青葉 2012-01-06 22:03:27 |
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それは解っているんだと感心する。やはり雪見は頭が切れるのだろう。新里の能力の影響下にあっても完全には負けていない。
僕は探りを入れる。
「そうなんですか。それで日和さんに能力を仕掛けているのは新里ですか?」
今まで日和の口から新里のことは全く出てきていない。日和は雪見爆死の件は覚えていない。そして、僕と過去に会ったことは覚えているが雪見の件が絡む会話は記憶にない。では、新里のことはどうなのだろう。日和は新里にも接触している。そして今日の朝までは雪見の件について新里をかなり疑っていた。今はどれ程の疑っているのだろう。いや、雪見の件が記憶にないのだから疑いなどはないのだろうが、新里のことは今はどういった存在なのだろうか。
「新里君?そうね。一色君のことも、新里君のことも 確かにゼロと疑った。それは覚えている。だから、あたしがこんな状態になっているのは新里君のせいかもしれない。或いは一色君の仕業かもしれない。解らない……何が起きているの?それに何かが抜け落ちてる。 抜け落ちたのは何だろう……。何故あたしに仕掛けてきたんだろう。誰が仕掛けているの。」
日和は頭を抱えたまま言う。雪見の件を忘れているのだから、思った通り日和の新里への疑惑は僕と同じ程度らしい。新里がゼロだということと自分に能力を仕掛けているかもしれないという疑いだけを残しているのみの様だ。そして、日和もまた不安の中にいる。潜入中に目的が解らなくなり、しかもゼロに仕掛けられているのはわかってしまっているのだから身の危険を感じて当然だろう。だが、よく考えてのみると新里もまた日和の能力の影響下にいる。日和と新里はお互いに能力を掛け合い、お互いがそれぞれの影響下にいる状況だ。新里は日和を敵として認識していない。日和に危険は今のところないといっていい。
「嘘つきね。」
日和が言う。
「嘘つき?」
「一色君は何であたしがこの学校に来たのか、本当は知ってるんでしょう?嘘つきね。」
「ああ、そのことですか。そうですね。知っています。日和さんから前に聞きました。ゼロの撲滅のためです。」
今の日和に雪見の件を話しても無駄だと思う。あれだけ新里を疑っていた今日の朝に、日和自身が学校内では新里に肯定的になると言っていた。話したところで僕にとって良いことはないと思う。
「ずいぶんと解りやすくはぐらかすのね。それは言われなくても忘れてないわ。大前提だもん。」
「放課後に必ず話します。今は日和さんは悩んでいるし、頭の状態がよくありませんから。」
「その悩みを解消するために答えて欲しいのよ。それに考え事をずっとしてるけど、あたしの頭の状態はそれほど悪くないわ。」
「悪いですよ。その証拠に今までゼロだと認めなかったのに簡単に認めて、さらにどんな能力かまで明かした。」
僕がそう言うと日和は顔を上げて微笑む。
「あたしが自分をゼロと認めて能力を明かしたことで少しでも優位に立ったと思うならば、例え敵だとしても案外くみし易い相手ね。一色君は。」
「そうですか?」
「あたしがゼロと認めたのは、ゼロであることはもう誤魔化しきれないと思ったから。そして存在感を薄く軽くするという能力については、これを最初に言ったのは一色君よ。あたしは一色君の意見を肯定しただけ。最初からね、あなたがあたしの能力を何と言おうと肯定しようと決めてたのよ。」
僕の考えは間違いだが日和は肯定している可能性があると言っている。そして、その可能性に気づかない僕は恐れるに足りないとのことらしい。
「なるほど。そんなことを考えながら会話してたということは、頭の状態も悪くないのかもしれないですね。」
しかし、日和の言葉では間違いを肯定しようとしただけでなく、当たっていても肯定したということだ。何であれ日和は、しっかりと自分の能力が本当に僕の考え通りか疑いを残す発言をしてきた。だけど僕は揺るがない。僕の考えは間違いない。僕は日和の能力を解いた。
「教えてくれるでしょう?」
日和はニッコリして言うが、僕は断る。今は言うべきではない。
「はい、放課後に。」
