マイリ 2012-10-07 16:06:50 |
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桜が舞い散り始める春の初め。
世にも珍しい銀色の髪の毛をポニーテールにし、赤い瞳を瞬かせている一人の女の子。
「桜全寮制学園」と書いた門の前に、とろけるような笑顔で立っているその女の子に頭には、
これからの生活に怒る波乱万丈な日々など、想像できるはずもなかったのである。
紅音(以下、紅)「うわぁ、大きな桜の木!」
私は、門のそばに立っているその大きな桜の木を目の前にし、とてもビックリした。
「桜」と学校の名前にあるのにピッタリな、大きな桜の木である。
大きな桜の木は、とてもきれいに咲いていた。
私の名前は水上紅音。これから、この桜全寮制学園に通うことになった新入生だ。
今日は入学式。新しい先生にあってから、体育館に向かうんだそうだ。
優香(以下、ゆ)「おっはよ~~!紅音!」
肩までの内巻き黒髪を揺らしながらかけてくる女の子。
私の親友である、水森優香だ。「ゆっか」と呼んでいる。
紅「おはよう、ゆっか」
ゆ「いよいよ入学式だねぇ。緊張する~~」
紅「カッコイイ男の子いたらいいね♪」
ゆ「変なこと言わないでよ//」
紅「はいはい(クスッ」
私たちは、幼稚園からの幼馴染だ。私が昔苛められていた時、ゆっかはよく助けくれた。だから、ゆっかは私の恩人でもある。今では私のよき相談者だ。
””ドンッ””
誰かとぶつかった。
紅「あ、すみません」
私はすぐに謝った。
私にぶつかった茶髪の男の子は、何を言うともなく去って行った。
ゆ「何あれ、感じわる~い」
私もいい気持ちはしなかった。
ゆ「ねぇ、早く行かないとヤバイんじゃない?」
紅「ホントだっ!急ごう!」
私たちは大急ぎで教室へと急いだ。
紅「確か一組だったよなぁ……」
ゆ「あったよ、ここだ!」
なるほど、確かに、「一年一組」と書いてある。
ガラガラガラッ
教室のドアを開けた。
教室の中には、まだ数人しかいなかった。
ゆ「なぁんだ、まだ大丈夫じゃん」
紅「どこでも座っていいみたいだよ。席を決めようよ」
ゆ「私窓側がいいなぁ。桜の木が見えるし」
確かに、窓側からはキレイな桜の木が見えた。
紅「じゃあさ、私は窓側の一番後ろで、ゆっかはその前ってどう??」
ゆ「ナイスアイディア、紅音!そうしよ」
私たちは、空いていた席に腰かけた。
ここは、山奥にある学校だから、知った顔はゆっか以外にいない。
ちょっと寂しいな……
ゆっかは、「ほかの教室見てくるーっ!」
といってどこかへ行ってしまった。
暇だ……
ガラッ
まだ誰か一人入ってきたようだ。
ちらっと横を見ると、何と今朝の茶髪の男の子だった。
茶髪の男の子だから、茶髪って名前にしよ♪
と勝手に私は決めてしまった。
その男の子は、私をちらっと見ると、私の隣の席にどかっと座った。
そのままどこを見るともなく無口だった。
紅「あ、あのさ……」
茶髪(以下茶)「………なんだよ」
紅「朝ぶつかったよね?あのときはゴメン」
茶「……別に」
それ以上はしゃべらずに、黙ってしまった。
感じ悪いヤツ……
そういえば、勝手に茶髪ですましてるけど、名前なんていうんだろう……
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴った。
早く教室に来たにもかかわらず、ゆっかが五秒遅れで走りこんできた。
ゆ「ハァ……ハァ……セーフ……かな?」
紅「うん。たぶんね(汗」
ガラッと音がして、担任の先生が入ってきた。
何か、ゴリラみたいな体格の、がっしりした先生だ。
私はまたも勝手にその先生を「ゴリー」という名前にした。
ゴリー先生(以下ゴ先)「初めまして。お前らの担任になる大橋大吾だ。よろしくな」
太い声までゴリラにピッタリ♪
私は勝手にそう連想しておかしくなって笑ってしまった(心の中で)
ゴ先「今から入学式だ。俺が今からいう出席番号順に並べよ~」
私とゆっかは水上、水森なので、ゆっかが21番、私が22番になった。
茶髪はどうやら三河という名前らしいので、20番になっていた。
