猫村 癒柚 2013-09-27 19:37:31 |
通報 |
「……!」
(ばたーん!と頭からベッド下へと落ちる飼い主。そそっかしいなと思う時もあったけれど、まさかここまで漫画の様に驚くなんて余程驚いたんだろうな、とベッド下に落ちた飼い主を助けるべく「大丈夫?」といつものように近付き相手の肩に手を添える。猫だったらこんなことも話すことも出来なかった。そんなことを思いながら猫の時の様にぶつけたところを撫でることにした)
(/俺様!とか優しい!とか紳士!とかそういうものでしたらどんなタイプがよろしいでしょう??それによって口調もだいぶ変わるので…)
「っ、たぁ………ぁ、え」
(打った頭を抑えて座り込んでいれば、しゅたっと降りてきた見知らぬ少年に、確かに、ほんの一瞬だけ飼い猫の寄ってくる姿に重なる。
だが、いつも人のことでいっぱいいっぱいで、更に、ずっと女子校に通ってきているの自分には、恋愛なんて勿論、男子という生き物自体あまり免疫のないもので。
「ぁ、う…」
(肩に触れられようものなら、俯いて顔を一気に紅潮せる。「だ、いじょ、びゅ…で、す」と、舌足らずな言葉を並べ、動揺を隠せないでいる。
絶賛プチパニック中←
((んー、俺様もいいし、優しいのは大切だし、紳士も格好いいし…w決められないw
全部全部お任せしちゃいます!!!←
(いつもなら"大丈夫だよ、蒼。ありがとう"と可愛いらしい笑顔で頭を撫でてくれるはずなのに今日はどうしたことか。笑いもしなければ、目を右往左往に泳がし噴火するんじゃないかという程に顔が赤い。おまけに言葉を噛むし、身体も硬直、ギクシャクとはまさにこのこと。
「(いつもの癒柚じゃないな…まさか頭を…)」頭を打って熱でも出したのかと思い相変わらずギクシャクしている相手の額に自分の手を重ねる。「(…熱くはないと思うけど)」たった一人の飼い主、態度も違うし心配だ。
前に一緒にテレビを見ていた時、真剣な時人間は瞳を見つめて話すといいとかなんとか言っていた。猫だと目を見つめるのは威嚇とかそういうことになってしまうけど、住む世界の違う飼い主と飼い猫。しかも今、俺は人間。相手の瞳を真っ直ぐに見つめもう一度「本当に大丈夫?痛くない、のか?」と訊ねた)
(/じゃああくまでも猫っぽくをベースに、近所のおばちゃん達が言っていた紳士で優しい、時にはいじわるな王子様路線で行きたいと思いますw猫ツンデレ王子的な←)
「(どうしよう、この人…頭打っておかしくなっちゃったのかな…、だとしたら病院?)」
(自分の置かれている状況もよく把握できていないくせに、いつもの癖と言ってもいいのか、無意識のうちにまた人のことを考えている。俯いて、硬い表情のまま頭の中でぐるぐると考えを巡らせていると、額に一般よりぬくぬくとした掌の感触を覚える。
「え、ぇ」
(触れられればまた顔の赤が増すも、相手がすぐ離し悩むようにしていると、なんだか、人間っぽくないなと思ってしまう。
「(いやいや、どう見ても目の前にいるのは人間…。…でも、だとしたら…あれ、蒼、は…?)」
(まさかとは思った。が、その考えが出てきてしまえば、もう突き止めずにはいられなかった。大切な、立った一人の家族なのだから。
「あの、貴方…本当に、蒼、なの…?」
(伺うような上目線で相手に問う。相手の質問には答えずに、逆に質問で返す。今は相手の言っている言葉なんてどうでもよかった。
((ツンデレ!!?ナイスです。ツンデレ←
ツンデレ王子とか最強ですねw
これからおばちゃんに取られないようにしなきゃ←
「ん、俺だよ、蒼。猫の蒼」
