主 2013-06-22 18:50:00 |
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っ…、…後悔なんてするかよ。このまま俺だけが何も知らずにいるなんて御免だ。
(不意に乱暴に胸倉を掴まれたかと思うと、一瞬にして縮まる距離に息を飲み。目の前に近付いた端正な顔立ちに惹き付けられ、こんな時でさえ胸が震え。低く囁かれたその声に威圧の類いは感じられず、翳りを孕む悲哀な響きに助けを求められているような気さえして。彼が抱える闇から救い出し、全て受け止めてやりたい─、そう強く思ってしまう事実が、互いに無関係ではない事をしっかりと物語り。己にとって特別な存在だと素直に認めてしまうには未だ抵抗もあれば確たる証拠もない。しかし彼を知りたいという欲を止める事は不可能で、もっと近付きたいと逸る気持ちが鼓動をどくどくと加速させていく。真っ直ぐに相手を捕らえたまま表向きは冷静に今の本心を返せば、少々強引に引かれる腕に抵抗見せる事なく足を進め。そこで初めて相手の背後で戸惑いを隠せずにいる彼女の存在を思い出し、相手しか見えていなかった事を改めて思い知らされ、流石に罪悪感が生まれ。「…悪かった」立ち去る前に彼女にぽつりと残した一言は、様々な意味を込めた己なりの気持ち。彼によってこれから知らされる真実が己をどう変えていくかはわからないが、漸く己と向き合おうと決意したらしい彼に、期待に似た興奮で騒いだままの胸を抑える事が出来なくて。引き摺られるような形で着いて行く内、彼が向かおうとする先を察し。常に主導権を手にしていたい質としては腕を引かれたままの今の状況が癪に障り、此処で漸く振り切ると今度こそ相手が逃げてしまわないよう暗に牽制し)
…いい加減離せ。俺はお前みてぇに逃げたりしねぇよ。
(/彼女のような恋人が欲しいと思う程茂庭ちゃんは可愛いです、ハイ。また元気な姿が見れたら救われます…!
さて…いよいよですね。努力しなければならないのは自分の方なので、そちらは思い描く椿くんをどうぞそのまま出し切ってくだされば…b
力不足で大事な所で失望させてしまう可能性大なので、此方はせめて上原の心情だけは伝わるよう必死にお届けさせて頂きますね!
此方こそ、ここまで長いお付き合いをして頂けて幸せだと深く思います。キャラを借りなければ臭い台詞は中々言えませんが(笑)、飽きさせてしまわないようにと日々悩む身としてはそのお言葉は本当に有難く嬉しいものです(感激)
これからも一緒にドキドキしながら楽しんでいけたら幸いです。今年もどうぞ宜しくお願いします!)
…お前を逃がしてやったんだよ。知らない方がいいと思ったから、思い出さない方が幸せになれると思ったから…勝手に勘違いしてんな、ばぁか。
(道中強く振りほどかれた腕、何てことない行動のはずなのに今はその荒さが寂しくて僅かに視線を落とすと静かに言葉を口にして。確かに相手から見れば自分が逃げたと取られるのが普通のこと、けれども己からすればあくまで今の相手を守るための行動で、その指摘だけには反発を露わにすると掴むものが無くなってしまった掌をぎゅっと握りしめながらそのまま相手の前を先導し。きっと行き先が分かったから腕を振りほどいたのだろうと少しだけ理性的になってきた頭で理解し、だからこそその後は振り返らないままあの歩道橋まで歩みを進めていくと一度決心したもののやはりいざその時が来ると気持ちが重たくなってしまうのかいつもよりどこか重い足取りで歩道橋の階段を上っていき。階段を上り切ったところ、丁度あの日相手が落下したところで漸く足を止め後ろからついてきているはずの相手の方を振り返ると気持ちを落ち着かせるように深く呼吸をし。汚くて、自分本位で、とても好いた相手になど話したくない想い。それを含んだ相手の記憶を明かすことは自分にとって苦しいことだけれど、それをも含めた上で決心した相手との別れを迎えるため自分の胸元をぎゅっと握りしめれば静かに言葉を零し始めて。苦しくて、言いたくなくて、それでも決心したこの言葉を諦めたような寂しい笑みを浮かべながらぽつぽつと語っていくと、緩く首を傾げながら相手の反応を求めて。)
――…あの日、此処でお前が落ちた時一緒にいた女。あれ、俺だから。…男のくせに女みたいな格好して、お前と居たの。なんでそんなことになってたのか、当ててみ?…ヒ―ント、あの時の格好はお前好みの可愛い女だった。多分、そのくらいはそろそろ何となく思い出してきたんじゃないの?