「酷い男ね、一色君。今あたしは一色君のために笑顔を作ったのよ。なのに答えるのを拒むなんて。そんなんじゃモテないわよ。」
「僕は作り笑いに価値なんか感じません。それじゃ今度こそ行きます。また放課後に。」
そう言って僕は階段に向かった。
「冷たいのね。一色君を好きになる女の子は特だわ。きっとライバルなんか現れないもの。」
背後でそう日和が悪態らしきものをつくが僕は足を止めなかった。
僕は教室に向かいながら考える。日和はゼロを撲滅するために活動している。だから過去、ゼロと対峙することもあっただろうし、そうなれば能力を受けたこともあっただろう。ゼロとの戦いは僕より経験値が上なのは間違いない。日和の頭が切れるのは確かだが、能力の影響下にある自分に気づけたのは経験によるものもあるのだろうと思った。それに比べて僕はどうだろう。新里という強敵と戦わなければならないのに、自分の能力がいつ使えるのか判らない。経験値もない。さらに、新里には雪見がいて、日和にも仲間がいる。だけど僕は孤独だ。気持ちが沈んでくる。ゼロではないが、コウがいてくれたらどんなに心強いだろう。
二階に降りて自分の教室に向かいながら僕は心を立て直す。嘆いていても仕方がない。状況は良くならない。そう思った。
教室に戻ると自席に座る。休み時間はまだ少しある。
「そういや誰だろう。日和の仲間は。」
僕は独り言を言う。心を切り替えると、そんな疑問が出てきた。きっと僕は接触してると思うが、考えても誰なのか全く解らない。日和は雪見の事件後に学校に来た。日和の仲間なら同じく事件後に学校に来たのだろう。しかし、そんな人物は思い当たらない。考え方を変えないと解らないのかもしれないと思う。だが同時にそれより放課後に、新里の能力の影響を脱した日和と何を話すか、また校内では無理だが放課後に学校から出た雪見とどう接触するか、それらの方が大事なことだと思った。そうなると日和の仲間が誰なのかという疑問は僕の思考から去って行った。
五限目、六限目と長く感じた午後の授業が終わる。そして、ホームルームが始まっていた。これが終われば待ちに待った放課後になる。僕はすぐに校門に行って日和を待つつもりだ。本当は真っ先に雪見の所に行きたいが、新里は僕が学校にいるうちは警戒を解かず僕が雪見に近づくのを阻止するだろう。そうなるとさらに新里の警戒を強めてしまう結果になるのは明白。焦りは禁物だ。会うのは雪見が学校を出て、家に帰ってからでも遅くはない。僕は雪見の幼馴染みだ。雪見の両親とも幼い頃からの付き合いがあり、雪見の家に上がり込むことなど朝飯前だ。新里が僕の行動を見越して何か対策をしてくる頭があるなら、その時はまた別の方法を考えなければならないが、まずは雪見の家を訪問するという単純な方法をとることに決めていた。
程なくしてホームルームが終わり、クラスメートが続々と席を立つ。僕も日和との待ち合わせ場所の校門に行くつもりで立ち上がった。すると教壇の方から僕を呼ぶ声がする。
「一色君!」
声の主は原先生だ。
そうだった。僕は授業中に先生を無視するという失態をしてしまい、この放課後に原先生に呼び出されていた。放課後になったら職員室に来るよう僕に言った時の原先生は、らしくない迫力を感じたがホームルーム中はいつもと変わりなく頼りなさそうな感じだった。あの時は僕に無視されて、さすがに少し怒っていたのかもしれない。原先生も人間だから怒りの感情を持っていて当然だ。
「はい!」
僕は返事をしながら思う。それでも原先生ならば説教をすることはないだろう。それより心配をしてくれているのかもしれない。昨日遅くまで勉強していて授業中なのにボーッとしてしまった、とか先生が喜びそうな適当に理由をつけて無視してしまったことを謝罪し、早く解放してもらえるようにしなければならない。今日はこれから忙しいのだから。
「職員室ではなく相談室の方に来てくれる。いま鍵を開けるから。」
そう教壇から原先生が言う。
この学校の職員室の隣には相談室というのがある。僕は未だ入ったことがないが外側から見るに狭い部屋のようだ。原先生はそこで話をするつもりらしい。
「分かりました。すぐに行きます。」
僕の返事を聞くと原先生は教室から出ていった。僕もすぐに教室を出て後に続く。早く済ませないと日和を待たせてしまう。