(未だギクシャクとする相手はどうやら俺が飼い猫ということ半信半疑だが、信じてくれたことが嬉しくて思わず頬が緩む。猫なのに今だけ犬みたい。効果音を付けるとしたら"パァッ"がぴったりなはず。にこにこと相手を見つめ「ほら、毛の色白いだろ?」と自身の髪の毛を見るように促す。もちろん、金髪ということには全く気づいていない。
とにかく人間に慣れたことが嬉しい。「(これで癒柚を守れるし話せるし…寂しさも紛らわすことも出来るはず)」人になったことで今までみていた世界は一変。世界は薔薇色…はいい過ぎだけど(←)虹色に輝き始めた。額から手を外すとギュッと相手を優しく抱き締めつつもぶつけた部分を撫で「癒柚、これで寂しくないよ」そう呟いた。時折見ていた癒柚の寂しそうな顔。これからは寂しい顔をさせない、使命にも似た何かが自分の中で沸き上がってきた気がした。)
(/おばちゃんキラー蒼!←
実際に近所に金髪の王子様みたいな人きたら驚いて倒れますよねwww)
「本当に...」
(相手の言葉に反応すれば、でも私にだけ見せる人懐っこい犬のような笑顔に、蒼にいつも感じる癒しを与えられたような気がして、きゅんとした。
「え、た、確かに蒼の毛並みは白ですけど...貴方の髪は金髪...」
(そう言って手近にあった手鏡を手渡そうとしたらそこに自分の顔が映り、昨日の涙のあとがまだ薄っすらと残っていた。一瞬だったのに、それだけで目の前に人がいると癖になっているように、笑みの仮面を被った。そんなことより、と手鏡を渡そうとすれば視界が一転して、真っ暗な世界に入る。
抱きしめられたのだ、と瞬時に理解した。「ちょ、ちょっと...」すぐさま突き飛ばそうと相手のがっしりした胸板を叩くが、優しく呟かれた言葉に、自分の動きが止まる。
「(本当に、蒼なの、...)」
(聞きたいことは声にならず、蒼の何倍もある人間の体にすっぽりと包まれると、今まで感じたことのない人の温もりが伝わる。なんだか、妙に嬉しくて、幸せで、涙が滲んでくるような気がした。相手の服をキュ、と掴んで、何とか我慢しようとする。が、我慢しようとすればするほど、何故だか涙はじわじわと浮かんできて。
((確かに実際に居たら怖い人かと思うかも←
でも優しい人だったらめっちゃモテますよねw
((変換ミス気にしないでください!!
私なんて、ミスに気付かないことなんてよくあることですから←
「…よしよし、そんなに痛かった?」
(痛いとかそういうことじゃないことはわかっている。いつも、癒柚が泣いた時に自分がしたかったこと。それがやっと出来た。俺を飼い猫だったと信じてくれたのかキュッと服を掴み胸に顔を埋めてくる。いつもは自分よりも大きい相手がとても小さく感じる瞬間だった。
服を掴まれて気がついたこと。そう、猫の時は何も着ていなかったはず。なのに今は幸運なことにも白いTシャツにダークグレーのジーパンを着ている。ご先祖様に感謝、服を着ていなかったら癒柚に通報されていたかもしれない。相手を抱き締めながらそんな事を考えた。
「(でもまさか脱げないってことはない…よな)」猫の時は白い毛で覆われていた。その原理で今着ている服が白い毛の役割をしていたら。もちろん毛と同じく脱げない。白い毛がそれはそれで脱げたら気持ち悪いと思うけれど(←)少し不安になった俺は一旦癒柚の肩を優しく掴んで身体を離し、白いTシャツを恐る恐る脱いでみる。すると当たり前のように脱げる。馬鹿げたことだが本当に人間になれたことが確証された出来事だった。「(…………毛がなくて人間の皮膚だな、これ)」)
(/家政婦はみた的に見てしまうかもしれないですw
後、ロルが非常に馬鹿げた感じになってしまいましたがwこれはラブコメ的な感じでも大丈夫でしょうか〜?今さらですが←)
「っ、蒼…」