――…なるほどな…それだけ聞けりゃ十分だ。あの時俺と一緒に居た女は…お前だった。は…道理で見つからねぇわけだ。
(相手が向かった先はやはりあの歩道橋。少し距離を置いたままゆっくりと段を上る相手に続くと不意に向けられる寂しげな表情をじっと見詰め、語られる言葉に静かに耳を傾け。探し求めていた女が今目の前に居る彼だったというを事実を知っても不思議と落ち着いている自分がいて。相手を見つめたまま静かに言葉を紡ぎ最後自嘲気味に笑えば、そっと視線を外し近くの手摺に手をかけ眼下を見下ろし。先程まで忙しかった鼓動はいつしか落ち着きを取り戻し、出口のない迷路にでも嵌まったかのようなあの焦りや苛立ちも消えており。彼の告白を割とすんなり受け入れられたのは、彼の言う通りそこに何となく気付いていた他、寧ろそうであればいいと、心の奥で願っていたからなのかもしれない。自分が彼に抱いていた特別な感情は所謂恋情だったという事を此処で初めて素直に認めようという気になり。今までの言動からすると、恐らくは彼も同じように己を想っていてくれたのではないだろうか。通り行く車や人の流れをぼんやりと眺めながら暫しそのまま口をつぐんだ後、外していた視線を相手へと戻せば手摺から手を外しゆっくりとそちらへ歩み寄り。彼と共に過ごした筈の記憶こそ未だ取り戻せないままだが、悲しそうに笑う彼が今はただ愛おしく。触れたくなる衝動のまま彼を腕の中に収めてしまえば答えは見つかるのかもしれない。込み上げるものを今はまだぐっと内に閉じ込め、先ずは相手の発言に対し反論しつつ己の心境も語り始め)
…知らない方が幸せだ?てめぇの方こそ勝手に勘違いしてんじゃねぇよ。俺はあの日の真相を知りたかった…そして振り払っても振り払っても俺の中に入り込んで来るお前が何者なのかも。
…お前に教えてやるたびに、お前が覚えてないってこと突き付けられんの。俺一人しか覚えてないって、すごく不安定で。もしかしたら、全部でなくたってどこかに俺の願望じみた妄想が混ざってるかもしれなくて…たまらなく、怖く、て…。――でも、もういいんだ。お前が覚えてないってことは、俺が忘れれば全部終わりってことだし。終わらせれば、もう苦しいことなんて何もなくなるって分かったから。
(相手が自分に真実を求めるということは、つまり求めることに対しては本当に何も覚えていないのだということを改めて突き付けられるということで。言葉で記憶喪失になったと伝えられるよりもずっと鋭く残酷なことでも相手にその自覚はなくて、自分が一人で苦しんでいるだけという状況すらこの場において不安感を煽る要因となってしまっていて。自分の身体を抱く腕の感触も、服越しに伝わってくる熱も慣れたものだったはずなのに今は懐かしさしか感じられず、自分ばかりが前に進めていない事実を突きつけられる抱擁にとうとう我慢できなくなった様に声を震わせると頬を伝う涙もそのままに絞り出したような声を漏らして。しかしそれも全てこの場で終わらせる、そう決めたからこそ相手に対峙することが出来ていて、そのまま相手の頬へ、首筋へ、胸元へと指を滑らせると制服の胸元をそっと握りながら相手の唇に口づけを贈り。)
…気持ち悪いことしてごめん。嫌いになって、いいから。こんな、男同士なのにキスなんてして、女装なんかにも手出して、いつまでも未練っぽい奴なんて…嫌いになっていいから。…俺も、俺のこと忘れたお前も、俺のこと思い出してくれないお前も、嫌いになるから。俺も、嫌いなお前なんて忘れるから…次会うときは、"どうでもいい"お前に初めましてを言うよ――。
