夏氷氷 2014-02-15 15:24:24 |
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あの人は・・・私のお父さんじゃない。
私の名前は小谷 夏美、14歳。
私の家族の話を小説にすることが夢。
その夢への第一歩を踏むことにした。
ある日私は、お母さんの机の引き出しの中を覗いて見た。
そこは、いつもお母さんに触っちゃだめと言われている場所だった。
何気なく見ていたその手帳には、私の小さい頃の記録がしてあった。
そう、それは私の母子手帳だったのだ。
「今日、初めて夏美が寝返りをうちました。」
「夏美、元気に大きく育ってね。」
などと、書かれた幸せいっぱいの母子手帳。
だけど・・・
そこにはお父さんの名前だけ黒いマジックペンで消されてました。
どうして?
と、疑問を持つ前に私の中ではもう答えが出ていた。
いつも一緒にご飯を食べている男の人は私のお父さんではないということに。
私には、2つ下の弟がいる。
あきらかにお父さんの態度が私と違うのだ。
だけど悲しくも辛くもなかった。
そういうものだと私は幼稚園ながらに思っていた。
小学校2年生の時だった。
お母さんと、お父さんの喧嘩が毎日続くようになった。
吸わない煙草を吸うようになった。
お酒の量が増えた。
私は毎日布団の中で泣いた。
家族に聞こえないように。
喧嘩の理由は私だった。
「どうして平等に可愛がれないの?」
と、怒鳴るお母さんに対して
「平等に可愛がってる」
と、言い張るお父さん。
家族はもうバラバラだった。
私は弟が羨ましかった。
お父さんが弟のことをとても可愛がっていたから。
毎日、私のどこが駄目なの?と自分に問い続けた。
だけど答えはわからなかった。
後になって、弟はお父さんと血がつながっているということがわかった。
私と弟は半分だけの兄弟、小学2年生の冬その事実を知った。
その時の私の感情はもう、忘れてしまった。
何よりも辛かったのは、お母さんが鬱になってしまったこと。
部屋に毎日閉じこもるようになった。
毎日の食事は、おばあちゃんが届けてくれた。
1年後、お母さんはようやく仕事に行けるようになった。
仕事に行くにつれお母さんの笑顔は増えていった。
私はそれがとても嬉しかった。
だけど、寂しかった。
お母さんが仕事に行くと決まって1人だった。
今までは弟がいたのに。
毎日喧嘩して、だけど仲の良かった弟が・・・。
あぁ、私が母子手帳を見つけなければ・・・。
何度も後悔した。
だけど、あの幸せの日々は戻ってこなかった。
私は寂しさを紛らわす為、いつも明るく振舞った。
おかげで、学校ではいつも友達に囲まれていた。
友達からは、「夏美ちゃんはいつも笑顔で明るいよね」とよく言われた。
それが、私にとってプレッシャーだった。
私はどんな時でも笑顔でいないと・・・と思うようになった。
私にとって笑顔は苦痛だった。
その子は紛れもなく私の弟だった。
なぜ?どうして?
私の頭の中は、疑問でいっぱいだった。
だけど、嬉しかった。
3年ぶりに再会した弟はとても大きくなっていた。
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