(なんだか認めてしまうのが悔しかったので、相手に聞こえないように小さく呟く。蒼が猫のままだったら、もしかしたら人前で泣くなんて一生あり得なかったかもしれない。それが、こんな早くにできてしまうなんて。「(でも、蒼ってこんなに格好いいお兄さんだったのね…)」思わずそんな考えが巡ったことは絶対言わないでおこう←
「(そういえば、服、着てるのね…?)」
(掴んでいたその布は、間違いなく目の前の蒼(仮)(←)が身につけている衣服だった。猫が化けた人間はしっかり服も着ているのかと思ったが、目の前の男が、蒼だと思うのは気が引ける。ゴロゴロと喉を鳴らして膝の上に丸まるあの愛くるしい姿は何処へやら…(←)
(そんなことを考えていれば、同じことを思ったのか、自分の着ているTシャツに手をかける蒼(仮)。かと思うと、ゆっくりその手を上へ上へと持ち上げる。少しずつ露になって行くその肌に比例して、少しずつ自分の顔に朱が散って行くのがわかった。脱いでもなお、自分の体を不思議そうに見つめる蒼(仮)。どうやら彼が猫だったと言うのは本当なのだろう。そろそろ(仮)をはずしてやろうと思った←
「うぁ、…っ」
(だが今はそんなことが問題なので無くて、彼が服を抜いでしまったことに問題がある。ただでさえ男性慣れしていない自分の目には、その程よく鍛えられた感満載の筋肉たちは眩しすぎた←。それから逃げるために俯いて体を寄せられるだけ寄せた。物が落ちた音も気に留められなかった。
((ラブコメの中にちょっとシリアス込みが理想かなーって思ってたんですが、蒼さんのレスは、なんだかいいお相手が見つかったなーと思えていますw
シリアス苦手なら全く含みません。家族いないくらいなだけで。
「癒柚、それ貸して」
(そういって沸騰したヤカンの様にピーッと音が鳴りそうなくらいに赤い顔の相手に近くに落ちている手鏡を貸して、と鏡を貸してもらう。鏡を渡して貰った時に手が触れる、するとバッ!と音が付きそうな勢いで手を引っ込める相手。「(…俺に触れたくないのか?)」
人間になった自分。どういう顔なのか。身体は生きて行くに不自由はなさそうだ。しかし顔は…。以前癒柚がテレビを見ながら顔がどうだとか言っていたが(様な気がする)"蒼、可愛いねぇ"と言って貰えていたあの頃の様に、受け止めて貰えるのだろうか。どんな顔でも癒柚のことは守る。そんな決心をして手鏡をバッと顔前に寄せ自身を写した。
「……………」
(鏡の中の自分。それは近所、いや、日本ではあまりみない顔だった。目はスカイブルー。うん、これは俺の目そのもの。しかしこの髪の色は如何なものか。ふらりと街の方に散歩すれば金髪の人は見かけるがその金髪とは似ても似つかない。何というか白っぽい金髪というか…。初めてみた自分の人間の姿は日本では見かけない顔で少々ショックだった←
鏡を返すと"クー"とお腹が鳴る。そうだ、今は朝の6時30分。ご飯の時間だ。癒柚の部屋に置いてあった少量のキャットフードを見つける。これがいつもの朝ご飯。朝ご飯前に少しだけ食べようと指で掴む。いつもより魅力的な香りはしないが口に頬りこみカリカリと噛み砕く。「(おかしいな、不味い)」思わず顔をしかめてしまう。もう食べたくない。でも腹は減った。
「癒柚、」未だ真っ赤な顔でペタンと床に座る相手にお腹を抑えながら「腹減った」そう伝えた)
(/そそそれは誉め言葉として受け取ってしまいますね!///←
ラブコメ好きなんですよー♪
ではその路線でいきますねっ
シリアスも了解です(^ω<))
「は、はい…」
(鏡を貸してと言われれば、顔を伏せたまま握ったままでいた手鏡を手渡す。だが、手が触れてしまえばまた緊張の糸が張る。ちらりと盗み見てみれば、なんだか少し予想外な顔をして自分の顔を見つめる蒼がいた。それが何だか可笑しくって、つい口元が緩む。