(ゆっくりと名残惜しむように相手の唇から唇を離し、囁くような静かな声で言葉を続けると取り繕ったように口角を上げて。辛い想いも、甘い記憶も、全て忘れてしまえば苦しまなくて済む。散々考えた末に出た答えを実行すべく訪れたこの場で最後の挨拶をと相手にそんな心の内を仄めかす言葉をくちにすると突然相手の胸板をどんと強く押して。その反動で揺らぐままに自分の身体を傾けていき、あの日相手が転落した時と同じように自分も記憶を投げ出せるように祈りながらその身を投じて。)
お前…何言って――……、っ…
(真っ直ぐに向けられる瞳から不意に零れ落ちる涙に心を酷く揺さぶられ、その濡れた頬に触れたくなる。しかし何故か体が動かず、彼に釘付けになったままその場にただ立ち尽くし。涙と共に彼の唇から零れ落ちる言葉には関係を断とうとするかのような響きがあり、胸に鈍い痛みと焦燥感が走り。あの事件以来、彼がずっと計り知れない寂しさと悲しみに襲われ苦しんでいた事は表情や声色からもひしひしと伝わり、心臓が圧迫されるような息苦しさを感じる他、ここまで苦しめておきながら未だ彼を思い出せない自身への苛立ちと罪悪感に襲われ。とはいえ、漸く事件の真相を知り彼に対する気持ちも自覚し始め、これからだという時に、諦めたように拒絶の文句を並べられてしまえばじっとしていられる筈がなく、反論しようと口を開き。俄に触れてくる指先にぴくりと睫毛を揺らした次の瞬間、重なる唇に鼓動が震え、小さく目を見開いて。こんな風に己に触れる指先も、唇から伝わる熱も、記憶を失った己には初めての筈なのに、懐かしさと共に胸に染み渡る切なく愛おしい思いが言葉を失わせ。触れたくて堪らない衝動に手を伸ばしかけた刹那、胸元に受けた衝撃。ぐらりと傾く相手の身。ふらつきかける足元と同時、ぞわりと全身に粟立つ感覚はいつかの恐怖心を瞬時に呼び起こす。「…椿…っ…!」悲鳴のような叫びを発したのが先か、半分宙に浮いた彼の身に手を伸ばしたのが先か。目の前の存在を失いたくない一心で、後先考えず半ば飛び込むようにしてどうにか捕らえるも、立て直す事は不可能で。最初に身体に走る衝撃に小さく呻くと、後はひたすら相手を守るように無我夢中で頭を抱きかかえながら転がるように落ちていって)
――…なん、で…ッ、なんで逃がしてくれないんだよ!もう関係ないのに…嫌い、に、ならなきゃいけない、のに…ッ!
(階段に身を投げ出した時漸く想いの重さに苦しむ日々からもきっと解放されると一種の安堵すら感じていたのに、此方に伸ばされた腕に体を包まれる温もりに頭が真っ白になり。それでも二度目の落ちていく感覚の中咄嗟に相手の頭を手で押さえ、そのまま二人共々転げ落ちていき。体こそ相手に守られまたしても大した痛みも傷もないが前回と明らかに違うのは段差やコンクリートに強く擦れたため血の滲んだ両手、鋭く神経に響くようにじくじくと熱を訴える痛みこそあれど勿論記憶を飛ばす様な痛みではなくて。記憶を失った相手にとって自分はただの同性の同級生、勝手な自分の想いの区切りとして強引な口づけまで奪った相手を守り転げ落ちた姿はやはり記憶を失う前と同じ、自分の大好きな彼のままで。嫌いだと口に出し嫌われるための口づけをしたのも結局は諦められない自分の想いを押し殺すための行為で、それなのに今更過去の面影を強く訴える相手の姿に涙を堪えることなど出来なくて。相手の腕の中から抜け出して、あの日のように地に伏せる彼の姿を項垂れ見つめながらその頬に涙を落とすと吐き出すように悲痛な声を漏らして。こんな馬鹿げた行動に至るまで相手への想いを断ち切る気持ちでいたのに記憶を失っても自分を守ってくれた相手に押し留めていた愛しさは一気に噴き出していきだからこそまた自分の行動で相手を巻き込んでしまったことへの強い罪悪感に襲われてしまい。)
