ではなく爆弾だったという事をその時知った。
 何やら話が終り、男が俺の視線に気がついた。思わず隠れようとするが、良い隠れ場所が見つからず、結局はその場で立ち尽くす。男が俺に近づいて「お前、あん時のガキか。金か? ならやるよ」そう言って男はポケットから5万円を俺に差し出した。

「えっ……?」

 少し期待していたが、そんな事が起こるとは思わず俺はどうしたら良いのか分からず、暫らく思考が追いつかないでいる。
 そんな素振りに気にしてないのか、男は俺のズボンのポケットにお金を入れるが何かに気がついたようで、少し動きを止めた。そしてまたすぐ元通りに戻り「……お前、何処住んでんだ?」と問われる。どこ、と言われても俺には家がないので目を彷徨わせ小さい声で「その辺」と答えた。

「親はって、その様子じゃ心配もしてねぇな」
「…………」
「そう睨むなよ、殺したり何かしねぇから。……その服、埃だらけだなそれに靴も結構ボロい。今夜は冷えるそうだな、そんな格好だと風邪引くぞ」
「……これしか、ないから」
「見れば分かる。……金が欲しいって思わねぇか?」

 男は尋ねた。こんな生活をしている俺に。そんなの欲しいに決まっている。

「欲しいに決まってる」
「じゃぁ、俺ん所で働け」

 男はそう告げて俺の肩に手を回した。自分が着ている服が汚れるのも構わずに。それから「今の生活したかねぇなら、黙ってついて来い」と俺に囁いた。その時から俺は彼に惹かれたのかも知れない。

  • No.109 by ブラック  2016-04-04 05:53:03 

「バカな兄貴を「ぁっ」と言わせたい」

 ずっと仲が良かった。小さい頃は一緒に帰ったり、どこかに遊びに行ったりもしていた。だけど、中学に上がるにつれて、俺は自分が異常なんだと思い知った。周りは誰々君が気になるとか、○○さんが気になるとかそういった話ばかりしているを耳にした事があった。最初はあぁ、そうなのか程度だったけれど、お前は誰か気になる奴居るのか? という質問に対して兄貴、と答えるとその場が凍りついた事があった。その時、俺が問題発言をした事はすぐに理解できた。だから、あぁ、恋愛としてか。からかったりする方かと思った。恋愛なら居ない。と咄嗟に嘘を吐いたら周りもなんだそうか、と納得していたのを今でも覚えている。

 小さい頃に兄弟が出来た。義理の兄。当時は慣れない事だけれどすんなり受け入れる事が出来た。俺が能天気なのもあったのか、それともただ兄が出来たという事しかなかったんだろう。義理の兄だとか義理の兄弟とかそんな複雑な感情はなかったんだろう。だからすぐに話しかけに行った。名前が何て言うのかとか、好きな食べ物なんだとか、テレビ見るのだとか、兄は困ったようにけれど一つずつ答えてくれた。年齢は一つしか変わらない。兄が優しいのもあり、俺と兄はすぐに仲良くなった。だから中学の問題発言まではずっと隣には兄が居るのが当たり前になっていた。

 **

「……おう」
 
 中学を卒業して家からは大分距離があるが、あえて偏差値の低い高校に入学した。親はもっと賢いところに行ったら良いのに、と言っていたのだけれど俺はここが良いと決めた。入学式を終えて新しい着慣れていない制服で帰宅をすると上半身裸で首にタオルを巻き、肩まである金髪の髪を濡らした兄に短い言葉で出迎えられた。どうやら風呂に入っていたらしい。俺だから良いものの、もしドアの隙間から誰かに見られたらどうするんだと思いつつ、靴を脱いで部屋に戻る。部屋で制服を脱いで部屋着に着替えてリビングに向かうと、服を着た兄がソファに寝転がっていた。確か今日の入学式は新一年生しか居なかったので兄は休みだったんだろう。時間的にも朝なので何処かに出かける事もないだろうか。

「お前、本当にあそこで良かったのかよ」

 冷蔵庫にジュースを取りに行くと兄に話し掛けられた。高校の選択に後悔はしていないので、頷いてペットボトルの蓋を開ける。ミルクティーの味を口の中で広げて、キャップを閉め、冷蔵庫に戻す。

「後悔とかはしてないよ」

 後悔はしていない。寧ろ入れたから感激している。成績が悪い訳じゃなく、その逆なのだから採点していた時にワザと偏差値の低い高校に入った事などバレているだろう。それでも、俺が行きたい高校だから偏差値の高い高校にしておけば良かったなんて思ってない。
 
「そうか」

 兄は短く返事して何も話さなくなった。何かをしている訳でもないので寝ているのだろう。壁に掛けてあるカレンダーを見ると、今日は夕方からバイトがあるらしい。兄のバイト先を聞いた事があり、俺も何度か行った事があるファミレスだ。兄は自分から喋りかけるタイプじゃないが、接客はするらしい。メインは厨房で、フロアの人が足りない時に手伝ったり、フロアメインで働いたりするらしい。兄がそのファミレスで働き出してからは行ってないので、そういうのは見たことがない。

 部屋で本を読んでいると隣の部屋が開く音がした。時計を見てみると、12時30分。部屋でもう一度寝るのだろうかと思いながらページを捲る。兄の端末の音が聞こえ、兄の声が聞こえる。驚いたような少し嬉しそうな声が聞こえて『分かりました。ありがとうございます』というフレーズだけ、耳に入った。口調からしてバイト先だろうかと思うが、それだけを聞きに行くのはどうかと思ったので何か口実がないだろうかと探していると、ドアがノックされる。兄なのは百も承知なので本を閉じ、ドアを開けると兄が「今日バイトオフになったからどっか行くか?」と尋ねてくる。

「良い、けど……」

 何処かと言われても何処に行くのだろうと思いつつも、家に居てくれないというのもあって少し不満を覚えた。家に居れば良いのになんて言ったら家に居てくれるだろうけれど、折角誘ってくれたのだから予定もないのに断りたくない。

「けど、何だよ」
「何でもない。何処行くんだろうなぁってぐらいで」

 焦って適当に言葉を並べる。思っている事なので嘘ではないが、何となく言い訳をしている気分になる。俺の言葉に兄は悩み「じゃぁ、まず何か食いに行くか」とお互い何も食べてないので提案をした。
 
「お前は何食いたい?」
「何でも良いよ。任せる」

 兄は困ったようにして後でな、と言って俺の部屋の前から自室に戻った。ドアを閉めて着替える。どんな服が良いだろうか、あんまり気合を入れすぎるのも良くないし、かと言ってジャージなんてのも良くない。ほどよい感じのコーディネートなんて分からないが、淡いYシャツに黒のパーカー、グレーのスラックスにした。タイミングよくドアがノックされ、財布と端末をポケットに入れてドアを開ける。
 兄の服装も俺と似ていて白Yシャツに黒のベストのボタンを開け、赤色のスラックスを身に纏っていた。兄が先に玄関に向かったので後に続いて玄関で靴を履く。ドアを開けて待っていてくれた兄に小さく礼を言って、カードーキーで鍵を閉めた。