(ついじっと見入っていると、お腹が空いたのだろう。残っていたキャットフードに手を付け、口に放り込んだ。「(あ…。)」人間がキャットフードを食べるというなんとも奇妙な光景に、思わず顔が歪んだ。「(見てるだけでも気持ち悪い←)」思わず口を抑えた。蒼も人間の姿となった今、苦虫を噛み潰したような顔をしている。だが私は、とりあえず服を着てほしい。
「あー、ですよね…えーと、少し、待っていてください」
(やはりか、と思った私は、小さくコクコクと相槌を打った。相手を見ないように立ち上がると、キッチンに入ってトーストを焼き、簡単にスクランブルエッグと、ウインナーを炒め、猫舌である自分と、きっと猫舌のままである蒼のため、ぬるめのココアを淹れる。
「あの、そ、蒼?」
(恐る恐る名を呼んでみると、嬉しそうに振り返る姿を見て、「(あ、蒼だ…)」その時、始めて実感した。
「どう?」
(超期待の眼差しを向けられて、なんだか自信がなくなってしまったけど、次々と頬張る蒼を見て、なんだか気が抜けてしまった。家族ってこんな感じなんだろうな。また涙が滲んで来てしまった。でもこれは、嬉し涙だ。家族って、どんな会話をするんだろう。こんな事聞いたらなんて答えるのかとか、そんな考えしか浮かばなかった。
(腹減った。俺がそういうと"待ってて下さい"と何故か敬語で答えキッチンに向かった相手。"腹が減っては戦も出来ぬ"近所のおばあちゃんの家に遊びに行った時、テレビでやっていた時代劇でそんな格言(←)を言っていたと思う。本当にその通り。何はともあれご飯を作ってくれることが嬉しかった。しかし…視線もさ迷っていて目も合わせてくれなかった。視線を合わせ様とするとよそよそしく逸らされる。「(…やっぱりいつも通りにはいかないか)」人間になれるなんて思いもしなかったが"人間なったら"を考えた時はある。癒柚はきっと戸惑うに違いない、そうは予想していたもののまさか視線まで逸らす程とは。元飼い猫(今は人間←)からしてみれば心に少しだけ寂しいものがあった。
部屋を出てリビングに向かうとキッチンから漂ういい匂い。ウインナーなんて食うか!と思っていた猫時代は何処へやら、それは人間になってみると涎が出そうなくらいに魅惑的な匂いに変わっていた。あ、涎は出ないけどな、犬じゃあるまいし(←)ご飯を待つ間、庭を眺めた。猫の時とはまるで違う視界の高さに新鮮さを感じた。すると"蒼"とたどたどしく疑問系ではあるが名前を呼ばれる。何故か嬉しくて頬は緩むもののそれを抑えて(←)くるり、と振り返る。その瞬間だけいつもの癒柚の表情が伺えた気がした。
テーブルにはふわふわのスクランブルエッグとトースト、甘い香りのするココア、キラキラと輝くウインナーの油(言い方←)、全てがとても美味しそうだ。椅子に座り「いただきます」癒柚が何かを言う前にそう言って食べ始める。新鮮さと風味を感じながら美味しさを噛みしめた。"旨い"そう告げようと顔を上げると微笑みながら嬉しそうに一滴の涙が頬を蔦っていた。
涙は出ないが相手を見つめニッ、と軽く微笑み「旨い」そう伝える。そして「ごちそうさま、晩飯もよろしく」いたずらにそう告げる(本心だけど←)そうするとまたも逸らされる視線。…ふっ、これは照れと受け取ろう。そんなポジティブシンキングを獲得した俺はいつもの癒柚の様に食べ終わった皿を流し台に持って行った。
「そっか…」
(“旨い”。いつも独りだった。誰かの分も一緒に作ったり、美味しいねって言い合って食べたり、ごちそうさまって片付けをしたり、また作ってねって笑ってもらったり。そんな事が叶っている。現実なのだろうかと疑ってしまうような話だ。相手が片付けるのを見て、自分も急いで口に詰め込んだ。晩御飯も作るのかー…と相手の言葉を聞いて考え、「仕方がないからね。」ニヤける顔を隠すべく(←)そんな可愛くない事を言った。