――…ッ…、て…め、ふざけ…んな、よッ…、な、に…考えて、んだ…この馬、鹿…
(共に転がり落ちていく身体がやがてコンクリートに打ち付けられては低く呻き、固く閉じていた瞼をゆっくりと開いて。己と同様、此方の身を守ろうとしてくれたのか、しがみつくようにしっかりと回された腕にそっと手を添えるだけで身体に走る痛みに反射的に顔をしかめ。しかしそんな痛みよりも、彼をそこまで追い詰めてしまっていた事による胸の痛みが何倍も強く己を襲う。もしもあのまま彼を失う事になっていたら─、そう考えた途端呼吸が出来ない程に脈が上がり、ガクガクと身体が震え出し。今更襲いくる恐怖と、彼が無事だという安堵に込み上げる感情で掠れる声をどうにか振り絞って相手を咎め、己を見下ろす彼に震える指先をゆっくり伸ばし、涙で濡れた頬にそっと触れ。触れた頬は温かく、生きている証を指先から伝え。目の前の泣き顔は、あの日薄れていく意識の中で瞳に焼き付けたものとよく似ていて。狂おしい程のいとおしさが突き上げる中で、愛しい存在との思い出が断片的に脳裏を駆け巡っていく。「――…椿…、」頬を撫でながら自然に溢れる名も、彼が落ちる瞬間咄嗟に口にした名も、己にとってはかけがえのないものだと再認識する。溢れる様々な感情に目頭が熱くなり、視界が歪んでいって。「…泣くんじゃねぇって…言っただろうが…」掛けたい言葉は山ほどあるのに胸が一杯で言葉にならず、ただいとおしい存在に触れたままあの日最後に口にした言葉を震える声で紡いで)
ッ、うそ…!っ俺の、勘違いとかじゃない、よな…ッかず、さ…和瑳、和瑳ぁ…っ!
(頬に触れた相手の少し骨ばった男性的な指が涙を優しく拭った時、少しだけクリアになった視界で涙を瞳に浮かべる相手の顔と見つめ合う中口にされた一言に思わず一瞬動きを止め。相手が泣くなと口にしたのは自分の思い違いでなければ相手が記憶を失う前、最後に言葉を交わしたあの日転落直後の歩道橋の下だったはずで、混乱から上手く働いてくれない脳みそに心の中で叱咤を飛ばしながら今の状況を理解しようとし。もしも転落のショックで相手の記憶が戻ったとしたら、そんな希望交じりの偶然がこの場に起こったのだとしたら、この状況に振り切ろうとした想いをそのまま切り捨てられるはずもなく急速に胸に浸み込んでくる封じようとしていた愛しさに苦しささえ滲んだような吐息を漏らしながら言葉を零していき。記憶を失った日から呼べなかった相手の名前を感極まったように何度も何度も繰り返しながら相手に手を伸ばすと、再び引き起こされた事故に集まりだす群衆など気にも留めず相手の頭を膝に乗せそのまま腕で抱き寄せ。相手の髪に額を埋め小さく擦り寄りながら熱っぽさを孕んだ声で繰り返し相手の名を囁くと上手く表現できないくらい体の中で暴れ回る歓喜の想いから口元を微かに緩ませて。)
…一人にして悪かった…もう二度と…離さねぇから…。
(抱き寄せられる中、耳元で何度も繰り返される自分の名。愛する者に名を呼ばれる事の嬉しさと、急速に込み上げる愛しさは喉元も胸も焼き付くしてしまいそうで。歓喜と幸福感の余り上手く言葉が出ないままゆっくりと上半身を起こせば、走る痛みなど気にも止めず、腕を回してしっかりと相手を抱き締め。その抱き心地や匂い、体温が酷く懐かしく思え、恋しさに頬を軽く擦り寄せるようにしながら想いを込めて言葉を紡ぐと、いとおしそうに頬に唇を寄せ。腕の中の存在が己にとってかけがえのない存在だと再認識したとはいえ、直ぐに気持ちの整理をするのは困難で。「椿…」突き上げる強い感情をどう表現していいかさえわからず、今はただその温もりを強く感じていたく、愛しい名を紡ぎながら二度と離すまいときつくきつく抱き締め。そんな中、先程の騒ぎにがやがやとし始める周囲に漸く意識が向き。もう少しこのまま相手を感じていたいのは山々だが、いつまでも此処には居られない。「…立てるか、椿」少し力を緩め腕の中の相手を気遣うよう声をかけると、相手を支えるようにしてゆっくりと立ち上がとうとして)