  • No.110 by ブラック  2016-04-05 04:48:08 

名前 六条道 恋也(ろくじょうどう れんや)

年齢 
16歳

性別 


所属 
卍高等学園 丹神橋高校 

身長 
173cm(16歳) 176cm(19歳) 185cm(26歳)

体重 
56kg

容姿 黒っぽい黄色の髪で毛先が黒色。長さは髪を下ろすと肩より少し下まで在る。
部屋、高校は髪を下ろしている。
プライベートや部屋では伊達メガネを使用することがある。
高校にはメガネも付けていなく素で通っているが、目に異常が在る時には眼帯を着用する。

性格 基本あまり会話を好まなかったが、誰かと話す事に興味を持ち色々な人と話はするようになった。けれど、自分から話しかける事はあまりない。
高校生になると人が変わったように笑顔を振りまいていたりする。
りとには忠犬の様に振舞う。

備考 時に一人称が「俺」と「僕」で使い分けられるが基本「俺」を使うのは仕事上で「僕」はプレイベートが多い。プライベートで「俺」を使う時は上司でもなく年上でもなく、たった一人の人間として見ている時に使われる。仕事上とプライベートでは口調も少し変わる
相手を年上と見ている時は「貴方・貴女」仕事、上司として見ている時は「~さん」また、機嫌が悪い時年上・上司には「自分」同い年には「君」になる

プライベートで機嫌が悪いと誰彼構わずナンパする癖がある。
相手が嫉妬するのが目的で男女問わずそのまま買う。
  
男女関係無くキスしたりキス以上の行為などは平気である。決して男好きと言うわけではない。
どんな場面でも「望まれたから買っただけ」と答える。
    
好きな物 甘すぎる物が苦手でほどよい甘さのものを好む。いつも紅茶やハーブティを飲んでいる。
チョコ菓子をよく好み、口にしている事がある。
     
幼少期実の父の提案より酒を飲む事になって口にすると一升瓶ほどの量を飲み干して嘔吐して三日倒れる事があった。
幼稚園年少の頃に両親を事故で失い、親戚に引き取ってもらった。
中学の頃、とある走り屋のグループのリーダー、黒河ハルカ(23)から酒を勧められもう一度酒を飲んでアルコールに強くなり、黒河と何度か酒を飲む事になって酒を好むようになったが、未成年の為、酒の入手方法が黒河便りか、変装して購入するしかない。
好みの酒の種類は日本酒である。

嫌いな物 比較的少ないが珈琲が駄目である。
幼少期珈琲を口にして気管に入り蒸せて咳き込んだ事がトラウマになり珈琲を口にする事が出来なくなった。
食べ物ではアボカド。あの食べた時の不味さが嫌い。
動物では蛇。見た目がえぐいからだそうだ。
飲み薬。塗り薬などは平気だが、飲み薬(特に錠剤)は嫌い。粉薬はあまり気にしないらしい。

裏設定
成績優秀、運動神経抜群で教師生徒の期待も多いが、その為教師、年上から暴行を受ける事もある。
一つ年上の姉がおり、姉が生理で何故だか血の臭いを発する事がある。兄のりと曰く「血臭い」である。
女装が当たり前で、メイド喫茶、ホステス、などのバイトを性別を偽って働いてる事が在る。
最近の仕事内容はホスト、イカサマ師、殺し屋、家庭教師、など。

  • No.111 by ブラック  2016-04-05 04:49:03 

名前 烏丸命(からすまみこと)
性別 男
年齢 17歳

性格
自分好みではなければ誰であろうと切り捨てるタイプだが、誰かを好きになればそのことばかり考える。素っ気無いが、何かに夢中になれば一途と言ったほうが分かりやすい。だが素っ気無いとはいえなくて言動そのものはキツイが本人にはそのつもりで言っているわけではない。たまに感情的になることもある。スキンシップが慣れてないので苦手。

容姿
身長は179cm。筋肉はあまりついていないが特に気にしてはいない。烏の様に黒い髪と言う訳ではなく金髪の地毛で髪の量は多いほう。中学の時には肩辺りまで伸ばしていたが高校に入る時にばっさり切って今はうなじぐらいまで、毛先が外に跳ねている。耳には赤色のピアスをつけており右に2つで左に3つ。前髪はオールバックにしている。瞳の色は金色でややつり目。

  • No.112 by ブラック  2016-04-05 04:51:27 

名前 伏(ふし) 

年齢   
見た目年齢 19歳 実際年齢 不詳

性別   


身長   
182cm

体重   
70kg

容姿 【人形時】金髪で、恋也と瓜二つの顔つき。背は恋也より高く、りとより1cm小さい。目はどちらかと言うと、普通な方で、つり目でもなければ垂れ目でもない。瞳の色は金色。髪も金髪で長さは腰ぐらいまである。髪の量は少ない方で、サラサラとしている。
和服を身に着けており、基本的に茶色。

【妖怪時】顔つきは変わらないが、目の色が銀になる。人形時より目が細くなり、気性も荒くなる。目元には両方に二つ、頬には三つ赤い線が付いている。人形時とは異なり歯は牙になって、髪の色も銀に変わっている。額に二つの角が生えて腹には刀の模様、背中には縛りとして「伏」と赤字で浮き上がっている。
服装も真っ黒な和服に変わる。

【人間時】元々は人間で、かなり昔の人になる。その頃には苗字がなかったので「京太郎(きょうたろう)」と呼ばれていた。髪の長さはとても短く、うなじぐらいまで。黒髪。背丈は何も変わらない。
人間時でも着ているのは茶色の和服。

性格 基本大人しいけれど妖怪時になると容赦がなくなる。人を殺める事に後悔もなにもしない代わりに、自分の尊敬している主人が殺されるのは自分が死ぬ事より嫌う。
女人が苦手で、吉原や風俗に行った事は人生で一度もない。

備考
好きな物
日本酒。日本酒の中でも常温が好み。

嫌いな物 
白の服。死人だという事を認めたくないから。
水。死因が溺死だから。

大昔、両親が急死し、天涯孤独状態の時に全く知らない里に預けられることなり、その里で友人も出来たのだが、京太郎がその里へやってきてから不作が続いたりした為、「呪い子」と言われるようになった。
不作をどうすれば良いかと考えた里の者は、神が生贄を送ってこないせいで怒っているという話が出回って、里の者は自分の子を殺すことなどしたくなかったので、呪い子を生贄とした。
そして、大雨の日に、呪い子を生贄として神の元へ送る事になった。
殺しかたは至って簡単で、白い衣を身に纏い、目隠しをして川へ突き落とす。
そして、友人の手によって川へと突き落とされ、目が覚めると、妖怪として転生していた。
自分の意思で人の形にもなれたので、普段は人形で、本来の刀である。刀に宿った妖怪。
恋也の直結の先祖になる。

