新谷 2014-07-27 22:40:27 |
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P-16
いや、万が一ということもある。ここで死んでしまうというのも一興かもしれないが、自宅に1つだけ、どうしても他人には見られたくないものがあった。だから、飛び降りるのはやめておこうと僕は思い直した。
しかし、飛び降りないのなら、どうやってここから移動すれば良いのだろう。下を歩いている人たちに助けを求めるべきか。でも、僕は事を大きくしたくはなかった。
落ちないように、壁に沿うようにして立ったまま、周囲を確認すると、窓が目についた。あそこから建物の中に入れば、少なくともここから飛び降りるよりは安全に、下に降りられるだろう。
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蟹のように、壁に沿って横歩きをし、窓の方へと向かおうとしたら、どこからか蜻蛉が飛んできた。蜻蛉は僕の左目付近にぶつかり、僕は一瞬たじろいだが、すぐに首を振ってそれを振り払った。
気を取り直して、窓に向かおうとすると、窓の横にいつのまにか現れていた人の顔と目が合った。肌は建物の壁のままの煉瓦で、目だけがくりくりとした中年の男の顔だった。男は、
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客観的には須臾のうちに起こったことだったのかもしれないが、主観では何もかもがスローモーションに感じられた。
リスは確かにそう言っていた、ような気がする。選択権は僕にある、と暗に言われたような気がした。
落ちていく僕が見た空は、さっきまで淡い昼間の色だったのに、この時には一定していなくて、黒や紫やら緑色やらと目まぐるしく切り替わっていっていた。笑っているような白い月だけが、その中にあって、落ち着いていた。
ウ-7
犯人は同僚の村井さんでした。1人2種類当たるはずだったのに、村井さんがショコラを2つ食べてしまったので、私にはカスタードしか当たりませんでした。
《次に視界が戻ったとき僕は》
「ここも1つの分岐点だったと思う」
「重要なことだったのだけれど、どうであったのか、知っている人は教えてほしい」
1)目的地の街の駅に立っていた
2)自宅の椅子に座っていた
3)どこか屋外で横になっていた
4)
5)それ以外
大まかなことは最初の頁参照です.あと,補足事項が>12に掲載してあります.
引き続き,ボードの後に協力者が現れなかった場合は更新しません.
因みに先の選択肢4)は,細工文字です.遊び心(笑)から、マーカーを引かないと読めないようにしてみましたv.
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顎ががくんとなり、鈍い痛みが身体中を覆う。熱を帯びたアスファルトの感触が生々しかった。
通りすがったサラリーマン風の男性が、心配そうな顔を向け、大丈夫かと言いながら歩き去っていった。
足首も痛い。駅の出口にある僅か数段の階段。そこで足を踏み外して、転んだというのが今の僕の状況らしかった。正面から突き飛ばされて、背中から落ちたはずなのに、今の僕は俯せになっている。
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恥ずかしいとも思ったが、それ以上に、さっきサラリーマン風の男性が歩いていたことに気付き、僕はすぐに立ち上がった。膝と手の平がじんわりと痛む。服には砂が少しついていたが、ほろえば素直に落ちた。
周りを見ると、間違いなくここは僕が目指していた街で、しかも僕が立っている場所は駅の出入口という実に普通の場所だった。
ウ-8
昼休み、事情を聞いた係長がどことなく不機嫌になっている私の様子を見て笑いました。怒ったら、コンビニのお菓子をくれました。パッケージに可愛い猫のイラストが描かれていました。
P-25
ここしばらく、それがないために僕はとても苦労してきた。その探し物を、今なら見つけ出せるような気がした。
街はどこに行っても普通だった。怪しいものや不自然なものは何もなく、道を行き交う人々も、ビルの間を飛び交う鳩も、所々に残された意味不明な落書きも、何もかもが自然に存在していた。僕はそれが嬉しくてたまらず、それでも冷静を保とうと自省しながら、あちこちを回った。
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