ッ、ちょっとだけ…腰、打ったかも…。ある、ける…っ多分…。
(昂った感情に身を任せてしまっていたものの少しずつ落ち着きを取り戻してくると周りの状況も同時に理解し始めて、階段から転げ落ちてきた自分たちへの心配か好奇か周囲から向けられる視線によって漸く冷静さが戻り。未だどくどくと高鳴る鼓動こそ収まらないものの周りを見る余裕くらいは持てる様になり、相手に支えられながらもゆっくりと立ち上がろうと体を起こせば転がり落ちる途中で打ってしまったのか鈍く響くような痛みを訴える腰に小さく呻いて。歩けないほどとは言わないが恐らく服の下は青あざくらい広がっていそうで、僅かに顔を歪めながらも小さく言葉を口にすると緩やかな動作ながらどうにか足を立たせて。ちょっとした傷や鈍い痛みこそ抱えていても意識ははっきりしているし足腰も一応立っていて、相手も見たところ骨折などといった大きな怪我は見受けられない。そのうえ相手の記憶も戻ったとなればこんな幸運に胸が騒めかない訳がなく、こんな状況なのに緩みそうになる口元を堪えながら相手の方を改めて向くとそっと言葉を続けて。)
…早くふたりになりたい、けど…どうしよ。もしかすると救急車呼ばれてるかも、だし…。どっちにしろ、和瑳は病院行かないとだめ、だよな…。
…病院、行った方が良さそうだな。このまま俺が連れて――…、
(ゆっくりと相手を抱き起こす最中、案の定痛みを訴える声がし。必死で庇うようにしたとはいえ、あの高さから転がり落ちれば到底無傷で済む筈もなく。二度目という事で本能的に身を守ろうとする作用が働いたのか、あちこち鈍い痛みは走るものの前回程大きな外傷もなく。己に比べ辛そうな相手を病院に連れていくのが先決と考え、近くのタクシーを拾うべく視線をやったその時、誰かが呼んだらしい救急車のサイレン音が耳に届き。程無く此方に向かってくるそれが視界に入ると、その場で大人しく待つ事にして。降りてきた隊員に状況等を説明後、指示に従って救急車に乗り込み。暫し静まっていたサイレンが再び鳴り出すと、小さく息を吐いて相手を改めて見つめ。─目の前にいるのは狂おしい程愛しい恋人。ふと視線を向けた先には擦りむいて血にまみれた掌。痛々しいそれに胸が締め付けられ、言葉に詰まりながら優しくそっと手を添えて俯き。あれ程恋焦がれたかけがえのない存在を記憶から消していた事や、あんな行動に至らせるまで追い詰めてしまった己への怒りより、今はただただ彼が生きていてくれた事への安堵や嬉しさが勝り。相手もまた己を庇おうとしてくれただろう、痛々しいその手が酷く愛おしく抱き竦めてしまいたくなる。重なる手を見つめる瞳は次第に涙の膜を張り、少しでも揺さぶられたら零れ落ちてしまいそうで。俯いたまま片手で隠すように額を抱えながら相手を何度も咎めるしか出来ない一方で、隠し切れない安堵の思いを震える声で弱々しく添えて)
…っとに、お前は馬鹿過ぎて笑えねぇよ……なに考えてんだ馬鹿野郎…っ…、……お前、に…もしもの事がなくて良かっ…た…。
(/やはり処置は必要かと取り敢えず救急車に乗せてみましたが、この後お考えがおありでしょうか?此方としましては処置をする辺りは飛ばして、その後椿くんを自宅に送るなり病院に一泊するなり、少し落ち着いた辺りからまた始めるのがやり易いのかなと思いますが…何かお考え、ご希望等ありましたらお聞かせ下さいませ!