相談室前に着くと、原先生は一度となりの職員室に入り鍵を取りに行った。僕は相談室の前で待つ。ほとんど時間を置かずに鍵を持った原先生が職員室を出てきて、相談室の鍵を開ける。僕は先生の後について相談室の中に入った。
中はやはり狭く、そして机とイス以外は何もなかった。
「座って、一色君。」
原先生は険しい表情で、そう言った。ホームルームではいつも通りにしていたが、やはり二人になると怒りが込み上げてくるのか、やはり迫力らしきものを感じる。僕は思っている以上に怒らせたのかもしれない。
「あの……」
机をはさんで原先生の向かいのイスに着席し、すぐさまとにかく謝罪しようと僕が口を開くと同時に原先生も喋り出す。僕よりも早口で、かつ少々大きめの声で。その口調は怯えを含んでいる。
「一色君、怒っているのね。怒っているんでしょう?」
「え?」
僕は間違えていた。迫力なんかではない。そう思った。まじまじと原先生の表情をみると、緊張感や不安が見受けられる。それによる顔の強張りが僕を勘違いさせた。きっと四限目の原先生の授業後に最初に感じた迫力も思い違いだろう。やはり原先生には迫力なんて存在しない。
「一色君、先生は一色君の敵ではないわ。これは信じてほしいの。」
話が見えない。僕に怯えている理由も解らない。
「敵ではない?」
「知らないふりををするのは止めて。確かに力を一色君に使ったけど、仕方なかったの。だって校長先生にそうするように言われたから。だから……仕方なかったの。」
思ってもみない発言だ。雪見、新里、日和、僕、そして五人目のゼロが現れたということで間違いない。それだけで衝動を受けるが、校長先生まで絡んでいることがまた衝動だった。
>やはり原先生には迫力なんて存在しない←(笑)
なのにゼロ、それも「敵ではない」とは!
校長先生までとは、一体この学校に何が?
そして帰宅した雪見ちゃんの家族の反応は?
こんな話が書ける青葉さんて、すごい!
残念ながら日和さんには似てませんが、
日和ファンの青葉ファンですv
明けましておめでとうございます!
青空ファンさん、
自分が作ったキャラクターを好きになってくれる人がいるのは嬉しいことだね(T-T)
活字大好きさん、
そろそろ広がりも終わる。必ず最後まで書き上げるよ(^-^)
いろいろ疑問が浮かぶ。
知らないふりをするなと言うが、いったい何のことを指しているのだろう?何故僕が怒っていると思うのだろう?原先生は僕に怯えた態度をとるのは何故だろう?僕に使ったという力とはどんな能力だろう?ゼロである原先生に命令できる校長先生は自身もゼロなのか?校長先生と原先生の関係は?校長先生や原先生は新里側か日和側か、それともまた別の意図を持つ組織に属するのか?僕は次にどんな言葉を口にすればいい?
「何で僕をここに呼んだんですか?」
先ずはそんなことを訊く。
「それは、一色君の誤解を解くためによ。」
「誤解を?」
「そう。先生は一色君と事を構える気は更々ないの。校長先生に言われたことを実行しただけで、一色君に敵意があった訳じゃないわ。お願い、信じて。」
僕は原先生に怒りを感じたことも敵意を感じたこともない。誤解しているのは原先生の方だ。だが何をどう誤解しているのか、そして何故そんなに怯えているのか読みきれない。まだまだ原先生に喋らせなければならない。
「………。」
だけど疑問が多すぎて僕の頭の中が纏まらない。言葉が出ない。沈黙する僕を原先生は不気味に感じたのだろうか、焦りを滲ませて言う。
「本当に敵意はないのよ。信じて……。」
何ゆえ原先生はそこまで僕を恐れるのだろうか。
「お願い、一色君。命だけは……」
原先生は泣きそうになりながらそう言った。
「命?」
僕は原先生がそこまで危機を感じていることに驚く。そこまで僕を怒らせることをしたのだろうか。僕に向けて能力を使ったとなると、思い当たるのは僕の思考に干渉して僕を屋上に誘導したこと。それをしたのは原先生なのかもしれない。そうなれば原先生は日和側だろう。しかし、それだけで命の危険まで感じるのだろうか。
「何でそんなに僕に怯えるんですか?」
この質問はすんなりと出てきた。
「だって、一色君は強力な能力を持ってる。そんな人を怒らせたんだから怯えて当然でしょう。」