列にしっかりと並んで体育館に入場していった……
私もゆっかも両親はいない。
私たちは小さいころに捨てられ、違う孤児院で過ごしたからだ。
私のいた孤児院とゆっかがいた孤児院は少し変わっていて、孤児院専用の保育園に通わせることになっていた。それが私とゆっかの出会いだった。
始めは私はすごく無口で友達がいなかった。いつも一人で隅っこで本を読んでいた。
そこへゆっかが、「一緒に遊ぼうよ」といって、誘ってくれたのだ。
苛められたこともあったけれど、ゆっかがいつもかばってくれた。
それがいつも嬉しかった。
小学校に入学しても、その絆はほどけることがなかった。
中学で、全寮制学園に入っても、一緒の部屋で過ごせることが嬉しかった。
私たちは、私たち自身が家族のようなものだった。
音楽に合わせて手拍子してくれる様々な保護者のなかに自分の親がいなくても、別にさみしくなかった。
「私が校長の磨義です。皆様が~~……」
ツルツルの頭のてっぺんに髪の毛が一本しかない校長先生が話し始めた。
「であるからして、こうは~~……」
「であり、この学校のモットーは~~……」
「っということでございます。そして~~……」
長い。もうかれこれ十分も話してる。
他の人もあくびをしている人が多い。
「っということで、短いながら挨拶を終わらせていただきます」
やっと終わった……
これで短いのか!!?
先が思いやられるよぉ……
ゆっかも同じ思いらしく、明らかに嫌な顔をしている。
ゆっかはよく思っていることが顔に出るのだ。
新入生が退場して、入学式が終わった。
教室に戻り、、さっきの席に座る。
一人ずつ自己紹介をするらしい。
ゴ先「改めて自己紹介をする。俺が担任の大橋大吾だ。よろしくな」
みんなペコッと礼をする。
ゴ先「じゃあ、一番から順番に自己紹介をしてくれ」
一番「はい。僕の名前は・・…」
などと自己紹介をしているうちに、とうとう三河の番だった。
三河(以下三)「俺の名前は三河雷斗。よろしく」
と言っただけで、席に座ってしまった。
へぇ、三河雷斗っていうんだ……
ライトって名前、懐かしいな……
時はさかのぼり、孤児院でのこと。
私は誰にも心を開かず、無口で読書が好きな孤独な女の子だった。
その時、「何読んでるの?」と聞いてきたのが、ライト君、ってコだった。
左目の黄色いキレイな瞳が印象の子だった。
そのコも読書が好きらしく、色々面白い本を教えてくれた。
でも、私が小学校になるころに、違う学校に行ってしまったのだ。
ある意味ゆっかより親しかったかもしれない。
そういえば、名字聞いてなかったな……
私の初恋だったのだろうか……
ゆ「私の名前は水森優香です!みんな、ゆっかって読んでね!私の好きな……」
ゆっかが自己紹介をしている声でハッと我に返った。
もう昔の事だわ。忘れなきゃ。
まさか三河君があのライト君なワケないしね。
ゆ「次紅音だよ!」
ゆっかに小声で教えられて、ようやくたって自己紹介をした。
紅「私の名前は水上紅音です。よろしくお願いします」
これでいっか、と思い、席についた。
ふと横を見ると、三河君が信じられない、といった風でこっちを見た。
でも、すぐ目を逸らされてしまった。
何なんだろう……
~三河雷斗side~
俺は、三河雷斗。小さいときに親に捨てられ、孤児院で育った。
入った時に、孤児院にはいろんな本があった。
俺は比較的読書が好きだったから、読書に没頭した。
そしたら、俺と同じように隅っこで本を読んでるヤツがいた。
明らかに異様な空気を放っていた。
眩しいくらいの銀色の髪の毛に、鋭く光らせる赤色の瞳。
俺は一瞬であの子に恋をした。
俺は、そのコに近づいて、「何読んでるの?」と聞いてみた。
そのコは一瞬びっくりしたような、それでいておびえているような目で俺を見た。
そして、
「ミステリー……」
といった。
キレイな声だな……と思った。
雷斗(以下雷)「俺の名前は雷斗。君は?」
そのコは一瞬戸惑ったような顔をしていたが、やがて
「紅音……」
と言った。
雷「そっか。じゃあ紅音。面白い本を色々教えてあげるよ」
そういうと、そのコは、