いずれにせよ互いに無理出来ない状態なので、再会(?)がどれだけ嬉しくどれだけ高揚してても、上原には色々堪えて貰わなきゃいけませんね。…無理難題ですが/笑)
…ん、馬鹿だったかもな。今思うと、やっぱり忘れるとか、嫌だなって思うから。…馬鹿、だったなぁ…。
(やはりこれだけ大きな事態だったのだから誰かが救急車を呼んでくれていたのだろう、ほどなくして到着したそれに乗せられ近くの病院へと搬送されていき。勿論傍には救急隊員がいるからこそ相手と接触することも気が引けてしまい応急処置として両手の血をある程度拭われた後視線だけ相手の方に向けようとすれば、みすぼらしい傷だらけの手にその手を添えながら此方を窺う相手が目に入り。俯いたまま口にされる言葉は安堵の色を感じさせはするものの酷く弱々しくて、自分が相手にしようとしていた所業の重さを再度認識させ。今思えばあまりに短絡的で馬鹿げた発想、相手が自分を忘れてしまったことを言い訳に自分だけが楽になることを肯定しようとした身勝手な行動に苦笑しながら呟きを漏らすと、冷静になるにつれて込み上げてくる記憶を失ってしまっていたかもしれないという恐怖感に小さく身を震わせ。それでも相手を一度失いかけたからこそ、今相手が抱えているであろう喪失への不安感は痛いほど分かり、そっと慰める様に相手の頬を片手で撫でながらその先の道中を行き。)
(/そうですね、この後はお互いそれなりに心身へのダメージも負っていますし検査を含め一日入院にでもさせようかな、と思っておりました。同じ病室にでも突っ込んでまだ全快とは言えませんが一先ず再び恋人同士に戻れたことを噛み締めさせてあげられればといった感じでしょうか?勿論お互いに我慢する部分も付きまとってきますが(笑))
(呟くような相手の声と頬をそっと撫でてくる手に感情が込み上げ、きゅっと唇噛み締めながら溢れそうになるものを堪え。優しいその手に自分の手を添え、その後は何を話すでもなくぼんやりとした頭の中で相手の存在の大きさを噛み締めながら病院に到着するのを待ち。やがて搬送先の病院で検査を受け、相手より先に病室のベッドに落ち着いて。検査を受けている内、到着した時には明るかった窓の外はいつの間にか薄暗くなっており、検査も兼ねての入院という形で今夜はこのまま病院にとどまる事になった事の他、相手と同室だという事を付き添いの看護師から知らされ。ゆっくり休むようにと告げて部屋を出て行く看護師を見届けると、軽く包帯を巻かれた腕を見つめ、ゆっくりと長めの息を吐きながら視線を天井に移し。─まだ検査中の相手は大丈夫だろうか。「……椿、」彼の身を案じる中、今日の放課後にあった出来事が脳裏で再生され、彼の表情や言葉や仕草が胸を切なく締め付け、愛しいその名が自然と唇から零れて。相手の帰りを今か今かと待つ間、一日の気疲れと安堵からか瞼が重くなり、うとうととし始めてしまい)
(/了解です!搬送され検査を済ませ病室に戻るまでの経緯を勝手ながらある程度飛ばさせて頂きました。
同じ病室という事で、一足先に椿くんの帰りを待っておりますので、やり易いシーンからお好きなように始めて頂ければと思います^^)
――…かず、さ…?…もう寝てるか。
(病院についた後相手とは別で此方も検査に回されることとなり、一応頭を打っていないかやら骨に異常がないかやら一通り調べ尽くした結果両手の擦り傷などといった外傷以外は特に問題ないだろうということが分かり。あまりの検査の多さに自分のしでかしたことをじわじわと再認識し少しだけ怖くなったものの一先ず一日入院で様子見の後帰宅しても大丈夫らしいという結果に安堵し。そうしてあれこれ調べられているうちに大分夜も更けてしまい、看護師さんに案内され病室の前まで到着すると先に入室していると聞いた相手が寝ている可能性も考えそっと扉を引いて。案の定二つ並んだベッドの片方にあるふくらみに相手が寝ているだろうという推測が立てられると時間も時間だから仕方ないとは思うもののどうしても込み上げてしまう静かな寂しさに小さな呟きを漏らして。そっと相手のベッドの方に歩み寄っていき、そのまま傍に置かれた椅子に腰かけて布団の膨らみ越しに相手を見つめると、記憶を失ったあの日もこうしてベッドに静かに横たわっていたのだろうか、なんて勇気が出ずに見舞いにも行けなかった過去のことを思わず連想しあの日の悲しみと、漸く相手の中に自分が戻ってきてくれた実感からくる嬉しさとでほろりと涙を零してしまい。)
(/少し時間を置いての入室という形にさせて頂きましたが、和瑳くんがそのまま寝てしまったかどうかという旨は流れとしてそちらにお任せしたいと思います。それでは引き続きよろしくお願いいたします!)