(だが、問題はこの後だ。目の前の男が蒼だということは認めよう。だが、蒼と過ごして来て約5年。猫で言えば約5歳。しかし、人間の今となっては冗談にも5歳とは言えない。私よりは大人っぽいが、高校生くらいの年齢だったとしても、高校に行かせるわけにはいかないし、もしいったとしても勉強なんてできっこない。だがずっと家にいさせるのも不安だ。では働かせるのか?いやいや、それは仕事先が見つかるか…ていうかどうに見つけるんだ←。さっぱりどうすればいいかわからなかった。
「とりあえず、蒼?買い物に行こう。」
(まだ真っ直ぐ見るには抵抗があるが、相手が服を着る人間になった今、私の服を貸すわけにはいかない。こんなイケメンさんだし←。今蒼が身につけているこの一着しかないことは明らかだ。食器とか、お箸とか、服とか、布団も買わないと人間の体じゃ寒いだろう。
「…私、なんでこんなしっかり受け止めてるんだ…?」
(あまり騒がない自分にかなり引いた←。しっかり今後の生活の事とかも考えたりして。そもそも何故人間になったのかが根本的な問題である。人間になってみたいという願望なのか…、しっかり目的があるのか。
「あー、考えてたらごちゃごちゃしてきた。」
(独り言で呟いたその言葉をきっかけに、私は考えるのをやめた。起こってしまった事は仕方ない。いろいろごちゃごちゃになっている事は、ある程度整理がついたらあとでまた考えれば良い。とりあえず、着替えて来ようと部屋に向かった。
「…ん、よろしく」
(照れ隠しなのか顔をふいっと背けて返事をする相手を微笑ましく思い、温かな気持ちで短く返事をする。描写としては…これが漫画だったら白くてほわほわしたものが空中に浮いているだろうなぁ。
そんな温かな気持ちで人間になって話せたことの喜びに浸っていると買い物に行こうと誘われる。そうだった、癒柚はこれまで一人と一匹暮らし。片方が急に人間になったから色々揃えないといけない。「(人間になれたらとは思っていたけど…人間になったら生活費やらが増えることを忘れてた)」そうなれば必然的にお金のために働かないといけない。……まあ、それは後でいいか、後で考える。
癒柚が着替え終わり、俺が脱いだTシャツを部屋から持ってきた。こちらを見ることもなく腕を最大限に突き出す。それがなんだか面白くて「ありがと」と受け取りその場でもそもそと服を着た。
買い物に行くために道を歩いていると横からちらちらと視線が送られる。横を見るとバッ!と顔を逸らす癒柚。未だ視線を合わせないとなると、今まで見たいに膝に乗せて貰えることはないんだろうな、と少しだけ残念だった。癒柚の膝、温かいんだよね。まぁ……人間になった代償か、これも。そして癒柚の考えていることは猫の勘とやらでなんとなぁく察することが出来る。たぶんちらちら見ていたさっきは…「俺ね、たぶん19くらい。」年齢のことが気になっていたんじゃないかと思う)
「19...。」
(自分が考えていたことが分かったのか、自らの年齢を言ってきた蒼。19じゃちょうど高校を卒業した頃。大学にいっているか、仕事に就いているか、...ニートになっているか←。今の蒼はニート状態。大学に行かせるとしても、私のバイト代じゃ到底行かせることも出来ない。ていうか無意味だろう。仕事をさせるにしても会社員なんて無理だろうし、だが基本的な人間的思考を持っているようだった。やはり猫は猫なりに考えているのだろうか。だったら最初は同じバイト先に行かせてみようか。
「あ、蒼、ここ」