原先生もかつての日和と同じように、新里が能力を使ってしていることを僕の仕業と勘違いしているのだろうか。そんなことを考えていた時、突然に僕の頭の中に疑惑が生まれる。どうしても真実を掴まなければならない疑惑だ。コウを四階の図書室から転落させたのは新里ではなく原先生かもしれない。
「先生、先生は僕にどんな能力を仕掛けてきたんですか?」
僕の言葉に原先生は戸惑う。
「一色君、それは解ってるんでしょう?やめてよ、知らないふりは。」
「教えて下さい。」
強めの口調に僕はなっていた。それだけ知りたいことなのだ。
原先生は 迷っている。そう見える。僕が考えるより何も知らないのではないかという思いが芽生え始めているのだろう。それが確信に変わったら、つまり見抜かれたら疑惑は疑惑で終わってしまう。きっと確信すると原先生は僕への恐れが消えて何も話してくれなくなる。そんな気がする。
「先生、教えて下さい。」
僕はもう一度お願いしてみる。
すると、
「一色君、本当に解らないの?」
そう言いながら僕の心中を推し量るように見つめてきた。
僕は意を決する。
脅すことに決めた。僕への恐怖を利用して喋らせる。
良心が痛まないこともないが、原先生から先に僕に能力を仕掛けている。その事実は脅す側の僕の心を少しだけ軽くする。
「先生の口から聞きたいんですよ、僕は。」
声を低くしてそう言いながら、更に目が据わっているように見せるため瞳を動かさずに原先生を見た。すると原先生は迷いの表情がなくなり怯えるだけの表情に戻る。
「先生は本当に僕に許してほしいと思っているんですか?僕に能力を仕掛けておいて、謝るだけで済むと考えてるなら甘過ぎです。許してほしいならば僕が訊いてることぐらいパパッと答える姿勢をみせて下さいよ。何なら僕が先に言ってもいいですよ。先生が僕に何をしたのか。でもその時は先生が恐れる結果になると覚悟して下さい。」
「待って、一色君!待ってよ!言うから、答えるから!」
絵にかいたように動揺している。僕は罪悪感を覚えるが、原先生がコウを転落させたかもしれないという疑惑は確かめなければいられない。そうなるとこうするしかない。他の方法は思いつかない。
僕は頷くだけで何も言葉を発しないでいる。話し出すのを待っている態度をとる。それを感づいて直ぐに原先生は言葉を続ける。
「意思を操作したのよ。一色君が行こうとは全く思ってなかった屋上に行こうと思わせた。先生にはそんな能力があるの。でも、本当に校長先生の指図に従っただけなのよ。」
弱々しくそう話す。やはり最初に日和と屋上で遭遇したのをお膳立てしたのは原先生だった。だが、それは大したことではない。些細なことにさえ思える。そんなことより原先生は自身の能力を、意思を操作すると言った。その能力があればコウを四階からでも転落させられる。僕の心が乱れる。まだ確証はないのに怒りが込み上げてくる。
「人の意思を操作できる……。」
僕は呟く。
「一色君、怒らないでよ……。先生は一色君が本当に恐ろしいのよ。強い能力もそうだけど、それ以上に怖いのが、その非情さなの。」
「非情さ?」
原先生は狼狽する。
「あぁ、余計なこと言っちゃったかしら。要するに、一色君は精神力が強いと言いたかったのよ。」
「僕の非情さとはどこで感じたのですか?言って下さい。」
「ごめんなさい。悪い意味で言ってるわけじゃないわ。」
原先生は慌ててそう言う。しかし、非情を悪い意味以外で捉えるのはむずかしいことだと。
「言って下さい。先生。」
僕が繰り返して言うと、観念したのか話し出す。
「一色君と幸島君は仲が良さそうに見えたし、一色君は幸島君を大事にしてるように思えた。でも、一色君は能力を使って幸島君を四階から落としたでしょう。何があったかは知らないけど、大事に思う人さえ切り捨てられる。それは難しい決断のはずだけど、一色君はそれを出来る強さがある。その決断力が怖いと思うし、非情にも感じたの……。」
「?」
僕は原先生がコウを転落させたと疑ったが、原先生は僕がコウを転落させたと疑いなく思っているようだ。
すなわちコウを図書室から転落させたのは原先生ではない。
更新されてる!
って……んん?
原先生は日和さん側なの!?
そしたらその態度はどうして?