【祁呉氏睦月(消しゴム)】
【神条吟(定規)】
【赤ヘ丸完次(赤ペン)】
【谷へ丸伸一(シャーペン)】
【筆こばと(筆箱)】

  • No.113 by ブラック  2016-04-05 04:52:00 

・スキキライ
 恋 りと

・ハジマリノオワリ
 彩 恋也

・繰り返し一粒
 りと 恋也

・イカサマ⇔カジノ
 恋也 りと

・秘密~黒の誓い~
 恋也 美咲 猿比古

・からくり卍ばーすと
 伏 りと
  
・虹色蝶々
 かいと りとせ 恋也 彩

・ACUTE
 彩希 りと 恋也
 雨 紫揚蝶 アジテーション

・聖槍爆裂ボーイ
 恋也

・SPICE!
 恋也と大勢の友人

・ヤサグ恋歌
 恋也

・メランコリック
 恋也 りと

・鏡音八八花合戦
 りと 恋也

・吉原ラメント
 女装恋也

・東京テディベア
 姶
 褌

・再教育
 りとせ 恋也

・ロストワンの号哭
 16歳恋也と14歳恋也

・アドレサンス
 りと 恋也

・会いたい
 未定

・from Y to Y
 


・BUNKA開放区
 泥棒とガンマン

・8HIT
 グリーンVSレッド

・インビジブル
 りと 

・イカサマライフゲイム
 陽土
 
・Masked bitcH
 恋也

・天ノ弱
 恋也 祐

・え?あぁ、そう。
りと

・百年夜行
 恋也 伏

・愛言葉
 恋也 美咲 猿比古 出雲 

・3331
 黒斗 恋也

・ワールドイズマイン
 りと 恋也
 女詐欺師と泥棒○

・なりすましゲンガー ○
 クロハ コノハ

・しんでしまうとはなさけない
 未定 

・Sweet Devil
 恋也 りと

・HANAJI
 恋也 りと

・君がくれたもの
 恋也 りと
 恋也 ルパン○

・人間失格 ○
 クロハ コノハ

・からくりピエロ
 恋也 りと

・Just Be Friends
 未定 

・おこちゃま戦争
 グリーンVSレッド
 りと 恋也

・いろは唄
 りと 恋也
 恋也 伏

・結ンデ開イテ羅刹ト骸
 伏

・カンタレラ
 ローザブルー ノーブル(ミクオ) クラシック ノーブル

・ODDS&ENDS
 恋也 天刀

・君の知らない物語
 恋也 りと

・I beg your hate
次元

・あの日タイムマシン
 シンタロー メカクシ団一同

・Synchronicity~第二章 光と影の楽園~
 メカクシ団一同

・テノヒラ ○
 りと 恋也

・蝶と花と蜘蛛
 悪魔 人間 吸血鬼

・愛欲のプリズナー○
 次元 ルパン

・海賊Fの肖像○
 ルパンファミリー

・VOICEま○
次元メイン

  • No.114 by ブラック  2016-04-05 04:52:18 

春雲路 天刀
しゅんうんじ あまと

八重樫 ハルキ
やえがし はるき

西園寺 佳乃
さいおんじ よしの

一文字 速人
いちもんじ はやと

六条道 誠
ろくじょうどう まこと

六条道 雪乃
ろくじょうどう ゆきの

六条道 薊
ろくじょうどう あざみ

六条道 りとせ (六条道 りと)
ろくじょうどう りとせ

六条道 かいと (六条道 かい)
ろくじょうどう かいと

六条道 恋也 (六条道 恋)
ろくじょうどう れんや

六条道 彩 (六条道 彩希)
ろくじょうどう あや

八城 岬
やしろ みさき

天月 唯
あまつき ゆい

大武 美奈
おおたけ みな

守烙坐 星汰
かみらくざ せいた

上ヶ咲 真央
じょうがさき まお

神無月 恋
かんなづき れん

加藤 柚
かとう ゆず

黒田 九十九
くろだ つつら

  • No.115 by ブラック  2016-04-05 05:18:03 

【疑問に思った事】

とある炎天下の中、オレは冷房が効いているアジトに居る。
今日という今日こそ、オレをヒキニートと言う奴を懲らしめるため。
今日はモモは仕事、ヒビヤは学校の為メカクシ団二名が居ないが、アイツらはオレをニートと呼ぼうが別に問題はない。
アジトにはオレを含めて七人いる。
キド、セト、カノ、マリー、エネ、オレ、コノハの七人が各自好きなことをしている。
キドはソファに腰掛け、カノはキドの隣で雑誌を読んでいる。
オレはスマホを充電させ電源を切っている。
この際エネは関係がない。
そろそろ本題を言おうか。
オレは立ち上がり、アジト全体に聞こえるように言い放つ。

「お前等人の事ニートニート言ってる割には、モモとセトとヒビヤ以外まともに仕事してねーだろ!!?」

いきなり叫びだしたオレに驚いてマリーはびくりと肩を揺らす。
この際可愛いからマリーは除外……じゃなくて。
キドは「何が言いたいんだ?」と言う目を向けてきたが、カノのニヤニヤした表情のせいで腹が立ってくる。

「わっ、私もお仕事してるもん!」

マリーが頬を膨らましながら言ってくる、可愛い…。

「内職だっけ?モモから聞いた。マリーは関係ねぇよ」

と言いオレは物事の主犯カノを睨みつける。
カノは笑いながら「やだな~」とか言っているが、この際関係がない。
今日という今日こそこのカノの口から「すみませんでした」と言わせてやる。

「シンタローさんいきなりどうしたんすか?」

とセトが尋ねてくるが、セトは仕事をしているためニートと呼ぼうが何ともないが、どうしたもこうしたもない。

「お前等、特にキドとカノ。ろくに学校も行ってないし仕事もしてないのに、人をニートニート連呼するな。特にカノ」

オレはカノってとこだけを強調させていう。
コノハは初めから何も言わないので除外だ。
ろくに学校も行っていないカノとキドに、ニートと言われる辛さは他のみんなは分かるのだろうか?

「あ、そんなこと気にしてたのシンタロー君。ゴメンゴメン」

明らかに背後から「(笑)」と言うマークが出ているであろう。
コイツはうざいの天才なのか?