(いつも洋服を揃えている行きつけのお店の前を通り過ぎようとする蒼を呼び止め、思わず手を引いて中に入る。「どれにしようか?」一応私もれっきとした女である。ショッピングは好きだ。それに男の子の服を選ぶなんて初めてだから、ついわくわくして笑顔で振り返る。そこには、びっくりしたような、嬉しそうな不思議な顔の蒼がいた。「どうしたの?」とまた意識して目を逸らしてしまうと、掌に、自分より大きい手の力が加わった。やっと気付いた。私は自分から手を繋いでしまったのだ。その手を離そうと、バッと勢いよく引いてみたものの、蒼の力は思ったより強くて、全然振り払えなかった。“にこにこ”そんな効果音が聞こえてきそうなほどの笑顔を振りまいて、手をとったまま進んでいく。
「(私の馬鹿...)」
(手を繋いだことが恥ずかしいのもそうだけど、こんなイケメンと手なんか繋いでいたら、周りの人の目がとても気になってしまう。蒼みたいなイケメンと、こんな冴えない私なんかが一緒に居たら、遊ばれているみたいに思われても不思議じゃない。ほら、派手目の服が売っているコーナーにいたギャルさん達がこっちをチラチラ見て何か話している。まるで獲物を追うハイエナみたいな目だ←。一瞬でも離れたら、すぐ取られてしまいそうだ。蒼だって、もともと猫だったとしても、私みたいな奴より、綺麗な人が好きだろう。「(...なんか、やだな...。)」そう思って、繋いでいる手にギュウっと力を込めた。
「(あれ...ちょっと待て...?)」
(今まで冷静だった私の心が、一気に崩れた。布団や食器を買う=一緒に住む。大変だ。顔から血の気が引いたのが分かった。絶対今真っ青だ。いろんなところで、つーか、家中どこでも会う可能性がある。首をかしげながら難しそうに服を眺めている蒼をチラリ、と見やる。「いや、無理」小さく呟いた言葉は誰の耳にも届かず、ポトリとその場に落ちた。
(癒柚に付いて行きながら街行く人々をあまり凝視しないように眺める。見上げる程に大きかった人々が今ではこっちが見上げられる側。それに癒柚も意外と小さかった←
「…?」
人を見ながら、要するによそ見をしながら歩いていると急にキュッと繋がれた手。その手に引かれるように店に入っていった。人間になってから偶然に手が触れただけでまるでゴキブリを触ってしまったかのような(←)反応をされていた俺にとってはなんだか嬉しい出来事。
店に入ると色々な服がとにかく売っている。この中から選ばないといけないなんてなんて。目眩がするかと思った。店内をスタスタと歩いていると割とシンプルな、猫のような(←)一色のみの白や黒のTシャツ、革のジャケット、暗めのジーンズなどが売られている店を見つける。うん、ここがいい。いつまでも手を繋いでいるのは流石に動き難いので癒柚の手から自分の手をすっと外す。すると何だか寂しそうな、そんな表情をしたような気がしたがすぐに人間になってからの癒柚の反応に戻った。そして「これでもいいか?」と割と財布に優しい値段のTシャツやら何やらを見せると"うん、大丈夫"そう言ってくれる。
それにしてもさっきから、キラキラした……、シンプルとは程遠い女物の洋服が売っている店から獣の様な視線を感じる。「(……ダメだ、見てはいけない、人間になってまで闘いたくない)」猫だったらどんな獣でも負けず劣らず喧嘩を買っていたかもしれない。しかし今は人間。闘えば迷惑をかける。ひっそりと息を静める様に服の影へ隠れる。俺の勘違いだったとしても、猫の本能がそう働いた←
癒柚が少し離れたところで服を選んでいる時、店員らしき女性から"ご試着致しますか?"とにこやかに声をかけられる。「(ああ、俺がジーンズを持ってるから…)」サイズが合わなかったらお金がもったいない。ここは試着するべきだな、そう結論を着けると「お願いします」と店員について試着室へと向かった)