「本当?嬉しい!ありがとう(ニコッ」
と言って笑った。
その笑顔に、俺は一瞬でノックアウトした。
それから、いろんなことを話した。
幼稚園に入って、紅音に仲のいい友達ができても、俺達は読書友達だった。
だけど、小学校で別れてしまった。
でも、中学であの銀色の髪の毛を見たとき、目を疑った。
紅音ではないのか、と一瞬思った。
紅音にワザとぶつかって、顔を合わせたとき、確信に変わった。
あの赤い瞳。
紅音だ。絶対に紅音だ。
こんなところで会えるなんて思ってもいなかった。
教室まで同じらしい。教室に入ると、一番後ろでポツンと座っていた。
俺は迷わず横に座った。
紅音が話しかけてきたときはビックリした。
俺だと気づいたのかな、と。
でも、話してきたのは今朝の事だった。
ちょっと腹がたった。お前は俺を覚えていないのか、と。
だから、ちょっと嫌な態度を取ってしまったのかも知れない。
でも、紅音は昔と勝るとも劣らず可愛かった。
思わず盗み見てしまった。
紅音が自己紹介を終え、俺の方を向いたときは焦った。
バレたのかな、と。
でも、特に考えることもなく前を向いてしまった。
気付いているのだろうか……
それに、あの外見は……
ピュア―の言っていたことが本当なら……
紅音はまさか…・・
私は、最近少し変な気持ちになっていた。
同じ寮の子とも友達になれて、とても幸せなのに、何故か三河君がこっちを見ている気がしてどうも気になる。
私が三河君を見ると、目を逸らす癖に、私が元に戻ると、またジーッと見てくる。
何なんだろう……
などと考えながら、昼休みになった。
食堂があるらしい。無料だそうだ。
ゆっかと一緒に食堂に行き、ゆっかはラーメン、私はうどんを頼んで、食べた。
?「水上紅音ちゃんと、水森優香ちゃん……よね?」
ゆ&紅「そうですけど、何か御用ですか?」
…見事にハモってしまった。
長年一緒にいるのだ。ハモってしまうのは仕方がない。
その女の人は、驚いたように目をパチパチ瞬かせていたが、やがて、おかしいように笑い出した。
ゆ&紅「どうかしたんですか?」
……またハモってしまった。
?「いえ、なんでもないの。ただ、スゴイ息がぴったりだなって。」
ゆ&紅「それで、何か御用なのですか?」
……ここまで来るともう漫才級だ。
咲「クスッ…。私の名前は如月咲。二年生よ。実はあなたたちに、ミス部に入らないか、スカウトに来たのよ」
ゆ&紅「ミス部ってなんですか?」
……もういい加減止めたい。
咲「クスクスクスッ。あのね?ミス部っていうのは、ミステリー部の略で、いろんなミステリーを読んだり、知ったり、体験したり、解明したりする部なのよ。二人とも、入ってみる気はない?」
紅「お断りしま……」
ゆ「入ります!!ね、紅音!!」
断ろうと思っていたのだが、ゆっかが入る気らしい。
元々私はミステリーを読むのはスキだが、それほど好き、というわけではなかった。だが、ゆっかは小学校の時にミステリーを読み始めてから、超がつくほどハマってしまったのだ。
…まぁいいか。ゆっかがあんなに楽しそうな顔をしてるんだったら、別にいいや。
私もなんだか楽しくなってきたし♪
咲「じゃあ決まりね。部室とかわからないと思うから、放課後に迎えに行くわ」
ゆ&紅「は~い!」
咲「じゃあまたね~」
栗色の髪の毛を揺らしながら走って行った。
ゆ「放課後楽しみだね!」
紅「そうだねぇ」
ゆ「どんなコがいるのかな?」
紅「カッコイイ男の子がいるといいね(ニヤニヤ」
ゆ「もうっ//紅音ったら//」
紅「えへへ~ww」
私もゆっかも、放課後があまりにも楽しみだったので、何回も時計を見て足を鳴らしていたら、先生に怒られてしまった。
六限のチャイムが鳴った時、私とゆっかは真っ先に廊下をキョロキョロしていた。
咲先輩は見えない。
それから五分ごとに廊下を見に行ったけど、咲先輩は見えない。
咲先輩、遅いなぁ……
咲「二人とも、遅れてごめんねぇ~」
ゆ「遅いですよぅ」
咲先輩が来たのは、結局チャイムがなってから三十分もあとだった
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