「カノ失礼っすよ」

セトが言ってくれた言葉の意味は考えていけば辛いだけな気がする。

「……ニートって何?」

コノハの第一声がこれだ。
なんと説明しようかと悩んでるとカノが口を開く。

「ニートっていうのは、学校も仕事もしてないシンタロー君のことだよ。コノハ君」

コノハはだいぶ間を開けてから首を傾げて「でも、カノも何もしてないよ…?」と言われる。
ざまぁみろ。
それにしてもコノハはなんて良い子なんだ。
限度はあるが飯を奢ろう。

「んー?それはコノハ君もキドも一緒じゃないの?」

対するカノは何も喋ってないキドを巻き込んだことで、すごい形相でキドに睨まれている。

「…って言うわけでもないかも、うん」

さすがの団長には叶わないのか、冷や汗をかきながら上記を笑いながら「コノハ君だって何もしてないじゃん」と言う。

「僕?…僕はお手伝いしてる」
「何の?」
「セトのバイトのお手伝い」

コノハ偉い!
俺は内心そう叫んでコノハに拍手をしている。
カノはセトに確かめるような視線を送る。
セトはそれに気づき「あ、コノハさんの言ってることは本当っす!」と笑顔を向ける。
カノは「うっ…」と言葉を詰まらせて「僕だってキドの料理の手伝いしてるもん!!」と言うが、その場に居た全員(エネを除く)に「してない」と否定された。
さすがのカノも堪えたのか、床に倒れ込むようになり、小さく自分はニートではないと否定している。

「うぅ…僕はニートじゃない…」
「受け入れろよ。これが運命(さだめ)だ」
「ちょっと止めてよ!コノハ君!!」

カノには後でたっぷりと謝罪してもらおうか。
俺はコノハとカノのやり取りを見て、フッと笑う。

【疑問に思った事】END

  • No.116 by ブラック  2016-04-05 05:19:54 

【弱音】

今日はいつもより早く起きたから、ソファでくつろいでいる。
今は朝の六時でそろそろキドも起きてくる時間なんだけど、全く起きてくる気配がない。
いつもなら僕が起きるのが早いと「今日は猫が降るのか」なんて言うけど、今日はどれだけ待っても起きてこない。

そんな日もあるだろうと思って雑誌やゲームで時間を潰すが、何分経っても起きてこなくてさすがにイライラしはじめる。
5分10分ならまだしも、40分も起きてこないと空腹なのもあって悪くないキドにイライラする。
早く起きてくれないかと待っていると、ガチャリとドアが開いてやっとキドが起きてくる。

「あ、キドおはよー」

僕は欺きながら挨拶をすると、いつものジャージ姿のキドに頷かれるだけだった。

「…カノ、飯なら今から作るからちょっと待ってろ……」

明らかに辛そうにしているのは僕にだって理解した。
最初は暑さでかなっと思っていた汗は、なんだか少し違う感じがしてキドの様子を眺める。

「キド何か隠してない?」

不意に出た言葉に僕自身もついていけず、沈黙が訪れる。
沈黙を破ったのはキドだった。

「朝から少し体が重くてな。何、心配するな」

その言葉は僕が言えた事じゃないけど、嘘を吐いていた。
キドの額に手を当てても、熱はなくてただ汗が出ているだけだった。

「な、何するんだ!お前は!?」
「ぐっは!!」

キドは顔を赤くさせながら僕のわき腹を殴る。
いつもの事だけど今日のは痛くない気がする。
力が入っていないようなそんな感じ。
でもそれを言ったらきっとまた殴られるので、何も言わずわき腹をさする。

「痛いなぁ…」

いつもより痛くないけどあえて大げさに痛いと言っておく。

「フン、お前がいらん事をするから…だ………」

キドは僕にそう言いながら僕の方に倒れてくる。
脂汗も酷く、息づかいも荒くて良い状態とは言えなくて、僕はキドを担いでソファに横にさせる。
キドは相変わらず息づかいを荒くして、辛そうにしている。

「キド…?ねぇ、キド?」

話しかけてみてもキドは辛そうにしているだけで、僕はどうしたら良いのか分からず一人で焦っている。

「ねぇキド…」

僕はグルグルと色々な思考が巡り、どうしようかとキドを何度も不安で見て、キドの蒼白な顔色に恐怖になり、バイトが休みなセトの部屋のドアを激しくノックする。

「セト!起きて!キドが、キドがぁ!!!」
どれだけ叩いても起きる様子はなく、僕はその場に座り込む。
キドは今にも苦しそうにしていている。

「ん…っ、はぁ…」

お腹を押さえて苦しそうに息を荒くしている。
どうしたらいいのか全く分からず、僕はキド名前だけを呼びながらキドの元に行く。

「キド、ねぇキド?」

僕がキドの目の前に来た頃、キドがうっすら目を開ける。

「キド!!?」
「何だ、そんな顔をして」

強がっているのか、キドはいつもの表情を作って僕に言う。

「何だ、じゃないよ!そんな辛そうにして!!何かあったら僕どうしたら…!」

僕が焦っているとキドはフッと笑って「いつもの事だ」と言った。
何がいつもの事だ、こんなに辛そうに…いつもの事?
いつもこんなに辛そうにする事なんて、キドにはないはず…。
僕は考えるより口が先に開いた。

「いつもの事って何が?」

僕の問いにキドは頬を染めて小さく「生理痛だ」と言った。
僕は何も言えず、その場に立ち尽くして欺くのも忘れている。

「お前欺けてないぞ」

僕はどんな表情をしていたのだろうか、すぐに欺いていつもの様に笑う。

「いやーキドも大変だねー!」

口から出てくる言葉は嘘ばっかり。
本当は違うことを言いたかったはずなのに、僕は何でこんな時でも嘘しかつけないんだろう。

「カノ、嘘を吐くな」

キドはいつもとは違って僕の頬を引っ張って、僕の能力が解かれる。

「今のお前は欺いても意味がない」

キドは僕の頬を離してフッと笑い、キッチンに立って朝食を作り始めた。

「動いて大丈夫なの?」

僕はキドに尋ねながら後ろについて行って、様子を伺っていたけど「邪魔だ」とキドに言われ、虚しくソファに戻る。

「キド、大丈夫なの?」

僕は不安になりながらキドに尋ねた。
キドは「大丈夫だ」と言っていつもの朝食をスムーズに作っていて、良い匂いが次第に部屋中に広がっていく。

「先に二人で食べるか?」

キドが振り返りながら僕に尋ねてきて一瞬ドキリとするけど、すぐに我に返り「そうだね。誰も起きてこないし」と笑いながら言うと、後少しで出来るようで暫く待っているとキドが声をかけてきた。
ソファで待っているとキドが朝食を作り終えて、テーブルに運んでくる。