――…椿…。…また泣いてんのか…しょうがねぇな…。
(夢か現実か曖昧な浅い眠りの中、誰かの気配を傍で感じた気がしてゆっくりと瞳を開け。ぼんやりと視界に入るのは、漸く思い出す事が出来たかけがえのない愛しい彼。見つめ合う間もなくその形の良い瞳から涙がほろりと零れ落ちれば、切ない程のいとおしさに胸をきゅっと締め付けられながら愛しそうに笑みを浮かべて。そっと手を伸ばし、濡れた頬に触れながら紡ぐ名や言葉は甘ったるい程に優しい響きで、今まで辛い思いをさせていた分甘やかしたくて堪らないという思いが溢れており。言葉や温もりで伝えたい想いは沢山ある。しかし張り裂けそうな程のその想いを先ずはどう消化すべきかわからない。今すぐ抱き締めて思うがまま口付けて─…、それはずっと一人にしておきながら余りに勝手だろうか。触れた手で頬や唇の輪郭を確かめるようにゆっくりと優しく撫でながら、ただ愛しくて堪らないという眼差しを向けていたが、不意に我に返ったようにはっとすると一旦手を止め。「検査…どうだった、何も…なかったか?」少し不安が混ざったような真剣な表情でじっと見つめながら、今最も大事な事を問い)
…何で、触るの止めんの。もっと撫でてよ、手でも肩でも、唇でもどこでも触ってよ。
(相手が寝ているものだと思ったうえでその姿を見つめているだけでも涙がこぼれてしまったというのに、そんな彼の声が聞こえてしまえばこれ以上寂しさに頑なになっていた心を留めておくことなど出来なくて。次から次と零れてくる涙を誤魔化そうとするように何度も拭っているうちに伸びてきた相手の手の感触は酷く懐かしく感じられて、それだけ相手に触れられていなかったことを再認識すると共にこの感触が自分の元に戻ってきたことに胸が震えれば問われた検査結果の旨について小さく頷いて。しかしそこで止められてしまった相手の手に名残惜しさを感じればかつてのようにいつも触れられていた状況では我慢出来ていても漸く焦がれていた相手を取り戻したばかりの自身にとってそんな辛抱は耐えられなくて、止まってしまった相手の手に自分の手を重ねそのまま自らの頬に押し当てさせると相手の指先を絶えず零れる涙で濡らして。焦がれていたものが目の前にある状況で求めずになどいられず、我儘じゃないかだとかまずは互いの怪我の具合を見てからじゃないかだとか、頭には理性的な考えが浮かぶのにそれよりも早く口から零れた本音に任せ強請る様に相手の手に頬を寄せればぎゅっと瞳を閉じながら唇を噛み締めて。)
…だったらもっと、こっち来いよ。もっとちゃんと…お前を感じさせろ。
(壊れ物でも扱うように優しく触れた指先を相手の涙が濡らしていく。止めどなく溢れる涙や触れてほしいと懇願するような言葉、温もりを求めるように擦り寄る行為に切なさと愛しさで胸が震え、言葉を詰まらせながら瞳を揺らし。事故とはいえ、大事な存在の記憶から綺麗に消されてしまうのはどれ程深い絶望感なのだろう。目の前の相手がどれだけ苦しんで来たかなど、所詮立場を置き換えての想像でしかわからない。自分は自分で常に彼が頭から離れず悩んできたとはいえ、残された方の悲しみや寂しさや痛みに到底及ぶ筈もなく、そんな自分が彼を求めるまま触れてしまっていいのだろうか、そんな迷いが掠めて。以前の自分ならばそんな事お構いなしに欲任せに求めたのだろうが、共に過ごす内に見えてきた彼の繊細な部分を大事にしたいという思いが己を慎重にさせ。とはいえ先程から突き上げる触れたい、抱き締めたい、笑顔が見たい、そんな衝動を抑え込むのは不可能で。ゆっくりと上半身を起こせば、もっとしっかりと深く触れ合えるようベッドの上に誘おうと、やや強引に引き寄せて)
ッ、そっち、もっと寄って…。