うーん、いつもながら区切りが見事ですね
能力を話す前で止められたら、ムキーってなるとこでした
僕の怒りがひいていく。疑惑は晴れた。時間を掛けずに結論を得られたのは脅しがあってこそだろう。脅される側の気持ちを考えると申し訳なく思うが、僕はこの状況をこのまま利用することにした。この機会に原先生の持っている情報を出来るだけ引き出そうと考えた。原先生が僕のことを、強力な能力を持っていて、さらに人を四階から転落させることを決断できる精神が壊れた人間と思っているうちに。原先生が勝手に作り出した僕のイメージの化けの皮が剥がされる前に。
「そんなに怖がることはないですよ。僕が訊くことを答えてくれれば何も恐ろしいことは起こりませんから。それに僕は怒ってなんかいませんよ。」
そう考えながらも僕は脅している心の痛みからか、少しだけでも安心してもらおうと柔らかい口調で言う。が、意味はなかった。
「嘘よ!一色君が怒っているのは明白じやない!お願いだから嬲るのはやめて!」
意味がないどころか、さらに恐怖を増長させたかもしれない。
「何で僕が怒ってると思うんですか?」
お陰で詰まらない疑問を口に出すことになってしまう。
「怒ってことくらい解るわよ!あれだけ授業中に睨まれたら。」
「睨まれた?」
「授業が始まってから先生の方を冷たい目で見ているのは解ってたわ。ずっと見てるから気になってた。だから反応を伺う為に一色君を思いきって指してみたのよ。そしたら無言のままその冷たい目で凝視するだけだったでしょう。それで解ったの。能力を一色君に使ったことを気づかれたと。そして、それで怒っていると。皆の前なのにあれだけあからさまに無視するということは本当は相当怒ってるんでしょう?」
原先生は四限目の英語の授業中に僕が考え事をしていて指されたのを気づかなかったことを、怒っていると勘違いした様だ。確かに授業を聴いているよう偽装するために黒板の方を見ていたが冷たい目はしていたつもりはない。ただ考え事をしていて表情がなかっただけのことだろう。
「先生は人の意思を操作できるならば、そうすれば良いじゃないですか?僕の敵意を違ったものすれば良い。何でそれをしないんですか?」
原先生が日和側であれば僕の能力を知っているだろう。そうなら、僕がこんなことを訊いても意味がないと原先生は思ったかもしれないし、また嬲られていると思ったかもしれない。でも僕は自分の能力の発動の仕方が解らない。だから原先生が僕を屋上に誘導した以降にも、僕に能力を使ったのか知りたかった。おそらくそれはあると思っている。意思を操作できるならば僕をこんなに恐れはしないはずだ。能力が効かないから恐れるということだと思う。原先生から、僕に能力を使ったものの効果がなかったという話をさせたかった。それによって何か僕の能力発動について解るヒントがあるかもしれない。
「一色君にはもう能力が効かないじゃない。効果があったのは最初だけよ。それ以降は全くダメ。それも解って言ってるんでしょう?」
やはり僕に何度か能力を仕掛けているようだ。
「僕には能力が効かなくなったと気づいたのはいつですか?」
「一色君と一緒に校長室に行った時よ。」
教頭の車に跳ねられそうになり、その後すぐに缶ジュースが落ちてきた。そして原先生と校長室に行き、校長から謝罪された時のことを原先生は言っている。
「あの時、校長先生は一色君に帰宅をしても良いと言ったでしょう。でも帰らないと答えた。でも先生は帰ってほしかったのよ。だから一色君の意思を変えようとした。でも一色君は帰ろうとしなかったわ。おかしいと気づいたのはその時。その後も何度か試したけど効かなかった。もちろん今日の授業中に無視された時も無駄だろうとは思いながらも能力を使ってみたの。そしてやはり効かなかった。冷たい目で無視され続けたわ。」
だいたい解っていたことだが、僕は無意識に自分の能力を発動しているらしい。そして、もしかすると日和が言ったように僕は能力に目覚めたのが最近で、能力を受けたら自動的に僕の能力は発動するのかもしれないと思う。
「そうですか。しかし、何であの時に僕を帰宅させたいと思ったんですか?」
原先生の話は新たな疑問を誕生させる。
「一色君。先生はね、面倒ごとが何よりも嫌なの。だから帰ってもらいたかったのよ。」
予想外の答えだった。
明けましておめでとうございます
トピ1周年もおめでとうございます!
すごいですね!
今後の末永いご発展をお祈り申し上げます
一色くんを新里くんが恐れていたのは以前に何が?
そして「面倒ごとが何よりも嫌」な原先生(笑)
意思操作できるのに、校長に使われる可哀想な一公務員?
どんな背景があるのか、楽しみです!
一年ですか
おめでとうございます
その頃はこのトピックの存在を知っていたけど、覗いたことは無かったですね
校長は何者なんだろう、とか考えてしまいます
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