「今日は材料がなかったから、これぐらいしか作れなかった」

キドはお箸とお皿を持っていて、お皿には野菜炒めが入っていて、お皿とお箸をテーブルに置いて、またキッキチンに戻ってお茶碗とお椀を持ってくる。

「今日のお味噌汁は豆腐なんだね~」 

いつもお味噌汁の具は色とりどりで、今日は豆腐。

「悪いな、これぐらいしか作れなくて…」

申し訳なさそうに言うキドに対して僕は、ニコニコと笑顔で言う。

「大丈夫だよ!材料もなかったんし、ね?」
「だが…」
「良いって!それより早く食べよう!!」

どうしてだろう。
僕は違うことを言いたかったはずなのに、【嘘】しか言えなかった。

僕とキドは二人で朝食を食べて、二人で野菜炒めを完食して僕がお皿を洗っている時だった。

「…っ、痛い…!」

水を使っているからキドが何か言ったのは聞こえたけど、具体的には聞こえなかったのでいったん水を止めて、後ろに振り返り「どうしたの?」と尋ねると、キドはお腹を抱えてソファの上で苦しそうに横になっている。

「キド!?」

僕はキドに駆け寄って体をゆする。
キドは脂汗をかきながら「大丈夫だ」と言うけど、やっぱり僕は不安でキドの体を余計に揺する。

「カノ…揺するな頭に響く…」

頭を押さえながらキドが苦しそうに言って、顔を歪める。

「あ!ゴメン…」

揺するのを止めてどうしたら良いのか分からなくて、暫くあたふたしてるとキドが温かいお茶が飲みたいと言ったので、キッチンに急いでお茶を探すけど温かいお茶は無くて、冷蔵庫を開けてコップにお茶を入れて電子レンジでお茶を温める。
チンッ、と音がしてコップを電子レンジから取り出しキドに渡す。

「電子レンジで温めたよ」
「あぁ、ありがとう」

キドは起きあがってお茶をゆっくり飲んで、半分ぐらい飲んでコップをテーブルに置いて、ソファに横になる。

「キド大丈夫?」

僕はキドの近くに腰を下ろして、キドに尋ねる。

「大丈夫だ」

キドは横になりながらそう言うけど、僕には大丈夫には見えず、僕はキドに自分のパーカーをキドにかけて小さく呟いた。

「辛いなら、弱音ぐらい吐いたら良いのに……」

キドには聞こえないように言ったつもりだけど、キドには聞こえていたようで顔を真っ赤にさせている。

「う、うるさい!俺が弱音を吐いてどうするんだ!!」

ただの強がりに、僕は唇に吸い込まれるようにキスをしてしまった。
殴られると思っているとキドは、意外そうに僕を見つめて「俺が今にも死にそうな目でみるな」と言われ、僕の表情がキドが言う通りの表情をしていると理解する。

「僕そんな顔してた?」

ニコニコしながら尋ねるとキドはクールに笑い「あぁ、不安に詰まったな」と言って僕の頭を撫でる。
暫く頭を撫でられていて暫く経って、落ち着いて僕がキドの頭を撫でる。

「こんな時は僕がキドの頭を撫でる番でしょ?」

キドは生理痛で弱っていて僕を殴ってこない。
僕はキドを撫でながら「たまには弱音を吐いても良いんだよ」と言ってキドの体調が良くなるまで、傍にいた。

【弱音】END

  • No.117 by ブラック  2016-04-05 05:20:10 

【好きの果てに見える寂しさ】

好きな人に恋人が居ると知った時の気持ちは誰が理解してくれるだろう。
きっと同じ想いをした人にしか解らないのかもしれない。
僕のこの気持ちもきっとそうなんだ。
僕に好きな人が居て、その好きな人には当然の様に好きな人が居る。
これは僕に対する欺き続けてる罰なのだろうか。

★★★

「シンタロー君」

僕は何気なくを装ってソファに座っているシンタロー君、僕の好きな人に笑いながら声をかける。
シンタロー君はスマホの中に住んでいるエネと言う人物(僕はエネちゃんと呼んでいる)と話をしている最中だった。

「カノか、どうした?」

シンタロー君は僕に視線を向けていつも通りに返事をする。
僕はその返事を何度も聞いて思うことがある。
エネちゃんと接する時と返事が違う、と。
僕はシンタロー君の隣に腰を下ろして、欺きながらいつもの様に世間話を持ちかける。

「そう言えば最近事件とか多いよね~」

シンタロー君は興味など示さないで僕のセリフにただ「あぁ」と答えて会話終了。

★★★

次の日、エネちゃんと話しているシンタロー君を雑誌を読みながら、時々何度も見つめている。

『だからご主人!!日焼け止め買いましょうよ!!』
「いらねぇよ!!!」

今は真夏という訳ではないけど、日差しが強いから日焼け止めは買っていたほうが良いと僕は心の中で返事をしている。
雑誌を読み終えてシンタロー君に話し掛けてみる。

「シンタロー君って引きこもってたからそんなに肌白いの?」

僕の質問の返答は「部屋に居たら紫外線も浴びないからな」とツッコミも何もくれず、ただ正論を言われる。
僕になにか不満があるのだろうか。
それとも――
それとも、僕なんかよりエネちゃんと話しているほうが楽しいのだろうか。
シンタロー君にとって僕はただのメカクシ団のメンバーという存在なのだろうか。

★★★

今日はエネちゃんはキサラギちゃんの携帯の中に居るらしい。
ヒビヤ君から聞いたことだけど、キサラギちゃんとマリーとセトとエネちゃんとキドで買い物に行ってるらしい。
今アジトには僕と、ヒビヤ君とシンタロー君しか居なくて各自好きな事をしている。
僕はヒビヤ君とおしゃべりをしてキド達の帰りを待っていると、ヒビヤ君は用事があるとのことでどこかに行ってしまった。
アジトには僕とシンタロー君のたったの二名。

「シンタロー君」

いつも通りに話しかけて僕は何がしたいんだろう。
僕の中にはいつもシンタロー君が居て、シンタロー君の中にはいつもエネちゃんが居る。
シンタロー君にとって僕は必要がない。
僕なんてただ欺いて笑っているだけの気持ち悪い化け物でしかない。
いつからシンタロー君を好きになったんだろう。
どうしてシンタロー君なんだろう。
時間的にはキドやセトの方が付き合いが長いのに、どうしてシンタロー君を好きになったんだろう。
姉ちゃんと一緒に居たから?
姉ちゃんが勉強を教えてもらっているから?
姉ちゃんがシンタロー君の事を好きだったから?