(やや強い力で自分を引き寄せる相手の腕、こうして招き入れてくれるということは相手も自分を欲してくれているのだろう。長く寂しい時間を過ごしていた身としては言葉でも行動でも、相手が自分を求めているという実感を得られることがとても嬉しくて、ぎゅっと甘い痛みを響かせる心臓を落ち着かせるように胸元を握りしめてから導かれるままに相手のベッドに足を掛けると相手の横に並ぶような形でベッドと布団の隙間に体をすべり込ませていき。本来ならば相手の身体に乗り上げるなりして僅かな隙間もなくなるくらい固くきつく抱き合いたいけれど、どれだけ想いが熱を帯びようと今はお互い転落で体を痛めている状況、いくら我慢をしないと決めたからといってそれで相手の身体を辛くさせてしまうなんてやはり理性がストップを掛けてしまい。それでもぴったりと相手の体に横から腕を絡め、胸の辺りに頭を寄せることで服越しにも聞こえる相手の鼓動に耳を傾ければ時折すん、と鼻を鳴らしながらどこか安心したように目を伏せて。)
――…お前の夢…見てた。
(潜り込んでくる相手の身体の状態を気遣いつつそっと抱き寄せるも、甘えるようぴったりと身を寄せてくる相手が愛おしく、しっかりと抱き直しながら相手の髪に頬を擦り寄せ。久しぶりに得た匂いや抱き心地、懐かしさと恋しさに震える胸を落ち着かせようとゆっくりと息を吐き出し。相手との記憶を失くしている最中も心の何処かで求めていた、この心地よい体温や鼓動に酷く安心感を覚え、切なさと幸福感の他にひしひしと感じるのはやはり己には彼が必要だという事。伝えたい事は沢山あるのに、好きだという思いが溢れて言葉にならないまま余り意味のない事を口にするのがやっとで。自分にとって相手がどれ程大切か離れていた分しっかり言葉で伝えたいのに、寂しくさせていた分壊れる程強く抱き締めたいのに。思うようにいかないもどかしさに歯を噛み締め、首の辺りに擦り寄るよう顔を埋めながら抱く力を少しだけ強めて。首筋に寄せた唇に微かに触れる脈や温もりが彼が生きている証を伝え、トクンと深く胸に響く。“もしもあのままこいつが─…”、改めてそう考えると、相手の熱を感じたくて堪らなくなって。指通りのよい髪を撫でながら顔を上げさせれば熱と葛藤を孕んだ瞳で見つめ、心境をゆっくりと紡いでいく。「…椿…、上手く言葉が出ねぇから…お前を抱く事で伝えたい。けど…それも叶わねぇならせめて――…」しかしそれさえももどかしくなる程に彼を求め、傷付けてしまった彼を安心させたい、満たしてやりたいという気持ちが突き上げ。最後まで言葉に出来ないまま彼の額や瞼にゆっくりと唇を押し当てていき、いとおしそうに見つめては唇を重ね)
(/長くお返事が滞ってしまっていて申し訳ありません…最近といいますか、新年度が始まってから何かと忙しくお返事をきちんと考える時間があまりないのに加え、長くお付き合い頂いているからこそのマンネリに近いような、そんな考えからこのように日にちを開けてしまいました。飽き性なのか不意にお返事を考えるのに非常に時間を要してしまうことがあり、申し訳ない限りでございます。
つきましてはまことに勝手ながらもう少しだけ距離を置く、といいますか、暫くお返事をお休みさせて頂けないでしょうか。やり取りを止めたい訳ではない、この二人の物語が嫌になった訳ではない、だからこそ少し時間をおいてまたフレッシュな気持ちでやり取りに臨みたいと思った故の提案でございます。
お待たせしてしまっているのに、このような身勝手を本当にすみません。それでも、どうかご理解頂けないでしょうか。)
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