(蒼は、値段をしっかり見て選んでいるのだろうか。バイト代が入ったばかりだからと言って、この後買いに行かなければいけないものもあるため、あまり高価なものは買ってあげられない。だけど、シンプルな物を手に取る蒼は、きっと何を着ても似合うと思った。店員さんに声をかけられれば、“お願いします”なんて丁寧語で喋れる事に驚いた←。
(それにしても、さっきの店員さんといい、ハイエナ達といい(←)、全員顔をピンク色に染めて猫なで声で喋ったりして、よくそんな事ができるな…。「にゃー…」蒼がいる更衣室の前で待ってる時に、自分なりに猫なで声というものを出そうとしてみた。「(気持ち悪…←)」上手く出なくて、上ずった←。
(そんな事していると、“お待たせ”と言って出てきた、蒼。何故だか一瞬、周りがざわついた気がした。それもそのはず。さっきのだらんとした格好とは違い、キリッときた雰囲気を漂わせている蒼は、正真正銘のイケメンだった。「かっこいい…」私が思わずそう言ってしまったのだから。
("かっこいい"そう言われる。これは褒め言葉だよな。褒めてくれている。それが嬉しくて「ありがと」とお礼を言った。心の中では犬の様に喜んでいたけれどやはり元猫としてのプライドがある(←)、照れ隠しではないけれど少し感情を抑え冷静にそう応えた。
「そういえば、さっき何で猫の鳴き真似してたんだ?」2本目のジーンズを披露するべくシャッとカーテンを開け動いても不便はないかの確かめをする時、そう訊ねた。すると相手の目線は泳ぐ泳ぐ。…猫にでもなりたかったのだろうか←
それから小一時間。結局洋服はシンプルなものが多いその店で揃えた。ありがとうございました、またのお越しを〜と、店員がそう言えば俺は思わず頭を下げ「また来ます」そんなことを言ってしまった。だって親切だったんだもn←
「癒柚、次は何買いに行く?」そう言って店内を歩いて行くと、ふと相手が自分の荷物を一つ持っていることに気付いた。迷惑はかけたくない、そんな思いでヒョイッと相手が持っている自分の洋服をかっさらった←)
(素っ気なくお礼を言われて、気に入らなかったのかな?とすこし不安になった。だがしかし、彼は猫。ツンデレなのだと一人納得した←。猫の鳴き真似をした事に話が移った時は、まあ、焦った焦った←。だけど黙っていると何も聞いてこなくなったのは、私の事を思ってなのか、それとも、あまり興味がなかったのか。どっちにしろ、救われたのは確かだった。
(それから小一時間、会う人会う人(まあ店員さんだけだけど←)に愛想良くしている蒼にちょっと狡いなって思った。今日初めてこんなに多くの人と話をするくせに、もともと人間として生きてきた私なんかよりずっとコミュニケーションが上手い。「(私、あんなににこにこできない…)」嫉妬心にも似た何かを覚えたが、
あえて気付かないふりをした。これ以上蒼に悲しそうな顔をさせるわけにはいかない。少なくとも、私がギクシャクしすぎているせいで、寂しさというものを感じてくれているのがわかった。
「そうだね、次は…」
(次は?と訊かれられれば、布団は重いし、食器は途中で割れたりしたら大変だし、後の方に回したい。靴も買いたいな。とりあえずスニーカーを履かせてきてしまったけど、やっぱりちょっと男の子用には可愛らしかった。でもサイズを間違えたのあってよかったと思う。ネットで頼んだもので、届いた時には燃やしてしまおうかと考えたが(←)考え直しておいて良かった。
(なんて事を考えていると、ふっと腕にかかっていた重りが軽くなった。「…え?」蒼の顔を見上げると、とても優しそうな笑顔で私が持っていた荷物を盗っていた←。「あ、あの、大丈夫、だよ?」もともと2つ持っていた袋と一緒になったため、蒼は3つも袋を持っていた。さすがに可哀想だ。だけど、頭は布団は明日にしようと決心していた←
トピック検索 |