「…ノ、…カ、…ノ、カノ」

いつの間にか名前を呼ばれていて、僕はびくりと肩を揺らして欺いて「何かな?」とおちゃらけて返事をする。

「何欺いてんだ」

シンタロー君は僕の額をデコピンして能力を解かす。
あぁ、そうなんだ。
僕が君を好きなのは――

「痛いよ~」
「っで、オレを呼んでどうしたんだよ?」
「んー?何でもない」

ニコニコと笑っているとまたデコピンをされそうだったので、額を必死にガードすると腰を揉まれてこしょばされる。

「ちょっ!止めて!!そここしょばいから止めて!!」

涙目になりながらシンタロー君に訴えるも止めてくれず、僕はされるがままになって暫くは呼吸もまともにできなくなっていた。

★★★

最近はシンタロー君と話すのが少ない。
シンタロー君はやっぱりエネちゃんと話してて、僕が話しかけてはいけないようなオーラを出している。
シンタロー君――
君は驚くかもしれないけど――
僕は君の事が――

「大嫌い」

シンタロー君の驚いた顔、エネちゃんのありえないものを見るような顔、僕は今どんな表情をしているんだろう。
気が付けば、僕はシンタロー君の首に手を伸ばしてその手の力を込めた。

僕が君の事を好きなのは、
僕の性格を理解した上で、話をしてくれるからなんだ。
驚くかもしれないけどシンタロー君、僕は君の事が――










「――大好きだよ」

【好きの果てに見える寂しさ】END

  • No.118 by ブラック  2016-04-05 05:20:45 

【幻があったから】

夢の中に誰かが立っている。
誰だろう。
ぼんやりと見える誰かはゆっくりこっちに歩いていきて、僕の目の前に来たと思えばいつもそこで目が覚める。

「…おはよう」

僕はアジトに居る皆に挨拶をしてどうやらソファで寝ていたようで、ソファから起き上がりアジトを見渡す。
アジトにはカノ、シンタロー、セトがアジトに居て他の皆はどこかに出かけているのだと思う。
僕は夢で見た人物を捜しに行こうと思ってアジトから出て、公園や商店街など様々なところに足を運ぶ。
けれど夢で見た人物は見つからなくて、晩御飯の時間にアジトに戻る。

★★★

そんな事をずっと繰り返しているある日の事。
僕はまた夢を見た。
誰かが公園のイスに座っているところや、ねぎまを食べているところ。
商店街をブラブラと歩いているところ。
今日はやけにくっきり見えて歩いている人物の姿が良く分かる。

「んっ…」

夏でクーラーをつけていて寒さから目が覚めた。
僕はアジトを出て、公園や商店街に向かってみる。
夢で見た人物はどう見ても僕だった。
僕と同じ格好で同じ姿。
僕の髪の色を真っ黒にした人物が夢の中でねぎまを食べたり、商店街を歩いたりしてた。
目的の場所に着いても目当ての人物がおらず、しょんぼりとしてアジトに向かっていると、見知った人物が僕の横を通り過ぎていく。
紛れも無い夢で見た人物で僕はその人物の後を追いかける。

「…ね、ねぇ…」

無我夢中で目の前の人物に話しかけて僕は真っ黒な自分の隣に並ぶ。
目の前の人物は僕を見た途端に目の色を変えて、「お前!やっと見つけた…」と言って僕の肩を掴む。
僕はどうしたら良いのか分からなく手首をかしげるも、目の前の人物が「夢でお前を見たから捜してた」と僕と同じ理由を言って、僕の肩をポンポンと叩いて「俺はクロハ、お前は?」と自己紹介を始めたので、僕も「コノハ…」とだけ返す。
クロハと名乗った人物と僕は初めて話をした。

【幻があったから】END

  • No.119 by ブラック  2016-04-05 05:21:42 

【教師と生徒と補習】※オリキャラ有り

俺の大事な休暇を潰した奴が居る。
長期休暇のはずが大体3分の1しか休みが取れない。
原因は補習。
俺の大事な大事な休暇を潰したアイツの顔を見に、今日も学校に向かう。
職員室のドアを開いて数少ない荷物を置いて、コーヒーを飲む。
アイツが来るのは大体30分後。
指定した時間の10分前に来るのが良いところ。
30分間何をしようかと考えたが、課題を作って残り20分となったところで携帯が鳴った。
アイツからだ。
今日休みますとかだったらぶっ飛ばしに行こうと決めて携帯を開く。
メールではなく電話だったので、通話ボタンを押した。

『もしもし、クロハ先生ですか?恋也(れんや)です』

何で生徒が俺の携帯電話を知っているかは、急に用事が出来た時に連絡が出来なかったら困るからと言う理由で教えた。

「あぁ、俺だ」

いつもの低い声で言った瞬間外から車が通る音が聞こえた。
数秒後、携帯の向こうから先ほど聞いた車の通る音が聞こえて何となく理解はした。

『あの…裏門が閉まってて入れません』
「あぁ分かった」

そこで通話を終了して裏門に行く。
裏門が見えた頃、金髪の髪が見えていつも通りに制服を着こなしていた。
姿が見えたところで金髪の少年、六条道恋也は端末を弄っていて時に空を見上げたり、地面を見たり、端末から目を逸らしている。
裏門を開けて、端末を取り上げる。

「ここは学校だ。しかも今から補習だ。端末は仕舞え」

六条道(ろくじょうどう)は俺が取り上げた端末を必死で取り返そうとしている。
182cmの俺からみたら173cmの六条道は小さく見えた。
端末に何かあるのかと思い、端末の画面を見ると俺は端末の電源をぶち切って自分のポケットの中に仕舞い込んだ。

「ちょっ、俺の端末返してください…」

六条道の端末にはの画面には何があったと思う?
端末を壊さないだけマシだろう。
隠し撮りされていたとは俺もこれからは気をつけないと。
六条道の端末には俺の隠し撮り写真や、ムービーなのがあった。
一瞬で壊したくなったがな。

「クロハ先生返してください!」
「んなもん見てる暇があったら赤点とらねぇように勉強しろ」
「え?嫌です」

一度殴りたいが、そんな事をすれば俺は教師失格だろう。
ぐっと堪えて裏門から職員室に向かう。

「ちぇ。折角裏門の鍵閉めたのに」

舌を打つ音と、聞き流せないセリフが聞こえた。
何となく疑問には思っていた。
何故裏門が閉まっているのかと。
俺が学校に入ったのも裏門なので、開いているはずだがどうしてか六条道が来る時には閉まっていた。
何故か可笑しいと思っていたらコイツが犯人か。

「お前か…」

振り返って睨んでみると六条道は表情を変えず、笑っていた。
不思議な感覚がして変な気持ちに襲われた。
多分、笑っているの目の前で見た事がないからだ。

「ん?どうしました、クロハ先生」
「いや、何でもない。職員室で待ってろ」
「先生が先に行かないんですか?」
「あぁ、ちょっと用事を済ましてから行く」

分かりましたと俺の横を通り抜けて行って、職員用玄関の方へ向かう。
俺は六条道の端末を取り出し、電源を付けてさっきの画像を全てチェックし削除する。
映像は後で確認しようと思い電源を切って職員室に向かう。
職員室のドアを開けると六条道は、ドアのすぐ隣の遅刻届けを書くスペースに凭れていた。

「用事は終りましたか?」
「ある程度はな」
「そうですか」

それ以上の事は聞いてこなくて、俺が指示した席に腰を下ろして鞄も机の下に置く。
俺は課題を六条道に渡して取りに行くものがあると行って職員室を出た。
俺はそのまま廊下に出て職員室から離れた場所で映像を確認した。

『九ノ瀬さん、今度の休み皆で食事に行くんですけどどうですか?』
『あ、すみません。用事があって行けないです』

最新の映像はつい最近の事で、俺が適当に断った時の映像。
大体が誘われても断っているので断った映像の方が多い気もする。
結構な数があって、1つずつ削除するが面倒になって先に全部見てから削除しようと決めたら、ふと目に映った単語がフォルダとして書いてあった。
フォルダ1【数学 課題】。
開くと更に細かく分けられていて、一つずつ見ていくと今日以外全ての補習の課題を作っている俺の姿があった。
こんな映像撮られていたのか。
フォルダ2【授業】。
フォルダ2は授業をしている俺の映像。
俺以外にも黒板や教科書とノートも映し出されている。
これはあの復習にでも使うんだろう。
削除対象から外そうとしてたら、フォルダ2の中にフォルダAがあった。
フォルダA【クロハ先生】
俺だけが映されていて、音声も入っていた。
丸秘フォルダ【コノクロ】
少し嫌な予感がしたが、開いてみると俺の予想通りに嫌な予感が的中した。

『クロハお疲れジュースあげる』
『んぁ?さんきゅ』
『クロハそのジュース媚薬入ってる』
『ぶっ!!』

俺は媚薬の入った飲み物を飲まされそのままコノハに抱かれた事がある。
フォルダAは削除。
大体のフォルダの削除が終って職員室に戻ろうと後ろを振り返ると、六条道が居た。
とかではなく誰も居なくてそのまま職員室に戻った。

「クロハ先生課題終りましたよ」

いつの間にか六条道は課題を終えて端末を弄っていた。
ん?端末?
俺が持ってるのは六条道の端末。
じゃぁ、六条道は誰の端末を持っているんだ?

「お前、その端末誰のだ?」
「自分のです。すぐに仕舞いますよ」

六条道は端末を仕舞って俺に課題のプリントを見せた。
俺はプリントを受け取り採点を始めるが、全部あっている。
間違いはなかった。

「お前、数学できるんだよな?全部正解だよな?何で赤点取るんだ?」

俺の質問に六条道は即答した。

「クロハ先生の補習が好きだからです」

笑いながら即答した六条道を一発殴りたいと心の底から思ったが、ぐっと堪えて新しいプリントを渡す。
六条道は受け取りものの10分で全ての問題を解いた。
しかも途中式すら書かずに答えだけを書いた。

「出来ましたよ」

そう言って渡されたプリントは全部正解で何でか悔しくなる。
一度だけ間違わせたいと思ってしまう。

「お前大学の数学やってみろ」

大学受験の問題をコピーしてプリントを渡す。
六条道はいつものすまし顔で問題を解いていた。
そして15分後。

「…全部あってる」

採点をすれば全問正解で悔しい。
すると六条道が急に提案してきた。

「俺に間違わせたいならクロハ先生が手作りで問題を作ってみては?数学以外でも何でも」

六条道にそう言われ1つの提案が浮かんだ。
口角を上げて笑いながら今日はもう良いと言って六条道を帰らせた。
次の日、俺は職員室に自分で作った問題を持ってきて、六条道が来るのを待った。
六条道はいつもの時間に来て、いつもの席に腰を下ろした。

「じゃぁ、このプリントの問題を解いてみろ」

素っ気無く渡しながら俺は六条道の表情を観察した。
俺が作った問題集はこうだ。

問題A
次の式に当てはまるものを答えなさい。
1鶏肉+ネギ=
2パン+卵+牛乳+砂糖=
問題B
色から連想されるものを答えなさい。
1黒+白=
2白+茶色=
最終問題
言葉と人で表されるものを書答えなさい。
1数学+人=

ちなみに答えがこう。

問題A
1ねぎま
2フレンチトースト
問題B
1珈琲
2タバコ
最終問題
3俺

問題Bまで解けたとしても最後は解けないはずだ。
なんせこの学校には数学教師は俺を合わせて3人居る。
数学補佐も合わせたら5人居る。
その中から誰を選ぶ。
俺以外だとこの問題はハズレ。

「あ、れ~?」

六条道の声が聞こえた。
何処の問題で躓いてるのかは知らないが何だか嬉しい気分になった。
解らないだろう、解らないだろう。
俺は間違ってくれと思いつつ、六条道を観察している。

「あー、こうで良いか。出来ましたよ」
「ん」

プリントを受け取り採点をしようとしたら、六条道の答えが合っていた。
いや、待て。
最初の問題の答えをはさみと書いてあるこれは間違いか?

「六条道最初の問題のはさみってあれか?紙を切るはさみか?」
「違いますよ、焼き鳥のはさみです。違う言い方をすればねぎまです」

やられた。
最終問題は何故か知らないけど、『クロハ先生』って書いてあった。
つまり、全問正解。

「全部合ってるぞ」

プリントを受け取り嬉しそうにもしないでコイツはプリントを仕舞った。
急にポケットから振動がきて携帯だろうと出してみると、六条道の端末でそういえば返してないのを思い出し六条道に渡した。

「有難う御座います」

六条道は端末の電源を切ってポケットに仕舞いこみ俺のほうを見てくる。
いつもその視線が好まない。
見透かされてるような感じがして気持ちが悪い。

「今日は昨日のプリントの続きをやったら帰って良いぞ」

プリントを渡し、六条道が問題を解いて帰っていった。


今日は普通に学校で3分の1の休みも取って学校に向かう。
生徒達が登校してきて、自分のクラスに入って思う。
六条道が居ない。
いつも必ず居る奴が居ないと物寂しいものだと思いつつ、出席をとる。
俺は六条道の担任でもあるから六条道を欠席にした。
きっと風邪でも引いたんだろう。
何時間目かは忘れたが、数学があってテスト範囲や新しいとこを教えて一日が終った。
暫く職員室に居ると六条道からメールが届いて開けてみると一文だけ書かれていた。

『貴方が好きです』

俺の返事を待つ前に六条道は転校すると校長から聞かされた。

【教師と生徒と補習】END

  • No.120 by ブラック  2016-04-05 05:22:31 

【熱が出たから】※オリキャラ有り

朝起きると熱があった。
微熱かと思って放置していたが徐々に体温は高くなり、仕方なく薬を飲んで横になっていた。
熱になった原因は分からないが、昨日の雨に濡れた事でも原因があるのだろうか。
―ピンポーン
インターホンの音が聞こえて体を起してドアに向かう。
セールスとかだったら無視でもしようと決めてドアを開けると、意外な人物が立っていた。

「よう」
「……」

夏場だというのに黒い服を着た九ノ瀬クロハを心配しても大丈夫だろうか。
重たい頭を無理やり上げてクロハに笑顔を向ける。

「おはよう、どうしたんだ?」

遊びに来たとかなら断れば良いかと思っている。
クロハは俺の様子が可笑しいのに気が付いたのか、俺の額に手を当てて驚いた表情をしている。
手をすぐにどけてクロハは俺を担いだ。

「え、どうした?」

いつもより回転が遅い為何が起きているのか分からない。
クロハは無言で俺の部屋に入り、ベットに俺を寝かせた。

「お前、熱あるなら寝てろ」
「寝てた時に来たのはクロハじゃん」
「悪かったって、何か買って来てやるから何が食べたい?」

食べたいものは無く、ただクロハを見つめているとクロハは勘違いかワザとかのどちらかで頬を赤く染める。

「ま、まさか…俺?」

一発殴ってやろうと拳を作ってクロハの右頬を殴る。
効果音はペチッと言う音だと思う。
力が入らない為意味も無く殴ったようなもの。

「いたい」
「痛くないくせに」

痛くも無いのに痛いと言ってきて頬を抓る。
数秒で離して食べたいものが無いと伝えて俺はそのまま目を閉じた。


ひんやりとしたのが額に乗ったのが分かる。
タオルか冷えピタか手だろう。
どれかは分からなかったが、額に何か乗ったのは理解できた。
目を瞑っていても仕方ないので目を開ける。
目の前にはクロハの顔がある。

「おはよ」

クロハの口が動いただけで俺は顔から火が出そうになる。
熱の所為と言えるけどそれ以上に赤くなる気がした。
クロハの手が俺の頭を撫でて、俺の頬を指でなぞって、その仕草だけで俺は幸せになれた。

「にやけてる」

にやけてても仕方が無い。
それだけクロハが好きで堪らない。

「クロハ…好き」

言ってしまったっと思ってからは遅くてクロハは顔を赤くしてそっぽを向いた。
それでもその仕草さえ愛しく思えた。

【熱が出たから】END

【心霊特集見た後になる事】※オリキャラ有り

「あっ…んっ、ヤダ…」

俺の下に居るのはシンタロー。

何でこうなったのかというと、俺がシンタローがホラーが苦手なのを知っていてわざと『真夏の心霊特集』を一緒に見たところから始まる。
二人で『真夏の心霊特集』を部屋を暗くして見ていると、やっぱり心霊系はカメラの端に映ったとかが多い。
けどシンタローはチラッと映っただけでも俺にしがみ付いてきて、テレビを見ないようにする。

「シンタロー大丈夫だから、俺が横に居るだろ…」

本日何回目かは忘れたが、同じことを言ってシンタローの背中に手を回して背中をさする。
ランキング順に映像を流すタイプなので今は第3位で、もうすぐ第1位にくる。
俺はテレビよりシンタローの反応の方が気になっていた。
丁度、第3位の映像が終って第2位の映像に変わった頃にシンタローが不思議な動きをした。
俺にずっとしがみついて、何かを我慢しているかの様な…。

「シンタロー」

気になって声をかけると、シンタローは頬を赤くして俺を見つめる。
そんな視線が可愛く見えたが、後で色々妄想などはしようと思いシンタローに躊躇いもなく尋ねる。

「トイレ行きたいの?」

俺が躊躇いもなく言った言葉にシンタローは顔を真っ赤にさせ、小さく頷いた。
第2位の映像も終ったと思われる頃には、シンタローは限界を超えているのか息遣いが荒くなり始めた。
さすがに放置するわけにもいかないし、かと言って俺は見るから一人で行って来いって言うのもアレなので、録画していたのを一度一時停止をしてシンタローをトイレまで連れて行った。

無事にトイレを済ませて、部屋に戻ってきて続きを見る。
第1位の映像はかなり恐怖もので俺でも一瞬身震いをした。
これがこの番組の最後の映像のようで、エンドロールが流れてきたので停止ボタンを押し、録画一覧まで戻って来て、『真夏の心霊特集』を削除する。
番組を削除してもシンタローは俺にしがみついたまま。

「シンタロー、消したからもう見ないから」

俺がどんだけ言っても意味ないのか、シンタローは首をフルフルと横に振って俺にしがみついてくる。
どんなだけ怖かったんだよ。というのを心の中で呟いて、シンタローを一人にさせたらどんな反応をするのか気になって、「俺トイレ行くから」と嘘を言って部屋から出ようとすると「俺も行く」とシンタローがついて来ようとするので、必死に止める。

「お前はさっき行っただろ!!」
「ほっとけ!!」

と反発してきたので、この作戦はなしにしようと思ってある事を思いつく。
このまま猛スピードで自分の部屋に入れば良いのではっと、思って猛スピードで自分の部屋に戻る。
所詮ヒキニートの力じゃ俺の早さにはついて来れないだろう。
ドアの鍵を閉めて、しばらくリビングの様子をドア越しに伺った。
少しやりすぎたかなと思ったが、後には引けないのでシンタローの反応を楽しもうと思う。

「え?なぁ…ちょっ、一人にするなよ…」

か細い不安の声が聞こえてきて、ニヤニヤとカノの様に笑いさらに聞き耳を立てる。

「なぁ、おい。レンヤ…!戻って来いよ…」
「レンヤ…早く…頼むから…ぁっ!」

聞きなれない声が聞こえて、俺は鍵を開けてシンタローの傍に駆け寄る。
シンタローはソファーの上で足を閉じて、ズボンをぎゅっと握っている。

「シンタロー!?どうした?何があった?」

俺が取り乱していると、シンタローは一言「トイレ行きたい」と告げた。
さっき行っただろと思いつつ、まぁ、ホラーが苦手なら仕方ないかと思いシンタローをトイレまで連れて行こうとすると、シンタローの顔が赤く染まる。

「どうした?」

顔を覗き込んで尋ねても、シンタローの顔は赤いままで顔色が変わることはない。

「取り合えず、立てるか?」

俺の質問にシンタローは首を横に振り、焦ったような顔をした。
多分限界が近いんだろう。
俺はシンタローの許可を取らずにシンタローを姫抱きして、トイレまで連れて行った。

あの後も何事も起きなくて、シンタローを一人で寝かすのは良くないと思い俺のベッドで一緒に寝る事にした。

【心霊特集見た後になる事】To be continued

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